ガーディアンが「ファブリス・ムアンバ」というコーナーを作っている(他のメディアでもそうしているかもしれない)ので、気になる人はチェックを。
さて、彼が倒れたということがTwitterで大きな話題になるのを見ながら作った「NAVERまとめ」のページで中心にしたのが、「すべてのフットボーラーに心臓のスクリーニングを」という呼びかけ/キャンペーンがある(規模はわからないが)、ということだったが、それに少し関連して、オーストラリアから。(日本からもこういう反応は出ているのではないかと思うけれども、単に手が回っていなくてチェックしていない。)
キャンベラ・タイムズの記事:
Muamba's heart attack hits home
Dominic Bossi
March 20, 2012.
http://www.canberratimes.com.au/sport/football/muambas-heart-attack-hits-home-20120319-1vg5s.html
1990年からサッカーのオーストラリア代表(U23を含む)でプレイしていたTony Vidmarは、2006年のワールドカップでも代表入りしていたが、FIFAが出場選手に義務付けている大会前の健康チェックで心臓に異常が発見され(血栓)、代表から退くことを余儀なくされた。当時は悔しいことだと受け取っていたが、今では、生命が危ぶまれるような事態を阻止できてよかったと考えている。
"I look at that [Muamba's heart attack] and think that could've been me, it could've been people looking at me in that situation," Vidmar said. "It saved my life. If I didn't have that test and the experiences that I was having when they stopped me training, it could've been fatal. I was very fortunate."
「(ムアンバの心臓発作)を見て、ひょっとして自分だったかもしれないと考えるんです。ああいう状況で、僕のことを人々が見ている、ということになっていたかもしれない。あの検査を受けていなかったら、僕に練習をしてはならないという判断が出されたときの経験がなかったら、ひょっとしたら命取りになっていたかもしれない。僕はとても幸運でした」
記事曰く、Vidmarの症状は、練習中に少し息切れがするという程度のものだった。心電図検査がなかったら、彼自身も所属クラブも、心臓の精密検査が必要などとは考えなかった程度の異常だった。実際、20年間プロとしてプレイしてきた彼が検査を受けたのはわずか3回、それも移籍のときに手続きとして必要なメディカル・チェック(うち2度はオランダのブレガと、ウェールズのカーディフ・シティ……ここは参加リーグはイングランドなのだが)。彼はスコットランドのプレミアリーグのグラスゴー・レンジャーズで5年間を過ごし、イングランドのミドルズバラにも在籍していたシーズンがあるが、その間は一度も心電図検査を提示されていない。
という次第で、彼は、英国の(イングランド、スコットランドの)クラブの意識の低さは疑問だ、と語っている。「ミドルズバラでは一切、健康診断は実施されていなかったときっぱり断言できます。レンジャーズでは健康診断はあったことはあったのですが、膝のチェックなどの標準的なものだけでした」
膝とか股関節はダイレクトに、プレイできるかできないか(「買った」プレイヤーがまともに仕事をしてくれるかどうか)の問題なのに、ミドルズバラ(イングランド)はそれすらやってなかったのか……というのがまずびっくりだ。
それに、イングランドは……リーグやイングランドのカップ戦ではなかったけれども、2003年、コンフェデ杯でマンチェスター・シティのプレイヤー(マルク・ヴィヴィアン・フォエ)を心臓発作で亡くしているではないか。このとき、「FIFAの過密日程」をFAは批判していなかったか?(「FAが」ではなかったかもしれないが、少なくとも、うちのボスのほかにイングランドの人が誰か批判してたはずだ。)
そのことについて、キャンベラ・タイムズの記事から:
Since Marc-Vivien Foe died during a Confederations Cup match in 2003, 28 professional players have suffered fatal heart attacks on the field, including Espanyol captain Dani Jarque and former Japanese international Naoki Matsuda.
