「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2012年03月24日

Twitter深夜(日本時間)のガセネタ騒動(「自称・スペイン閣僚」アカウント注意)

1つ前の記事で、Twitterの「パロディ・アカウント」について少し述べた。「パロディ・アカウント」とは、多くの場合風刺を目的とした、ウィットに富んだ「著名人のにせもの」のアカウントだ。「なりすまし」の意図はなく、どちらかというと「なりきり」である。有名なアカウントとしては「えーこくのじょおー」さんなどがある。

さて、こんなアカウントがある。



アカウント名は「モントーロ大臣」、プロフィールは「クリストバル・モントーロ、スペインのアシエンダ・イ・アドミニストラシオーネ・プブリカス大臣。オフィシャルのツイッター・アカウントです」(ただし、スペイン語はほぼわからないのであまり当てにしないでください)。上記キャプチャ画面で "Followed by ..." に表示されているのは、いずれもジャーナリストだ。フォロワー数は3,159。

一国の大臣でフォロワー数が3,000人台というのは少ないように見えるかもしれないが、スペインは昨年12月の選挙で政権交代したばかりだし、このアカウントはツイート数が少ないので、「最近始めたばかりでまだ浸透していない」と考えるのは自然なことだろう。(なお、いかにも「固定客」の多そうな北アイルランド自治政府「首相」格のピーター・ロビンソンは、フォロワー数5,200人台。)

つまり、ここまで見たところで、そこそこフォロワー数もあり、ジャーナリストの人たちがフォローしている政治家の「公式アカウント」だと判断されるだろう。文にして説明すると長いが、実際にはここまででおそらく2秒か、長くて4秒程度での判断だ。

しかしこの「アシエンダ・イ・なんとか」というのは何だろう。Hacienda y
Administraciones Publicas ... 眺めていてもわかるわけではないのでministerio de haciendaで辞書を見てみると、「財務省」だ。(Hacienda = Estateのはずなのになぜ「財務省」、と思うけど今は細かいことにかかずらってるヒマはないので先にいく。)

というわけでこれは「スペインの財務大臣の公式アカウント」だということになる。しかし当方はスペインの閣僚を把握しているわけではないので、名前で検索してウィキペディアも参照してみる。
http://es.wikipedia.org/wiki/Crist%C3%B3bal_Montoro
http://en.wikipedia.org/wiki/Crist%C3%B3bal_Montoro_Romero

この名前の人が、スペインの財務大臣であることが確認できた。ここまでで、このTwitterアカウントは「スペインの財務大臣の公式アカウント」であるということを疑う理由は見当たらない。

ここでこのアカウントの過去のツイート内容を見る余裕があったならば、混乱しなかったのかもしれない。しかしそのときは、過去のツイートまでは見ていなかった。

(この少し後、私はこのアカウントの発言内容を日本語にして、元ツイートのURLを添えて投稿したが、それはここまで下調べした上でのことだ。)

以上のようなことを調べたのは、「このアカウントからこんなのが来てる」というのを、誰かが(何かを書き足して)「非公式RT」したのをまた別の誰かが単にRTしたものが、私のTLにあったからだ。



さらに、これ(「非公式RT」されているガーディアンの元のツイートは削除済み):




ほんで、こうなった。(正直いうと、ガーディアンが上記のようなことを書いていなければ、つられなかったと思う。これほどのビッグニュースなのに速報ニュースのアカウントがどこも書いていなかった。こういう場合は「さっきそういう話が聞こえてきたが、大手の報道まで待とう」と判断するのが自分の場合は通例だ。深刻な事件・事故のような場合は一番慎重なBBCでコンファームしているし、このような芸能ニュースの場合はSkyかCNNが基準になる。)



(ここで01:24:43のガーディアンの "Panic over" 云々を含むツイートと、01:29:26 のCNNの人による "Death rumors are a hoax." のツイートをRTしたので、「終わった」つもりになっていたが、横に伸びた「えっ、本当ですか? RT ......」系の非公式RTが広がっていくのは、それでは終わらなかった。)

