None Shall Divide Us Michael Stone Amazonで詳しく見る by G-Tools |
上記の本は、マイケル・ストーン(表紙の写真の男性)という人物の手記である。漫画にしたらスーパー・マリオみたいになりそうな容貌だが(実際、スーパーマリオみたいな顔で壁画に描かれていたらしい)、北アイルランドの暗殺屋。
http://en.wikipedia.org/wiki/Michael_Stone_%28loyalist_paramilitary%29
1955年、ベルファスト東部のプロテスタントの労働者階級の家庭で生まれたストーンは、ちょうど10代後半に自分の住んでいる地域で「プロテスタントとカトリックの分断」が進むのを見た。また、「カトリックの連中が襲撃してくる」のから近隣を「守る」ためのプロテスタントの青年団のようなものを組織した。そこでの活動がロイヤリスト武装組織UDAの幹部の目に留まり、組織にスカウトされた。
組織に入るためのテストは、空き倉庫で、さっきまで仲良く遊んでいた犬を撃ち殺すというものだった。ストーンと一緒に行った数人の青年たちは誰もそれができなかったが、ストーンは、葛藤はあったにせよ、その試験にパスした。そして組織で訓練を重ね、狙撃手としての腕を磨いた。そしてUDAの暗殺部隊で、組織が選んだ「合法的標的(legitimate target)」、つまりリパブリカン武装組織IRAのメンバーとされる人々の暗殺を行なった。
(「IRAのメンバーとされる」という場合、少なくともUDAとしては「〜とされる」は「〜である」の意味だが、実際にはストーンが殺した人はIRAではなかったようだ。IRAが「同志」を葬るときには軍隊式の形式を整えて葬儀を行なうのだが、ストーンに殺された人の葬儀はIRAの葬儀ではなかったとのこと。)
1988年3月16日、ジブラルタルで英軍特殊部隊に射殺されたIRAメンバー3人の葬儀が、ベルファストのミルタウン墓地で行なわれていた。多くの人たちが集まった葬儀にはジェリー・アダムズ、マーティン・マッギネスらシン・フェインの幹部も参列していた。棺が墓地に運ばれ、地面に置かれたそのとき、手榴弾が投げつけられ、墓地内に潜んでいたストーンのピストルの銃口からジェリー・アダムズらを狙って銃弾が放たれた。アダムズらは難を逃れたが、IRAメンバー1人と、カトリックの一般人(IRAメンバーではない)2人が、ストーンによって殺された。一連の出来事は葬儀を取材していたテレビカメラにとらえられていた。それで一躍名前が知れ渡った。ストーンはその場で葬儀参列者に取り押さえられ、ぼこぼこにされて車に押し込められたところを、警察に保護、というか逮捕された。(→ストーンの襲撃の瞬間の映像@音声付と、襲撃後の様子も含めた映像@音声は音楽)(※これら2つとも、プロパガンダ色の強いものです。前者はロイヤリストのプロパガンダ、後者はリパブリカンのプロパガンダ。)
そして1989年、裁判で有罪となり終身刑(懲役700年くらい)に服することになったが、「服役中の政治犯の釈放」を規定した1998年のグッドフライデー合意(GFA:ベルファスト合意)により、2000年に釈放された。
http://news.bbc.co.uk/onthisday/hi/dates/stories/july/24/newsid_2515000/2515041.stm
服役中、絵画に目覚めたストーンは(子供のころから絵は好きだったそうで)、釈放後はベルファストで青少年支援活動を行ない、自分の内側にあるもやもやしたものを外に出すために絵を描くことを推奨している、というのが上記の手記、None Shall Divide Usのストーリーの最後の部分だ。
この本を出したあと、マイケル・ストーンは何度かメディアの取材に応じている。2006年3月には、BBCのFacing the Truthという番組で、自身が殺したカトリックの男性の家族と対面した。(この番組ではほかに、警官に射殺された青年の家族とその警官が対面するなどしている。)
http://en.wikipedia.org/wiki/Facing_the_Truth_%28TV_programme%29
(残念なことに、私はこの番組を見ることができていない。番組名とMichael Stoneの名前でネット検索すれば、この番組について書いている記事はいくつも見つかるが。例えばLevee Breaksとか。)
BBCのこの番組内で、ストーンは、治安当局とロイヤリスト武装組織(UDA/UFF)との「癒着」があったことを肯定している。
それから半年以上経って、またマイケル・ストーンの名前がメディアに出た。ふつうに考えてもちょこちょこ出てこられるような人ではないのだが(復讐したいリパブリカンもいるし、和平反対のロイヤリスト過激派もいるし、あまり喋られては困るという人たちもいる)、もちろんしっかりと安全策を講じた上でメディアに出てくるのだろう。
今回、マイケル・ストーンが「衝撃の告白」でメディアに出てきているので、とりあえず前置きということで。あとで別に記事を書きます。
「衝撃の告白」の内容は:
My plot to murder Ken Livingstone, by former hitman
01.11.06
http://www.thisislondon.co.uk/news/article-23372907-details/...
※この記事は
2006年11月02日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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