「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2012年10月23日

フィデル・カストロは何度でも死……にそうになっていると言われる。

リアルではお茶とケーキでオホホなあてくしのブログがめっぽう物騒なんですけど、何度でも死ぬハミス・カダフィの次は、何度でも死に瀕しているということにされるあの方について……。

2011年9月のあてくしのツイート。


ツイート末尾のURLは:
Rumours of Fidel Castro's death dispelled by interview
Reuters in Havana
The Guardian, Friday 9 September 2011 08.43 BST
http://www.guardian.co.uk/world/2011/sep/09/rumours-fidel-castro-death-dispelled

これとほぼまったく同じことが、2012年にも起きたんですのよ。もうほとんど「毎年恒例」ですわね!

私が気づいたのはこのころ。(日本時間で19日から20日に日付が変わったころ。)




すごいっしょ。ロイター(AntDeRosa)からTMZまで、Huffington Postからペレス・ヒルトンまで。ニュースなんだか「ゴシップ」なんだかわかりゃしない。

この「騒ぎ」の元になったのが、マイアミ・ヘラルドのこれ。



この記事、リード文で:
A Naples doctor said former Cuban leader Fidel Castro is near ‘a neurovegetative state’ after suffering a stroke.

……と言っているのですが、本文では:
Former Cuban leader Fidel Castro suffered a cerebral hemorrhage and his state of health is so precarious that he has trouble feeding, speaking and recognizing people, said a Venezuelan physician who assured El Nuevo Herald that he has access to firsthand sources and information.

……という具合で、嚥下や発話に障害があり、人を見ても認識できない状態にあるとしても、それだけでは「瀕死」とは思えないし、情報源の曖昧さというかうさんくささといい、信じるに値しないと思うんですけど、これがなぜか、ペレス・ヒルトンまでツイートするような「みんなが知るべきニュース」としてウェブを駆け巡り、あてくしの元にまで……。

結局このマイアミ・ヘラルドでの「事情を知る医師」の話については、キューバ政府と家族らが否定声明を出すということになったのですが:


このNYT記事より:
Like a tropical storm, rumors about the failing health of Fidel Castro strengthened, swirled, dissipated and left everyone guessing again on Friday, as a doctor in Florida − and a Twitter account falsely linked to the Cuban foreign minister − claimed that Cuba’s retired leader was on his deathbed or dead.
http://www.nytimes.com/2012/10/20/world/americas/another-day-another-claim-that-castro-is-dead.html?smid=tw-nytimesworld&seid=auto&_r=0


ま た あ い つ が 出 て た の か !
→「あいつ」については2012年03月24日のエントリなどご参照のほど。

It was at least the fifth time (or was it 50th?) that Mr. Castro had been sent to the grave by uncorroborated accounts since he left government after a mysterious ailment in 2006.

http://www.nytimes.com/2012/10/20/world/americas/another-day-another-claim-that-castro-is-dead.html?smid=tw-nytimesworld&seid=auto&_r=0

あらまあ、NYTさんも冗談がお好きねぇ> (or was it 50th?)

「2006年に国家のトップの座を退いてから15回(あるいは50回)目」(NYT記事での表現) となる「死亡説」、もしくは「死にそうになってるという報道」の最新のものである、マイアミ・ヘラルドでの「医師の話」は明確に否定されて、こうなってます。




さらに:




で、マイアミ・ヘラルドの「医師の話」の記事が出る数日前、まさに「キューバ危機から50年」の真っただ中にこんなこともあったそうです。




このときのメディアの報道の一部。


この「レター」では鎮火しなかったのでしょう、その上にさらにマイアミ・ヘラルドの(あまりにもうさんくさいので信用しがたいような)記事が出て、今日(22日)の「生存証明」が出たのは「だから死んでないし瀕死でもないって言ってるでしょ」という最後の念押し的なものだと思われます:



この経緯をまとめてくれているのが、ガーディアンのジョナサン・ワッツ記者の南米からの報告:



そういえばワッツ記者は昨年、「えざわたみ」さん死亡説が流れたときは、中国でそれを見ていらしたんでした。行くところ行くところに要人死亡説が。(^^;)

Fidel Castro attacks 'imperialist media' for reporting rumours about his health

Jonathan Watts, Latin America correspondent
guardian.co.uk, Monday 22 October 2012 15.37 BST
http://www.guardian.co.uk/world/2012/oct/22/fidel-castro-media-rumours-health

これがもう、読みながら「うさんくせぇ」と言わざるを得ない爆笑記事。NYTもなかなかの爆笑記事でしたが、こちらが上です。

いわく、(瀕死説が出たあとの)先週金曜日のキューバ共産党機関紙を読んでいるフィデル・カストロ、という写真を添えて、「卒中を起こしたなどという報道は『デタラメ nonsense』である。私は頭痛すら起こしていない」と、あてこすりとして「まさに死の苦しみのさなかにあるフィデル・カストロ」というタイトルで高らかに宣言。

