かつてロンドンで、教科書に載ってた通りの「英語のお決まりフレーズ」がいかに「丸暗記」に過ぎないものであるか、現地の人(属性はAnarcho Punk)から教えられた。「こういうのを『生きてる英語』っていうのね」とお目目キラキラでいられるほどの余裕がない場合には、自分の知識が「丸暗記」に過ぎないということをリアルに思い知らされるのは、けっこうきついものだ。ともあれ、そういう「生きてる英語」のひとつとしてはっきり覚えているのが、canとmayの違いである。
うちらの世代は、中学んときに、英語の教科書でもテストでも、Can I 〜? = May I 〜? と、あたかも常に置換可能なように習ってきたと思う。どちらも「相手に許可を求める」ときのお決まりフレーズだが、実際には常に置換可能ではない。「失礼してタバコを一服してもよろしいですか」は "Can I smoke?" ではなく "May I smoke?" という。授業中やテスト中に急にトイレに行きたくなったときは、"May I go to the toilet[bathroom]?" であって、"Can I go to the toilet?" ではない。どちらも、 "Of course you can, but you may not." という返答がありうるのである。
Flickrのフォーラムから:
http://www.flickr.com/forums/help/34111/
www.flickr.com/help/blogging/#55 [* flickr user help]
How do I post photos to my blog?
... you can blog any public photo you see on Flickr. When you're looking at a single photo, for example, www.flickr.com/photo.gne?id=23754, you'll see a "Blog This" button above it. ... Click the "Blog This" button for the photo you want to post. If you've set up your blog, you can post immediately by adding a title and body for the post. There's a link to your blog as well so you can check that the entry looks OK.
この、you can blog any public photo you see on Flickr. という記述をめぐって混乱が見られ、混乱しているスレ主さんに対し、別のメンバーさんが:
Yes, it states you can but not you are allowed to do.
とか
Perhaps it should be changed - "can" probably means "it's possible to", rather than "you may" or "you are allowed to", but it can be taken either way. Given that that's where most people would go to get the "official" line, that's where it needs to be clarified.
とレスをしている。
つまり、ここで問題となっている you can blog any public photo you see on Flickr. という記述は、「Flickrにアップされているパブリックな写真はどれでもブログすることができます(が、常に許可なくそうしてよいとは限りません)」と解釈すべき、ということである。
Flickrには、「自分がflickrにアップロードした写真が、よそで勝手に使われている」という問題に悩む人たちのフォーラムがある。上に引用したのは、そのフォーラムで「私の写真を勝手に使ってるフザケた奴がいる」というスレで名指しにされた人が困惑して立てたスレである。スレ主さんは、flickrにデフォルトでついている「Blog Thisボタン」を使って自分のブログに他人の写真をブログってきたという。ちなみにスレ主さんはネイティヴ英語スピーカーではないかもしれない(居住地はEU)。
canとmayの話からちょい脱線するが、ここでの根本的な問題は、flickrサイドが「Blog Thisボタン」をなぜ用意しているのかがユーザーにはわかりづらい、というかどうとでも取れるという点だ。
例えばこのポストに、「Flickrのスタッフから別スレでコメントがついた。"blog this" ボタンはユーザーにとって便利なようにというものであり、ボタンがあるからといって写真を使う許可を与えているという意味ではない。もし写真が "all rights reserved" ならば、撮影者の許可が必要だ、とのことだ」とある。
ならば、you can blog any public photo you see on Flickr. ではなく、you can blog any CC licensed photo on Flickr without asking for permission. You also can blog any other public photo you see on Flickr using the Blog This button, but make sure to ask the photographer if it is okay with them. くらいは書くべきなのである。というか、単に昔のまま改訂してないだけだろうが。
