「死刑」がない、ということは、ものすごく凶悪で許しがたいような事件を起こした人物が、起訴されて有罪となって、そののち、何年もずっと生きている、ということだ。
(無粋ですが当方の意図が伝わっていないようなので追記:「死刑がない」ということを責めているのではなく、単に「死刑が廃止された後に判決を受けているので、これほどの凶悪で許しがたいような殺人を行なった犯人であっても、死刑にされていないのだ」ということが言いたいのです。そして、犯人のブレイディには遺体を埋めた場所をお母さんに伝える機会はあった、ということも。)
1963年7月から1965年10月にかけて、現在のグレーター・マンチェスターの地域にあるムーアで、連続殺人が起きた。殺されたのは16歳女子、12歳男子、12歳男子、10歳女子、17歳男子の5人。殺したのはイアン・ブレイディという男と、マイラ・ヒンドリーという女のカップル。「ちょっとワルな雰囲気のイケメン」と「冴えない女の子」の(古の少女マンガじみた)ラブロマンスとして始まったことは、猟奇殺人者と、彼に支配されきった女と、5人の子供たちの陰惨な死という悲劇となった。
http://en.wikipedia.org/wiki/Moors_murders
http://www.dailymail.co.uk/news/article-377875/Timeline-The-Moors-Murders.html
http://www5b.biglobe.ne.jp/~madison/murder/text/brady&hindley.html
最後の被害者となった17歳男子の殺害を知ったヒンドリーの義弟が警察に届けたことで事件は露見し、終止符が打たれたが、ここで義弟が別の判断をしていたら、どうなっていたことか。被害者は5人だったが、実はこのうちの2人(最初に殺した2人)については、ずっとのち、1980年代にはじめて、ブレイディは殺害を認めた。
1965年に逮捕・起訴されたブレイディとヒンドリーは、英国で死刑廃止の法律が成立したあと(1966年)に判決を受けた。両者とも、仮釈放のない終身刑。
そしてヒンドリーは今から10年前、2002年に、病気で死んだ。ブレイディは、高齢であることもありずいぶん弱ってはいるようだが、現在も存命。ときどきニュースに出てくる(入院した、とかいったことが)。
一方で、今日入ってきた訃報は、きわめて「残酷」なものだ。
事件被害者の1人で、1980年代になって(=殺害から20年も経過して)ようやくブレイディが殺害を認めたキース・ベネット(当時12歳)のお母さんが、亡くなったという。彼女はずっと、息子はどこに埋められているのかを知りたがっていた。「まともな埋葬」をしてやることすらできないかわいそうな息子。
つい昨日か一昨日、テレビ番組(ドキュメンタリー)で、実はブレイディは手紙で、キース・ベネットの遺体をどこに埋めたかを語っているということが、その手紙の受取人から明かされたばかりだった(詳細はわかっていない)。その手紙の受取人が、警察に身柄を拘束されて話を聞かれている(1964年のキース・ベネット殺害事件は、まだ「終わって」いない)というニュースがあったほんの少しあとに、ベネットのお母さんの訃報。もうしばらく具合を悪くしていて、ホスピスに入っていて、「ブレイディがベネットの遺体のありかを別の人に告げていたらしい」ということは知らされずに、亡くなったそうだ。
Winnie Johnson, mother of Moors murders victim Keith Bennett, dies gu.com/p/39pv6/tw なんと…。イアン・ブレイディが殺した子の遺体を埋めた場所を告白と判明したのは昨日か一昨日じゃないか。
— nofrills (@nofrills) August 18, 2012
Moors murders: 'Where is my Keith?' gu.com/p/34dbe/tw via
— nofrills (@nofrills) August 18, 2012@guardian // Saturday 7 January 2012 // RIP Winnie Johnson
Hunt for Moors murders victim takes new twist with arrest gu.com/p/39zp7/tw via
— nofrills (@nofrills) August 18, 2012@guardian
Moors murders: time to stop pursuing the case | Editorial gu.com/p/39zp8/tw via
— nofrills (@nofrills) August 18, 2012@guardian 刑事事件・裁判について、「死刑」と「時効」がない、ということ。
承前。結局、延々と「テレビの特番のネタ」にされ、そのたびに警察が動いて見せ、遺族に辛い思いをさせるだけで何も解決しない、と。同じことを、例えば北アイルランドの失踪者にも言えるだろうか。読み終えて、ただぐるぐると考える。 gu.com/p/39zp8/tw
— nofrills (@nofrills) August 18, 2012
承前。この社説記事→ gu.com/p/39zp8/tw 最初、ものすごくひどく悪趣味な見出しとリード文がつけられていたんだ。 guardian.co.uk/discussion/com… 今週のガーディアン、USでの例の「コラムニスト」の件といい、何かおかしいね。五輪の間に何かあったのか?
— nofrills (@nofrills) August 18, 2012
「コラムニスト」の件はこれ。
http://electronicintifada.net/blogs/ali-abunimah/new-guardian-team-member-openly-incited-israel-murder-alice-walker-and-others
このJosh Treviñoってのはほんとにひどくて、ラッシュ・リンボーとかがかわいく見えるくらいにひどい。Twitterで質問したり指摘したりしてきた相手をいきなりブロックすることでも有名。「ガーディアンUS」が変な方向に向かっている(「読者」がほしくてほしくてたまらないのでイロモノに走っている)ことは、アブニマさんの指摘(最後のセクション)が正確だと思う。(あと、今、「リベラル」の価値観をがっつり据えることで一貫性を維持してきた編集長やデスクが夏休みなのかもしれんね。Trevinoを雇ったことは編集長クラスの判断だろうけど。)
— Erica (@ericoba) August 18, 2012
@nofrills これはひどい。私みたいな外人でもそう思うのに…。
殺されて浅い墓に埋められた子供たち。「地元」のバンドであるThe Smithが彼らについて書いたSuffer Little Children という曲に、犠牲者を回想するスライドショーと説明文。
※この記事は
2012年08月18日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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