なお、上記キャプチャ内にある01:27:51のツイートの添付画像はこれ。(タイムスタンプは27分になっているが、これは01:23:07の一瞬あとに別のタブで投稿したはずがTwitterのエラーが出ていたのでやり直した。つまり、本来01:24:43のガーディアンの "Panic over" 云々のツイートの前に入るべきもの。)



この「財務大臣」のアカウントでは「有名映画監督」の前に「有名俳優・映画監督」の死が告げられていた。しかしその後、「俳優」の方は誤報で、「映画監督」の死亡は確定した、と書かれている。

で、私としては「財務大臣」がなぜ、映画人の訃報をツイートしているのか、わけがわからなかったんですよ。それが27分のツイートの「わけわからん」の意味。いかに大物でも、民間の人の死亡について「政府が確認」というのはちょっと考えられない上に、「財務大臣」? (ここへのツッコミはなかった。)国外で客死した場合に「外務大臣」がコンファームすることはあるだろうけれども……。

ただ、スペインのシステムについては当方まるっきり五里霧中。歴史ある国なので、アシエンダの大臣には特別な役割が与えられてるのかもしれないし(英国の財務大臣も変わってるよね)、ひょっとしたら「官房長官」的なポストの人が急に倒れたので一時的に兼務しているとかいうことかも、などと考えてしまう。「ダマスカスのゲイ・ガール」事件であのブログの運営者の実在を信じていたMENA情勢に詳しい人が述べていたが、目にしている情報は正しいという前提で見ていると、そういう方向で考えてしまうのだ。で、こじつけであっても「それは正しい」という結論を裏付けるための、この例でいうと「財務大臣は官房長官を兼務している」的な事実はないかどうかを確認しようとしてしまう。そんなことを確認しようとするより、過去のツイートの1つでも読めば「あれ?」と思ったかもしれないのに。

で、スペインのニュースを(スペイン語が読めないのに)検索しようとしたところで、タイミングが悪くブラウザが激重に……。01:29にRTしたあと、01:35:59に下記をツイートしているのだが、これだけの文を入力するのに6分かかってるということで。(^^;)




このあと、ブラウザを閉じて(でもバックグラウンドで実行されている状態がずーっと続いてたらしい)、アンインストールしてあったTweetDeckを再度インストール……と悪戦苦闘しつつ、先にRTしたものに含まれていたガーディアンの「終息宣言」に続き、急ぎ、「お詫び」をRTした:




続いて、「スペインの財務大臣」のアカウントの「告白」をRT:



この文で、私に読めるのはfalso (= false), creado (= created), por (= by) 程度だが、それだけ読めればわかる。「このアカウントは、によって作られたニセのアカウントです」。

ふざけんな。

一定のオーソリティのある立場を名乗って他人の死亡説を流すような奴は《猛烈な罵倒と呪詛の言葉を省略》。

「騙された」とかいうことじゃなく、それが不快でならない。

しかもこいつ、二重にやってる(ガーディアンが愚かにも確認もせずに流した映画監督の死亡説の前に、俳優・監督の死亡説を流している)。

《悪罵の言葉》をぶつぶつとつぶやきながら、何なのこいつ、と名前で見てみると……(しかも自分の名前だろうに、スペルミスしてるよ。periodistaのくせにバカなんじゃないの):

■アフガニスタンのカルザイ大統領(偽):


■シリアのアサド大統領(偽):


あー、このアカウント名、記憶にあるわ。既に消されているけれど、ちゃんと保存してくれてる人がいた。



* For those who googled and surfed in, please make sure that PresAssadSyria acct is FAKE.

