「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2012年08月21日

ベルファストのジャーナリストに、UDA名義で脅迫があったが、UDAのリーダーシップは否認。つまり……?

ベルファストを拠点とするあるジャーナリストが、ロイヤリスト武装組織UDAから「殺す」という脅迫を受けている、という報道があった。

Belfast-based journalist 'in UDA death threat'
20 August 2012 Last updated at 12:59 GMT
http://www.bbc.co.uk/news/uk-northern-ireland-19315735

UDA 'in death threat to journalist'
Monday, 20 August 2012
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/local-national/northern-ireland/uda-in-death-threat-to-journalist-16199806.html

BBC記事を参照する。月曜日、NUJ (the National Union of Journalists: ジャーナリスト労組) が、組合員の一人でベルファストを拠点とするジャーナリストが、UDAの脅迫を受けているということを公表した。本人の名前は伏せられている。NUJでは、UDAに対する影響力のある人(=政治家)に、脅迫の撤回を働きかけるよう呼びかけている。

記事によると、このジャーナリストの名前と携帯電話の番号が市内いくつかの地域で落書きされている。

NUJのアイルランドの事務局長であるシェイマス・ドゥーリーは、脅迫は土曜日に電話で行われた、と語る。対象となっているジャーナリストが脅迫を受けるのはこれが初めてではない。ドゥーリーは、そのジャーナリストがUDAについて書いているということが脅迫の理由ではないかと考えている。

この報を受けて、UUPのマイク・ネスビット党首(元々テレビ記者だった)は、脅迫などということは「まったく受け入れがたいことである」と厳しく非難、UDAのリーダーシップ(指導部)に対し、この脅迫が組織の指示あって行われたものかどうか、明言を求め、もしそうである場合は即時撤回せよと求めた。

「自由な報道は民主主義の礎であり、ジャーナリストへの脅迫などというものは受け入れられるものではない。もし報道の内容が不正確だったり、誤誘導的だったり、歪曲されていたりした場合には、修正を求めるべきで、そのための仕組みはちゃんと存在している。殺すと脅迫するなど、短絡的なことでは、何にもならない」

BBC記事は、過去、ロイヤリスト武装組織の暴力にさらされたジャーナリストとして、マーティン・オヘイガン(2001年9月、LVFに撃ち殺された)の名前と、1984年にUVFに撃たれて負傷したジム・キャンベルの名前を挙げて、結んでいる。オヘイガンもキャンベルも、同じ『サンデー・ワールド』というアイルランドの大衆紙の記者である(今もけっこうすごい記事出ますけどね、この新聞)。

NUJのドゥーリーは、Twitterで「これでは昔に逆戻りだ」と書いてる。




で、この報道が出てから半日もしないうちに、UDAの指導部は今回の脅迫を否定する声明を出した。つまり、この脅迫は指導部が指示して出させたものではない。(でも誰かが「UDA」の名前でこういうことをしている、というかこういうことができているということだ。)

Loyalists deny journalist threat
Monday, 20 August 2012
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/local-national/northern-ireland/loyalists-deny-journalist-threat-16200159.html
a spokesman for the Ulster Political Research Group in west Belfast, which advises the paramilitary organisation, said: "We consider anybody getting threatened to be absolutely not right and we are totally against any threats against any journalist."

西ベルファストのUPRGのスポークスマンは、「誰であれ脅迫を受けるなどということはまったくおかしなことであるが、ジャーナリストへの脅迫は一切、我々は認めない」と言いきっている。
※「UPRG」とUDAの関係は、シン・フェインとIRAの関係と同様。

またUDA名義でも:
The UDA said it categorically denied any threat, inferred or otherwise, against the journalist.

"The Ulster Defence Association respects the freedom of the press and the right of all journalists to carry out and pursue their profession free from intimidation or threat," it said.

つまり、UDAは当該のジャーナリストに対する脅迫は行っていないと全否定している。「UDAは報道の自由を尊重し、すべてのジャーナリストの、脅迫されることなく仕事を遂行できる権利を重んじる」と述べている。

UTVには、UPRGのフランキー・ギャラガー(この人は東ベルファスト)の発言が出ている。
http://www.u.tv/News/UDA-denies-threat-against-journalist/48132ddb-c42a-4ce6-9930-0176f7f42bf9
Another UPRG spokesman, Frankie Gallagher, added: "We are committed to a peaceful future and a democracy in which the freedom of the press is essential."


これらUDA側の反応を受けて、NUJのドゥーリーは、UDAの発言を歓迎しつつ、「これは絵空事ではない。脅迫があることは事実である」と強調している。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-northern-ireland-19324144





Twitterの検索結果から。



なお、BBCの記事には、「UDAは北アイルランド最大の武装組織 (The UDA is the largest of Northern Ireland's paramilitary groups.)」とある。IRA (Provisional IRA) が事実上消滅したので……と思ったが、「武装活動終結時には1000人足らず」になっていたそうだ。ううむ? 確かに「紛争」期は(かなり後まで「テロ組織」に指定されていなかったこともあって)数万人単位の勢力だったが……。

というところで、ガーディアンだ。
Despite at one time being the largest paramilitary movement in Northern Ireland, the UDA has been riven with splits and infighting. Its de facto leader, Jackie McDonald, has been a driving force in maintaining the organisation's ceasefire and moving it away from paramilitarism. However, other units of the UDA have refused to recognise his authority and operate independently, often engaging in organised crime ranging from drug-dealing to extortion.

http://www.guardian.co.uk/uk/2012/aug/20/uda-journalist-death-threat-belfast

北アイルランドの武装組織の「分裂」というと、明確にポリティカルなものであるリパブリカンの分裂(CIRAも、RIRAも、結局は南北の間の「ボーダー」をどう認識するかをめぐる意見の相違での分裂だった)はけっこう語られているが、ロイヤリストの方はそうではない。最近では、昨年6月の暴動の前に東ベルファストのニュータウナーズに出現した「パラミリタリー・ミュラル」の「首謀者」であるBeast in the Eastと呼ばれる男が、ジャッキー・マクドナルドらの路線に反対して独自で活動していると言われている。

Loyalist sources told the Guardian a specific UDA grouping in the east of the city who were recently accused of criminality and drug dealing were responsible for the threat.

http://www.guardian.co.uk/uk/2012/aug/20/uda-journalist-death-threat-belfast




で、このニュースについて何か記事がないかとSlugger O'Tooleを見に行ってみれば、これ。もーやだ。アサンジ騒動を目にしたくなくて、TwitterのTL見ないようにしてるのに。


※この記事は

2012年08月21日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