えっ、2003年以降、28人……そんなに。
スコットランドではマザーウェルのフィル・オドネルがピッチで倒れて亡くなっているが(2007年)、Vidmarがレンジャーズにいたのはその前、1997年から2002年だ。土曜日にムアンバが倒れたときのツイートで、"It's Phil O'Donnell all over again" というものがあったが、スコットランドでオドネルの死のあとで何か変わったのかどうかは、単に私は知らない(調べればわかることだが、まだ調べてない)。
Vidmarの記事に戻ると、クラブ側は「費用」を問題として、定期的な心電図チェックの実施に踏み切らずにいるらしい。そのことについて、彼は「義務化すべき」と述べている。「毎年、どのくらいの選手が検査を受けているか。通常、契約時には検査を受けますが、恐らくそれっきりです。それ以上の検査はしない。心臓発作というものは、そのときに起こるものではない」
FIFAのメディカル・ボードのDr Siri Kannangaraも、試合中に起きる心臓発作の第一の原因は、過密スケジュール云々以前に、クラブがプレイヤーの健康状態に注意を払っていないからだと述べ、「雇っておいて面倒を見ないなどというのはひどい」と強い言葉で非難している。(これは聞きますね、「個人の健康管理、自己管理」の問題に帰されてしまう、という点。)
それから別件。ファブリス・ムアンバが倒れたということを書いた当ブログのエントリで、そのときのTwitterの様子について「一部、この機を捉えて下品で下衆なことを言っている人たちへの非難もあった。ということは、下衆がいたのだろう」と書いたのだが、その詳細とその後の進展が月曜日に報じられている。やはり、下衆が下衆いことをツイートしていたようだ。
Fabrice Muamba tweets could land Twitter 'troll' in prison
Steven Morris
guardian.co.uk, Monday 19 March 2012 13.27 GMT
http://www.guardian.co.uk/football/2012/mar/19/fabrice-muamba-twitter-troll-prison
いわく、21歳の学生(大学生だな……)が、ムアンバが倒れたときにひどい言葉をツイートした。それが「通報しますた」状態となり(Liam Stacey was arrested after his tweets were reported to police by Twitter users from across Britain)、実際に彼が特定されて起訴された(「人種に基づく憎悪の煽動」)。日曜日は拘置されており(=英国では大変なことに、bailが認められず)月曜日に出廷したが、有罪となれば懲役刑の可能性もある。その法廷のことを報じる記事。(なお、月曜日の審理のあとはTwitterなどSNSを使わないことなどを条件に保釈が認められている。判決は来週。)
Lisa Jones, prosecuting, said: "Fabrice Muamba collapsed on the pitch and was believed to have died. Shortly after, Stacey posted on Twitter: "LOL, Fuck Muamba. He's dead."
Jones said other Twitter users criticised Stacey, prompting him to post a series of other offensive and racist comments.
検察官は「ファブリス・ムアンバはピッチで倒れ、死亡したと思われた。その直後、被告はTwitterに次のように投稿した。《略》」と述べた。その後、Twitterのユーザーたちから被告への批判が相次ぎ、被告はついに他人の気分を悪くさせるような類の言葉で、なおかつ人種偏見に満ちた言葉をいくつも投稿した。
私はこの人物の(ものと思われる)ツイートそのものは見ていないが、レイシストな内容のツイートがあったことはうかがい知ることができた。(それとは別に、サッカーのクラブの違いでがたがた言ってるっぽいのもあった。うちの真っ赤なサポさんたちが、白いとこのサポさんたちの態度は立派だって言ってたときに!)
この裁判のことを伝えるガーディアン記事には、次のように書かれている。
The swiftness of the arrest demonstrates how seriously police forces are taking the posting of potentially criminal comments on social networking sites by so-called "trolls".
逮捕の素早さは、ネットの「トロール(荒らし)」によるSNSへの投稿が犯罪に当たるものと考えられる場合、警察がいかにそれを深刻に受け取っているかということを示している。
これはこれで、どうなのかなあとは思う。「言論の自由」がレイシズムの表明や宣伝に利するための口実もしくは煙幕として使われることについては、あからさまな曲解であり濫用であるとしか言いようがないが、「ネットで誰かが言ってること」をこういうふうに扱わせることはまた別の問題をはらんでいる。
なお、訴えられた大学生は、「アカウントがハックされた(勝手に使われた)」と述べているという。しかし同時に、友人には「僕はムアンバについて、言っちゃいけないことを言った。攻撃してくる人たちにツイートを返した。警察が来ている」などとテキスト・メッセージを送っているという。
警察の聴取には、「土曜日は午後の早い時間帯からウェールズ対フランスのラグビーの試合(6ネイションズ・カップ)を見て飲んでいた。ムアンバが倒れたときはバーにいて、なぜあのようなツイートをしたのか自分でもわからない。自分はレイシストではなく、友人の何人かは(略)」と語っているとのこと。
この件は判決出たらまたアップデート。
※この記事は
2012年03月20日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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