「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2006年12月24日

「ベルファスト」を語る音楽

Slugger O'Tooleで紹介されていたのだが、Stylus MagazineにTop Ten Songs about the Troublesという記事がある。それぞれの曲についての説明は、Stylus Magの記事にあるのでそれを見ていただきたい。スラオさんの記事にはyoutubeへのリンクがついているのと、コメント欄で各自が「これは外せないだろう」というのを挙げているのとで、こちらもぜひ(スラオさんのミックはクランベリーズを挙げている)。私は歌詞へのリンクをつけておこう。

10 - Ulster - Sham 69 → [lyrics]
9 - Belfast Child - Simple Minds → [lyrics]
8 - It's going to happen - The Undertones → [lyrics]
7 - Belfast - Orbital → [lyrics] ※ヴォーカルありのも、ヴォーカルなしのもある。
6 - Nicky Wire - Bobby Untitled → [lyrics]
5 - Stiff Little Fingers - Alternative Ulster → [lyrics]
4 - The Divine Comedy - Sunrise → [lyrics]
3 - Sunday Bloody Sunday - U2 → [lyrics]
2 - Cypress Avenue - Van Morrison → [lyrics]
1 - Streets of Sorrow - The Pogues → [lyrics]

ポーグスのStreets of Sorrowは、「バーミンガムで6人、ギルフォードで4人、しょっぴかれて拷問されて、今は懲役刑。ただアイルランド人だったから」という歌詞の内容から、放送禁止になった。曲の発表当時はバーミンガム・シックスもギルフォード・フォーも、裁判が誤審であったとは認められておらず、「有罪判決が確定したテロリストは無罪だと主張する歌」だったからだ。

ディヴァイン・コメディのSunriseは、98年夏リリースのアルバムに入っていて、Sunriseとはつまり、「和平合意」後の希望のことだ。個人的に音楽のスタイルとしてこの人たちの音楽はどうにも苦手でこの曲は聴いたことがなかったのだが、シンプルな歌詞がすばらしい。今、イラクではセクタリアニズムがひどくて、「オマール・アリ」という名前(「オマール」はスンニ派、「アリ」はシーア派の男性名)の18歳の子(両親がスンニ派とシーア派)が、その名前ゆえに生命の危険にさらされたという話を読んで、やりきれんと思ったのだが、ニール・ハノンは自分が「デリー」生まれなのか「ロンドンデリー」生まれなのかで相当悩んだことがあるのだろう。

ニッキー・ワイアー(彼はウェールズ人)のは音源はここ(←彼の公式サイトで全曲ストリームあり)。ボビー・サンズが書いたものを再構成したりしているそうです。つい最近出たばかりなんですね。

シンプル・マインズ(スコットランドのバンド)のBelfast Childは、メロディはトラッドからの転用で歌詞はオリジナルだそうです。

Sham 69のUlsterはファースト・シングルなんだよね。77年。「とりあえず労働者階級の怒りをぶちまける」ってな彼ららしく、歌詞も直球勝負、終始「あんたは」で言い募り、「自分で仕掛けた爆弾から逃げ、病院のベッドに横たわってもまだ、頭の上を飛ぶ銃弾の音が聞こえる。アルスター、勝者なしの戦い。あんたもほかの連中と同じように、死んだんだから」みたいな感じ。

「アンチ武装闘争」の曲ならSham69よりSLFのほうがずっといい曲があるが(しかも曲の良さも演奏の良さも声の良さも段違いだ)、SLFはこのリストにはAlternative Ulsterで入っている。「やることなくて退屈だ、アルスターを変化させよう」というこれもいい曲だけど、歌詞は何といってもWasted Lifeが私は好きだ。曲自体もいい(歌詞を知らずに聞いたら「青春パンク」とか思われるんだろうな、というくらいにキャッチー)。むろんSuspect Deviceもいいですけど。Don't be bitten twice!
Inflammable MaterialAn Alternative Ulster
Grab it and change it it's yours
Get an Alternative Ulster
Ignore the bores and their laws
Get an Alternative Ulster
Be an anti-security force
Alter your native Ulster
Alter your native land

-- Alternative Ulster

I could be a soldier
Go out there and fight to save this land
Be a people's soldier
Paramilitary gun in hand
I won't be a soldier
I won't take no orders from no-one
Stuff their fucking armies
Killing isn't my idea of fun
They wanna waste my life
They wanna waste my time
They wanna waste my life
And they've stolen it away

