kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2013年07月24日

アメリカ人がEnglandというとき、それは「イングランド」ではなく「英国」を意味する(今なお)

さて、次の記述、どこが「間違い」かおわかりになるだろうか。






いずれも、それを言うならEnglandではなくthe United Kingdom (UK) 、もしくはBritainである。
http://en.wikipedia.org/wiki/Elizabeth_II
http://en.wikipedia.org/wiki/British_monarchy

私が中学に入ったとき、教科書の口絵の段階で導入されていた「基本語」のひとつにEnglishというのがあって(驚かれるかもしれないが、現行の、というか「ゆとり教育」以後の教科書ではそうなっていないものがある)、それには「英語」のほか、「イギリスの」という語義が与えられていた。「イギリス人」を意味するEnglishmanという "単語" も教科書で習った。(1980年代のことである。)

それからかなり時間が経って、「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」について詳しく知るに及び、Englandが「イギリス(英国)」を意味しないということを把握した後に、かつては英国においても、England = Britain(もしくはUK)の意味であったことを知った。その実例はいくつもあるが、例えばキプリングのThe English Flag (1891):
http://en.wikisource.org/wiki/The_English_Flag
THE ENGLISH FLAG

Above the portico a flag-staff, bearing the Union Jack, remained fluttering in the flames for some time, but ultimately when it fell the crowds rent the air with shouts, and seemed to see significance in the incident. −Daily Papers.

Winds of the World, give answer? They are whimpering to and fro−
And what should they know of England who only England know?−
...


この、Englandという語の意味内容の変遷について、具体例を満載して追ってみたらそれなりにおもしろいのではないかとも思うが、そこまでの時間はあいにくない。いずれにせよ、現在(「現代」?)、英国においては、EnglandとBritainは明確に使い分けられている(BritainとUKは相変わらず曖昧なままだが)。

すなわち、England (English) といえばブリテン島(グレイト・プリテン)からウェールズとスコットランドを除いた「イングランド」のことで、「英国」全体を言いたい場合はBritain (British) もしくはUKを用いる。

例えば、テオ・ウォルコットはEnglishだし、アーロン・ラムジーはWelshで、2人ともBritishであるが、所属はEnglandのプレミア・リーグのアーセナルというクラブである。五輪で英国全体の統一チームを作ればTeam UKと呼ばれる。(2012年の大会では、結局スコットランドと北アイルランドが統一チームを拒否したので、「イングランド代表」に何人かのウェールズのプレイヤー加わって「UK代表」の看板をつけているような状態だったが。)

で、サッカーやラグビーやクリケットの「イングランド代表」が「英国代表」ではないのとおなじように、英国/イングランドの国家元首を首長(信仰の擁護者)とするChurch of Englandは、日本語では「英国教会」とも呼ばれるが、イングランドとスコットランドが明確に別の存在として認識されるようになった今日ではとりわけ「イングランド国教会」と呼ぶことが重要だ(ウェールズ Church of Wales, アイルランド Church of Ireland はイングランド国教会と同じ宗派だが、スコットランド国教会 Church of Scotlandは宗派が違い、英国の国家元首はスコットランドでの宗教儀式には立ち合いはするが「擁護者」として振る舞いはしない)。また、"of England" の別の例として、Bank of Englandが「英国銀行」などと訳出されていたら翻訳チェッカーは頭を机にのめりこませることになろう。こうしてうちら的には「イングランドは "英国" ではない」というのは根っこの部分で刷り込まれた「常識」となっている。

ところが、アメリカでは今なお「イングランド」が「英国全体」を意味するのだ。(※「アメリカでは」をケント・デリカット風に言うと無駄にイラっと来ることができて一石二鳥。)




本エントリ冒頭で参照した2件のツイート (@usweekly, @thelindywest)は、英王室について "of England" と表現しているが、いずれもツイート主はアメリカ拠点である。

これもそうだろうし……



この人は、プロフィールを見ると、拠点はフィリピンだそうだ(フィリピンも「英語」ではなく「米語」の言語圏であるが、それより「英国ではない」ことのほうが重要かも。サウジアラビアやUAEなどでも同じ語法が見られるし)。



イングランド、およびブリテンにおいて、このような "Queen of England" という言い方が「強い」反応を引き起こすのは、イングランド以外の連合王国の構成要素、すなわちウェールズ、スコットランド、北アイルランドについての連合主義(ユニオニズム)と分離主義という問題があるからである。

とりわけ、スコットランドについては "independence" をめぐるレファレンダムが2014年に控えているし、過去に次のようなことも起きている。
1952年にエリザベス王女が連合王国の国王に即位した際、その呼称が「エリザベス2世女王(Queen Elizabeth II)」となることをめぐって問題が生じた。というのも、イングランドには過去に同名の国王(エリザベス1世)がいたが、スコットランドには過去に同名の国王がいなかったので、イングランドを基準にすれば新国王の呼称は「エリザベス2世女王」であるが、スコットランドを基準にすれば新しい国王の呼称は「エリザベス(1世)女王(Queen Elizabeth)」となるからである。

