「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2006年12月01日

【リトビネンコ事件】キープレイヤーのロシア人と例の「ドクター」。

24日の記事で、「記事に含まれている興味深い要素を列挙」ということで人名をいくつか挙げました。(リトビネンコの友人で最後のメッセージを聞いたアンドレイ・ネクラーソフ、事件発生直後から「プーチン政権の仕業」と繰り返し述べていたオレグ・ゴルディエフスキー、病床に頻繁に訪れていたアレックス・ゴルドファーブ、ユニヴァーシティ・コレッジの化学の専門家、ドクター・アンドレア・セッラ。)

このうち、アレックス・ゴルドファーブと、それからもうひとり、やはり同じ24日の記事で「あんた、リトビネンコを診た医者じゃなかったんかい」とびっくりしたジョン・ヘンリーについて、11月24日のガーディアン記事と、そのほか少々の調べものを。

Litvinenko poisoning: the main players
Friday November 24, 2006
http://www.guardian.co.uk/russia/article/0,,1955863,00.html

この記事は、Alexander Goldfarb(リトビネンコの友人で、「病床のリトビネンコのスポークスマン的な役割を果たしていた」人)、Boris Berezovsky(英国に亡命したロシアの富豪)、Lord Bell(Tim Bell, PR会社の人:詳細)、John Henry(「タリウム」説を唱えた毒物専門家)についてのまとめ。

特にAlex GoldfarbとJohn Henryの部分、概要を。まずは前者から:
Alexander Goldfarb(アレクサンドル・ゴールドファーブ)

アレクサンドル・ゴールドファーブとアレクサンドル・リトビネンコはロシアの拘置施設で知り合った。このときリトビネンコはFSBの上官がボリス・ベレゾフスキー暗殺を命じたと公然と述べて起訴され、公判を待つ身だった。1990年代末、ゴールドファーブはジョージ・ソロスが資金を出したプロジェクトのディレクターだった。このプロジェクトの目的はロシアの刑務所の結核の蔓延を何とかすること(ロシアの刑務所では結核が大問題で、薬剤耐性をつけた結核菌が出所した人たちから地域にばらまかれるような状態だったそうです。今もそうかも?)。【注:ゴールドファーブがなぜ拘置施設にいたのかの説明は、この記事にはありません。】

2人は仲良くなり、リトビネンコは2000年に亡命を決意したときにゴールドファーブに連絡した。当時ゴールドファーブは米国でベレゾフスキーのために働いていたが、ロシアに飛んで、トルコ経由で英国への脱出路を手配した。リトビネンコは英国に到着し、保護を求めた(政治亡命)。

ゴールドファーブは現在、the International Foundation for Civil Liberties(市民的自由のための国際基金)の事務局長(executive director)である。この組織は2000年にボリス・ベレゾフスキーが設立したもので、人権活動家のためのアンブレラ・グループである。本部はニューヨーク。

この組織を立ち上げる際のワシントンでの記者会見で、ベレゾフスキーは次のように述べている。「独裁統治のもとでは、人々みなの権利が脅かされる。実業家の権利はゆすりたかりを行なう官僚によって脅かされ、ごく一般の人の権利は当局によって脅かされる。」ベレゾフスキーはこの組織を使って反プーチン活動に資金を提供しているとして非難されてきた。ロシアの(人権)活動家の中には、この組織からの資金を拒む者もいる。

ゴルドファーブがソロスのプロジェクトで、ってほんとですかね? ジョージ・ソロスまで出てくると、やっぱりちょっとは怖くなるんですが
http://en.wikipedia.org/wiki/George_Soros

Wikipediaの「リトビネンコの死」の項では、ゴルドファーブはベレゾフスキーの基金のチェアマンであるだけでなく、ベレゾフスキーの弁護士(lawyer)だとあります。アメリカで弁護士活動をするには資格が必要なはずですが、資格取ったのかしらん? っていうかこの人、いつ亡命したんだろう。

なお、ベレゾフスキーのInternational Foundation for Civil Libertiesについては下記に少しですが説明があります。公式サイトへのリンクもあり。
http://en.wikipedia.org/wiki/International_Foundation_for_Civil_Liberties

あと、ゴルドファーブについてはこんなの見つけたんですけど。
28 October 2005 | 14:07
Alex Goldfarb speaks on Ukraine, Russia and Berezovsky (update)
http://en.for-ua.com/news/2005/10/28/140702.html
for-uaってのはウクライナについての情報を提供するサイトで、ロシア語、ウクライナ語、英語の3つの言語で提供されてます。

ウクライナねぇ。。。と思いつつ、ジョン・ヘンリーについての説明を読むと、はっはっは。(^^;) 笑ってる場合ではないんですが。
John Henry(ジョン・ヘンリー)

