「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

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2007年03月08日

北アイルランド選挙速報

北アイルランド選挙速報は下記で:
http://news.bbc.co.uk/2/shared/vote2007/nielection/html/main.stm

現段階では投票率がちらほら出てきているだけで、まだ開票結果はまったく出ていません。ただ、議席の数が煩悩の数と同じだということには気づきました。

あと、テレグラフの8日の記事がこの選挙についてかなりわかりやすい内容のものなので、興味がおありの方はご一読を。
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2007/03/08/nulster08.xml

※以下、追記あり。
テレグラフ記事の内容の概要:
南北の境界線の軍の警備が消え去り、政治的にも北アイルランドと共和国との対決というこれまで当たり前のものであった争点が、徐々に消えつつある。

昨日、選挙で一票を投じたアルスターの【<原文の直訳】人々の念頭に浮かんでいたのは、北アイルランドの帰属の問題(constitutional arguements)や宗派による区分のことではなく、より日常的な問題のことであった。これは、北アイルランドにある形での正常さが戻ってきたという確実なしるしである。確かに今回の選挙は、北アイルランドの帰属についての問題を、これ以上は考えられないというほど過激な方法で決着させようという選挙である。しかし選挙戦はさほど熱を帯びず、テレビでの討論では水道料金のことや住宅価格の問題が主要な議題となっていた。

開票の結果、DUPとシン・フェインが2つの最大政党になることが確実視されている。そうなれば、イアン・ペイズリー(DUP党首)が宿敵のSFのマーティン・マッギネス(元IRAデリーの司令官)と政治権力を分かち合うという、以前にはまったく考えられなかったことが現実のものとなる道が開ける。

このような性質の選挙であるにも関わらず、1998年のグッド・フライデー合意から数えて10回目となる今回の選挙では、経済問題が争点となっていた。その背景にあるのは、「ケルトの虎」と称されるアイルランド共和国の好調な経済である。

共和国の経済の好調さは、共和国と北との関係を劇的に変化させた。北アイルランド情勢の安定化も、この変化に寄与している。

先ごろ、英国政府の北アイルランド担当大臣、ピーター・ヘインが、北アイルランド経済はひとり立ちはできないと示唆し、「アイルランド島全体の経済」を考えることを求めたことで、ユニオニスト側からは怒りの声が上がった。ヘイン大臣の発言は、北アイルランドが英国の一部であることは絶対に譲れないこととするユニオニスト(つまり「統一アイルランド」反対論者)にとっては、脅威に響いた。

一方で、共和国政府は北アイルランドのインフラへの数百ポンド単位の投資を初めて行なうと宣言している。これは好調な経済あってこその話だ。共和国政府の計画には、南北のボーダーの南側からロンドンデリー【<原文の直訳】を結ぶ新たな幹線道路などが含まれている。【注:「ボーダーの南側からデリーへ」は、紛争当時、IRAの物資輸送のルートのひとつだった。】

共和国政府のこのような方針は、経済を利用して、アイルランド再統一【<原文の直訳】を成し遂げようとの思惑があればこそであないか、という疑念をかき立てている。デイヴィッド・トリンブル(元UUP党首)の顧問をしていたことのある経済学者のGraham Gudginは、「当然、そういう思惑が背後にありますよ。しかしダブリンで訊いてもそれを口にする人はいませんでしょうけれどね」と語る。

しかし、「ケルトの虎」の恩恵がユニオニストにとって悪いものとばかりはいえない。英国の法人税率は30パーセントであるが、共和国は法人税率を12.5パーセントとしている。そして共和国の経済的成功の多くの部分はこの低い法人税率によるものである。DUPでさえ、南との経済的競争に結びつく法人税率の引き下げには反対していない。【注:北アイルランドでそれなりの規模の企業を経営しているような人たちは、ミドルクラスのプロテスタントで、多くが政治的にはユニオニストである。】

ベルファストのクイーンズ大学でアイルランド政治の教授をつとめるLord Bewは、「この件について、ユニオニストの政党が関心を持っていないことには、心から驚いてしまいます。UK全域で税率は一律であり、それによって平等な社会サービスを受ける権利が裏打ちされている、というのは、昔はユニオニストの信条だったものですが。」