「情宣」だとばかり思っていたけど、まったく関係のない外部の○○○○のしわざだったとは。私は気づいていなかったけれど、この「偽アサド」のアカウントでハッサン・ナスラッラーの死亡説も流してたとのこと。

■カトリック教会の偉い人(偽)。流したのは教皇死亡説(下記を見るに、「宗教批判」とかの意味も感じ取れない。ひどすぎる):


それから、Twitterを出て広くウェブ検索すると英語圏ではこれが出てきた。覚えてます。「フィリップ・ロスやゴア・ヴィダルにインタビューした」って、1から10まで捏造の記事をネットで書き散らかしていた○○○○。2010年のNew Yorkerの記事2点。

http://www.newyorker.com/online/blogs/newsdesk/2010/06/debenedetti-epilogue.html
http://www.newyorker.com/online/blogs/newsdesk/2010/11/tommaso-debenedetti-fabio-filipuzzi.html

これを知ったときは、「パロディ・インタビュー」で何かを訴えるパフォーマンス系の人(芸人)だと思っていた。当時ちょうど「ちょっとググったくらいで記事を書いてしまう新聞記者」を釣って嘲笑うようなことがいくつかあって、この「芸人」が自身の「まったくでっち上げのインタビュー」が「ろくなチェックも受けずに媒体に掲載された」、「イタリアはジョークだ。この国の情報はうそばかりだ」云々というコメントをしていたり、最大手ではなくても二番手くらいの(通俗的な)メディアに掲載されたと得意気に語っていることから、彼がそういう「ググっただけで記事を書く程度の検証力を嘲笑するという流行」に乗った軽薄なバカ活動家なのかなと思っていた。ひょっとしたら「ソーカル事件」にインスピレーションを受けているのかもしれない、とも思った。偽悪的に "I would like to be Italy's champion of the lie." とか言ってるあたり、いかにもクソ生意気な学生のようだ。

だがそうじゃなかったらしい。今回検索した中から、冒頭だけ(機械翻訳も頼りに)読んでみた2010年のイタリア語の記事を見ると、2010年に41歳 (41 anni) だって。いいトシのおっさんかよ。。。

(※この人物は、きっとエゴサーチして自分の名前があがってるのを見てにやにやするだろうから、検索結果にひっかからないよう、名前は画像にしてあります。くそめんどくさい)



ところで、「いいトシのおっさん」といえば「ダマスカスのゲイ・ガール」事件(この件でも、「あのブログは本物」と思いこんでいた人々によって、内容的におかしなところは「本物」という結論に矛盾しないようこじつけの理屈が考え出されていた)だが、ガーディアンはこのときも「ネットの情報」についてろくに背景を調べずに「本物」と扱ったと批判された。(「ダマスカスのゲイ・ガール」のブログを、誰かの記名記事で、「勇気ある女性のリアル・ストーリー」的に讃えていた。)あのhoaxは何年にも渡って行われた非常に手が込んだものだったし、ほかにも「この人は絶対にガセネタにひっかからない」という人が信じ込んでいたのでまだ弁護の余地はあった。

しかし、記事にこそならなかったとはいえ、ガーディアンは今回また、ろくに調べもせず、Twitterで「スペインの財務大臣」が「映画人の死亡を発表している」という珍妙な状況について疑問に思いもせず、「〜という説があります。追ってお知らせします」とツイートして混乱を無用に拡大させたわけだ。

ついでにいうと、アサドの偽アカウントも、ガーディアンは真に受けている(記事にしている)

それでも、Twitter使ってればだれもが「パロディ・アカウント」と把握していたアカウントを真に受けたデイリー・メイルよりは……ましなんだけど、これ、比較の問題じゃないなあ。



「財務省」を調べたり、ブラウザが固まったりしていたので見ることができていなかったのだけど、ここ見てればものすごく早かった。フィールドプロデューサー鉄板すぎ。なお、ポール・ハミロスさんはガーディアンの人(この人が把握していたのになぜ……)。



「少し前にチャベス死亡説流してた」とありますが、そのツイートは消去されています。キャプチャ:
http://f.hatena.ne.jp/nofrills/20120324115740

※この記事は

2012年03月24日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 11:30 | TrackBack(0) | 雑多に | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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