ジョン・ヘンリーが最初に国際政治の舞台に登場したのは、2年前のウクライナの選挙後のことだった。野党側候補者のヴィクトル・ユーシェンコがダイオキシンを盛られたのではないかと指摘した最初の人物がジョン・ヘンリーである。彼はユーシェンコの治療には当たっていなかったが、容貌の変化はダイオキシンと関係があると指摘、その1ヵ月後に医師団がダイオキシンによるものとの診断を下した。

Yushchenko and the poison theory
Last Updated: Saturday, 11 December, 2004, 17:03 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/4041321.stm
にありますな。Professor John Henry, a toxicologist at St Mary's Hospital in Paddington, London, was one of the first to say Mr Yushchenko had been poisoned with dioxins. って。

ジョン・ヘンリーがソ連の陰謀と2度目の接点を持つことになったのは先週のことだ。ベレゾフスキーのアソシエートであるアレックス・ゴールドファーブから連絡を受け、リトビネンコの中毒について意見を求められたのだ。症状のいくつかを教えられ、ヘンリーはタリウム中毒の可能性があるのではないかと指摘。これで誤った方向に導いてしまったのではないかと、この診断のことを彼は今では後悔するようになっている。

なお、ガーディアンのこの記事では、Mr Henryとなっています。Mrということは、博士号を持ってないということ。でもDr John Henryという記述もある。どっちの情報のほうが正しいのかな、MrなのかDrなのか。(別にDrでなければならないわけではないのですが、こんな基本的なことで情報が複数ある、ということそのものが、ちょっと異常。これ、私が翻訳とかやってて小うるさいから気になるのかもしれんけど。)

で、この人の出す情報とそれを取り上げるメディアの報道には、かなり振り回された。24日に次のように書いたとおり。
報道がされ始めた当初「タリウムだ」と言ってたロンドンの病院(University College Hospital)の教授は、リトビネンコの治療に当たる医師団のひとりではなかったそうです。この「タリウムだ」説にはメディアがさんざん踊らされたわけで(「リシン」騒動を思い出すなあ・・・遠い目)、それが患者を診ておらず検査結果を見てもいない医師の発言に基づくものであるとしたら――そしてメディアがそれを一斉に、「事実」というか「専門家の見解」として伝えていたのですが――、こりゃ歴然たる情報戦じゃないっすか。
http://nofrills.seesaa.net/article/28200400.html

それが、さらに、「University College Hospitalの教授」ですらなかった。。。私が見落としていたか、早合点したか、という問題かもしれないんですが、言い訳じゃないですけど、BBCではこういう文面になってたんですね。19日の記事。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/6163646.stm
Two weeks later Mr Litvinenko was taken seriously ill and admitted to hospital.

Clinical toxicologist John Henry said Mr Litvinenko was "quite seriously sick" and there was "no doubt" he had been poisoned by thallium, probably on 1 November.

23日の記事。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/6172516.stm
Medical experts have expressed differing opinions over what substance poisoned him.

...

Initially toxicologist Professor John Henry said he had "no doubt" that the 43-year-old had been poisoned with a potentially lethal dose of thallium, probably on 1 November.

But Dr Henry has since said that Mr Litvinenko may have ingested a radioactive form of thallium, which would be difficult to trace.

Dr has had access to Mr Litvinenko and offered advice on his treatment, but he has not been making the clinical decisions.

Dr Henry said that Mr Litvinenko was suffering from additional symptoms.

"Something other than thallium is involved. There are several possibilities as to what this something is.

CNNも。21日記事。
http://edition.cnn.com/2006/WORLD/europe/11/21/uk.spypoisoned.ap/index.html
LONDON, England (AP) -- Doctors treating a former Russian spy and fierce Kremlin critic who is fighting for his life in a London hospital said Tuesday that test results showed it was unlikely he had been poisoned by the toxic metal thallium, as previously thought.

University College Hospital said doctors were looking at other possible causes for Col. Alexander Litvinenko's illness.

"Based on results we have received today and Mr. Litvinenko's clinical features, thallium poisoning is an unlikely cause of his current condition," the hospital said.

Dr. Amit Nathwani, a member of the team treating the former KGB officer, said "the levels of thallium we are able to detect are not the levels we expect to see in toxicity."

...

But Dr. John Henry, who also was treating Litvinenko, said Tuesday that a radioactive substance may have been involved.