一方、南北のボーダーを消すためには、IRAの銃や爆薬よりも経済的変化のほうがずっと強力に作用するとの声もある。

しかしながら、現実はより複雑である。西ベルファストの多くのシン・フェイン支持者は、現在でも、障害者手当てなど社会福祉では英国政府に依存している。共和国政府の元ではこれは消えてしまうかもしれない。【注:共和国の社会保障の制度を知らないので、ここはイマイチ意味がわかりません。】

シン・フェインは公共サービスを充実させると計画している。しかしそれにもロンドンの金が必要とされる。そのほかにも、この先10年にわたって、巨額の金が平和構築の資金(peace dividend)として必要とされることになるだろう。

一方でDUPもまた英国政府にかなりの額の金を要求している。1922年にボーダーが作られたときには、北アイルランドはアイルランド島全域で最も工業化された地域だった。【注:ベルファストの造船所など、北の産業は南よりずっと盛んだった。】15年前にはその格差はまだ見て取れたが、現在ではもはや存在しない。Lord Bewは「かつては南北分断は経済面で作用していましたが、もはやそうではなくなっています」と語る。「しかし、北の経済と政治は相変わらずUKにおんぶにだっこのようですし、しかも北の政治全体に行き渡っている。シン・フェインでさえもそうです。つまり南北分断の経済は新しい形でできているのです。」

正式な統一アイルランドということになると、共和国の経済がいかに好調であろうとも、パブリック・セクターが膨張しているアルスター【<原文の直訳】にかかる費用を出せるのか、出したがるのか、という問題も大きな問題である。

「いかにもテレグラフ!」という感じ。エコノミストっぽくもあるか。興味深い記事ではあります。「統一アイルランド」を求めているナショナリストにとっては、「ケルトの虎」の国の経済政策はあまり優しくないかもしれない。一方で「統一アイルランド」にあくまで反対しているユニオニストにとっては、「ケルトの虎」を可能にした法人税率の低さは魅力的である、と。

一方で、このテレグラフ記事でほとんどスルーされている「政治」の問題、つまり「ストーモントでのパワーシェアリング」の問題については、大方の人は「もうそういうのどうでもいいからさっさと片付けちゃいなよ」な気分であるかもしれないけれども、この選挙ではやっぱり大きな意味を持っている。特に、英国政府と共和国政府がこの選挙結果をそういう方向で理論付けたがるというか理由付けしたがるという点において。(いまごろはブレアのスピーチライターが、最新の開票結果を見ながら、原稿の仕上げをしていることだろう。ブレアの花道として、この選挙は「人々は自ら紛争の終結と和平を選択した」という結果になることが重要。)

こういうときはベルテレさん。
Exit poll leaves DUP top dogs
Thursday, March 08, 2007
http://www.belfasttelegraph.co.uk/election07/article2338991.ece

出口調査の結果、有権者の過半数が「ストーモントでのパワーシェアリング」を支持していることが明らかになった、という記事。どういうことかというと(以下、重要な部分を要旨で):
ベルファスト・テレグラフは、StrangfordのBallygowan投票所で出口調査を行なった。この地域はユニオニスト内部のムードのよい指標となる。1980年代にはUUPへの支持がDUPへの支持のだいたい2倍という情勢だった。2003年以降それは逆転している。

出口調査で話を聞いたのは100人、うち63人がどのように投票したかの調査に応じてくれた。DUPに投票したのは63人中39人、UUPが13人で、アライアンスが4人、SDLPが2人、UKUPが2人で、3人はその他の政党に投票していた。

前回2003年のストーモント議会選挙では、BallygowanでのDUPの得票率は53.5パーセントだった。今回の選挙では8ポイント増の62パーセントとなっている。なお、2005年の選挙はウエストミンスターと地方自治体の議会の選挙であったため比較対象にはならないが、出口調査の結果、2005年にUUPからDUPに支持政党を変更した人たちは、現在でもなおDUPを支持していることがうかがえた。

Ballygowanと、その隣のNorth DownでDUPに票を投じた人たちに、シン・フェインとの連立を受け入れる気持ちの準備はできているかと尋ねたところ、過半数が積極的な回答をした。27件の回答のうち13件では、シン・フェインとのパワーシェアリングについてさほど文句もなく、満足しているようであった。また、シン・フェインが民主的な組織だということがはっきりと示されれば、リパブリカンとのパワー・シェアリングを肯定するという人が、これとは別に4人いた。4人はパワー・シェアリングという考え自体には否定的だが、それ以外に道はないと回答した。5人がはっきりと反対していた。1人が何ともいえない(had no fixed view)と答えた。

