kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2006年11月17日

「ベルファストとベイルートを見て死ね」?

「ナポリを見て死ね」という。英語ではSee Naples and die. だ。このフレーズには歴史的背景がいろいろとあるらしいが、現在における意味としては「日光を見ずして結構と言うなかれ」的なものだ。ナポリを見たからといって別に死ぬ必要はない、と、かのマーク・トゥエインも書いている

旅行ガイドブックのLonely Planetが「2007年、ぜひとも旅行で訪れたい都市トップ10」として選んだ中に、ベルファスト(北アイルランド)とベイルート(レバノン)が入っているという。

NI is tipped as top travel spot
Last Updated: Wednesday, 15 November 2006, 01:53 GMT
http://news.bbc.co.uk/1/hi/northern_ireland/6147838.stm
The Lonely Planet Bluelist featured NI in the "Go List" section of its guide - a chapter dedicated to detailing the hot destinations for the coming year.

In another section of the book, Belfast was listed as one of the top 10 "cities on the rise".


The Lonely Planet Bluelistは、年に1度刊行される印刷物で、「実際に行ってすばらしい体験ができるところ」のお勧めリストのようなものである。サイトでは投稿・投票ができたりするようになっている。(bananatreeさんによるExpierence Japan : 10 things you could do in a day..or twoとか、けっこうおもしろいです。しかし「醤油」と「焼酎」って、英語話者には区別しづらそうだな。)(<これを見たら東京都は築地市場の移転計画を再考するかも?)(シモキタも考え直してもらいたいよね。シモキタはロンドンのカムデンタウンよりおもしろいと私は思うんだが。)

現物は下記から買える。2007年版を買うともれなく2006年版もついて、£14.99。
http://shop.lonelyplanet.com/product_detail.cfm?productID=2298&affil=lpfp-p

で、そのお勧めリストには30の都市がピックアップされていて、そのトップ10の中にベルファスト (Belfast) とベイルート (Beirut) という2つの、1)Bで始まる都市 2)「紛争地」だった都市 が入っているということで、UKのメディアが一斉にニヤニヤしているというわけだ。

■テレグラフ
Ulster turns from terror to tourism
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2006/11/16/nulster16.xml

■インディペンデント
Delights of the north: After The Troubles come the tourists
http://news.independent.co.uk/uk/ulster/article1987634.ece

■ガーディアン
Belfast and Beirut tipped as 'must-see' cities
http://travel.guardian.co.uk/news/story/0,,1948588,00.html

もちろんベルファストのメディアは大喜びである。

■ベルファスト・テレグラフ
Ulster a 'must see' spot, says travel bible
http://www.belfasttelegraph.co.uk/lifestyle/travel/story.jsp?story=714562

■アルスター・テレビ
NI a Lonely Planet 'must-see'
http://u.tv/newsroom/indepth.asp?id=77905&pt=n

BBCの記事に写真のあるAntrim Coast Roadは、ちょっと前に、あるアンケート調査で「世界で最も美しい場所トップ5」に入ったばかり。(Antrim Coast Roadはベルファスト市の北の海岸線。)
http://news.bbc.co.uk/1/hi/northern_ireland/6141692.stm
http://sluggerotoole.com/index.php/weblog/comments/better-than-bora-bora/

1970年代にバックパッカーとしてあちこち旅行して、Lonely Planetというガイドブックを立ち上げたのはトニーとモーリーンのカップルだが、モーリーンは元々ベルファストの人だそうで、BBCやガーディアンやベル・テレの記事で、次のようなコメントが掲載されてます。
"I love the city, its grittiness, its resilience and its beauty and I love how Belfast people turn every social interaction into an excuse for a party."

"The landscape of Northern Ireland is astonishingly beautiful, the people are warm and genuine, and yet it is still relatively undiscovered which makes it the perfect destination."


"astonishingly beautiful"な風景は、Flickrの「北アイルランドの風景」グループで。Giant's Causewayが一番有名ですが、ふつうの山や海岸線もほんとにきれいです。
http://www.flickr.com/groups/blogerati/pool/

何枚か、さまざまな地理的特徴の代表的なもの。
http://www.flickr.com/photos/17223773@N00/122767485/
http://www.flickr.com/photos/permanum/239992832/
http://www.flickr.com/photos/loose_grip_99/193629872/
http://www.flickr.com/photos/mrss/224394413/
http://www.flickr.com/photos/hnisc/229476133/

「紛争」の、最も血なまぐさい事件の多くが、こういった風光明媚な場所で起きているんだけどね。なんだっけ、あの、英軍がIRAの待ち伏せ攻撃にあってたくさんの死者が出たところなんかは、それこそ妖精がいても不思議ではないような湖畔の森だったり。

「風景」に限定しない、「北アイルランドの写真」のグループ。
http://www.flickr.com/groups/northernireland/
※夏の「オレンジ・パレード」(プロテスタントのパレード)の写真とかもあります。

実際、北アイルランドの観光は、この数年活況を呈しているという話だ。BBCのNI Newsのトップページは、事件の記事と政治の記事と裁判の記事がほとんどなのだけど(そしてそのほとんどが「紛争」関連なのだが)、それでもときどき「観光業が好調」という記事が出る。ダブリン(「ケルトの虎」ことアイルランド共和国の首都)が高くなりすぎている中、まだまだ「紛争地」のイメージが強くて観光客が少ないベルファストが注目されている、観光客の数も増えている、地域雇用など経済波及効果は……といった感じの記事。

