「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2011年12月26日

「マーティン・イングラム」についての覚え書き

以下は、あとから自分でもわからなくなりそうなので当座の覚え書き。

「マーティン・イングラム」ことイアン・ハースト。元陸軍情報部(Intelligence Corps)、元FRUで、スパイのハンドラー:
http://en.wikipedia.org/wiki/Martin_Ingram

下記の本の著者(共著):
0862788439Stakeknife: Britain's Secret Agents in Ireland
Martin Ingram Ian Hurst Greg Harkin
O'Brien Press Ltd 2004-02-18

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本の内容については、amazon.co.ukのレビューなど参照:
Stakeknife: Britain's Secret Agents in IrelandStakeknife: Britain's Secret Agents in Ireland
Martin Ingram Greg Harkin

Big Boys' Rules: The SAS and the Secret Struggle Against the IRA The Operators: On the Streets with Britain's Most Secret Service (Pen & Sword Military Classics) Unsung Hero Killing Rage Fifty Dead Men Walking

by G-Tools


この「イングラム」が北アイルランドの一般のニュースに出てきたのは、2006年5月末(5年半以上前、セント・アンドリューズ合意前、つまり北アイルランド自治政府再起動前)の「シン・フェインのあの大物は(以下略」論のとき、その前は上記の本、Stakeknifeのときだろう。

2004年よりも前にはさかのぼれないが(そのころはまだサイトがなかったので。でも03年のスティーヴンス・インクワイアリのときに「イングラム」は注目されている→記事あった。ガーディアン、2003年4月16日。本人執筆)、Sluggerでの検索:
http://sluggerotoole.com/page/2/?s=martin+ingram

その彼が今年は、(北アイルランドではなく)英国の一般のニュースに出てきた。それも2度(トピック2件)にわたって。

1度は、News of the World紙による不法な取材(電話盗聴、phone hacking)をめぐる調査報道において。
http://en.wikipedia.org/wiki/Timeline_of_the_News_Corporation_scandal

上記ウィキペディアのタイムラインを参照すると確認できるが、2010年からガーディアンなどが「疑惑」として報じていたNotWの不法取材は、2011年1月23日のMet PoliceによるOperation Weeting開始で「事件」化、4月にはNotW編集部の当事者が逮捕され、7月には「疑惑」が次々と表ざたにされ、そのあまりの卑劣さに有力広告主(在郷軍人会など)がNotWに出稿停止、ほどなくニューズ・インターナショナルはNotWの廃刊を決定した。

「疑惑」がニューズ・インターナショナルの深いところにも「延焼」するなか、9月にはLeveson inquiry が開始。ヒュー・グラントら盗聴の被害にあった芸能人、行方不明になっているマデリーン・マッカンちゃんの両親ら、セレブではないが盗聴の被害にあった人々、デイヴィッド・リーら「疑惑」について調査報道を行ったジャーナリストら、多くの人々の証言が公開のかたちで(インクワイアリだから「公開」はいわずもがなだが)行われている。今は冬休みだが、休みに入る直前は「疑惑」が燃え上がったきっかけとなったミリー・ダウアー事件での「盗聴した挙句、勝手に伝言メッセージを消去した」との疑惑は否定され(自動消去されたと警察は見ている)、盗聴していたのはNews Int'l所属メディアだけではないということで互いに「う○こー」と叫んであれこれ投げ合うようなひどい展開になっていた。
http://en.wikipedia.org/wiki/Leveson_Inquiry

ともあれ、そのLeveson Inquiryにて「イングラム」(ハースト)が証言している。彼自身が盗聴の被害にあっているので。
51 victims were named by the Inquiry as of November 2011. They were:

...
22. Ian Hurst, former army intelligence officer
...

一連の「ニューズ・インターナショナルの盗聴スキャンダル」をひっぱったのはガーディアンの調査報道だが、「イングラム」の件を表に出したのは、BBCのPanoramaだった。2011年3月。
http://stakeknife.blogspot.com/2011/03/ian-hurst-aka-martin-ingram-in-bbc-news.html

番組のページは、英国外からは役立つ部分(ビデオ)は見られないのだが:
http://www.bbc.co.uk/programmes/b00zn7hk#synopsis

番組の説明の記事:
News of the World executive obtained hacked e-mails
14 March 2011 Last updated at 00:04 GMT
http://www.bbc.co.uk/news/uk-12712400
A senior News of the World executive obtained e-mails hacked in to by a private detective, Panorama has found.

Then Irish edition editor Alex Marunchak was sent ex-British intelligence officer Ian Hurst's private e-mails in 2006, it found.

...

Panorama obtained details of e-mails from Mr Hurst's computer that were sent to the News of the World's Dublin office by fax, and identified the man who accessed them by using a Trojan virus contained in an e-mail.