特にCNNのこの書き方では、「ジョン・ヘンリー博士は治療に当たっている医師団のひとりで、UCHのスタッフドクター」と読める。23日のBBCでも、「ドクターはリトビネンコへのアクセスがあり、治療についてのアドバイスをしてきたが、治療法の決定はしていない(Dr has had access to Mr Litvinenko and offered advice on his treatment, but he has not been making the clinical decisions.)」などとあるので、やっぱり「ジョン・ヘンリー博士は治療に当たっている医師団のひとりで、UCHのスタッフドクター」と読める。

しかも本人がBBCのインタビューに応じているんだけど(19日)、さっき初めて見たんだけど、これがほんとに「患者を診た医師」の口ぶりなんだよね。スタジオから「彼の病状は具体的にどうなのでしょうか」と質問されて、I don't want to refer too much to his case(あまり詳細には述べたくない)と答えている。1:02くらい。その後は「嘔吐がある」など具体的な話をしている。そのあと(1:55くらい)では「治療法は?」と尋ねられて答えている。
johnhenry.png
※BBCの画面のキャプチャ。画像はクリックで拡大。19日のジョン・ヘンリーのインタビューを見たい方、画像にある方法でどうぞ。(ただしBBCがアップデートしてしまったらこの方法ではなく「映像」のコーナーでサーチしないとアクセスできなくなるかも。)

アメリカでは「サダムが9-11をやった」と信じている人が、イラクと9-11とは何ら関係がなかったと立証されたあとでもやはり多い、というのと同じように、英国ではこのジョン・ヘンリー教授はリトビネンコを診たのだと思っている人が多いんじゃなかろうか。

ガーディアン記事によると、ジョン・ヘンリーは
・セント・メアリ病院の臨床毒物学者(clinical toxicologist)である
=セント・メアリ病院はインペリアル・コレッジの病院であり、リトビネンコが入院していたユニヴァーシティ・コレッジの病院ではない。
・ヘンリーはガイズ・ホスピタル(Guy's hospital;ロンドンで一番の名門病院のひとつ)で毒物ユニットのトップをつとめていたことがある
=つまり、毒物の専門家であるということは事実。
ということが明示されている。

ちなみに、wikipediaにもジョン・ヘンリーについての説明があるのだけれど、これもまた微妙(stubの段階)でソースもほとんどないので信頼性はあんまりなのだけど、これによると専門はHe has done research on the health effects of cannabis, cocaine and other recreational drugs.ってことで、カナビスやコカインやエクスタシーのような薬物(麻薬)の専門家ってこと?
http://en.wikipedia.org/wiki/John_Henry_%28toxicologist%29

そうであるとして、麻薬の専門家だから放射能について無知なはずだなどと言いたいわけではないのだけれど(むしろ、「麻薬専門家」は英国では最も需要が多いだろうから、その分野での研究や発言などが多いだけじゃないかとも思う)、治療に当たっている医師団にも病因についてはさっぱり見当がつかない段階で、白血球が急激に減少しているような症状を呈した人物についてのアドバイスを求めるとしたら、私なら一応の手続きとして、血液の癌の専門医とか、放射能の害についての専門家を頼ると思う。(それは私が日本人で、子供のころに「原爆の悲惨さ」や「発がん性」について耳にする機会があったからかもしれないし、「まさか放射能なんてありえない」と思っていたらどうだったかわからないけれども。)で、ジョン・ヘンリー教授にコンタクトしたのは誰か、というと・・・

24日の記事に、「ジョン・ヘンリー博士に連絡を取った人物は、ベレゾフスキーに雇われている人物」と書いたのだけれども(ネタ元は24日のガーディアンの別の記事)、上に引いたガーディアンの人物解説記事によればジョン・ヘンリー教授は「アレックス・ゴールドファーブから連絡を受け」たそうで、アレックスはベレゾフスキーの団体の代表だ。で、アレックスはリトビネンコのムショ仲間。ただしアレックスが身柄拘束された理由は、ガーディアンの記事ではわからない。アレックスは2004年のウクライナの「オレンジ革命」に一枚噛んでいる。(ガーディアン以外のメディアで、「アレックスからジョンに連絡→タリウム説」ってのを見つけないといかんね。)

こういった、一連の流れが、極めて断片化した形でしか伝えられていないから、この件はややこしく見えているのかもしれない。

実際に毒を盛ったのがロシア当局であったにせよ、そうでなかったにせよ、事件が発生した英国でこういうふうに伝えられている(こういうふうにしか伝えられていない)ということは……たとえば「イラクの宗派対立」をめぐるあまりに単純明快な言説(今のじゃなくて、昨年の夏ごろのかな、「宗派対立が激化」と書き立てていたころのもの)のありようと何となく比較してしまう。だから何だ、というわけではなく、単に観察の結果として。

誰がやったのであれ(自然にああいう症状を起こすほどのポロニウム210を体内に摂取するということが無理であるからには、あれは人為的なものだと断定するほかはない)、「真相」は明らかになるべきだ。でもこの情報の流され方を見るについえ、それとは別の方向の考えが、あっちこっちから手を出して事態をこねくり回しているように思われる。新しい真相をつくる会でもあるのかね?という具合。

※この記事は

2006年12月01日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 07:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

……全文を読む
▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼















×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。