しかし、破壊の経緯も程度も最もひどいものといったら、シリアのアレッポの旧市街であることに異論は少なかろう。
今年8月、ジャーナリストの山本美香さんが落命したアレッポは、その後、ずっと戦闘が続いている。山本さんが亡くなった翌月、9月には、「重要な観光資源」であるはずの(したがって、この内戦が終わったら必ず「復興」という局面で頼ることになったはずの)旧市街が戦場になっていることが、(シリアにとっての)外国人ジャーナリストたちの報道で事実として確定した。
【シリア】アレッポのスークの広い範囲が焼失と(2012年9月29日、現地時間の報道)
http://matome.naver.jp/odai/2134893550752503401
「『アクティヴィスト』の主張として、金曜日に砲撃と銃撃が始まった、とありますね」、「アサド軍、反政権軍双方が互いにあいつらがやったと言い合っている状態」、「『反政権軍の司令官は、戦闘がやんでいる間は観光ガイドをつとめる』みたいな書き出しで、アレッポの旧市街が『戦闘地域』になっていることを報告する記事」など、読み返していて非常に暗い気持ちになる。
そのアレッポの現在の様子が、Twitterを使っている人道支援活動組織の人によって、報告されている。下記で一覧できるようにアーカイヴした。
「旧市街、動くものといえば猫くらい」……シリア、アレッポは今(2012年12月30日の現地報告)
http://matome.naver.jp/odai/2135689167252413801
先ほど「破壊の経緯」と書いたが、こういうことだ。9月、そこが「戦場」になったとき(そしてまだスークが大炎上はしていなかったとき)、FSAの側はこんな見方だった。
「あの高度にいる場合は、こちらは安全だ。連中は旧市街を標的にはしない。別の地域を攻撃にいくところだろう」とアブー・モハンメドが言い添える。
……これが9月23日の記事
http://matome.naver.jp/odai/2134893550752503401?&page=3
そういう前提で、旧市街を拠点としたのだ。スークの中にあるハマム(サウナ)で寝起きするなど。
そしてどうなったか?
「動くものといえば猫くらい」の「死の街」になった。
Stray cats were just about the only live beings in the streets of the Old City of #Aleppo twitter.com/freeCritic2000…
— Abdulwahab SayedOmar (@freeCritic2000) December 30, 2012
Back online. I visited the Old City. What once was a buzzing labyrinth of shops has become a ghost town #Aleppo twitter.com/freeCritic2000…
— Abdulwahab SayedOmar (@freeCritic2000) December 30, 2012
本当に、この破壊については、愚か、としか言いようがない。旧市街が「戦闘地域」になるずっと前に、下記のような事態になっていたのだ。
政権側は、仮に自分たちが破壊の主体であることを認めたとしても(それすらしようとしていない。あれだけの戦力を持っているのは誰かということを突っ込むと、プロパガンディストが「帝国主義者め!」とわめきたてる。ソヴィエト・ロシアでは、という例のジョークではない)「『テロリスト』の連中が立てこもるから」と言うだろう。
そうして、世界遺産だろうが観光資源だろうが文化財だろうがモスクだろうが教会だろうが、おかまいなく砲撃・爆撃を行ない続けるだろう。
もう、何も破壊するものがなくなるまで。
「街を救済するために、その街を破壊しなければならなかった」のだろう。
むろん、破壊されているのは「建物」だけではない。
#シリア: (またもや)パン屋の行列に対し空爆、死者多数、どころではない。ハマでの事態
http://matome.naver.jp/odai/2135628941358423701
ホムスは、重要な地域をアサド政権軍が奪還しましたよ。
Syria government forces retake Homs district
30 December 2012 Last updated at 10:45 GMT
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-20869412
Syrian government forces have pushed rebel forces out of the Deir Baalbeh district of the city of Homs after several days of fierce fighting.
One activist group said that more than 200 civilians were killed by regime forces after the fighting, but the claim cannot be independently verified.
The death toll across Syria on Saturday was reported to be as high as 400.
アレッポの街。
大きな地図で見る
※この記事は
2012年12月31日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
【i dont think im a pacifist/words at warの最新記事】
- 「私が死ななければならないのなら、あなたは必ず生きなくてはならない」展(東京・六..
- アメリカのジャーナリストたちと一緒に、Twitterアカウントを凍結された件につ..
- パンデミック下の東京都、「コロナ疑い例」ではないかと疑った私の記録(検査はすぐに..
- 都教委のサイトと外務省のサイトで、イスラエルの首都がなぜか「エルサレム」というこ..
- ファルージャ戦の娯楽素材化に反対の意思を示す請願文・署名のご案内 #イラク戦争 ..
- アベノマスクが届いたので、糸をほどいて解体してみた。 #abenomask #a..
- 「漂白剤は飲んで効く奇跡の薬」と主張するアメリカのカルトまがいと、ドナルド・トラ..
- 「オーバーシュート overshoot」なる用語について(この用語で「爆発的な感..
- 学術的に確認はされていないことでも、報道はされていたということについてのメモ(新..
- 「難しいことはわからない私」でも、「言葉」を見る目があれば、誤情報から自分も家族..