He was a former colleague of Mr Hurst who had served in the same undercover unit, who cannot be named for legal reasons.

つまり、(NotWの雇った)私立探偵と思われるが、元同僚が「イングラム」のパソコンにトロイの木馬を仕込み、彼の私的なメールを盗み、NotWのアイルランド版の編集長(当時)に送っていた。

(番組はこのほか、この編集長がアイルランドでいわばゴッドハンドぶりを見せていた件についても調査、警察からの情報の流れがあったことも検証しているが、それは別の話題だ。)

Leveson Inq. でのハースト(イングラム)の証言:

Leveson inquiry: Ian Hurst says police involved in 'News of World cover-up'
Monday 28 November 2011 14.57 GMT
http://www.guardian.co.uk/media/2011/nov/28/leveson-inquiry-ian-hurst
Hurst featured in a BBC Panorama programme broadcast in March this year which alleged that a fax containing extracts of his emails was sent to the Dublin office of the News of the World in July 2006.

He said in a statement to the inquiry that the News of the World may have been trying to obtain information about the British intelligence agent within the IRA known as Stakeknife.

Panorama's journalists told the former intelligence officer that the now-defunct Sunday tabloid hired a private investigator to target him, who in turn commissioned a specialist hacker – referred to only as Mr X – to access his computer.

Hurst knew Mr X as someone who had served in the intelligence community in Northern Ireland and arranged to meet him to question him about these claims, the inquiry heard.

"He more or less charted the events from the middle of June 2006, he states for a three-month period, and all the documents he could access via the back door Trojan – emails, the hard drive, social media," he said.

"He did not say this but the Trojan that we have identified would have allowed the webcam, so he could have actually seen me or my kids at the desk."

Mr X said he infected the computer by sending an email from a bogus address and tricking Hurst into opening the attachment, the inquiry heard.

But the former intelligence officer said he believed the virus actually came from a "trusted media contact from a well-known newspaper". ...

この証言を読むと、トロージャンを仕込むという手段はよくあったのかな、と思う。

Levesonについては、12月23日付けで下記でまとめられている。
http://www.guardian.co.uk/media/2011/dec/23/leveson-inquiry-story-so-far

ほんで、この件(「イングラム」がハッキング被害にあっていたこと)に関連して、さらにでかい話が……というのが、2011年11月28日。

Peter Hain warned computer may have been hacked by private detectives
http://www.guardian.co.uk/media/2011/nov/28/peter-hain-computer-private-investigators

Peter Hain warned his computer 'may have been hacked'
29 November 2011 Last updated at 01:47 GMT
http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-15932368

Peter Hainが誰なのかということは、私はわかってるので詳述しない。ポインターだけ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Peter_Hain
重要なのは、"Secretary of State for Northern Ireland: In office: 6 May 2005 – 27 June 2007" という事実だ。この時期何があったかというと、「歴史的」なあれこれがね。(これも私は把握しているので詳述しない。)

で、「ピーター・ヘインが北アイルランド担当大臣だったときに、コンピューターに侵入されているかもしれないと警察から警告されていた」というこの報道が最初になされてから1ヶ月近くも経過してからようやく、これは、ヘイン本人によって事実と確定された。その間、ニューズ・インターナショナルとガーディアンの間で「う○こ」の投げあいが……一事が万事この調子なんで、ほんとに疲れる。

Peter Hain confirms investigation by police of high security hacking
Staff reporter
The Guardian, Friday 23 December 2011
http://www.guardian.co.uk/politics/2011/dec/23/peter-hain-investigation-police-hacking

これが「イングラム」がニュースに登場した2件の1点目だ。つまり、タブロイドの不法取材は、当時の政府要人にも及んでいたこと、そしてその先(ヘインとメールをやり取りしていたような人々)は、北アイルランド和平の「マン・オヴ・ピース」のみなさんだったという事実。

まあ、セント・アンドルーズ直前などは、よほど太いパイプを持ってるメディアでも何もつかめないような状態だったので、「ネタ」のためなら何でもやるタブロイドがこのくらいやっていたからって、驚きには値しないのかもしれない。

「イングラム」が出てきたもう1つのニュースは、これは100%完全に北アイルランド紛争関連だ。

で、まともに筋道立てて書くのは非常に疲れるし、時間も食うのでソースも示さず適当に書くが(どうせソース示したって誰もチェックしやしないし、北アイルランド紛争と中東紛争を同一視するような粗雑なことを平気でしてみせて、情報の価値としては限りなくゼロに近いような「わたしの雑感」を私に送りつけてくる人は、「わたしの雑感」を文字にすること、それを誰かに読ませることが目的である以上、なおさらソースなんて見ないし)、スティーヴンス・インクワイアリとコーリー勧告でインクワイアリ開催すべしと裁定された北アイルランド紛争での「当局と武装組織との癒着 collusion」の事案である5件の事件のひとつで、唯一ボーダーの南側で発生し、したがってインクワイアリも南で行われているRUCの警官殺害事件。これは、南の警察とIRAが繋がっているのではないかという疑いがある。

