「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2006年12月25日

「マークス&スペンサーは英文法を勉強したほうがいいのかも」事件

うひゃひゃひゃひゃ。。。Rogueと呼ばれるのは、「国際社会のルールに従わない国家」(<ブッシュの発言による)とか、「やたらと攻撃的で群れで生活しない象」とか「とんでもないことをして巨額の損失を出すトレーダー」とかだけじゃなかったらしい。BBCによると、アポストロフィーにもrogueがいる――自社ブランド製品しか売らないことで知られる英国の(やや高級な)スーパーマーケット・チェーン、マークス&スペンサー(M&S)がこのクリスマスに出した子供用のパジャマに、そのrogue apostropheは存在している。

M&S in 'silly' festive blunder
Last Updated: Sunday, 24 December 2006, 17:34 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/6208295.stm

このパジャマには、前身頃の胸の部分に、次の英文がプリントされている。EnglishならぬEngrish収集家なら、見た瞬間にニヤニヤできるだろう。これが日本や韓国が中国などEngrishの主要産地で生産されたものだったらEngrishとして認定するクオリティに達しているかどうか微妙なところだが、英国産としては立派に高水準のEngrishだと私は思うがどうだろうか。
Mum's dreaming of a quiet Christmas just like the one's she used to know ...

これはむろん、『ホワイト・クリスマス』(I'm dreaming of a white Christmas, just like the ones I used to know...)のパロディだが、問題になっているのは2番目のアポストロフィ(the one's she used to knowのところ)だ。

しかもBBC記事によると、M&Sの変なアポストロフィはこれが最初ではない。
In October, M&S had to withdraw from sale a set of children's pyjamas which showed a picture of two giraffes and another erroneous apostrophe on the words 'Baby Giraffe's'.

※複数形のsにはアポストロフィはいらんのよ。所有格のsには必要だけど。

さらにM&Sには文法間違いの前科もある。アポストロフィくらいなら「細かいこと言うなよ」と流すことも可能だろうが、次の例は明らかに許容範囲外だ。
M&S was applauded for changing its "six items or less" signs to "six items or fewer" in the name of good grammar.

※正直に告白しますと、私もこのミス(lessかfewerか)は時々やります。主に、文の一部を書き換えたとき(例えばtables and chairsをfurnitureにするとか)に発生します。丁寧な解説つき("You should use 'fewer' for countable nouns!"とか)で修正されます。

ちなみにM&Sは今年のクリスマス商戦の商品ではご難続きです。ジミー・チュウの£495のバッグのデザインをパクったバッグを製造し、£9.50で店頭に出すというマヌケなことをして、ジミー・チュウに訴えられて商品は店頭から回収し、和解金を支払ったというニュースが、つい数日前にありました。



アポストロフィやコンマがフルストップ(ピリオド)などの使い方を「パンクチュエーション」と言います。あまりに誤用が多いことに怒った英国のジャーナリストがこのテーマで書いた本が、数年前に超話題になったことがあります。

1592402038Eats, Shoots & Leaves: The Zero Tolerance Approach to Punctuation
Lynne Truss
Gotham Books 2006-04-11

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"Eats, Shoots & Leaves"というのは、A panda eats shoots and leaves.「パンダは芽や葉を食べる」という文で、変なところにコンマを入れてA panda eats, shoots and leaves. とすると、「1匹のパンダが食べ、撃ち、そして去った」という意味になってしまう、ということです。

この本は、日本語に翻訳もされています。

4469245011パンクなパンダのパンクチュエーション―無敵の英語句読法ガイド―
リン・トラス 今井 邦彦
大修館書店 2005-06-01

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この本、読み物としてはおもしろいと思いますが、英語を外国語として使う一般人がレファレンスとして使うには、別の本の方がいいです。下記のとか。

ネイティブチェックが自分でできる英語正誤用例事典ネイティブチェックが自分でできる英語正誤用例事典
ジェームズ・T. キーティング James T. Keating

和英翻訳ハンドブック―新聞記事翻訳の現場から Microsoft Manual of Style for Technical Publications (Bpg-Other) 英文翻訳術 技術英文の正しい書き方 基礎からわかる数量と単位の英語―豊富な文型と用例

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↑「ネイティブチェックが自分でできる」かどうかは微妙ですが、より「自然な」英語を書くときの助けにはなります。ただやっぱgrammarやusageの本はこれとは別なのでしっかりしたのを持ってたほうがいいです。下記(マイケル・スワンの)とか。(個人的には日本語訳よりも原書のほうが使いやすいと思います。こういうのを参照するときって、頭を英語に切り替えているので。)

オックスフォード実例現代英語用法辞典オックスフォード実例現代英語用法辞典
マイケル スワン Michael Swan 吉田 正治

A Practical English Grammar Basic English Usage A Communicative Grammar of English How English Works: A Grammar Practice Book Oxford Collocations Dictionary for Students of English

