ツイートのログを辿るより、同じことが報道記事として読みやすく整えられた形でガーディアンに出ているのを読んでいただくのがいいと思う。下記。
Sky News clamps down on Twitter use
Tuesday 7 February 2012 19.34 GMT
http://www.guardian.co.uk/media/2012/feb/07/sky-news-twitter-clampdown
いわく、Sky Newsの社員宛てのメールが、(よりによって)ガーディアンにリークされた。そのメールの内容は「ソーシャル・メディア利用に関しての新ガイドライン」。
で、そのガイドラインの内容が、驚愕。これまでソーシャル・メディア活用についてかなり先進的な取り組みを行ってきた(というか好きにやらせていた)Sky Newsとは思えない。。。
今までのSky newsの例(国際部、ティム・マーシャルさん):
……この人、2011年のエジプトでもこんな感じで、ほんとにon the groundのレポートをしていた。英米がまだ「ホスニ・ムバラクは退陣させない」方向だったときに、「革命」にかなり懐疑的な態度を抱いて現地に入り、タハリールの野戦病院を見て心底感銘を受けたと綴り、その後も素直な感情と観察した事実をあわせてツイッターとブログで伝えていたのだが、今後はこういう活動ができなくなるのではないかと思われる。ネットにとって、えらい損失だわー。
さて、問題のメールの内容(上にリンクしたガーディアンから):
"So, to reiterate, don't tweet when it is not a story to which you have been assigned or a beat which you work.
(自分の担当でもないネタについてツイートしないこと。)
"Where a story has been Tweeted by a Sky News journalist who is assigned to the story it is fine, desirable in fact, that it is retweeted by other Sky News staff.
(そのネタを取材に行っているSky Newsの記者がツイートしたものを、別のSky News社員がRTするのは構わない、むしろそういうことはどんどんしてほしい。)
The email said: "1. Don't tweet when it's someone else [sic] story. Stick to your own beat. 2. Always pass breaking news lines to the news desk before posting them on social media networks."
(1. ほかの人の追っている件なら、ツイートしないこと。自分の領域から離れないこと。 2. 速報の場合はソーシャル・メディアに投稿する前に、ニュースデスクに伝えること)
この辺はまあ、別の報道機関のガイドラインでも同じようなものはあるのではないかと思う。「自分のネタだけやってろ」というのは労組が怒りそうだけど(人間疎外だ)、根本的には、「喫茶店でダベってるときに隣の席にいた同業他社社員に話を聞かれて企画盗まれた」みたいなことを阻止するためのルールだろう。
そのへんは下記ブログで肯定的にとらえられている。
http://fleetstreetblues.blogspot.com/2012/02/sky-news-opts-for-old-fashioned-content.html
しかし狂ってるのはその先だ。
"Do not retweet information posted by other journalists or people on Twitter. Such information could be wrong and has not been through the Sky News editorial process."
(Twitterを使っているほかの報道機関の記者や一般のユーザーの書いた情報は、RTしないこと。そのような情報は誤情報である可能性があり、Sky Newsの編集のプロセスを経たものではない。)
なるほど、誤情報に対する警戒。でもそれなら、(Sky Newsに限らず)記者の多くは、何のために「RTしてるからってエンドースはしてません」的な注意書きを添えているんだろう。
それに、「社外の人間のツイートはRTしない」という大雑把な二分法をすると、英首相官邸やら外務省やら外務大臣やら警察やら、スウェーデンの外務大臣(この人のツイートは上手)やら米ホワイトハウスやらロシア政府の英語アカウントやら……という、とにもかくにも「真正 genuine」なところからの告知系の情報ですらSky Newsのツイッターでは扱われない、ということになる。というか、Sky Newsの関係者のツイッターにはSky Newsの話しかない、ってことになる? なら別にフォローしなくていいし。そんならサイトの更新お知らせbotと変わらんじゃないの。
しかもこの様子では、他社の記事(ツイートではなく)を紹介することもできなくなるんではないか……って、さっき@fieldproducerがまさにそれをしていたのだけれども。下記URLの上のほうに入っている。(一連の経緯についての英語ツイートのアーカイヴ。)
http://chirpstory.com/li/4163
ロイターのアンソニー・デローザ:
Sky News longs for Victorian internet, applies dark age social policy
By Anthony De Rosa
February 7, 2012
http://blogs.reuters.com/anthony-derosa/2012/02/07/sky-news-longs-for-victorian-internet-applies-dark-age-social-policy/
Sky should take care and make sure that their journalists are not spreading lies and misinformation. This is the first rule of journalism − but that is not what these policies are about and don’t help to enforce.
