「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2006年12月27日

「ベルファスト」を語る音楽、第2弾

先日のStylus MagazineのTop Ten Songs about the Troublesに続いて、Slugger O'Toole版のSongs about the Troublesのリストが出ている。
http://sluggerotoole.com/index.php/weblog/comments/songs-of-the-troubles-redivivus/

Sluggerには曲が聴けるものについてはYouTubeなどへのリンクがあるので、曲を聴きたい人はそちらからどうぞ。

私は例によって歌詞を・・・
- The town I loved so well - The Dubliners → [lyrics] ※midiファイルつき
- Invisible Sun - The Police → [lyrics]
- Belfast - Boney M → [lyrics]
- Give Ireland Back to the Irish - Wings → [lyrics]
- Oliver's Army - Elvis Costellos → [lyrics]
- Through the Barricades - Spandau Ballet → [lyrics]
- Forgotten Sons - Marillion → [lyrics]
- The Island - Paul Brady → [lyrics]
- Whatever you say, say nothing - Colm Sands → [lyrics]
- Belfast Befast - Clubsound
- Ether - The Gang of Four → [lyrics] ※Last.fmで全曲ストリームあります。音質よくないし映像もほとんど何も映っていないけど2006年9月のライヴがYouTubeに12月のもあるけどバックステージからのショットで、スモークが出るたびにホワイトアウトしている。
- Give my head peace - Saw Doctors → [lyrics]
- The Saints are coming - U2 and Greenday ※オリジナルはThe Skids。U2とグリーンデイのカバーはハリケーン被害についてのものになってるので、歌詞もオリジナルのものから。
- There were Roses - Cara Dillon → 当ブログ過去記事を参照


で、Boney Mなんだけどさ、私はリアルタイムでは知らないのだけど(当時小学生)、20歳ごろに「70年代のディスコ・ソング」の特集みたいなのをラジオでやってたときに『ラスプーチン』という曲を知り、しかも歌ってる人たちは西インド諸島の人たちで、プロデューサー(仕掛け人)がドイツ人とかいう説明を聞いて「それでなぜ『ラスプーチン』なんだろう」と思ったのだけど、YouTubeでBoney Mで検索すると『バビロンの川』はあるし、『バハマ・ママ』はあるし、『ベルファスト』はあるし、なんじゃこりゃ。思わずウィキペディアを見ざるを得ない。ほんとすごいよね。まさにグローバル。
http://en.wikipedia.org/wiki/Boney_M

下記のビデオなんかほんとに大変なことになっている。投稿した人が勘違いしているのか『バビロン』ってあるけど、曲は『ラスプーチン』。ロシアでのライヴらしいんだけど、絵本の「アラビアン・ナイト」みたいな衣装でうそくさいコサックダンスの振り付け。。。で観客が微動だにせず。当時、鉄のカーテンの向こうでこんなことが起きていたとは!
http://www.youtube.com/watch?v=MV3j1vh0sfU

あー、なんかすべてがどうでもよくなってきた。1日中これ聞かされたら拷問だ。(笑)

話を元に戻します。

で、そのボニーMの『ベルファスト』、これはむやみに明るい。小泉前首相が「せーいきなきこーぞーかいかく」etc etcを連発してみたら世の中の多くの人々が何か明るくなってく気がしたというのと同じように明るい。「ベルファスト、変わりゆく町」とかって、70年代に歌えていたという事実は衝撃的だ。しかもベルファストとあんまり関係なさそうな人たちによって。

PoliceのInvisible Sunのビデオ、これはすごいわ。曲もすごくいいし。曲は知ってたけど、ビデオは初めて。傘が風でひっくり返ってしまうとかいった「日常」の風景がシュールでさえある。4分半の時間があればぜひ。


コメント欄によると、「撮影はベルファスト西部のthe lower Falls / Divis areaのあたり(ナショナリスト/リパブリカンのエリア)で行なわれ、何カットかはold Beechmountsもあるように見える」とのこと。これらのエリアについては駐屯してた英陸軍のレジメントによる説明が詳しいが、一言で言えば「カトリックのゲットー」だ(Cheekyさんによる『マンボ!マンボ!マンボ!』という映画の解説を参照)。the Policeのビデオでは、建物のみすぼらしさが生々しい。なお、「ビデオに出てくる家屋は、現在はすべて建て替えられている。(英軍の)兵士や警察官にとっては非常に危険な場所だった」(YouTubeのコメントより)。