……

イギリスの郵便ポストには王の名が頭文字で刻印されているが、エリザベス2世即位後にスコットランドに設置された郵便ポストは王冠が描かれているのみで王の名は書かれていない。これは、彼女の呼称に不満を抱いた一部の過激な民族主義者がエリザベス2世の名が刻印された郵便ポストを破壊したり、「2世」の部分を削り取ったりしたためである。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89

この件の顛末は、全文をリンク先でお読みいただきたいが、結局「王がどう名乗るかは国王大権(royal prerogative)に属すること」との判断で、今の女王はスコットランドでも「エリザベス2世」を名乗っている。将来的には「イングランドとスコットランドで『○世』の数値が異なる場合は、大きな方を基準とする」ということになっているらしいが、現実的にはそういうややこしい問題を避けるため、問題にならないような名前をつけるという方向に行くんじゃないかという気がする。(現に、「失地王」の異名をとるジョンの名前は避けられているのだし。)

このアカウントはイングランド拠点のようだが(イングランドでテレビ見てないと書けないような話がたくさん)、"of England" と述べている。これに対し「間違ってますよ」と指摘しているイーヴリンさんはスコットランドの人(スコットランドの王室支持者は、"of England" と言われることで疎外されてる感じがするのかもしれない)。





一方、北アイルランドではうっかり「クイーン・オヴ・イングランド」と言ってしまうとけっこうな騒ぎになってしまう。それが北アイルランドならではの「政治的主義主張」を背負った表現だからだ。

例えば、女性アイドルグループのナディーン・コイルが、「女王様に会っちゃった!」と浮かれてツイートしたときに「問題」とされたのは、彼女が軽々しく「セレブおっかけ」云々と述べたからではなく、エリザベス2世についてQueen of Englandと書いたからだった。(ナディーンはデリーのカトリック・コミュニティの出身である。)

Thrilled Girls Aloud singer Nadine Coyle in Twitter slip after meeting Queen
http://www.belfasttelegraph.co.uk/entertainment/music/news/thrilled-girls-aloud-singer-nadine-coyle-in-twitter-slip-after-meeting-queen-28924281.html

ナディーンの実際のツイート:



※かの地でのQueen of Englandという表現の政治性については下記参照(正確には、「下記発言の話者」というべきか。"The north of Ireland" や "six counties" の政治性と同じである):



アイルランド(共和国)ではこのような例があるが(ただし、面倒なんだけど、この場合はQueen of Englandが「正しい」んだよな……イングランド&ウェールズの法律なので):



今回の過熱報道に際して、アイルランド国営RTEは異様な浮かれっぷりで、"of どこそこ" をつけずに単にroyalを使うというありさま。


別に「アイルランドたるもの、英国とは敵対するのがデフォ」にする必要はカケラもないのだけれど、せめて明確に「外国」として扱うのが筋だと思う。というか、1921年を経て1922年があり、その時点でこうなって、そのあとにそれがひっくり返されて現在のリパブリックがあるという過程は何だったんすかっていうね。

なお、歴史的な人物についての Queen/King/Crown prince of England は、何らつっこみどころのない正しい呼び方である場合が多い。下記のような事例(ロンドンのナショナル・ポートレイト・ギャラリーのツイート)である。





もう少し実例を挙げておこう。

アメリカの報道機関(The Daily Beast = Newsweek):



アメリカ人のインテリ:



イスラエル(米国からの移住者が多いので米語圏)の不法入植地住民(の発言を紹介しているのは英国人ジャーナリスト):



なお、英国人でも、エリザベス2世について(北アイルランド云々などの事情抜きで)素で Queen of England という言い方をする人もいないわけではない。ある程度は定型表現なのかもしれない。下記の例は当時は米拠点の英国の芸能人、ラッセル・ブランド(昼間のテレビだからお行儀よくしててねとエレンに言われて、「大丈夫、女王様と食事したこともあるんだから」と請け合っている):



「実例」だけではちょっと……という権威主義(笑)な向きにはこちら。アメヘリ。


ここまでで参照したもの以外にも、米語でEnglandがUKの意味で使われているのに気づいてツイートした記憶があるのだが、Twilogをどう検索しても出てこないので、きっとツイートしたつもりでしていないか、ツイートするのをやめてしまったのだろう。



2014年8月4日追記:




これを見て、@keikokitさんがこのエントリのことをぼんやり思い出して探してくださった(ぼんやりとでも覚えていていただけていることは光栄であるが、何より、書いた本人もぼやっとしか覚えていなかったという……^^;)。





なお、第一次大戦開戦時の新聞一面で、シカゴの「シカゴ・デイリー・トリビューン」。



第一パラグラフで、形容詞形で(Englishではなく)Britishが使われている。なお、ここで述べられているのは「英海軍」の船のことだが、「英海軍」についてはBritishではなくRoyalを使い、the Royal Navyと言う。「英海兵隊」もthe Royal Marinesだし、「英空軍」も同じくthe Royal Air Force (RAF)。だが「英陸軍」は the British Armyという。理由は知らん。
http://en.wikipedia.org/wiki/British_Armed_Forces

それから、米国でのEnglishという語のBritishと置換可能な用法についてもう1件。


※この記事は

2013年07月24日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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