このようなガイドラインの設定の理由として、メールでは次のように説明されているという。
The email says that the guidelines have been introduced "to ensure that our journalism is joined up across platforms, there is sufficient editorial control of stories reported by Sky News journalists and that the news desks remain the central hub for information going out on all our stories".
実態として、Sky Newsのテレビやウェブサイトと、Twitter上の記者アカウントとでは、書いていることが違うということが起きていた、とメールは述べている。つまりTwitterでは情報を流す際の「編集者」を介さないので、普通、「編集者」がやっているような調整を経ないままで情報が流れてしまう。それは報道機関であるSky Newsにとってマイナスである、という判断だろう。
しかしそれじゃあ、記者にソーシャル・メディア使わせる意味がないのよ。というか、うちらエンドユーザーにしてみれば、Sky Newsの記者アカウントをフォローする意味がない。きれいに編集された記事が読みたいのなら、サイトの更新フィード(RSS)でいい。(Twitterでもそういうアカウントもある。BBC News Northern Irelandとか。)Sky NewsのこれまでのTwitterの使い方を前提するが、記者のおっかけ(フォロー)をするのは、早く情報を得たいという動機もあるだろうけれど、それ以上に「ニュース記事」の「素材」の部分が読みたいからじゃないのかなあ。(あと、例えば党首討論とか今のLeveson Inquiryのような「イベント」の場合、各報道機関の記者たちの反応を並べて、「ニュースのプロ」たちがどういうところに注目するのかを見たい、というのがあるかもしれない。学生さんはそれで「勉強」になるだろう。)
ウェブサイトやテレビでは接することのできない「楽屋」を垣間見ることができて、ひょっとしたら「中の人」と話もできちゃったりする、というのがTwitterという場だ。そういうのは見せないというのなら、Twitterを使う意味があるんだろうか。というか、Twitterを使ってたら、誰だって「裏」も見せてしまうのではないか。(Twitterに限らず、Redditやはてブのような場でもそれはありうる。)それがソーシャル・メディアっていうものだと思うんだけど……。
Sky Newsのツイートがすべて、現行の「スカイニュース速報」のような、「RSSフィードとしてお使いください」的なものになるというのならそれでもいいと思うけど、それはso 2008だよね。マリオさんがbot作って走らせてた時代。なぜ今さらそこに戻るか、という。
しかも、これが「これがひどい」に値するのは:
@fieldproducerは "Digital News Editor" の肩書きなんだぜ。。。その彼が、どうしてこんな重要な方針を決める場に呼ばれてない?
まあ、だからなんとなく、「わかってない人がツルの一声でダメなものはダメだといった」ような気はする。「ページビューが落ちる」とかで。
上記の@fieldproducerに対するレス。
以下は脇道。
MainichiRTさんの7日の記事で「ソーシャルメディアと新聞」:
http://mainichi-rt.com/news/20120207-6.html
もっとちゃんと読みたいのだけれど、一読しての印象は、「なぜ『ソーシャルメディア』まですっとばしてるのかがわからない」ということだった。というか、「ブログ」とか「コメント欄」は? だから「記事化の前に読者とやり取りする」ということのイメージがわかないんでは?