-- Wasted Life


ポップ音楽とベルファストの関係については
Belfast: the war against cliche
Friday January 24, 2003
http://arts.guardian.co.uk/fridayreview/story/0,12102,880592,00.html
「ステレオタイプ」とか「“私は無関心ではない(私は社会派)”というアピール」という点で、極めて興味深い記事。SLFのジェイク・バーンズへのインタビューも含まれている。なお、シンプル・マインズは、エルトン・ジョンなどと並んで、「ダメな例」として言及されている。

あとStylus Magの10曲には、あまりにガチなものが入っていない。シニード・オコーナーの名前は日本で「北アイルランド」関係の本を読んでいると目にするが、このリストにはそういったポップミュージシャンの名前がない。(なのになぜSham69かなあ。)

※この記事は

2006年12月24日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 15:02 | Comment(8) | TrackBack(0) | todays news from uk/northern ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
う〜ん興味深い。
The Undertonesの「It's going to happen 」が入ってるのはなぜ?!と思って
youtubeを見てみたら、「81年のハンストのことを歌っている」っていうコメントがあって納得しました。
そうだったんだ…。
マニックスのニッキーがソロになっていたことにもびっくりだったんですが。
そういえば、今は亡き(?)リッチーが「尊敬している人」としてボビー・サンズを挙げていたことを思い出しました。ニッキーも影響を受けていたんですね。でも、この曲が入るのならばblack47の「Bobby Sands MP」が入ってもよさそうなのに…
Posted by TR at 2006年12月26日 20:29
TRさん、コメントありがとうございます。

> 「81年のハンストのことを歌っている」っていうコメントがあって納得しました。
http://www.youtube.com/watch?v=Owo8L3ykvtc
ですね。

http://www.thenation.com/doc/20060522/ohearn
によると、ボビー・サンズが亡くなった直後のTOTPでアンダートーンズはこの曲を演奏したそうです。

YouTubeにはThe Undertonesの今月のベルファストでのライヴも。
http://www.youtube.com/watch?v=LEF9DcuQsSw
http://www.youtube.com/watch?v=s90oVOtOrLA

あと、「デリーのパンク」っていうサイトがあります。すごいおもしろいんですけど、けっこう分量あるのでまだ読めてません。ぜひどうぞ。
http://www.punkinderry.bravepages.com/

> でも、この曲が入るのならばblack47の「Bobby Sands MP」が入ってもよさそうなのに…

たぶん、Black 47はあまりにも直接的ということではないかと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=Z8D_uN-73S0
http://www.lyricsdownload.com/47-black-bobby-sands-mp-lyrics.html
※YouTubeのコメ欄が激論になってますが、これがボビー・サンズについては典型的な反応のひとつかと。

米東海岸だとHouse of PainのJump Aroundのビデオもかなり直接的でしたね。(リリックは別としても。)
http://www.youtube.com/watch?v=U6W4x97xlgw
http://www.lyricsstyle.com/h/houseofpain/jumparound.html
Posted by nofrills at 2006年12月27日 01:54
nofrills様、レスありがとうございます。
「The Nation」の記事は大変興味深く読ませていただきました。特に『最後のハンガーストライカー』のくだりは、以前観た映画「Some Mother's Son」そのまんまだったので軽く衝撃を受けました。
でもやけにIRAシンパっぽい書き方するなぁと思ったら、Denis O'Hearnではないですか!どうりで。彼の「Nothing But an Unfinished Song」、読みましたよ。ボビー・サンズの妹さんにはかなり手厳しく非難されたようなのですが、『the Troubles入門書』としてはとても参考になりました。もし未読でしたら是非。

あ、「デリーのパンク」サイトには感動しました!こんなサイトがあったとは。またじっくり読みたいと思います。ありがとうございました。
Posted by TR at 2006年12月28日 01:14
>TRさん
こんにちは。Some Mother's Sonご覧になられたんですね。日本で出てないばかりか、DVDにもなってないし、VHSも中古でしか手に入らないのですが、私もUS版のVHSをオンラインで買って見ました。2秒かそれくらいのカットで、看守たちが「人間」として描写されていたのがすごく印象に残ってます。

今年の3月に、ガーディアンが1981年のハンストの生き残りを取材した長文記事を出してます。読み応えあります。
http://www.guardian.co.uk/Northern_Ireland/Story/0,,1721871,00.html

Nothing But an Unfinished Songは残念ながらまだ買っていません。昨年買った本(パット・フィヌケン殺害事件についてのものなど)を読み終えてから、と思っていたら、今年も終わってしまう。。。amazon.co.jp見てみたら取り寄せに数週間かかるそうなので、とりあえず注文だけしておこうかな、と思います。

Denis O'Hearnの記事はZnetにもあがっています。Nationのとは別の記事です。ジャマイカに行ったときにタクシー運転手にどこから来たのか訊かれて「アイルランド」と答えたら、「アイルランドかぁ。ボビー・サンズだね。IRAは自由のために戦っている」と返ってきたとか。