(頭痛くらい起こしててもいいと思うんです。「あまり何度も墓場に送られるので、頭が痛いよ、ガハハ」って。)

この週の一連の「死亡説」もしくは「瀕死説」、「危篤説」は、10月7日に行われたベネズエラの大統領選挙で、フィデルのマブダチであるウーゴ・チャベスががっつり勝ったにも関わらず、公的には祝福のメッセージがなかったことから発したようです。また、フィデル・カストロが最後に公の場に姿を見せたのはこの3月、教皇ベネディクト16世のキューバ訪問のとき。発言は、6月に党機関紙の連載コラムを書いたっきり。

(これは、「何かあったから死亡説」というより「何もないから死亡説」ですね。「えざわたみ」さんの死亡説のときと状況が似ています。)

ガーディアンのワッツさんの記事はこの先が可笑しいんです。
Since he handed power to his brother, Raúl, in 2006 citing health reasons, there have been repeated false alarms about Fidel Castro's health. But the speculation hit a new level of intensity last week thanks to social networks, the Cuban diaspora and a doctor who claimed to have inside information.

José Marquina reportedly lives in Spain, practises in Florida and is neither a specialist in oncology nor neurology, but was widely quoted as saying Castro was in a neuro-vegetative state. "He has suffered an embolic stroke and recognises absolutely no one," he told reporters last week.

Marquina – who says he has close connections inside the Venezuelan medical community – gained a huge online following earlier in the year for reports that Chávez's cancer had spread to his liver, which would make it difficult for him to campaign. His comments on both leaders have been carried by the Miami Herald and Spain's rightwing ABC newspaper among others.

つまり、「健康状態」を理由に2006年に引退してから何度も「死亡説」を流されているフィデル・カストロだが、今回はSNSや在外キューバ人(亡命した人たち)や、内部情報を持っていると主張する医師のおかげで、その「噂」の広まり方がハンパなかった、と。

(マイアミ・ヘラルドが「医師」のインタビューを掲載する前に既に「死亡・危篤説」があったことは、上で見たとおりです。)

この「医師」、ホセ・マルキナさんは、報道によるとスペインに住居があり、仕事はフロリダでおこなっていて、専門分野は違うんだけど、カストロの容態について断言している、と。

(そのうちに「世界に先駆けてiPS細胞の臨床応用に成功しました」とか言い出さないでしょうね。)

またこの「医師」、本人曰く、「私はベネズエラの医学界に知り合いがたくさんいる」とかで、チャベスのがんは肝臓に転移していて選挙は厳しいだろうと発言して、ネットで話題となった人物。チャベスについての発言も、カストロと同じように、マイアミ・ヘラルドとスペインの右派ABC新聞などで記事化された……。って、あまりにもわかりやすくうさんくせえwwwww

いずれにせよ、この週の「死亡説」は、家族やキューバ政府が否定し、キューバ国営メディアが「フィデル・カストロから医学校設立50周年のお祝いのメッセージ」を掲載し、ベネズエラの元副大統領が「フィデル・カストロと5時間会談した。大変にお元気だった」と述べて写真を公開し、その会談の場所となったホテル・ナシオナルの従業員がフィデルは元気だったと述べるなどしても、消えなかったとのこと。

なぜかというと、日曜日の地方選挙で投票する姿が報じられなかったから。これについては「導入されたばかりの在宅投票制度を利用して投票した」と説明があったものの、ホテル・ナシオナルで外国の政治家と会談できるんなら投票所に行けばいいんじゃね?というツッコミが入るなどして、多くの人が「やはり死んでいるのでは」と思ったようです。

が、日付のわかる新聞を持った本人の写真と意気軒昂な記事が出たことでようやく噂も終息。

ガーディアンの記事には、この「意気軒昂な記事」の内容も紹介されてます。「国営メディアしかない」と言ってもよいような国を作った当人が「多くの人がマスメディアに騙されている」と述べるなど、いつも通りですね。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/oct/22/fidel-castro-media-rumours-health

なお、「死んでない」どころか「頭痛がどんなもんだったかも覚えていない」と言いきるほど元気な(いや、それは単にもの覚えが……というヤボなつっこみはしないように)フィデルさんの写真を撮影したのは、息子さんだそうです。今回は「アディダスのジャージ」などではなく赤いチェックのシャツに麦わら帽子。杖はついていますが自分の脚で立っています。
http://t.co/2stXTo5x
http://twitpic.com/b6d4gx
http://twitpic.com/b6d4h7
http://twitpic.com/b6d4he

その前にでた写真(ベネズエラの元VPとの会談)では、どう見ても「元気」そうな感じはしないな、という感想を持つ人が多いのではと思いますが。
http://t.co/zrIhmHJD

ところで、フィデル(1926年生まれ)とほぼ同じ年齢のあの方(1925年生まれ)はどうしておられるのでしょう、と思ったあなたは下記クリック。
http://www.isthatcherdeadyet.co.uk/

※この記事は

2012年10月23日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 07:00 | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼















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