何年か前の毎日新聞のTV CMで、朝、食卓で新聞を開くと、論者がわーっと背後に現れて議論を開始する、というものがあった。あれって、「新聞というのは、編集部が選んだ論者のお話をパッケージしてるものですよ」というアピールだったんだよね。「朝、食卓で新聞」というセッティングもあって、わたしにはそれが絶望的に「古臭く」見えた。編集者として別な編集者と議論したことがあるのだが、そのころは「編集されてパッケージされたもの」への拒否感が社会の中に沸き起こっていて、その火元は毎日新聞だった(英語版での騒動……私は当時少しフォローして、あの騒動の8割ほどはノイズだったと思っているが)。そういうのわかってるんかいな、みたいな。
今は反動が来ているのか、実際に「編集なし」の情報の洪水がいかにしんどいものであるかが広く認識され、逆に「(ある程度の)編集」が求められているかもしれない。それを「キュレーション」という言い方をしている人もいるが、あの人はどっか根本で誤解している気がする(それはまた別のお話だ)。
ソフトウェア関連とかじゃなく、メディア関連での「ソーシャル」とか「クラウド」とかってのは、要は、閉鎖された組織を開放する取り組みだと思う。「有料登録していないと読めない記事」のことを英語で"behind a paywall" というフレーズを使って表現することがよくあるのだが、「有料の壁」以前に、報道機関には「報道機関の壁」というのがある。その壁の中と外とは、「発信者と受け手」としてしか結びつかない。取材は外で行われるにしても、報道される内容が作られるのはその壁の中だけで、そこに入れる人は限られている。
百科事典にはかつて「編集部の壁」があったが、それがウィキペディアで過去形になったように、「報道機関の壁」をとっぱらっていくということが、「インタラクティヴ」(双方向性)の時代に、ゆっくりと進められてきた(コメント欄とか、「いいね」的評価とか)。
それが新たなプラットフォームを得、「ソーシャル」とか「クラウド」という言葉を与えられて前より見えやすくなって、しかも加速してしているんじゃないか。日本のメディアはほとんど見てないので(私の情報源は90パーセントくらいは英語だ。だから実は日本のことはろくに知らないよ)わからないが、「マスコミ」と呼ばれる組織で、所属組織に関係なく、というか、組織外の人の知識・知恵や情報、スキルなどネットでやり取り可能なものを集積し、ひとつのものを作っていく作業は、近年どんどん「当たり前」になってきているように感じられる。
例えばガーディアンの「ライヴ・ブログ」などに顕著だ。ガーディアンはページを用意して話題のコアを設定し、そのページ全体を統括する記者をひとり置く。編集権は全部握った状態で、書く人を固定化させず、風通しよくする感じ。
「ライヴ・ブログ」のページでは、ガーディアン所属の記者が編集部に入れる情報が、「紙面に掲載される記事」になるより前に紹介される(多くは要点のみ)。緊急性が高い場合は音声メモみたいなのがそのままアップされることもある(2011年8月暴動のときがそうだったはず)。
それより重要なことだが、ガーディアンという組織の外の誰かのもたらす情報も、所属の記者のもたらす情報と同じように扱われる。(「同じように」というのは、分量のことではなく重み付けについて。はやり言葉連発みたいでちょっとアレだが「フラット化」というか、自社の記者の書いたものも、カイロのブロガーの書いたものも同じように扱う、ということだ。)そうして1つのページが作られる。
「ライヴ・ブログ」という形式では、その過程はすべて公開されている。何時何分にどういう情報がアップされたか、という履歴も残る。(そういう情報が形式としてきちんと整えられ、1本の記事になったものと読み比べるとおもしろい。)
「閉鎖的」だった報道機関でこのような動きが始まったのは、2000年代半ば、イラク戦争開始後に「ブログ」というツールが広く使われるようになったころのことだ。「ブログ(ウェブログ)」は、HTMLを書かなくてもウェブページが作れ、ブラウザさえあればどこからでも更新ができるという手軽さでブームになったが、「ジャーナリズム」としてまともにみられるきっかけとなったのは、サラーム・パックスのバグダードからのブログだろう。「西側」のジャーナリストが立ち入ることのできないその都市の中から、サラーム・パックスは隣国の友人ラエド・ジャラールに向けて、日々どんなことが起きているか、自分が何を考えているかを綴った。ラエドも返信した。ツールとして、たまたまサラームが知っていたのでBlogger(まだGoogleに買収される前)が使われたが、そういう成り行きで彼らの往復日記は全世界に公開された。当時はまだウェブサイトの文字コードの問題があったので彼らは母語のアラビア語は使えず、エントリはすべて英語だった(2人とも高等教育を受けていたので英語は達者)。ちなみに、サラーム・パックスの別の友人で、そのころの「バグダード・ブロガー」のひとりが、現在ガーディアンで記者をしているガイス・アブドゥル・アハドだ。
それから月日が流れ、テクノロジーは進展してニュースサイトの記事にはコメント欄があって当たり前になり、BBCであれNYTであれ報道機関は自社サイトに「記者ブログ」を設置するのが一般的になって、風通しはどんどんよくなってきた。2008年から報道機関で大っぴらに使われるようになったTwitterは、「マイクロ・ブログ」なんだけど、BBCならBBCサイトに設置できる「ブログ」と違って、BBCの記者であってもBBCのサイトを離れてTwitter.comで書いたり読んだりRTしたりをせねばならない(正確には、みんなクライアントを使っているのだけど……だからTwitter社は、非常に多くのユーザーを有していたTweetDeckを買収したのだが)。そういったところで、模索中な感じはある。
追記: @fieldproducer がツイートを再開している。
内容は、いつもと同じようなニュース速報系で、APをRTしていたり、ロイターの報道内容を引用していたりする。相当がんばったのかもしれない。
※この記事は
2012年02月08日
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1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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