kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2007年03月01日

「英国らしさ」ならこの一冊。

休日に自転車でそこらへんをうろちょろするときにときどき立ち寄る「昔ながらの個人経営の本屋さん」がある。小さな本屋さんではあるが、近隣のほかの店と違い、小難しい系の新刊が充実している。小さな店だから、大型書店に比べて情報量が少なく、疲れない。なのでさくっとチェックするには理想的なお店だ。

その本屋さんの文庫の棚で、ある日、背表紙に「B・ジョンソン」とある分厚い文庫本を見かけた。で、「B・ジョンソン」といえば「ボリス・ジョンソン」だ。なんでだ、と思いつつ、あまりにアホな『世界同時中継! 朝まで生テロリスト?』というタイトルにうへぇ、と思いつつ手にとってみれば、やっぱりボリス・ジョンソンだ。

Boris Johnson

ボリス・ジョンソン。フルネームはAlexander Boris de Pfeffel Johnson。イートン校からオクスフォード大に進んだのち、ジャーナリズムの世界を経て政界入りした保守党の議員(党幹部)。チーム・キャメロンの広報担当。キャメロンと同様、自転車通勤者。
http://en.wikipedia.org/wiki/Boris_Johnson

メラニン色素が極端に少ないような風貌だが、曽祖父はオスマン帝国政府の閣僚だったそうで、何とも「英国的」な人物である。

いろいろと目立つところのある人で、これまでに2度、諷刺専門雑誌(というものが英国にはある)のPrivate Eyeの表紙になっている。(下記サイト、右上のドロップダウン・メニューでBoris Johnsonを探してみてください。)
http://www.ugandandiscussions.co.uk/

2004年には、いくら英国でもそりゃ古すぎるだろうという法律を引っ張り出してきて、ウェールズ民族党の人やSNPの人やLibDemの人たちといっしょに「ブレア弾劾」の運動を引っ張った。
http://ch00917.kitaguni.tv/e73799.html

2005年11月に、「米国がアルジャジーラ支局を爆撃するつもりだった」という報道があったときには、当時編集長を務めていたスペクテイター紙で「その証拠のメモをお持ちの方はぜひご連絡を!」と呼びかけるなどした。
http://nofrills.seesaa.net/article/23430874.html

「ブレア弾劾」のときは、「ブレアはサダムについては大筋では正しかった。また,私の見るところ,戦争についても正しかった。・・・ブレアが完全に誤っていたのは,あのような不誠実な手段を用いたことだ。ブレアは英国会と一般国民をばかにしていた。だからこそ弾劾されてしかるべきなのだ」と、弾劾の根拠を明言した(デイリー・テレグラフ)。
http://teanotwar.blogtribe.org/entry-2a90e781817fe85c3ead2072294fc09b.html

・・・という人です。長いな。

邦題『世界同時中継! 朝まで生テロリスト?』こと、原題 "Seventy-Two Virgins" はそんなボリス・ジョンソンの初のフィクションで、英国では2005年5月に出版された。
http://www.amazon.co.uk/gp/product/0007198051

原題の「72人の処女」とは、いわゆる「イスラム過激派」が「殉教者に天国で与えられるもの」と信じているとされるもののひとつだ。

真面目な人はこの時点でこの本は受け付けないと思う。この本自体、真面目に考えたいときに読むべき本ではない。また「イスラムについて」を書いた本でもない。この小説は、あくまで「英国らしさ」を寸描していることだけに意義のある、筋とかはどうでもいいリアルなフィクションだ。リアルすぎるから筋はどうでもいいのかもしれない。で、基本はスラップスティック・コメディだ。

なんて具合に説明しようとするとわけわかんなくなるんだが、『トリストラム・シャンディ』を思い出していただけると幸いである。(ただし読者の乱入はない。)すなわち、「読書の生命、真髄は、脱線です」。ただしボリス・ジョンソンの小説は脱線したまま筋がどっかに行くというわけでもないのだが。(ローレンス・スターンのあの小説は英国の伝統芸だと思う。)(しかし文庫本3冊、いつまで経っても読み終わらない>『トリストラム・シャンディ』。)

『世界同時中継! 朝まで生テロリスト?』の筋は単純。メインのストーリーは、ジョーンズという名前を得てウェールズで(ここで既に黒い笑い)学んだパキスタン出身の男が、考えを同じくする男2人と、黒人と白人の間に生まれ、ウルヴァーハンプトンの白人家庭に引き取られたがどうにも居場所が見つけられないディーンという少年とともに、身体に爆発物を巻きつけ、奪い取った救急車でウエストミンスターの国会議事堂に入り込む。その日、国会では米国大統領の演説が予定されており、ジョーンズらはテレビカメラの前で大統領を拘束し、テレビを通じて世界に呼びかける――「グアンタナモに不当に拘束されている人々を、本国に送還し、彼らが犯罪を犯したとされる国で裁判を受けさせよ、という私たちの主張に、あなたは賛成ですか、反対ですか」。そして世界各地の人々が電話で投票し・・・というものだ。別におもしろいストーリーではない。(おもしろいとすれば、彼ら「テロリスト」の要求が、「テロリスト」が要求しているということにおいて、人々によって色づけをされるという点か。)

