このうち、ロイヤリストと治安当局とが癒着(collusion)していた、ということは、これまでにも多く語られてきた。ネット上にもあれこれ記事があるし、書籍も少なくない。私が買い求めただけでも2冊(で、どっちも内容があまりにひどいんで、なかなか読み進められない)。
ただしこれまでは、「そういう事実がある」というのは「主張」だった。それが、今回、公的に「事実」として認定された。北アイルランドの警察オンブズマンのレポートが出たのだ。
NI police colluded with killers
Last Updated: Monday, 22 January 2007, 12:54 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/6286695.stm
※スラオさんの記事で要の部分がテキストデータ化されている。あと、スラオさんのコメント欄・・・北アイルランド関係の「論点ずらし議論」の定石とかを知らずに読むと大変なことになるかもしれないが(私は何年かずっとスラオさんを閲覧しているうちに、だいたい論法がつかめてきたのだが)。
レポートそのものは、上記BBC記事からダウンロードできるようになっている。私もDLして、これから読んでみようと思う。
記事によると:
UVFのメンバーが警察のSpecial Branchの情報屋として活動しながら殺人などの重大な犯罪を犯してきたことが、オンブズマンのレポートに明記された。
レポートによると、ロイヤリストと警察の癒着の構造のもとで起きた犯罪は、
・殺人10件
・殺人未遂10件
・「懲罰」としての銃撃10件
・「懲罰」としての襲撃13件
・モナハン爆弾事件(1974年、アイルランド共和国)
・麻薬密売17例
・そのほか
オンブズマンの調査によると、SBはUVFの殺人者に訴追免除を与えた。つまり、UVFがいくらリパブリカンを殺しても、その実行犯は罪に問われないという約束(密約)があった。そのためにSBはいろいろな協力をした。UVFの武器捜査を妨害したこともあった。
また、UVF幹部のMark Haddock(昨年、バーのドアマンへの暴行で有罪となり懲役10年)には警察SBから8万ポンドが支払われていた。
その当時の「警察」はRUC (Royal Ulster Constabulary) で、これはグッドフライデー合意後の2001年に改組され、現在のPSNI (Police Service Northern Ireland)となっている。
現在のPSNI総監であるサー・ヒュー・オードは、犠牲者の遺族に謝罪している(offered an apology to the victims' families)。
英国政府の北アイルランド担当大臣、ピーター・ヘインは、「非常に暗い部屋の片隅に明かりがともった」と述べた。
ブレア首相の公式報道官は、「完全に誤った出来事、起きるべきではなかった出来事についての、非常にいやな気分になるレポートだ」と述べた。
・・・DLしたはいいが、読むのに勇気が必要かもしれない。
また、このレポートでは、複数の殺人事件の捜査の再開を求めているが、関係した警察官が起訴されることはまずなさそうだ。証拠は訴追がないように、意図的に破棄されている。
レポートをまとめる上での調査について、オンブズマンの長は次のように語っている。
"What emerged during our inquiries was that all of the informants at the centre of this investigation were members of the UVF," she said.
"There was no effective strategic management of these informants. As a consequence of the practices of Special Branch, the position of the UVF, particularly in north Belfast and Newtownabbey was consolidated and strengthened over the years. How could this happen?
"The handling of informants was done on a day to day basis. There were very few rules. There was no management intervention to ensure informants were properly managed and supervised. The PSNI have produced no evidence that action was taken by the RUC to prevent what ultimately happened."
なお、RUCの最後の総監となったサー・ロニー・フラナガンは、オンブズマンの聞き取り調査は受けたが、調査を助けることはできなかったそうだ。
あとで少し書き足します。レポート読んでから。
関連記事
UVF gang 'linked to 10 murders
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/6286097.stm
O'Loan confirms collusion claims
By Vincent Kearney
Home affairs correspondent, BBC Northern Ireland
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/6286325.stm
Northern Ireland police shielded loyalist killers
Agencies
Monday January 22, 2007
http://www.guardian.co.uk/Northern_Ireland/Story/0,,1996126,00.html
15 murders linked to police collusion with loyalists
Owen Bowcott, Ireland correspondent
Tuesday January 23, 2007
http://www.guardian.co.uk/Northern_Ireland/Story/0,,1996450,00.html
Junior officers 'supported at highest levels of RUC and PSNI'
Owen Bowcott
Tuesday January 23, 2007
http://www.guardian.co.uk/Northern_Ireland/Story/0,,1996452,00.html
This exposes Britain not as peacemaker, but perpetrator
Now it's official: the state sponsored death squads for years in Northern Ireland and this collusion prolonged the war
Beatrix Campbell
Tuesday January 23, 2007
http://www.guardian.co.uk/Northern_Ireland/Story/0,,1996540,00.html
Ulster's rotten branch
Leader
Tuesday January 23, 2007
http://www.guardian.co.uk/Northern_Ireland/Story/0,,1996555,00.html
ベルテレさん
まだ読んでいないのだけど、とりあえず、トップページのキャッシュ
※この記事は
2007年01月22日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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