しかし今回はそういった「地域経済」ニュースの枠を超えて、「北アイルランドの観光」がスポットライトを浴びている。で、常日ごろ、「北アイルランドの記事」といえば、シン・フェインがどうしたとかDUPがどうしたとか、ブレアが自画自賛とか、非主流派リパブリカンが爆弾とかいったことばかりの英国の全国メディアが、ニヤニヤしているのだ。

ガーディアンのEsther Addleyは、次のように、「まだ笑いが止まっていない」と告白している。
http://commentisfree.guardian.co.uk/esther_addley/2006/11/belfast_the_new_beirut.html
The Lonely Planet has named Northern Ireland one of its "hot destinations" - forgive me if I still laugh a little - for the coming year, with Belfast as one of the top 10 cities on the rise.


同じくガーディアンのHenry McDonald(アイルランド担当チーフ)は、ベルファストで生まれ育った人なのだが、ニヤニヤが止まらないといった記事をtravelogに書いている。
http://blogs.guardian.co.uk/travelog/2006/11/xxx.html

彼の記事から「ベルファスト見どころガイド」の部分を引用しよう。
You can visit 26 mini-Berlin Walls, gloriously misnamed "peace walls", which permanently separate Protestant and Catholic communities in north and west Belfast. You can go on a "terror tour" by London-style black cab or bus, where your helpful guide will point out the nooks and corners were infamous terrorists were gunned down or atrocities committed against combatants and innocent civilians.

You can take snaps of yourself taken for the folks back home beside the murals dedicated to the IRA, INLA, UDA, UVF, LVF and all the other, alphabet soup nomenclatures for paramilitary factions in Northern Ireland. You can even make sense of it all in the region's conflict study centre - the Linenhall Library's political collection in central Belfast. Inside the permanent exhibition there you can see the IRA's A-Z handbook, chocolate bars commemorating loyalist violence at Drumcree, the secret communications, secreted in loo rolls and on cigarette papers, between the republican hunger strikers in the Maze prison and the IRA leadership outside, and the Hang-David-Trimble hangers, complete with a picture of the ousted unionist leader with a noose drawn around his neck.

うはははは。楽しそうだな、おい。

あの、めちゃくちゃ血なまぐさい歴史が、ベルファストの人によって、こうやって語られる。

ヘンリー・マクドナルドじゃなくて、ガーディアンでもなくて、どっか別の記事だったと思うけど、ベルファストの観光タクシーの運転手がフランス人の観光客を乗せて政治的壁画めぐりをしたときに「あれがUVF、これがUDA、あっちはUFF」などと「アルファベット・スープ」を説明して回ったときに、That's funny. とか言われたとかいうことを書いているのを最近読んだのだが、うーん、funnyではない。単に「見物」をするのではなく、それが何のことなのかを知れば知るほど、この「アルファベット・スープ」の陰惨さと血なまぐささが---sectarian divideというものと、internal feudというものが---視野に入るはずなのだ。

たとえばこの写真は、単に「青と白と赤に塗られた電話ボックス」ではない。


East Belfast - loyalist phone boxes
Originally uploaded by Robby Garbett.
* a CC licensed photo posted on Flickr

ヘンリー・マクドナルドはtravelogを次のように締めくくっている。
Overall, the paradox of Northern Ireland is that you will find yourself among some of the most hospitable, tolerant people on the planet - except to each other of course. That would be too much to ask for.


エスター・アドレイはCIF記事の最初のパラグラフで次のように書いている。
It was always a terribly friendly place - apart from the whole terrorist violence thing, of course - but I'm sure visitors to Belfast or Derry or Enniskillen during the 80s and early 90s would have detected a note of incredulity amid the warm Ulster welcome. We're glad you're here - but why on earth are you here?


旅行者に親切で、暖かく、歌と酒とジョークが大好きな人たちが、なぜあれほどに「宗派」または「党派」に分かれて対立し、殺しあったのか。

明日から公開の映画、『麦の穂をゆらす風』もまた、舞台こそ島の南のほうで、時代も今から80年以上前ではあるが、そういう「殺し合い」の物語だ。



Slugger O'Tooleの15日記事
http://sluggerotoole.com/index.php/weblog/comments/northern-ireland-the-new-beirut/
コメント欄で、「もうひとつのB」との比較記事を知りました。

Hungarian 'cold civil war'
Belfast and Budapest
http://hvg.hu/english/20061106_cold_civil_war.aspx



ヘンリー・マクドナルドの記事中にあるLinen Hall Libraryについては
http://www.linenhall.com/northernIrelandPoliticalCollection.asp

コレクションから、リパブリカンのバッジ類:
http://www.flickr.com/photos/23386031@N00/255502875/

同、ロイヤリストのバッジ類:
http://www.flickr.com/photos/23386031@N00/255502873/

「IRAのハンドブック」っていうのはこれかな。。。何種類かあるはずなので違うかもしれないけど、1956年の(だからPIRA分裂前なんだけど)が復刻されて販売されています。
0873640748Handbook for Volunteers of the Irish Republican Army: Notes of Guerrilla Warfare
Irish Republican Army Ireland
Paladin Pr 1956-06

by G-Tools


※この記事は

2006年11月17日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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