まず、Kindleストアを「北アイルランド」で検索してみたが、笑っちゃうほどのスカ。何もない。当面は、頑張って紙の本でどうぞ。
続いて英語の書籍。Kindleストアを "Northern Ireland" で検索すると、けっこうある。あるのだが、「紛争」期のルポ系の書籍はそもそも電子化されていないものも多いし、検索結果にはがっつりした研究書からアマチュアのセルフ出版まで混在していてよくわからない。時間をかけてじっくり見ていけばよいのだろう。たぶん、(英国ではなく)米国で出版されてる本は、電子化されていることが多い、みたいなざっくりしたことは言えると思う。
では、とりあえず定番ということで、Peter TaylorのTalking to Terrorists: A Personal Journey from the IRA to Al Qaeda……とリンクしていることから皆様にも一目瞭然の通り、Amazon.jpのKindleストアにあるのだが、Peter Taylorで検索しても(「Peter何とか」さんと「何とかTaylor」さんの共著ばっかりずらずらと表示されて)なかなか見つからなかった。「キーワードを追加」に "IRA" を入れれば一発だが、元々、Peter Taylorの昔の書籍が電子化されていないかどうかを確認したかったので、微妙な気持ちである。(これは普通に紙の本を検索するのでも同じ。)
ともあれ、Talking to Terroristsは、既に出ている紙の本(ハードカバーとペーパーバック)とKindleの3種類の形態で読むことができるようになっている、ということだ。それぞれの価格は下記の通り。
Amazon.co.jp: Talking to Terrorists: A Personal Journey from the IRA to Al Qaeda eBook: Peter Taylor: Kindleストア via kwout
ハードカバーが高いのは別として、ペーパーバックで1,331円(その横に表示されている500円台の価格は、マーケット・プレイスのもの。以下同)、Kindleで1,014円*。(* なお、この価格については少し興味深い事実が確認できた。詳細はエントリ末尾に追記するが、アメリカのamazonより日本のamazonのほうがKindle版の価格が *安い* という事例だ。)
Kindle版の価格は、紙の本の価格の75%くらいということになり、このくらいなら保管場所をとらないKindleにしたほうがいいかな、という気にもなるだろう。
ただし、Kindleで「買える」のは「データを手元に置いて、いつでも好きなときに読む権利」であり、データそのものではないので、Amazon側の判断でデータにアクセスできなくなる(読めなくなる)ことがある。これは英語圏でもよく問題になっている。詳細はWiredの下記記事をご参照のほど。
Kindleで購入した電子書籍は、実はユーザーのものではない
http://wired.jp/2012/10/25/amazons-remote-wipe-of-customers-kindle-highlights-perils-of-drm/
紙の本ではそういうことは絶対に発生しないので、1,000円(Kindle)か1,300円(紙)かの選択なら、1,300円の紙を買う、という判断もあるだろう。ただ、価格が10,000円(Kindle)か13,000円(紙)かとなるとKindleだよね。
Taylor本を紙で買うにはこちらから:
Talking to Terrorists: A Personal Journey from the IRA to Al Qaeda Peter Taylor HarperCollins Publishers 2011-09-01 by G-Tools |
というわけで、amazon.jpでは紙の本とKindleとの価格差ってこんなもんなのかなあ。。。amazon.comでは圧倒的な価格差がついていて、それで電子書籍の普及と浸透が進んだような話を見聞していたのだが……と少し、適当に見てみる。
上のテイラー本と同じようなタイトルで、全然別の本(90年代にアメリカ人が北アイルランドの紛争の当事者たちを訪ねて回った本らしい)、IRA Man: Talking with the Rebels (1997/10/28) だと、紙はペーパーバックがなくてハードカバーだけで、2,800円(紙)か、2,510円(Kindle)かだ。微妙な選択。。。
紙で買うにはこちらから:
Ira Man: Talking With the Rebels Douglass McFerran Praeger Pub 1997-10-30 by G-Tools |
一方、With the IRA in the Fight for Freedom: 1919 to the Truce (Fighting Stories)は、Kindleが784円、ペーパーバックが2,830円と大きな価格差がある。
Amazon.co.jp: With the IRA in the Fight for Freedom: 1919 to the Truce (Fighting Stories) eBook: The Kerryman Newspaper: Kindleストア via kwout
これは1919年(独立戦争)のときのIRA(「北アイルランド紛争」のIRAとは別の組織)の記録で、その古さがKindle版の価格の低さに何らかの形で関係しているのかもしれないが、よくわからない。これだけの価格差があれば、よほどの理由がなければ紙の本は選択しないだろう。
With the Ira in the Fight for Freedom: 1919 to the Truce (Fighting Stories) Gabriel Doherty Mercier Pr Ltd 2010-12-15 by G-Tools |
それから、1988年ミルタウン墓地襲撃事件の実行犯(有罪)で、2006年11月にはストーモントの議事堂に花火(?)入りのリュック背負って突撃して取り押さえられてetc etcで現在は再度獄中にあるマイケル・ストーン(UDAというかUFFのファイター)の手記。内容はもうdiscreditされている部分が多いのだけど、「人はどのような状況でなぜ『テロリスト』になるのか」について、当事者の証言ということで興味深い本ではあるでしょう。この本の売り上げがどこに行くのか(印税がどうなるのか)がちょっと気になるけど、Kindleではこの値段なら読んでみてもいいんじゃない、というお値段だ。
