2007年1月2日からのロンドンの公共交通機関の料金です。PDFファイルです。
http://www.tfl.gov.uk/tfl/fares-tickets/2007/downloads/TfL-Fares-Jan-2007.pdf
【図版】PDFファイルから最も重要なところをキャプチャ。
つまり、地下鉄の初乗り(Zone 1を含む場合)は、Oysterを使えば現状のままで£1.50、現金で切符を買うと£4.00です。
£4.00を日本円に換算してみましょう・・・四捨五入して「920円」です。交換手数料を考えると「930円」を超えるかも。
予言しておくと、このペースでいくと2008年には1000円を突破します。(ほんと、ロンドンが単独で、世界の地下鉄運賃の平均を引き上げてくれていそうな勢いですね。)
なお、Zone 1を含まない場合の現金での初乗りは、£3(2006年と同じ)。Zone 1を含もうと含むまいと、オイスターを使っている人は据え置きです。
ただし定期(Travelcard)は値上げされます。Zone 1-2の7日間のトラヴェルカードが、£22.20から£23.20に、Zone 1-3は£26.00から£27.40に、という具合。Zone 1-3の1ヶ月定期はついに£100を突破して£105.30になりますね。。。換算してみるとおよそ24,000円! Zone 3に住むと、1ヶ月の交通費が、どんなに安くても24,000円!(学割がない大人の場合。)
10代の人の料金は無料化されたり値下げされたりするそうですが、20歳以上の人はオイスター利用であっても、基本的に、負担が増えるということですね。
なお、2006年の料金と比較したい人は、下記URLでPDFをDLして手元に保存しておきましょう(2006年のはそのうちに削除されるはず)。
http://www.tfl.gov.uk/tfl/downloads/pdf/fares-tickets/fares-2006-leaflet.pdf
というわけで、昨年発表された「2006年の運賃」で、「初乗り」が£3になったときに私は「想定外」と書いたのですが、今回の「初乗り£4」は想定内でした。(2005年が£2、2006年が£3なら、2007年は£4です。問題は、£1が低めに見積もって換算しても200円だということですが。まったく、世界でどのくらい多くの人が1日に1ドル以下で生活していると・・・。)
TfLによると、新運賃は「バスをよりスピードアップし、地下鉄駅の行列を軽減するため、利用者に現金からオイスターへの切り替えを促したい」とのことですが(Tickets and Oyster参照)、それは極めて英国的なトークというもので、本音は「何が何でも皆さんにオイスターを使っていただきたい」ということです。
オイスターは利用履歴の追跡が紙の切符よりも容易で、まとまった量のデータが蓄積されており(本当はデータは3ヶ月で削除することになっているはずだが、守られていないという報道もあったような気が<うろ覚え)、すでに犯罪捜査でデータが用いられていますが、それだけではなく、多方面での「活用」が見込まれています。東京のSuicaがコンビニなどで利用できるのと同様に、お財布代わりに利用できるようにする、など(e-Purseっていうらしい)もあるのですが、TfLの路線計画を立てるときに人の移動のデータを得るとか、あとマーケティングに活用するとか。
http://rfid.idtechex.com/knowledgebase/en/casestudy.asp?freefromsection=122
http://www.currybet.net/cbet_archives/0269.php
英国の人なら「オーウェリアン(Orwellian)だ」とか「ビッグ・ブラザーが見ている(Big Brother is watching you)」とかいう反応をするのが正統派で、実際そういう反応も見られたし、今でも見られるのですが、「オイスターを使わないと信じられないほど高い」という現実が作られてしまったから、ビッグ・ブラザーだろうが何だろうが使わざるを得ない。で、実際使ってみても実害はない(it doesn't bother meという感じで)。それどころか、案外便利だったりする。
ちょっと「陰謀論」っぽい言い方をすると、当局は、あちこちから不満の声は出るけれども、不満を言う機会と場さえ潰さなければ、結局人々は「プラクティカル」な選択をする、ということをよく知っている。
たぶん、「本当のことを言っちゃうと、本当にオーウェル的社会の下地作りなんだよ」ということではないかと思うのですが、どうでしょう?
http://commentisfree.guardian.co.uk/frank_fisher/2006/12/chipping_away_at_freedom.html
いずれにせよ、おそろしいのは、「これを使わないとべらぼうに高いよ」という事実を作ってしまい、事実上、切り替えを強制している(「使わない自由」を極めて悪質な形で否定している)ということです。しかも、2006年に一気に「初乗り£3」に引き上げておいて、まだ足らずに翌年の上げ幅が£1。
これでオイスターの普及率が8割を超えるなどした日には、次はオイスター利用者の料金が、以前のように「1年に10ペンス」の幅で上がるでしょう。もちろん「設備の老朽化にともない、修理費用が必要」という理由で。
※この記事は
2006年12月21日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。