「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2006年12月09日

演奏家の権利の延長論議@UK

The Financial Timesに、Fair Play for Musiciansという全面広告が出た。

Musicians sign copyright advert
Last Updated: Thursday, 7 December 2006, 12:58 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/entertainment/6216152.stm

ポール・マッカートニー、クリフ・リチャード、U2、ピーター・ゲイブリエルといった超有名ミュージシャン&スーパースターから、名前をほとんど知られていないセッション・ミュージシャンまで、4500人以上がこの全面広告に署名している。

訴えの内容は、現在「50年」である特定の楽曲の演奏家の権利の期間を、「95年」に延長してほしい、というもの。

一瞬「へっ?」と思うような長さだが、「延長に賛成」な立場で異様にわかりやすい記事がタブロイドSに出ているので、これを読んでみると話が見えるかもしれない。

Why the copyright law is wrong
http://www.thesun.co.uk/article/0,,2-2006560780,00.html

タブロイドSの記事は読み流せばいいのだが(「組織犯罪」の恐怖をあおるばかりで、根本的なところでロジックがおかしい。コメントでツッコミ入れてる人がいるけれど)、要するに、これは「強欲なスーパースターがもっともっと稼ぎたい、子孫のために財産を残しておきたい」から訴えているわけではない。

曲を書いた人には「作者」としての権利が生じる。現行の英国の法律では、その保護期間は「死ぬまで+70年」だ。だから1980年に亡くなった作曲家の作品については、2050年まで保護期間がある。

しかし演奏しているミュージシャンの権利は、「演奏してから50年」である。つまり、1970年に録音された楽曲で、作曲には関わっておらず、バックでキーボードを弾いている人の権利は、2020年に切れる。1970年の時点でこの人が20歳だったとすると、権利が切れるときに70歳、十分に存命中。ゆえに「期間延長を求める」ということになっている。

タブロイドSの記事には、「ほらほら、こんな曲が権利切れちゃうんですよ。そしたら誰でも勝手に複製できちゃうから、マフィアの資金になっちゃいます」調で、下記の楽曲が挙げられている。
THESE are just some recordings nearing the end of copyright and the date that will happen:
CLIFF RICHARD, Living Doll, 2009
LONNIE DONEGAN, My Old Man's A Dustman, 2010
THE BEATLES, Love Me Do, 2012
GERRY AND THE PACEMAKERS, You'll Never Walk Alone, 2013
KINKS, You Really Got Me Going, 2014
ROLLING STONES, (I Can't Get No) Satisfaction, 2015
TROGGS, Wild Thing, 2016

でもさー、作曲者 (author) の権利ってのは演奏者 (performer) の権利とは別だから、この表はおかしいような気がするんだけど、
http://news.bbc.co.uk/2/hi/entertainment/4918214.stm
によると
What happens at the end of the specified period?

A record company loses the exclusive rights to sell and distribute a recording. It is effectively available to anyone who wishes to set up a record label and reissue it. For example, the Beatles' first LP, Please Please Me, was released in 1963. Under the present 50-year rule, the album would cease to be covered in 2013, meaning that it could be re-released freely by any organisation.

EMI, which currently owns the rights to the group's extensive catalogue, would be powerless to stop this, and it would receive none of the royalties from any reissue. The artist loses the right to earn any further income, unless they wrote the song.

んー、これの法的なバックグラウンドがよくわからない。。。あとで。

で、「95年」という数字の根拠は、タブロイドSいわく、「アメリカがそうだから」らしい。米国では1998年の著作権法で「演奏家の権利は95年」ということになった。

爆笑したのが、「アメリカでは95年、わが国では50年。これではわが国のビジネスが不利だ。だから95年に延長を」という変な論理。で、「なるほど、確かに基準から外れている。しかし基準から外れているのはアメリカだ。イギリスではない」というツッコミが、コメントでついている。

いずれにせよ、今時代が求めているのはKLFだと私は思う。Kopyright Liberation Frontという意味で。(本人たちはそれの略語だということは肯定していないと思うが。)
http://en.wikipedia.org/wiki/The_KLF

(^^)



著作権がらみでもう1つ。

プロコルハルムのオルガニストだった人が、A Whiter Shade of Paleのイントロのオルガン・ソロを作曲したのは自分だとして裁判に訴えている。作曲者クレジットに彼の名前がないことが問題。訴え自体は2005年に起こされているようなのだが、2006年11月に法廷で審理が行なわれている。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/entertainment/6147622.stm

http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/magazine/6146618.stm
は、映画『コミットメンツ』の引用をそえて、事態を解説している。末尾の読者コメントも含めて、週末の読み物にはけっこういいかもしれない。

※この記事は

2006年12月09日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 00:38 | Comment(1) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
プロコル・ハルムの裁判、オルガニストの勝訴です。

Organist wins Procol Harum battle
Last Updated: Wednesday, 20 December 2006, 11:50 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/entertainment/6196413.stm

Fisher played organ on the 1967 hit and argued he wrote the distinctive organ melody. Mr Justice Blackburne ruled he was entitled to 40% of the copyright.

Fisher had wanted half but the court ruled lead singer Gary Brooker's contribution was more substantial.

あの曲は、英語圏以外でも大ヒットしてて、例えば私は歌詞とかヴォーカルじゃなくてあのイントロのオルガンで覚えています。

ほんで、あの曲を思い出すと、Withnailを見たくなる。(笑)
Posted by nofrills at 2006年12月20日 21:16

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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