Kindleで571円、紙の本(ペーパーバック)で1,153円。Kindleでは紙の半額以下、十分に「そそる」価格差だ。
None Shall Divide Us Michael Stone Blake Pub 2003-05 by G-Tools |
Kindleが紙の半額よりもっと安くなってるのが、最近映画化された(ただし日本未公開)ことでも話題となった、警察のスパイとしてIRAに潜入したマーティン・マガートランドの手記、Fifty Dead Men Walking(日本語訳もあるけど、もうずっと長く「古書でしか手に入らない本」のまま。そういう本が電子書籍化されるといいんですけどね……)
ペーパーバックが1,179円。Kindleだと356円。ここまで価格差があると、選択の余地なし、という感じ。
紙で買うならこちら:
Fifty Dead Men Walking Martin McGartland John Blake Publishing 2010-12-07 by G-Tools |
それから、紙ではこの本:
Rebel Hearts: Journeys Within the Ira's Soul Kevin Toolis Griffin 1997-05 by G-Tools |
これは、1996年の本で「北アイルランド紛争」期のルポなのだが、Kindleストアでは "(2011/12/12)" と表示されている(3版とあるのだけど、中身がどう違うんだろう……。これはamazonじゃなくて版元で確認すべきことか)。
価格はペーパーバックが1,140円で、Kindleが872円。
最後に、これもやはり定番で、トニー・ブレアの腹心で北アイルランド和平の主要なアーキテクト、ジョナサン・パウエルの手記、Great Hatred, Little Room: Making Peace in Northern Ireland。これ、出たときはハードカバーだけで日本では4000円超えてたんで、そのときにKindleのこの価格だったら圧倒的!という印象だったかも、という気はする。(今後そういうことはまだあるだろう。)
Amazon.co.jp: Great Hatred, Little Room: Making Peace in Northern Ireland eBook: Jonathan Powell: Kindleストア via kwout
Kindleでは1,268円、ペーパーバックでは1,436円。大した価格差ではない。しかもこれ、表紙がUS版だ。版元も "出版社: Vintage Digital (2010/1/26)" だからUS版。(綴りとか用語とか書き換えてあるのだろうから、US版はちょっと読みづらいと思う……。)
……というところで、個人的にはここまで見てきた範囲では、「洋書を買う」に際して、このジャンルで今の段階では、「どうしてもKindleで!」という動機づけはかなり弱いかな、という印象。
追記:
上述したように、Peter Taylor, "Talking to Terrorists" は、amazon.co.jpのKindleで1,014円と価格がつけられている。
この本はHarperCollins(ロンドン)から出ている本で、amazon.co.uk (UKです) でのKindle版の価格設定は£6.99となっている。今のレートで896.58円(約900円)。
一方で、アメリカのamazon.comでは(下記はKwoutのキャプチャ。Kwoutはアメリカにサーバがあるようで、キャプチャをとると米国からの接続で見る画面がキャプチャされる):
Talking to Terrorists: A Personal Journey from the IRA to Al Qaeda: Peter Taylor: 9780007325535: Amazon.com: Books via kwout
この$14.99という価格は、今日のレートで換算して、1,194円(レートなど日々変動するので、こんなのは参考程度にしかならないのだが)。
http://www.likeforex.com/currency-converter/us-dollar-usd_jpy-japanese-yen.htm/14.99
一方、amazon.comの商品ページに日本からアクセスすると(東京で、私が普通にネット接続してブラウザで見ている画面のキャプチャ):
$12.78 となっている。アメリカからの接続で同じページを見た場合($14.99)よりも、$2.21安い。
どうしてこうなっているのかは正確にはわからないけれども、とりあえず、「こういう実例」があるということで。(つまり「すべての洋書」が「値上げされた」わけではない、ということで。)
あと、面白いことにこの本、amazon.co.ukで見ると、Kindleのほうがペーパーバックより高い。Kindleが£6.99で、ペーパーバックは£6.69. 街中の書店ではペーパーバックはもっと安いだろう。
See also:
Kindleストア洋書価格問題、確認&まとめ(暫定)
http://matome.naver.jp/odai/2135123649496301301
あと、Kindleでアメリカでは買えない英国の本というと、こんなのがある。
The Complete Novels of George Orwell: Animal Farm,Burmese Days,A Clergyman's Daughter,Coming Up for Air,Keep the Aspidistra Flying,Nineteen Eighty-Four (Penguin Modern Classics): George Orwell: Amazon.com: Kindle Store via kwout
この商品ページ、日本からアクセスすると、Kindle Edition $40 で表示されると思います。
http://www.amazon.com/Complete-Novels-George-Orwell-ebook/dp/B004LLIHCC
※この記事は
2012年10月27日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。