ウィングスのGive Ireland Back to the Irish(アイルランドをアイルランド人の手に)は、日本では「アイルランドに平和を」という題名で出されていたようですが、「平和を」とはちょっと違うんだよね。。。歌詞を要約すると、Brits out! ということになる。1972年1月30日のデリーでのブラッディ・サンデーの直後に「抗議」としてポール・マッカートニーらが書いた曲で、翌月にシングルとしてリリースされるも、BBCでは放送禁止になった。内容が内容だけに。

エルヴィス・コステロのOliver's ArmyのOliverは、Oliver Cromwellのこと。あの清教徒革命(ピューリタン革命)のクロムウェル。彼はアルスター入植(ピューリタンをアルスターに入植させた)で大量殺戮を行なった。その殺戮は、今なら「ジェノサイド」と言われるものだろう。このポップで明るい曲がそれについての曲だと知ったとき(15年以上前!)には驚いたんだが、Youtubeのコメ欄を見るとアメリカ人で、「イングランドの歴史には明るくないのでコンテクストは知らなかった」という人もいる。(しかしこのビデオの中の「日本のステレオタイプ」にはガクっとなるよね。わかっててやってるにせよ、これは明治時代のポンチ絵同然。。。)

スパンダー・バレエはロンドンの出身の人たちだが、誰かがアイリッシュとかいうこと? この曲は「バリアの向こうとこちらの恋人たち」というクリシェの曲で、SLFのBarbed Wire Loveをしっとり大人な感じにしてみた、という内容。

マリリオンは聴いたことありません・・・YouTube画像をスラオさんから見てみようとしましたが、カバーバンドのライブ映像で、正直きつい。。。カバーじゃなく本物のマリリオンのもありましたが、すいません。20秒でリタイア。好みの問題です。ベースはむちゃくちゃかっこいいのですが。(この時期のこういう「壮大」系の人たちのって、ほんと、ベースがすごいかっこいいのが多いよね。)

ポール・ブレイディのは、これはいいなあ。歌詞はここにありますので6分くらい時間がある人はYouTubeで聞いてみてください。"Up here we sacrifice our children / To feed the worn-out dreams of yesterday / And teach them dying will lead us into glory..." というような歌詞です。
http://www.youtube.com/watch?v=vWGCM9PojGU

Colm Sandsは、http://www.c21vox.tv/programmes/full.php?id=149 に、イスラエルのシャロン・アビブさんというストーリーテラーと一緒にこの曲を歌っているビデオがあります(Talking to the wallという企画をやったそうです)。コルムとベンとトミーとアンのサンズ兄弟は北アイルランド(County Down)の有名な音楽一家。公式サイトとか、こことかを参照。ボビー・サンズとは遠戚なのだそうです。

Saw Doctorsのは、実際には "She Says" というタイトルらしい。BBC NIのGive my head peaceというコメディ(「バリアの向こうとこちらの恋人たち」というクリシェがネタ)のテーマ曲だったとか。
http://en.wikipedia.org/wiki/Give_My_Head_Peace
http://www.bbc.co.uk/northernireland/gmhp/

何年か前にOxford University Pressか何かの教材リストを見てたら、ほんとに「紛争で引き裂かれたベルファスト、あちら側のメアリとこちら側のビリー、出会うはずのない2人がひょんなことから出会い、恋に落ちた。しかし彼らは敵どうし。果たして恋の行方は」というようなあらすじのリーディングの教材(笑)がありました。(キャッチは「現代の私たち自身のロミオとジュリエット(Our own, modern Romeo and Juliet)」だったと思う。もうベタベタ。)

U2とグリーンデイがカバーした "The Saints are coming"は、オリジナルはThe Skidsの1978年の曲で、「陸軍に入り、北アイルランドでの任務で死んだ友人のことを書いたもの(he had written the lyrics about a friend of his who had recently joined the British Army, and been killed on tour of duty in Northern Ireland.)」であって、歌詞にはfloodという語は出てくるかもしれないが、洪水の歌じゃない。洪水の歌ということにして、支援資金を集めるためにスターが歌う、というコンセプトがよくわからん。ちなみにオリジナルのビデオはこちら。すごいかっこいい曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=pOTR8qZFQjM

ちなみに、The Skidsのギターの人(Rest In Peace)は後にBig Countryを結成した。私が最初に「ケルトっぽい音」を認識したのは、たぶんこのBig Countryの大ヒット曲のとき。

※この記事は

2006年12月27日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 07:20 | Comment(0) | TrackBack(1) | todays news from uk/northern ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: エルヴィス・コステロの「Oliver’s Army」、PVを観たことはなかったが、こんなトンチキなPVであったことを今さら知る。 Elvis Costello - Olivers army from..
Weblog: に し へ ゆ く 〜Orientation to Occident
Tracked: 2007-05-13 23:03

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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