「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2006年09月26日

bread and butter issues

bread and butterには、こんにちでは日本語としてはずいぶん古臭く聞こえるようになってしまった「バタつきパン」という定訳がある。私は子供のころ、何らかの翻訳された童話を読んでいてこの表現を知り、「バタ」が「バター」の意味であることを調べて知り、「学校の『国語』のテストでは最後の棒(オンビキ)がないと減点されるのに」と理不尽な思いを味わった。今思えば、ここらへんが「すべてを疑え」なスタンス(懐疑的にみること)の出発点だったのかもしれない・・・なーんてね。

閑話休題。

日本語でも「日常茶飯事(にちじょうさはんじ)」という表現に「茶」と「飯」が入っているが、英語でbread and butterというのもそんな感じで、bread-and-butterとハイフンでつないで1語扱いにし形容詞化させると、「人々の日常に密接な関係のある」というような意味となる。

http://dictionary.cambridge.org/define.asp?dict=CALD&key=9429
bread-and-butter
Bread-and-butter ideas or problems are the basic things that directly relate to most people:
Health and education are the sort of bread-and-butter issues that people vote on.


実例:
"Michael was a colourful character who will be missed by many members of the political family," she said.

"He was honest and straight-forward and I can truly say that he was somebody I could always work well with on bread and butter issues despite our considerable political differences."

「colourfulな人でしたから、political familyの多くのメンバーにとってはさびしいことです。彼は誠実で率直な人でした。政治的には大きな違いがありましたが、多くの人々に関係する日常的なことについては、いつもたいへんよい関係で協力しあうことができました。」

http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/5377630.stm

※ハイフンを入れて1語にするものは、実際にはハイフンなしで表記されることも多い。特にandが真ん中の3語のものはハイフンがないことが多いと思う。

上に引用したのは、シン・フェイン所属のある地方議員が突然亡くなったことに際しての、SDLP(<政党名)のLisburn地方議員のコメント。

シン・フェインとSDLPは政治的には一致する点より一致しない点が多くあるが(あえて言えば「過激主義」と「穏健主義」)、どちらもアイリッシュ/カトリック/ナショナリストが基盤の政党である。地方議会で扱われる地域住民の生活に直結するような非政治的なことがらでは、多くの場面で意見を同じにしていたのだろう。

さて、北アイルランドのようなところで、シン・フェインという極端な政党の議員が亡くなったということで、ナショナリストじゃない側(大雑把に言えば「敵」側)のお悔やみのコメントも気になる。
Ulster Unionist assembly member Billy Bell extended his sympathies to Mr Ferguson's family.

"From our time on Lisburn Borough Council I knew Michael to be not only an energetic political opponent, but more importantly he was a dedicated family man.

"Michael's brave decision to go public in a bid to raise awareness over the nature of his illness also says much about his personal qualities," Mr Bell said.

UUP所属の北アイルランド・アセンブリー(<地方議会の上)議員であるこのビリー・ベルさんは、たぶん、亡くなった議員と同じ経歴(シティ・カウンシル議員→アセンブリー議員)だ。

「地方議員として、彼は政治的には手ごわい相手であると認識してきましたが、それ以上に彼は本当に家族思いの人物でした」として、「政治」とは関係のない方面、つまり「ご遺族の皆様には心よりお悔やみ申し上げます」(condolenceとかsympathyとか)でまとめ、次に「病気について意識を高めさせるためにすべてを明らかにするという勇気ある決断もまた、彼らしいものでした」と、亡くなった人の人格をたたえている。

an energetic political opponentという面はほとんど語られていないが、この人がUUPの議員だということから、その言葉の少なさこそを読み取るべきだろう。

なお、亡くなったのはMichael Ferguson議員(MLA for West Belfast, and a councillor on Lisburn City Council)。53歳で、死因は精巣癌。夜間に容態が急変したようだ。

亡くなる直前に新聞取材に応じて本人が語ったところによると、昨年9月に具合が悪くなってGP(医者:専門医ではなく一般医)の診察を受けたが「問題ない」と言われ、場所が場所だけにどうも医者にかかりづらく感じてしまい、再診を受けたのは9ヵ月後だった、という。

MLA for West Belfast, and a councillor on Lisburn City Councilというのは、「北アイルランド・アセンブリー議員(ウェスト・ベルファスト)であり、なおかつリスバーン市議会の議員」ということ。Councillorになったのは1999年。MLAになったのは2003年。住宅、交通、地域緑化などの分野でコミュニティ・アクティヴィストとしての経歴があるようだ。また、シン・フェインの教育担当スポークスマンでもある。(utv

北アイルランド・アセンブリーは2002年10月のストーモントゲイト事件以来機能停止している(それでも2003年に改選は行なわれた)から、ファーガソン議員はアセンブリーに出ることなく死去したということになる(アセンブリーを再起動させるための集まりには出ているだろうが、それは除いて)。

スラオさんではコメント欄を閉じてファーガソン議員の死を伝えている。コメント欄を閉じているのは、おそらく、ベルテレさん記事の最後に書き添えられていること(Mr Ferguson, who served eight years imprisonment in the 1970s in relation to an armed bank robbery, ...)と関係がある。

ちなみにWest Belfastはこんなところ:
http://en.wikipedia.org/wiki/Belfast_West_%28UK_Parliament_constituency%29
UK Parliament(ウエストミンスター)に誰を送り込んでいるかを見れば、どういう地域かはわかると思います。Wikipedia記事には1960年代からの選挙のデータがあるので、それも一通り。

北アイルランド・アセンブリーでは、ファーガソン議員の死去にともない、シン・フェインの候補者が繰り上げ当選になるようです。

※この記事は

2006年09月26日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 02:22 | Comment(1) | TrackBack(0) | 英語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
葬儀:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/5388320.stm

the mourners who included Sinn Fein leader, Gerry Adams, as well as unionist and nationalist politicians from other parties
とのことで、葬儀には各党の政治家が参列。(DUPは宗教上カトリックの教会には立ち入れないはずだけど詳細不明。)
Posted by nofrills at 2006年09月29日 15:08

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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