この記事を読む限り、「ジェリーもマーティンも『テロリスト』だ、あのような連中を政治家として肯定し、ましてや政治的権力を与えるなどとんでもないことだ、考えられない」という「ユニオニストの典型」の意見は、実はとても少数、ということになる。

となれば、イアン・ペイズリーお得意の "No Surrender節" がどんどん歯切れ悪くなってきていることも、「あれはもうウケないから」という理由での選択、ということで合点がいく。つまり、結局はポピュリズムということで。(ロイヤリズムの武装活動者たちの話をいくつも書籍で読んだが、読んだ限りでは、彼ら「テロリスト」たちは誰一人としてイアン・ペイズリーのことをよく言っていない。私が書籍で読んだ限り、UVFもUDAも見事に全員が「俺もガキのころはすっかり信じ込んでいたフシもあったし煽られたものだが、あいつは憎悪を扇動しているだけで、しかも口先だけで行動がない」というような評価を下している。)

これもまた「政治」が正常化してきているということだろうけど、おまいら主義主張の人じゃなかったんかい、と、すごいわかりにくい部分で(あたくしの脳みその中のかなりねじくれた部分で)ちょっとスッキリしない。(^^;)



途中経過。108議席中33が決まった段階のもの。この段階とはいえ、SFがトップに来ているのがサプライズ。UUPの得票率低下がひどい。SDLPも低下している(「警察」問題では一番まともなのに)。PUPは議席なしになるかもしれない(唯一の議席保持者、デイヴィッド・アーヴァインは今年1月に急死)。
http://news.bbc.co.uk/2/shared/vote2007/nielection/html/main.stm

ni-election.png

ちなみに、イアン・ペイズリー(DUP)とマーティン・マッギネス(SF)は早い段階で当選を決めているので、ファースト・ミニスターにペイズリー、セカンドにマッギネスというずいぶん前からSFが提案してきたプランは、on courseですね。



速報が入った。Paul Berryの落選が確定。彼はDUP(基本はユニオニズムとキリスト教原理主義)所属だった。で、DUPは当然のごとくアンチ・ゲイなのだが、2005年、彼が男娼とホテルにしけこんだとタブロイドがすっぱ抜いて(本人は「男娼じゃない、マッサージ師だ」と反論)、彼は苦境に立たされつつも直後の総選挙(ウエストミンスター)にはDUPから立候補(取り消しできる時期でもなかったが)。その後党紀委員会行きとなり、最近離党が確定。今回の選挙では無所属で立候補した。
http://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Berry

なお、彼は2005年の選挙でウエストミンスターには落選はしたが、ストーモント議会の選挙でMLAにはなっているので、今回の選挙までは、サスペンドされた議会の現職議員(<ややこしい)ということになっていたはずだ。Wikipediaによると本人はオレンジオーダーでファンダメさんだというから、型どおりに考えれば強烈にアンチ・ゲイのはずだが、タブロイドがすっぱ抜いた件についてはよくわからない結末を迎えている。(詳細はWikipedia参照。)

※この記事は

2007年03月08日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 21:59 | Comment(1) | TrackBack(0) | todays news from uk/northern ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
まだ開票完了していないのですが、ブレアとアハーンの共同声明が出ました。

NI voters 'giving clear message'
Last Updated: Friday, 9 March 2007, 10:22 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/6433249.stm

[quote]
Voters in Northern Ireland have issued a clear message they want devolved government back, Tony Blair and Bertie Ahern have said in a joint statement.

As a second day of counting got under way, the premiers said: "Restoration of the devolved institutions represents an opportunity of historic proportions."
[/quote]

それからピーター・ヘイン:
[quote]
Northern Ireland Secretary Peter Hain said it was now up to the parties to decide whether they would sign up to power sharing by the 26 March deadline.

"I have no discretion on the 26 March situation. Either there is devolution and a power sharing executive in place or it falls away," he said.

"What would be the message to the electorate who have just said on the doorstep and in the polling station, they want their local politicians to deal with issues like water charges soon to come into place?"
[/quote]
Posted by nofrills at 2007年03月09日 21:02

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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