Bobby Sands and Britain's Own Gitmo, 25 Years On
http://www.zmag.org/content/showarticle.cfm?ItemID=9830
Posted by nofrills at 2006年12月28日 22:31
nofrillsさん、
度々すみません。どうしてもお礼を言いたかったので。

なんとも読み応えのある記事をありがとうございました。「Nothing But…」でも
サンズがハンストに入ってからの章はかなり読むのがつらくなってしまったのですが、この記事も負けてませんね。一行読むたびにため息が洩れてしまうという具合でした。身体的苦痛もさることながら、精神的な部分の描写があまりにもリアルで…
死を待ちわびる時点にまで達した精神状態や死期を確信した瞬間の心理描写なんかは、いろんな意味で貴重な資料ですよね。

母親によって命を救われたハンガーストライカーたちがその後どんな人生を送っているかを知った上で、改めて映画「Some Mother's Son」を観てみたくなりました…って、ええぇ〜?!日本じゃ鑑賞不可能なんですか??いや確かに日本ではウケない映画だろうとは思いますけど…ヘレン・ミレンが素晴らしいだけにもったいない!
実際この映画がきっかけで北アイルランド紛争に興味を持つようになった人もいるかと思うと(私ですが)日本未公開というのはちょっと残念です。

nofrillsさんがおっしゃるシーン、もしかしてサンズがhospital wingに運ばれるところでしょうか??もうかなり昔に観た映画なのではっきり覚えていないのですが、かなり気になります。う〜んもう一回観たいよ〜。アマゾンあたりなら入手可能ですかね。
Posted by TR at 2006年12月30日 02:43
>TRさん
どうもです。「コメント連投」を気になさっているのなら、どうぞお気になさらず〜。

ガーディアンの記事は、今年読んだあらゆる記事の中で最も強烈な記事のひとつでした。今年はイラクのはもちろん、レバノンのブログなどいくつも読んでいてつらくなるようなものを読んで、一部は言語変換をしてきたのですが、これは何というか、別格でした。25年という時間を経て今どうか、という話ですし・・・この人たちの何人かの発言はナショナリスト系のサイトなどで時々見ていたので。

Some Mother's Sonは、日本では見られません。『ホテル・ルワンダ』のテリー・ジョージの作品(1996年)ですが、この監督の作品はさかのぼってリリースしよう、という動きも伝えられてないですね。ほんとにこの映画のヘレン・ミレンはすごくいいからもったいないですよねー。

英語圏でもDVDにはなってなくて、VHSだけなのですが(しかもUKでのリリースは今はなし)、amazon.comではusedで出てます。
http://uk.imdb.com/title/tt0117690/
http://jpan.jp/?somemothersson
※2行目のがamazon.comのリンク。長いので短縮しました。

あ、今見たら、amazon.co.jpでも出品している人はいます。でもUSで買う方が安いと思う。。。
http://www.amazon.co.jp/Some-Mothers-Son-Helen-Mirren/dp/0790731142

私はamazonではなく、別の通販サイトで買ったのですが(amazon.comは送料が高くて)、プレミアのついていない普通のusedの値段で買えました。1年くらい前です。

> nofrillsさんがおっしゃるシーン、もしかしてサンズがhospital wingに運ばれるところでしょうか??

もっと前の方で、ジェラルドとその友人が刑務所に入れられるところで、彼らと同年代のscrewが2人、せりふもないのですが、一瞬目線を泳がせるようにして、一種の「同情」の表情になるところです。screwに(というか「英国側」に)ああいう表情をさせた「アイルランドの抵抗」の文脈の映画は初めてで(って、そんなにたくさん見たわけではないのですが)、強烈に覚えています。
Posted by nofrills at 2006年12月30日 09:01
nofrillsさん、
ビデオ情報ありがとうございました。

そうですか、確かジェラルドとフランキーがprison uniformを拒否するシーンでしたよね?う〜ん、目の動きまで見ていなかった…!ますます気になってきました。これはビデオを購入するしかないですね。
さっそく教えていただいたamazon.comから注文しようと思います。ありがとうございました! 
Posted by TR at 2006年12月31日 00:10
>TRさん
> 確かジェラルドとフランキーがprison uniformを拒否するシーンでしたよね?
そうそう、そこらへんです。監督のテリー・ジョージはINLAメンバーとして投獄を経験しているので、リパブリカンへの看守の態度はファーストハンドで知っているはず。そういう人の提示なので、過大に見ているかもしれませんが。。。

amazonから早く届くといいですね! よいお年を。
Posted by nofrills at 2006年12月31日 18:31

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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