M&S in 'silly' festive blunder
Last Updated: Sunday, 24 December 2006, 17:34 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/6208295.stm
このパジャマには、前身頃の胸の部分に、次の英文がプリントされている。EnglishならぬEngrish収集家なら、見た瞬間にニヤニヤできるだろう。これが日本や韓国が中国などEngrishの主要産地で生産されたものだったらEngrishとして認定するクオリティに達しているかどうか微妙なところだが、英国産としては立派に高水準のEngrishだと私は思うがどうだろうか。
Mum's dreaming of a quiet Christmas just like the one's she used to know ...
これはむろん、『ホワイト・クリスマス』(I'm dreaming of a white Christmas, just like the ones I used to know...)のパロディだが、問題になっているのは2番目のアポストロフィ(the one's she used to knowのところ)だ。
しかもBBC記事によると、M&Sの変なアポストロフィはこれが最初ではない。
In October, M&S had to withdraw from sale a set of children's pyjamas which showed a picture of two giraffes and another erroneous apostrophe on the words 'Baby Giraffe's'.
※複数形のsにはアポストロフィはいらんのよ。所有格のsには必要だけど。
さらにM&Sには文法間違いの前科もある。アポストロフィくらいなら「細かいこと言うなよ」と流すことも可能だろうが、次の例は明らかに許容範囲外だ。
M&S was applauded for changing its "six items or less" signs to "six items or fewer" in the name of good grammar.
※正直に告白しますと、私もこのミス(lessかfewerか)は時々やります。主に、文の一部を書き換えたとき(例えばtables and chairsをfurnitureにするとか)に発生します。丁寧な解説つき("You should use 'fewer' for countable nouns!"とか)で修正されます。
ちなみにM&Sは今年のクリスマス商戦の商品ではご難続きです。ジミー・チュウの£495のバッグのデザインをパクったバッグを製造し、£9.50で店頭に出すというマヌケなことをして、ジミー・チュウに訴えられて商品は店頭から回収し、和解金を支払ったというニュースが、つい数日前にありました。
アポストロフィやコンマがフルストップ(ピリオド)などの使い方を「パンクチュエーション」と言います。あまりに誤用が多いことに怒った英国のジャーナリストがこのテーマで書いた本が、数年前に超話題になったことがあります。
![]() | Eats, Shoots & Leaves: The Zero Tolerance Approach to Punctuation Lynne Truss Gotham Books 2006-04-11 by G-Tools |
"Eats, Shoots & Leaves"というのは、A panda eats shoots and leaves.「パンダは芽や葉を食べる」という文で、変なところにコンマを入れてA panda eats, shoots and leaves. とすると、「1匹のパンダが食べ、撃ち、そして去った」という意味になってしまう、ということです。
この本は、日本語に翻訳もされています。
![]() | パンクなパンダのパンクチュエーション―無敵の英語句読法ガイド― リン・トラス 今井 邦彦 大修館書店 2005-06-01 by G-Tools |
この本、読み物としてはおもしろいと思いますが、英語を外国語として使う一般人がレファレンスとして使うには、別の本の方がいいです。下記のとか。
![]() | ネイティブチェックが自分でできる英語正誤用例事典 ジェームズ・T. キーティング James T. Keating ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() by G-Tools |
↑「ネイティブチェックが自分でできる」かどうかは微妙ですが、より「自然な」英語を書くときの助けにはなります。ただやっぱgrammarやusageの本はこれとは別なのでしっかりしたのを持ってたほうがいいです。下記(マイケル・スワンの)とか。(個人的には日本語訳よりも原書のほうが使いやすいと思います。こういうのを参照するときって、頭を英語に切り替えているので。)
![]() | オックスフォード実例現代英語用法辞典 マイケル スワン Michael Swan 吉田 正治 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() by G-Tools |
文法書ならこれとか。(『ロイヤル英文法』よりこれが私は好きです。)
![]() | 英文法解説 江川 泰一郎 金子書房 1991-06 by G-Tools |
追記:
下のコメントで言及されている「ファウラーのModern English Usage」は1926年初版の本です。