出てくる「テロリスト」は素人くさいし、特殊部隊の綿密な作戦とかもない。(突入シーンはあることはある。)つまり「スリルとサスペンス」な部分はない。フレデリック・フォーサイスとかトム・クランシーとかを期待しないように(という点でこの邦題は秀逸だ)。

サブのストーリーとして、保守党の国会議員のロジャー・バーロウのドタバタがある。その日の朝、バーロウは自分のスキャンダルを新聞がおもしろおかしく書きたてているのではないかと一騒ぎしたあとで自宅を出て、いつものように自転車で国会に向かうが、米大統領の訪英に伴う厳戒態勢と官僚仕事(red tape)のせいで、なかなか国会にたどり着けない。そして道中で問題の救急車と何度もニアミスを繰り返すがいろいろあってまったく気づかない。さらには、実は彼は連中がウエストミンスター・ホールに入るのに知らず知らずに一役買っていたのだ。

こんな筋で、文庫本にして約550ページ。ストーリーがメインだと思っていると確実に飽きるし、「英国」のやたら細かい描写に興味がなければ50ページもしないうちに飽きるだろう。

しかし、「英国」のやたら細かい描写がツボにはまる、あるいは「英国的」な細かい描写が好き、という向きには、気軽にダラダラと読める本としてはかなりいいと思う。ただしボリス・ジョンソンなんで、基本は保守党路線。人によってはあんまりいい気分にならないところもけっこうあるかも。(ジャーナリストの描き方とか、「類型」として提示されるイスラム教のイメージとか。)

どう細かいかというと、例えば「テロリスト」たちのひとりとして登場するディーンは売春婦が産み落とした子供で、生まれてすぐに、ずっと不妊に悩まされてきた白人のフォークナー夫妻の養子となった。そのディーンの「養父のデニスは北アイルランドにルーツをもつ熱狂的な君主制擁護者だった」。(「君主制擁護者」はたぶんloyalistのこと。北アイルランドのコンテクストではこの訳語は微妙なところだが。)そしてその両親が、隣人とすさまじい「戦争」を繰り広げるのだが、その隣人の偏屈ぶりが「典型的英国人」。で、この「隣人戦争」で思春期のディーンが取った行動が、彼のその後を決定づける第一歩となる、というようにメインのストーリーにつながっている。(ちなみに、隣人戦争の後、彼はスーパーのバックヤードでバイトしたりするのだが、これもありがち。)

「典型的英国人」といえばロジャー・バーロウ議員もそうだ(これはボリス・ジョンソンの自嘲がかなり入っている)。こいつのいいかげんさ、場当たり主義的なところは戯画としてよくできている。ただ、冒頭からこの男が慌てているのがなぜかがわかるのは500ページをずっとすぎてからなので(ネタばれ回避のため具体的ページ数は書きません)、そういうのがイラつくという人にはこの本はダメかもしれない。

そしてバーロウのもとでリサーチャーとして働く才色兼備の米国人女性(生粋のネオコン)カメロンの見る「英国の男」。162から163ページにかけて、本筋とはまったく関係のない「もしくは彼らの愛する湯たんぽのせいだろうか?」といった「典型」の記述が2ページ続く。ストーリーから見ればほんとにどうでもいいディテールなのだが、ここはかなり笑える。

「英国」以外に細かい描写があるのは「バグダードで民間人の車を誤射して何人も殺してしまい、フラッシュバックに襲われるようになった米軍スナイパー」とか、「フランス大使」。フランス大使は明らかにドミニク・ドヴィルパンがモデルで、「銀髪をなびかせ」みたいな不必要な描写が可笑しい。米国大統領はもちろんブッシュがモデルであることは一目瞭然だが、描写がうますぎるのか、ワタシ的には「ああ、ブッシュだね(笑)」というだけ。インパクトの強さでは、「最高にフォーマルなカットのインディゴブルーのスーツに、横縞のブルーのシャツ。縞の幅も、色の濃淡もばらばらだ。全体を引き立たせているのは淡いサーモンピンクのネクタイで」(第三部より引用)、銀髪をなびかせたフランス大使には敵わない。(ネタバレ回避したいからぼかして書くが、この男と「フランス」のタヌキっぷりはすさまじい。"C'est ca." "Bien, je jamais." に注目。)