Flickrのすっげー初期(2004年)、まだflickrがカナダの小規模なベンチャービジネスだったころは、photo sharingというコンセプトは、ある程度クローズドなコミュニティ(会員限定サービス)で「みんなでみんなの写真を共有して楽しみましょう」ということでうまく機能していたし、サービス利用者(会員)も写真とかアートの世界とかで経験がある人たちが多かったのか、「他人の写真を盗用する」という問題はまず見かけなかった。(私は2004年10月からFlickrを利用している。)「誰も盗用なんかしない」という前提で全然OKだったのだろう、そのころは。で、Flickrのサービスは、現在も、そのころの理念に基づいて設計されたもののままで、限りなくオープンである。
ちなみに、当時はユーザーの写真のコピーライトのデフォルトも「CCライセンス 2.0」だった。私はCC支持なんで、それがいけてると思ったのもあってFlickrに登録したんだが、今はデフォルトだとall rights reservedになってるみたいね。だから初期のデフォルトがCCだったころからの「Blog Thisボタン」が現状と合わなくなってるんだろうと思う。
しかし、Flickrを始めたludicorpがYahooに買収され(買収のときもけっこうな騒ぎになったなぁ。。。「Yahooが中国で検閲をしている」というのが大問題で)、Yahoo IDを持っている人はデフォルトでFlickrも使えます、みたいになると、メールなどのサービスのためにYahoo IDを取っただけで、自分で写真を撮ることには興味のないような人でも、Flickrのアカウントを持てるようになってしまう。となると、「とりあえず使ってみよう」的な軽い気持ちで、他人の写真を自分のパソコンにダウンロードして、プールしておくつもりで自分のアカウントにアップする、ということも起こり始める。
といっても、たいがいは悪意のない人で、あまりに初心者すぎて(始めてから数日とかで)「FAVEボタン」があることを知らないとかいうケースすらあるようだが(自分が「これは後からいつでも見たい」と思ったFlickr上の写真は、FAVEに指定すれば、クリッピングしておける)、よくわからない。
まあ、「盗用だ!」と言っている人たちの中には、公開APIを利用したウェブサービスのことまで「盗用」と断言する人たちもいるんで(特に彼らに読解できない言語のものは槍玉にあげられていたり (^^;)。
それからflickrには現在もうひとつ「問題」が浮上している。サービス運営側がFlickrのサービスを完全にYahooと統合することにしたため、これまで昔のFlickrのIDでログインできていたのが、3月半ばからはYahooのIDじゃないとログインできなくなる。昔のFlickr IDでのログインを可能にしておくコストがけっこうでかいんだろう。それに、現在のFlickrはすっかり大きくなって、ごく少数のユーザーを何としてもつなぎとめておかなければならないというふうでもなく、「YahooのIDはいやだ」という少数者の抵抗もむなしく、今回の全面移行となったのだろうと思う(憶測)。
私もあきらめてYahooのIDを別に取得したが、一般的にいって、YahooのIDなんか今さら希望の文字列で取れるはずもない。FlickrでIDの切り替えを迫られているのは全員がYahoo買収前からのFlickrユーザーで、その当時にYahoo IDを持っていたとしてももう使っていない(パスワードを覚えていない)とか、もう使いたくない(昔の名前にまつわる昔の思い出にはもう耐えられない、など)とかいう感じで、しかも希望の文字列ではIDが取りづらい。というわけで、きわめて個人的な問題があちこちで出ているようだ。むろん、ハードコアなアンチもいる(いろいろあったからねぇ)。
それから、Flickrにはかなり個人的な写真をアップしている人たちがけっこういる。自分の写真、家族の写真、友人の写真、家の中の様子、そのほかいろいろ。それがYahoo IDとつなげられると、まさに "Big Brother is Watching You" なことになりかねない、という事情もあるようで(特に北米で)。
で、Yahoo IDを取ったあとのFlickrアカウントとYahooアカウントのマージのハウツーってのも、何かあんまりわかりやすくなくて評判がよくない(案内メールを読みながら、案内メール文中のリンクをたどっていけばいいんだけど、別ウィンドウ開いて何かを先にやっちゃったりすると失敗するらしい)。
というわけで、Flickrを辞めてほかに移るという人たちもいます。移転先検討中という人たちの持ち寄りスレもあったり。あと、zooomrに引っ越した人もいます。
ごく何人かだが、2004年とか2005年から知ってる人が、Yahooによる買収を原因としてFlickrをやめてしまった。今回もまた誰かやめちゃうかもしれないなあ。
私が登録して何枚か写真をアップしたあとで、Flickrの運営の人(Ludicorpの人)から「あなたのこの写真、このグループに投稿してみては? グループ、楽しいですよ」ってわざわざメールが来て、びっくり&感激したのだけど、ここまで大きくなってしまうと、そういうのはもうないだろうな。。。
ついでなんで私の最近のFlickr投稿写真から。こういうわけで、テーマは脱構築。なんちゃって。
ああそうだ、flickrっていえばこれも。Squared Circle(正方形にぴったりおさまる正円形)というグループのへヴィーユーザーのレオさんのオリジナル・ムービー。4分くらい。
http://www.youtube.com/watch?v=nYWNsqwSRYo
3分20秒くらいに出てくる「C」がロンドンの「C」に見えたりしたんだけど、違うかなあ。
※この記事は
2007年02月26日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。