http://en.wikipedia.org/wiki/Fowler's_Modern_English_Usage
Wordsworthのシリーズに入っているということはこの初版だと思うのですが、これなら極めて手軽な価格で入手することもできます。
![]() | Modern English Usage (Wordsworth Collection) H. W. Fowler Amazonで詳しく見る by G-Tools |
1996年の第3版(2000/02発行)は下記。amazon.co.jpではマーケットプレイスだけみたい。
![]() | The New Fowler's Modern English Usage H. W. Fowler R. W. Burchfield Clarendon Pr 1996-12 by G-Tools |
と思ったらこれ↓も第3版。2004/11/30発行になってる。どっちもハードカバーだし、何だろう・・・UK版かUS版かの違いかもしれません。
Fowler's Modern English Usage | |
![]() | R. W. Burchfield H. W. Fowler Oxford Univ Pr (T) 2004-11-30 売り上げランキング : 85385 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
この第3版については、「Fowlerの初版とは別物」というような読者レビューがamazon.co.ukに多く出てますね。
ファウラーの第2版をまとめたSir Ernest Gowersには、The Plain Wordsという有名な著書があります。1954年にThe Complete Plain Wordsとして改訂され、Gowersの死後も継続的に改訂を重ねています。
http://en.wikipedia.org/wiki/Plain_Words
amazonで扱いあり。下図、左が1987年版(ペンギン)、右が2003年版。


私はこれはロンドンのチャリティショップか教会のバザーで見つけて30ペンスくらいで買いました。1979年印刷の、Fraserの改訂版。ここで「流行語」として挙げている語の多くが定着していることには驚かされます(arguably, basically, charisma, conceptual, dynamic, euphoria, hindsight, interface, low profile, marginal, maximise, minimal, motivation, overall, parameters, participation, resources, restructure, syndrome, viableなど)。
あと、パンクチュエーション(コンマやピリオドなどの使い方)については、下記の本が評価高いみたいです(amazon.co.ukの読者レビューなどを参照)。私は個人的には「そーゆー細かいことは決定的なところじゃなければどっちでもいいんじゃないか」という考えに傾いているので、パンクチュエーションだけの解説書を1冊手元に置こうという気にはなっていないのですが、例文ほしさに買うかもしれない。
![]() | The Penguin Guide to Punctuation (Penguin Reference Books) R. L. Trask Penguin UK 1997-08-07 by G-Tools |
※この記事は
2006年12月25日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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そう言えば,中学校の英語の授業で,小うるさく言われた覚えが.
あのころはアポストロフィは「謎の物体」でしたねぇ。(今も「それは何なのか説明しろ」と言われるとできない。。。用法は説明できるけど。)
日本の学校のテストでは、アポストロフィとかピリオドとかのミスでいちいち減点されるのですが、実際にネイティヴ英語話者が書いたものを見るとそこらへんがグダグダで、それが日本の人にはけっこう衝撃なようです。で、「なーんだ、気にしなくてもいいんだ」でつられてグダグダになるケースも。(私も若干。。。)
リファレンスというよりはおもしろ読み物ですね。こちらでは続編も反論本も出てますが ^_^;
参考文献、参考になります。
今年の相方からのクリスマスプレゼントは、FowlerのModern English UsageとリクエストしていたRogetのシソーラスでした。
昨年も英語のリファレンス本をもらったので、どうも「もっと勉強しろ」ということらしいです。
どもー。クリスマス休暇はゆっくりされてますか?
ファウラーのModern English Usageは、出版後30年にわたってニューヨークで絶対的権威だった、ということが下記にかかれてます。『ニューヨーカー』編集部からジョン・アップダイクへの手紙がちょっとおもしろいです。
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/1356/SARU/saru14.html
Modern English Usageの20年くらい前、1906年に出されているファウラーのKing's Englishは、引用されている新聞記事がばりばりの帝国主義時代のもので、本来の用途とは別なふうにも読めておもしろいです。
http://www.bartleby.com/116/