このインクワイアリを、担当判事の名前をとってスミスウィック・インクワイアリというのだが(ブクマなどで私がときどき「スミスウィック」と書いているのはこれのこと)、これが、北じゃないからなのか何なのか、「その箱を開けちゃうんだ!」続出というか、元々の事件とかなり離れてないかというところまで出てきている。

先日は、「私はIRAに潜入していた」と公表している元スパイのひとり、ケヴィン・フルトンが証言した。フルトン証言は前回別の事件で北アイルランドで行われようとしたとき、直前に邪魔が入った(ベルファスト入り直前に彼は、まったく別の事件で「重要参考人」的に逮捕された。そして結局は無罪放免となったのだが、予定されていた証言は行われなかった)。

そればかりか、「イングラム」本の主題であるコードネーム、Stakeknifeという大物スパイは彼だとされている人物(フレディ・スカパティッチというのだが)も証言するとかいう話になっている。

※ソースはブクマからどうぞ。
http://b.hatena.ne.jp/nofrills/dirty%20war/

あとは書くの面倒になってきたのでこれで。



「IRAの最上層部の半分は……」という説をとなえているのが「イングラム」(ハースト)で、その説が出されたのがスミスウィック・インクワイアリー。

そして、それが「絵空事」ではないという証言をしたのが、下記で触れたマガートランドだ。

2011年12月25日 【メモ】イングラム(ハースト)情報についてアップデート
http://nofrills.seesaa.net/article/242414306.html

マガートランドはベルファストのナショナリスト地区で育った「カトリック」で、お母さんはかなりガチな人のようだ。彼自身、紛争の時代に、北アイルランドの警察(RUC)と英軍による「アイリッシュ・カトリック」に対する途方もない暴力をファーストハンドで目撃し、自身もそれにさらされてきたのだが、同時に、彼が大きくなった時代(80年代)にはIRAの「自警団」活動もものすごいことになっていて、「IRAに目をつけられたら終わり」的な状況。つまりマガートランドの育った環境は、あっちもこっちも理不尽な暴力に満ちていて、しかも学校を出たところで仕事などありはしない。かくして彼は(10代にして付き合ってた女の子――それもプロテスタント!――を妊娠させ、子供を産ませたりといったことがありつつ)、盗品を売り歩いてそこそこの収入を得るようになる。そうこうしているうちに、RUCにスカウトされ、町を見張っては特定人物の動向をRUCに報告する「スパイ」となる。そしてその後、驚いたことに今度はIRAからもスカウトされる……というようにして、当時のIRAベルファストのかなりディープなところまで入り込んでいた……という人が、陸軍情報部というかFRUのハンドラーの「IRAはずぶずぶに浸透されていた」という証言を「事実」として確定させた。

ただしその「浸透」していた人々のやっていたことの程度というか、「エージェント」といってもさまざまですよ、という解説記事も、23日付のベルテレに出ている。書いているのはリーアム・クラーク。

Dark world of agents is not black and white
http://www.belfasttelegraph.co.uk/opinion/columnists/liam-clarke/dark-world-of-agents-is-not-black-and-white-16094277.html

んで、ベルテレのこの記事↑を読み、また今年あった「過去」の「癒着 collusion」をめぐる数々の動き――特に、ローズマリー・ネルソン爆殺事件の調査結果、それからUVFのいわゆる supergrass trial (←これらも全部ブクマしてあるのでそちらで)――を思い返し、同時にまた北アイルランド自治政府の「司法」の考え方やら、英国政府の「もうブラッディ・サンデーのインクワイアリのような、期限と費用に歯止めがなくなるようなインクワイアリは行わない」との決定(→パット・フィヌケン事件)やら、北アイルランドの今の警察オンブズマン(カナダ人のアル・ハッチンソンという人がやっているのだが)の筆舌に尽くしがたいほどのぐだぐだっぷりなどを思い起こすと、明らかに「過去」への対処の「次の段階」の始まりだなあ、と思う。

政治も「次の段階」に入っているけどね。ピーター・ロビンソンの発言(があまりにすごいので、サミー・ウィルソンなどがガチ保守の発言をしているのだが)と、対照的なシン・フェインの沈黙(北では……アダムズがいなくなると静かなもんだ)。

http://b.hatena.ne.jp/entry/www.belfasttelegraph.co.uk/news/local-national/northern-ireland/northern-ireland-first-minister-robinson-threatens-to-quit-16077593.html

※この記事は

2011年12月26日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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