という調子で550ページだから、かなり過剰である。一方で読後に特に何も残らないし、何かドラマがあるかというとあんまりない。登場人物が一体何人だったのかもわからないくらいに人がたくさん出てきて(ここはロバート・アルトマン的といってもよいかもしれない)、全員が結局は「俺は俺」であるだけだ。誰かと誰かが出会うことで何かが変化するとかはほとんどない(ディーンは多少あるかな)。人間カタログというか、コメディのLittle Britainみたいな読み物である。

というわけで、そういう「英国らしさ」が好きで、なおかつ「動いてるものを見たらとりあえず何でもネタにする」というあの感じに耐性がある人なら、かなり楽しめる本だと思います。あんまり細かすぎるとわからんという人も、かゆいところに手が届く「訳者あとがき」があるので、そこから読んでみるとよいかも。

ただ、まあボリス・ジョンソンにも議員としての立場もあるとはいえ残念なのが、英国首相がほとんど出てこないこと。ここまでやるんならちゃんと出せと言いたい。閣僚も、国防相とか内務相とかは出てこない。院内幹事みたいな人たちは出てくるけど。

翻訳は非常に読みやすいです。ただ、校正段階でチェック漏れがあったらしい固有名詞がいくつか気になる。「アブ・グレイブ」が「アブ・グライブ」になっていたり(あれがニュースになり始めたときはカタカナでは「グライブ」という読み方もあったことは事実ですが)、一箇所「アル・グライブ」という誤植が修正されてなかったり・・・なんてのは職業柄の重箱の隅だけど(あと自分も振り回されたから)、イラクでの誤射事件を目撃して新聞に書き立てるいやな左翼系ジャーナリスト、バリー・ホワイトが所属している新聞の名称が、初出箇所(91ページ)では「デイリー・メイル」、後ろのほうでは「デイリー・ミラー」となっているのは明らかにうっかりミス。(ボリス・ジョンソンならびに英国の編集者が、すごい右翼のメイルとかなり左翼のミラーをごっちゃにすることはありえない。)このために、最初の方はメイルが「米軍の非人道的行為」を書き立てる、というあんまりありえないことになってしまっている。英国の人なら「デイリー・ミラーの記者」というだけで「ははーん」と思って「バリー・ホワイト」の人物像が想像できる(何でこんな名前にされたのかわからないけど、モデルはおそらくロバート・フィスクとかジョン・ピルジャーとかだろう)、というところが誤植のせいでダメになってしまっているという非常に残念な部分。あと、細かいことだけど、「アルカーイダ」のことを「アルカイーダ」と書くんなら「アルカイダ」でいいじゃん(音引きの場所が違うから気持ち悪い)と思いました。重版のときには直してもらいたいなぁ。>扶桑社の文庫の編集の方、もしここ読んでいらしたらよろしくお願いします。

世界同時中継!朝まで生テロリスト?世界同時中継!朝まで生テロリスト?
ボリス ジョンソン Boris Johnson 高月 園子


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Boris Johnson
http://www.boris-johnson.com/

ブログの最新の記事、No to war on Iran(3月1日付け)から少し引用しておこう。
http://www.boris-johnson.com/archives/2007/03/no_to_war_on_iran.php
These Iranian nuclear-processing plants are not only dotted all over the country; they are also buried under up to 18 metres of concrete. Are the Americans or the Israelis really going to use bunker-busting nuclear weapons to get at them? Are they going to launch a nuclear first strike against a country that still claims its purposes are entirely peaceful?

Put yourself in Iranian shoes, and you will see that any such action would be even more cataclysmic in its consequences than the attack on Iraq. A nuclear attack by America on a sovereign country - and a country that is offering no violence against America - would instantly and globally legitimise reprisals against America, Americans, American interests and American allies.

It is utter madness, and it must not be allowed to happen. As for a conventional attack, it would be much less likely to succeed, and its consequences for the region would be scarcely less baleful - above all in Iraq.

※原文はCC by-nd 2.0です。

あと、今年1月のインディペンデントでの読者との一問一答:
http://www.boris-johnson.com/archives/2007/01/the_independent_you_ask_the_qu.php
下記にはお茶吹いた。質問もばかばかしいが答えはもっとばかばかしい。
What would you do if you were God for a day?
-- CHRIS LANDONIS, Hackney

I think I would try a bit harder to prove My existence to Richard Dawkins.




※この記事は

2007年03月01日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 22:21 | Comment(1) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なんでボリス・ジョンソンがガーディアンに書いてるんだ。

http://education.guardian.co.uk/higher/comment/story/0,,2027086,00.html

しかも連載ですか。< In the first of a series of dispatches, Boris Johnson reveals that the Tories do have ideas about universities ...

記事の内容はあまりに具体的すぎて私にはわかりません。(高等教育関連。)英国外からの留学生の増加の話も出てきているけど、学費の高い留学生を戦略的に集めるということの是非はスルーされている(と思います)。
Posted by nofrills at 2007年03月06日 21:41

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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