「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2006年09月26日

Omagh bombing公判開始。

今月初めに開廷されたものの、被告側弁護人の病気でいきなりストップしていたOmagh bombing(オマー爆弾事件:1998年、29人死亡)の実行犯として起訴された人物の公判が、25日、開始された。

このことを伝える各メディアの記事見出しと記事の内容の違いが、なかなか興味深い。


まずUK全国版のメディア。

国営BBCは:
'Shortcomings' in Omagh evidence
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/5376102.stm

BBCの裁判記事にはクセがある。それは、「初公判が開かれた」ということではなく、「〜と被告側が主張」とか「〜と検察側が主張」といったことを中心に据えること。これを知らないと、見出し一覧から記事を見つけることがちょっと難しい。

今回もそうで、見出しはいきなり「オマー事件 証拠は『不完全』」みたいなことになっている。書き出しのパラグラフは:
There were "shortcomings" in the handling of evidence against a man accused of involvement in the Omagh bombing, Belfast Crown Court has heard.

このあと、そのshortcomingsとは具体的にどのようなことかが説明されている。いわく、検察側は、他の事件で使われた爆発物とオマーの爆発物との構造上の類似点に依拠して、被告を容疑者として起訴したのだが、押収された証拠品につけられた印(the markings attached to items)は、それに付属する書類と一致していない、と。

記事はこのあと、あっちこっちに話が飛んでいて、正直、とても読みづらい。(BBCでは時々こういう「断片を羅列した記事」が出る。)読んでも読んでも、全体像がつかめない感じ。後述するUTVの記事のほうが、情報は正確に伝わると思う。

さて、BBCはあまりに読みづらいので別なメディアの記事を見てみよう。ガーディアン:
DNA evidence to be used in Omagh bomb trial
http://www.guardian.co.uk/Northern_Ireland/Story/0,,1880624,00.html

裁判で、現場に残されたDNAが証拠として提出される、という見出し。このこと自体は前から報じられていたので、新味はないが、わかりやすい。それだけでなく、記事の書き方も時系列に従っているので、BBCよりはるかに読みやすい。とりあえず読んどくにはこの記事がよいと思う。ちなみにクレジットはStaff and agenciesなので、かなり編集というかリライトの作業が加えられて整理された原稿だと思う。でも何か、全体像はつかみづらい。

もうひとつ、全国メディアから。テレグラフ:
Warnings before Omagh bomb 'meaningless,' court hears
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2006/09/25/uomagh.xml

最初の5パラ(というか5センテンス)で概要を整理したあとで本題に入る。
Mr Kerr [QC, procecuting] said that the media had received the first warning at 2.29 pm some 35 minutes before the bomb detonated ... .

The recognised dissident republican codeword Martha Pope was used during the message, which warned that a 500 lb car bomb was outside the town's Court House and would explode in half and hour.

Two minutes later there was a second warning with the same codeword, saying a bomb would explode in 15 minutes.

At the same time a third warning was sent to the local Samaritans saying that a bomb would go off in 30 minutes in Omagh about 200 yards from the Courthouse.

Mr Kerr said: "It is the prosecution's case that the warnings given were so wrong and so lacking in detail as to be meaningless."

これはえらくまた具体的だ。具体的だが、全体像を提示する記事ではない。

この爆弾テロ事件について、Real IRAは「警告は出した」ということを強調している。また、別のコンテクストになるかもしれないが、事件を主導したのは組織内に入り込んでいた英国当局のスパイであったとも強調しており、要するに「Real IRAは確かにこの事件に関与したが、その関与は最低限のものであり、実際には英国のスパイと警察の責任のほうが大きい」と主張している。(ソースは前の記事に。)

Mr Kerr(検察側)の主張はこれを踏まえたもので、「Real IRAの警告は具体的な情報に欠けており、意味のないものであった」との主張である。

なお、「IRAのテロは無差別テロではない」(<「テロ」という用語を用いるのは便宜上のこと。やった当人たちはそんな言葉は使わない)という神話がある、というか神話が作られている、ということにも留意されたい。「爆弾が爆発する前に警告をしているのだから無差別ではない」という弁解である。だったらそもそも土曜日のショッピング・ストリートに爆弾なんか仕掛けるなよ、という話だと私は強く思うが。(これはRIRAのオマー爆弾だけに限らない。PIRAによるマンチェスター爆弾などいくつもの爆弾事件で「彼ら」の側が自己正当化のために使っている弁解である。)

次。北アイルランドの地域メディアから。まずはUlster TV:
Omagh bomb trial begins
http://www.utvlive.com/newsroom/indepth.asp?id=76906&pt=n

今回の裁判について「5W1H」的な情報を知りたい場合にはこの記事が最もよく整理されていると思う。ガーディアンのよりさらに整理されている。ただし長い。

BBC記事で「不完全」と伝えられていた、現場で押収された証拠については、次のように具体的な説明がある。
All but two of the devices linked to the charges used mark 19 timer power units (TPU), Mr Kerr told the court.

This forms a series from which it can be concluded that the units were all built by the same person, the lawyer stressed.

Fibre evidence will also be used to show a connection between the TPUs at the time of their construction, he added.

また、記事の少しあとのほうには
He said the common denominator was a similar TPU which the security forces had named mark 19.

He said the mark 19 was developed during 1998 - the year of the Omagh bombing - and said it contained an electro-magnetic timing switch with two toggle switches on the lid of an Adidas lunchbox.

He said a mortar attack on the Crossmaglen security force base on March 24, 1998, started this series of attacks. ...

とある。(つまり、被告人がOmaghの前に作った爆弾についての詳細。)

また、テレグラフ記事にあるような「警告」についても、検察側の冒頭陳述を整理した形で、細かく述べられている。(内容はテレグラフとだいたい同じ。)

ベルファスト・テレグラフは:
Omagh bombing trial gets started
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/story.jsp?story=707569

検察側冒頭陳述(の要点)をクオーテーション・マークで伝え、地の文は「あれがいかに残酷なテロ攻撃であったか」の感覚を共有する人たちに向けて書かれたもの、という感じ。まあ、ベルテレなので・・・。


※この記事は

2006年09月26日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 10:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | todays news from uk/northern ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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