解説記事:
Third place in country and battered in London - Labour revisits 2004 nightmare
http://www.guardian.co.uk/guardianpolitics/story/0,,1768858,00.html
労働党過半数のカウンシルの中でも、バーキング&ダゲナムはBNP大躍進(とほほ〜〜)だし、タワーハムレッツはRespectがいきなり2ケタに乗せてきた。
私の嫌いなコラムニスト(論説書き専門の人)、ニック・コーエンの論説。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/story/0,,1769485,00.html
■追記:BNPが伸びてきていることについてもっと知りたいという人は、このコーエンの論説ではなく、ロイ・グリーンズデイルの論説をどうぞ。追記ここまで■
これまでのBNPの「バカ議員」っぷりについては、この文章の前半を参照。(地方議会で議員として活動することもまるでなく、欠席してみたり暴行で逮捕されてみたり、そして究極的にはホロコースト否定の言説、ということがコンパクトに書かれている。)書かれている内容が事実であっても、こういう書き方は私は嫌いであるが(行動と政治家としての資質と人格とを分けて考えようという気すらない書き方だから)、内容はネタとしてはおもしろい。
また、ニック・コーエンの批判の矛先はBNPに向かうだけではすまない。BNP批判に続くパートでは「BNPが貧しい白人をターゲットとしたように、イスラム教徒をターゲットとした」Respectへの批判が展開されている。
こういう論調はこの人の書くものにはいつものこと(乱暴な言い方をすると、ケン・リヴィングストンを「反ユダヤ主義」と批判するスタンスと同じ)、「ああまたか」と思ってニヤニヤするだけでいいのかもしれない。
Respectが選挙戦略を超えた部分で、ニック・コーエンの言うようにセクタリアンであるとすれば、シン・フェインがイングランドに登場したってことになるのでそれはそれで興味深いのだが。(と思ったらコメント欄でそういうことを書いてる人がいる。)
■追記:そんなに関心がなかったので詳細は知らないが、ある意味で興味深いことになっていることはどうやら確かなようだ。一応Wikipediaも。あと、Respect公式サイトのTower Hamlets選挙結果一覧は非常に興味深い。TH内の小さな選挙区分(ward)ごとにはっきりと傾向が分かれているのが一目瞭然だ。あるwardでは3人全員が保守党、隣では全員が労働党、隣では2人がRespect、1人が労働党、というように。追記ここまで■
だいたいこういう論の立て方をすれば、何だって「セクタリアン」になりうる。多文化主義も「多文化主義ファシスト」の主張だ、みたいにね。
いずれにせよ、右翼だ左翼だで分けること、「右翼だから」「左翼だから」で支持したり批判したりすることの限界ってものが、このニック・コーエンの文章を読むと、わかるんじゃなかろうか。
それと、「BNP=ホロコースト否定論の白人優越主義者たち」という図式は、まだ終わってはいないけれども、深い部分で変容しつつある。ニック・コーエンはそれを踏まえてない。パースペクティヴがないのだ。名前から明瞭な通り、この人はジューイッシュである。それゆえ「ホロコースト否定論」には敏感である。でも、それを超えるものが感じられない。今回BNPに投票した人の声は真剣に聞くべきなのに、コーエンにはそういう姿勢はまったく感じられない。基本的にこの人の姿勢は「ホロコースト否定論者に投票するなんて、バカばっかりだな」だ。
んで、「バカばっかり」つながりで、「Respectなんていうインチキに投票するバカ」だの「マフィアみたいな連中に投票するバカ」だのと羅列してるんだから、救いようがない。Respect批判の後の部分で、bigotsというつながりのみでシン・フェインの話が出てくるのだ。でも、アイルランドでシン・フェインが得票しているのは、有権者がシン・フェインを支持している/するようになったからだ。それがベストと思って支持している人ばかりじゃない。ベターだからって理由もあるんだ。
そういうことを見ようともせず、単に「マフィアみたいな連中が票を得るなんて嘆かわしい」と言う。そんな論説、読む価値なしである。
とか文句ぶーたれながらこれを読んで、しかもわざわざこれについて書いているのは、最後の部分にかなり興味深いことが書かれているからだ。むろん論考としてではない。英文の見本としてですらない(鼻持ちならない書き方だ)。単に情報として。
... Against all the national trends, Labour overturned the Liberal Democrat majority in Islington.
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Islington? Surely its bruschetta-eating middle classes are still in a fury with Blair about the Iraq war. So they are, but I regret to be obliged to report that inner-London intelligentsia care more about a far graver issue: traffic wardens.
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Islington was one of the first councils to privatise parking tickets - Manchester, Rosendale, Westminster and many others have followed suit. Allowing NCP to patrol the streets seemed a thoroughly modern private-public partnership. Unfortunately, the Lib Dems didn't understand that the criminal justice system and the profit motive don't go together.
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The more tickets NCP issued, the more money it made, so it encouraged its staff to be as punitive as possible by offering gift vouchers for Argos and the chance to win a Vauxhall Corsa to the wardens with the highest hit rates. If you were to pay the police by results, you would expect the number of false arrests and miscarriages of justice to shoot up. And so it proved with traffic wardens. They issued fraudulent tickets and lost all sense of the need for discretion and the importance of taking account of extenuating circumstances. They clamped hearses waiting to collect the dead. They fined pregnant women for nipping into the chemist's. Why should the wardens care, when their pay depended on issuing as many tickets as possible?
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For years, the Tory press has been advocating zero-tolerance policing. Well, Islington has had the zero-tolerance policing of traffic offences and has responded by showing zero tolerance for the politicians who imposed it.
イズリントンでは前回LibDemが過半数を取っていたのだが、今回LibDemが24、Labourが23で単独過半数なしという結果になった。これはなぜかというと、イラク戦争批判とは関係なく、前の議会(LibDem)で違法駐車摘発が民間企業に委託されたためだという。
違法駐車の違反切符を切る係にはインセンティヴが出され、切符を切る係はがんがん切符を切りまくり、ついに有権者がLibDemに我慢できなくなった、というのがコーエンの説明だ。(余計な茶々が入ってて回りくどいのだが。)
イズリントンの今回の結果が出たときに私はかなり驚いたのだけど、なるほど、そういう事情があったのか、って話ですね。
しかしニック・コーエンの、BNPもRespectもメディアも「民営化」された違法駐車摘発もすべていっしょくたに批判できる、その神経はすごいなと思う。(結局のところは、そんなにLabourが好きかってことなんですが。)
※この記事は
2006年05月07日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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