廃炉になるのはブリストル近く(イングランド南西部)にあるオールドベリー原発。ここは炉が2基あり、1基は既に昨年停止されていて、今日、残る1基が停止された。築後45年、本来2008年にはお役御免となる予定だったが、延長されていたのだという。BBC記事には停止の瞬間の管制室の映像などもある。職員の一人が停止のボタンを押し、ほかの職員数人が(非常にクラシカルに見える)壁面の計器をチェック。緊張感あふれる画面だが、無事に停止されてよかった。このあと燃料の抜き取り、有害物質の除去など廃炉への作業が開始されるが、最終的にメインの建屋が取り壊されるのは、2100年だという。45年運転した施設の撤去に、90年以上もかかる。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-bristol-17189845
AlertNet記事によるとこの原発は世界最古だったそうだ。また、2025年にはこの敷地からわずか数百メートルのところで、新たな原発が稼動することになっている。(英国のatoms for peaceの計画については、この1年かなり報道されているので、詳細はそれらを参照。)
http://www.trust.org/alertnet/news/worlds-oldest-nuclear-plant-shuts-in-britain
福島第一原発は、民間事故調査委の報告書とほぼ同じタイミングで日本以外の(=「海外」の)報道陣に内部が公開されたので、その報告が各メディアに。
Probe finds Japan withheld risks of... via kwout
※この日付はたぶん米国の日付。「28日」は日本の「29日」と見てだいたいOKのはず。
BBC(防護服・マスクを着用する更衣室からメイン・コントロールルームを経て、バスで現場に行くまでの1分41秒の映像つき):
Japan's damaged Fukushima nuclear plant one year on
28 February 2012 Last updated at 14:13 GMT
By Roland Buerk
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-17192215
The atmosphere was calm, but intense. How different from the panic and fear described by the few who have spoken out among the workers who were there in the first days of the disaster, when in the darkness of a blackout they had to rig car batteries to the instruments to try to find out what was happening. When they heard the explosions and waited and wondered, was this death?
At the time, the people of Japan did not know quite what a razor's edge their nation was on as the reactors melted down. The prime minister at the time, Naoto Kan, has since admitted he feared he would have to order the evacuation of Tokyo.
Back at the J-Village, on the edge of the exclusion zone, we found out what may motivate some of these men to risk their lives in what must surely be one of the most hostile working environments on earth.
"I worked here before the disaster, so since my plant is in this condition, I think this is my mission to stay here," said Tetsushi Tarumi who had been selected to meet us.
"As for my health, my dose exposure is within the legal limit. I have no concerns about health."
Then, as I left J-Village, a worker discreetly pressed a note into my hand. When I read it later, I saw it was addressed "To all child in the world".
"Dear our friend," it said. "First, we would greatly appreciate that you gave us much encouragement, and then we could overcome this trial with the encourage you gave.
"Fortunately, we could get the stabilisation of the plants, and the radiation level of the environment is decreasing.
"But this is not the end of our jobs.
"We shall transfer Fukushima Daiichi NPS [nuclear power station] to you after we shall rebuild here more magnificently than that existed before, that will be the true goal of our works.
"Thanks. From your friends, the Fukushima 50 and colleagues."
記事の最後に引かれている「BBC記者がそっと渡された英文の手紙」(標準的に「正しい」とされる文法から少し外れているが、私もこういう英文を書いていた時期があったという前提で日本語化してみる):
「世界の子供のみなさんへ――親愛なるみなさん。まず、みなさんから私たちにいただいた励ましにおおいに感謝します。みなさんの励ましあってこそ、私たちはこの試練を乗り越えることができるでしょう。」
「幸いにも、原発は安定させることができました。環境中の放射線レベルは現象傾向にあります。しかしこれで私たちの仕事が完了したわけではありません。」
「私たちは福島第一原発を、以前より頑強なものに再建して、そしてみなさんに引きつぎます。それが私たちの仕事のほんとうの着地点です。」
「どうもありがとうございます。みなさんの友人、フクシマ・フィフティとその同僚たちより」
BBCではほぼ60分の長編ドキュメンタリーも制作・放映された。それについてはgooニュースの加藤祐子さんの記事に詳しい解説がある。
http://news.goo.ne.jp/article/newsengw/world/newsengw-20120229-01.html?pageIndex=2
民間事故調報告に関する話題以外にも「3/11から一年」を前に特集を組むマスコミは多く、たとえば英BBC Twoは2月23日に「Inside the Meltdown(メルトダウンの内側)」という1時間のドキュメンタリーを放送しました(制作はQuicksilver Mediaというイギリスのドキュメンタリー制作会社)。そしてアメリカの公共放送PBSもこれを「Inside Japan's Nuclear Meltdown(日本の原発メルトダウンの内側)」という題にして、28日夜に放送……。番組は、3月11日からの9日間を1時間に凝縮して振り返っています。福島第一原発の完全メルトダウンを防ごうと戦った人たちを丁寧に取材して。当時の記録映像に後日撮影した映像を織り交ぜて。当時を振り返って語るのは、たとえば「この浜には地震がくれば津波が来る」と承知していた地元の漁師。「3号機が爆発した時は、もう終わりだなと社員の人たちも言っていた」と語る元原発作業員。「日の丸を背負ってあの発電所で戦わなくてはいけないと思った」と語る現作業員。
ガーディアンでは下記(キャプチャ画像中の見出しクリックで読めます)。29日に福島第一原発の現場取材の記事が、その前日に浪江の酪農家さんたちを取材した記事が出ている。私はまだ全部は読めていないのだが、原発の現地取材の記事は、そこで作業する人の言葉(せいぜい2, 3分、ホースを取り付けるのが精一杯の線量の場所がある)や、「そこに生活があった」ことを示す記述が重ねられ、非常に深く立体的。またこのメインの記事とは別に、ジャスティン・マカリー記者個人が重装備の防護服を着用してどう感じたかなど、まさに「皮膚感覚」の記事がある。
※この記事は
2012年03月01日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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