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文法書ならこれとか。(『ロイヤル英文法』よりこれが私は好きです。)
4760820094英文法解説
江川 泰一郎
金子書房 1991-06

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追記:
下のコメントで言及されている「ファウラーのModern English Usage」は1926年初版の本です。
http://en.wikipedia.org/wiki/Fowler's_Modern_English_Usage

Wordsworthのシリーズに入っているということはこの初版だと思うのですが、これなら極めて手軽な価格で入手することもできます。
Modern English Usage (Wordsworth Collection)Modern English Usage (Wordsworth Collection)
H. W. Fowler


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1996年の第3版(2000/02発行)は下記。amazon.co.jpではマーケットプレイスだけみたい。
0198691262The New Fowler's Modern English Usage
H. W. Fowler R. W. Burchfield
Clarendon Pr 1996-12

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と思ったらこれ↓も第3版。2004/11/30発行になってる。どっちもハードカバーだし、何だろう・・・UK版かUS版かの違いかもしれません。
Fowler's Modern English Usage
Fowler's Modern English UsageR. W. Burchfield H. W. Fowler

Oxford Univ Pr (T) 2004-11-30
売り上げランキング : 85385


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この第3版については、「Fowlerの初版とは別物」というような読者レビューがamazon.co.ukに多く出てますね。

ファウラーの第2版をまとめたSir Ernest Gowersには、The Plain Wordsという有名な著書があります。1954年にThe Complete Plain Wordsとして改訂され、Gowersの死後も継続的に改訂を重ねています。
http://en.wikipedia.org/wiki/Plain_Words

amazonで扱いあり。下図、左が1987年版(ペンギン)、右が2003年版。
The Complete Plain Words (Reference Books)  The Complete Plain Words

私はこれはロンドンのチャリティショップか教会のバザーで見つけて30ペンスくらいで買いました。1979年印刷の、Fraserの改訂版。ここで「流行語」として挙げている語の多くが定着していることには驚かされます(arguably, basically, charisma, conceptual, dynamic, euphoria, hindsight, interface, low profile, marginal, maximise, minimal, motivation, overall, parameters, participation, resources, restructure, syndrome, viableなど)。

あと、パンクチュエーション(コンマやピリオドなどの使い方)については、下記の本が評価高いみたいです(amazon.co.ukの読者レビューなどを参照)。私は個人的には「そーゆー細かいことは決定的なところじゃなければどっちでもいいんじゃないか」という考えに傾いているので、パンクチュエーションだけの解説書を1冊手元に置こうという気にはなっていないのですが、例文ほしさに買うかもしれない。
0140513663The Penguin Guide to Punctuation (Penguin Reference Books)
R. L. Trask
Penguin UK 1997-08-07

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※この記事は

2006年12月25日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 16:22 | Comment(4) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>複数形のsにはアポストロフィはいらんのよ

 そう言えば,中学校の英語の授業で,小うるさく言われた覚えが.
Posted by 消印所沢 at 2006年12月25日 21:26
>所沢さん
あのころはアポストロフィは「謎の物体」でしたねぇ。(今も「それは何なのか説明しろ」と言われるとできない。。。用法は説明できるけど。)

日本の学校のテストでは、アポストロフィとかピリオドとかのミスでいちいち減点されるのですが、実際にネイティヴ英語話者が書いたものを見るとそこらへんがグダグダで、それが日本の人にはけっこう衝撃なようです。で、「なーんだ、気にしなくてもいいんだ」でつられてグダグダになるケースも。(私も若干。。。)
Posted by nofrills at 2006年12月25日 21:46
リン・トラスの本は原書で読みました。
リファレンスというよりはおもしろ読み物ですね。こちらでは続編も反論本も出てますが ^_^;

参考文献、参考になります。
今年の相方からのクリスマスプレゼントは、FowlerのModern English UsageとリクエストしていたRogetのシソーラスでした。
昨年も英語のリファレンス本をもらったので、どうも「もっと勉強しろ」ということらしいです。
Posted by ぴこりん at 2006年12月28日 07:44
>ぴこりんさん
どもー。クリスマス休暇はゆっくりされてますか?

ファウラーのModern English Usageは、出版後30年にわたってニューヨークで絶対的権威だった、ということが下記にかかれてます。『ニューヨーカー』編集部からジョン・アップダイクへの手紙がちょっとおもしろいです。
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/1356/SARU/saru14.html

Modern English Usageの20年くらい前、1906年に出されているファウラーのKing's Englishは、引用されている新聞記事がばりばりの帝国主義時代のもので、本来の用途とは別なふうにも読めておもしろいです。
http://www.bartleby.com/116/
Posted by nofrills at 2006年12月28日 23:11

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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