「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2011年12月26日

みなさんのクリスマス・メッセージ。

アイルランド共和国のマイケル・D・ヒギンズ大統領のクリスマス・メッセージについては先に書いたが:
http://nofrills.seesaa.net/article/242411016.html

25日はみなさんのクリスマス・メッセージの日である。

教皇ベネディクト16世は、シリアでの流血の停止を訴えた。
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-16328895

イングランド国教会(カンタベリ大主教、ヨーク大主教)は、シティの強欲や8月暴動での略奪を参照しつつ、欲望のまま暴走する「獣の時代」に抗し、社会から失われている信頼と絆を回復しなければならないと訴えかけた。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/dec/25/church-leaders-britons-beastly-ways

英国のエリザベス女王のクリスマス・メッセージも既にオンラインで見られるようになっている。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-16328788

スクリプト:
http://www.bbc.co.uk/news/uk-16328899

王室の人々がクリスマス休暇を過ごすサンドリンガムに入ってから、エリザベス女王の夫であるエディンバラ公が、胸の痛みを訴えて病院に担ぎ込まれ、緊急手術を受けるということになった。手術は成功したが、すぐに退院できるわけではなく、エディンバラ公はクリスマスの行事には出られなかった。そんな中、エディンバラ公入院前に録画されたメッセージで、女王は「家族の価値」について……という解説がなされているが、そんな解説記事を読んでいる時間があるのなら、女王のメッセージそのものを聞くなり読むなりしたほうがよいだろう。

なお、女王のスピーチは多くの場合、文面は政治家(議会)などの考えるものだが、クリスマス・メッセージは女王自身が書かれている、とBBC記事の末尾にある。

エリザベス女王のクリスマス・メッセージは、毎年、「この1年を振り返る」というものだが、今年のはまず、「家族」や「逆境の中、新たに育まれる友情」について話すことから始まる。

"Indeed, sadly, it seems that it is tragedy that often draws out the most and the best from the human spirit." (実際、残念なことですが、人間の精神から最大で最上のものを引き出すのは、悲劇的な事態であることが、しばしばです) と述べ、女王はオーストラリアを訪問したことを回想する。とても「今年の出来事」のような気がしないが、豪州は大洪水の被害にあっている。それから、2月の大地震のあと、ウィリアム王子がニュージーランドとオーストラリアを訪問したことに言及し(ニュージーランドはつい先日も、また大きな地震に見舞われた。死者はいなかったそうだが、液状化がひどい)、またチャールズ皇太子(the Prince of Wales)がウェールズの炭鉱事故(4人亡くなっている)の際のコミュニティでの努力を直接見たということに触れ、「人間性 the human spirit」を語る。

そして、女王ご自身の経験に話は移る……女王のアイルランド共和国訪問と、米大統領による英国訪問。
This past year has also seen some memorable and historic visits - to Ireland and from America.

The spirit of friendship so evident in both these nations can fill us all with hope. Relationships that years ago were once so strained have through sorrow and forgiveness blossomed into long-term friendship.

It is through this lens of history that we should view the conflicts of today, and so give us hope for tomorrow.

「何年も昔のことですが、一度は非常に緊張した関係があり Relationships that years ago were once so strained」という言葉が、今さら、「アメリカ」について用いられているとは考えづらい。このスピーチの原稿を書いたとき、女王の念頭にあったのは、アイルランドだけだったのではなかろうか……などと想像をたくましくしてしまう。(書き上げてから、「あらま、米大統領が国賓としていらしてたのに、抜けてるわ」と気づいて、あとからねじこんだのではないか、など。)

そのあと、女王の言葉は、「家族と申しますのは、血縁関係に限ったことではありません。コミュニティや組織、国家を称して家族、ということも頻繁です」と続き、「コモンウェルスの53カ国は、信念、価値観、目標を共有したひとつの家族である」という論になる。(上で言及したアイルランドやアメリカは、コモンウェルスではない、純然たる「外国」である。)

そして、「家族」はまた字義通りの意味となり、「孫の結婚」の話になる。(「王室担当ジャーナリスト」が言葉を深読みするのはここだろう。)

そのあとは、「クリスマスも家族と一緒にいられない人々、一緒に過ごす家族のいない人々」への言及があり、「世界はいま、大変な時にあります」と述べ、ここで初めて「クリスチャンのお祝い」という言葉が出る。(英国王は、イングランド国教会の首長でもある。)

Finding hope in adversity is one of the themes of Christmas. Jesus was born into a world full of fear. The angels came to frightened shepherds with hope in their voices: 'Fear not', they urged, 'we bring you tidings of great joy, which shall be to all people.

'For unto you is born this day in the City of David a Saviour who is Christ the Lord.'

Although we are capable of great acts of kindness, history teaches us that we sometimes need saving from ourselves - from our recklessness or our greed.

God sent into the world a unique person - neither a philosopher nor a general, important though they are, but a Saviour, with the power to forgive.

Forgiveness lies at the heart of the Christian faith. It can heal broken families, it can restore friendships and it can reconcile divided communities. It is in forgiveness that we feel the power of God's love.

この、キリスト教の概念としてのforgiveness (赦し) は、その信仰を持たぬ者、その教義を自分のものとして持たぬ者にとっては、非常に理解が難しい。難しいのだけれど、これがキーとなる場面は、非常に多い。南アの真実と和解委員会、デズモンド・ツツ大主教の取り組みなどはまさにそうだ。

このforgivenessの……類義語というと何か違うような気がするのだが、そういう存在が、peaceだということを、私は北アイルランド和平プロセスで教えられた。その北アイルランドの政治トップ、自治政府ファースト・ミニスターのピーター・ロビンソンのクリスマス・メッセージより:
http://www.mydup.com/articles.asp?ArticleNewsID=4098
Christmas is one of the central events in the Christian calendar. We remember the birth of God's son who was the Prince of Peace. This year we saw for ourselves that evil criminals want to shatter peace. They will not win. Peace and stability are precious commodities and are also important when trying to persuade investors to come here to increase our prosperity.

As First Minister, I am determined to do all that I can to build upon the peace and stability we have secured. I ask everyone in Northern Ireland to remember all those families who have lost loved ones during the Troubles who will feel their absence keenly at this time.

ピーター・ロビンソンは政治家で実業家(不動産業)だが、若いころは過激なユニオニストの活動家であり、宗教指導者で政治活動家だったイアン・ペイズリーのもと、ファンダメンタリズムの過激な言辞を弄していた。"who have lost loved ones during the Troubles" という言葉は、「和平」前なら、"who have lost loved ones by/in the IRA's violence" だっただろう。(実際、今もそのスタンスの人たちもいる。)

ピーター・ロビンソン個人がここまで来るために、何を知り、何を聞き、何を考えたのだろう。

いつか、第一線を退いたピーターがそういうことを語っている光景というのは、案外簡単に想像できる。(昨年の「アイリス騒動」での「自宅で、やつれきった姿をさらしてのインタビュー」以降、この人はまったくイメージが変わったし、イメージだけでなく本人の発するメッセージも変わったのだが。)

これが、マーティン・マクギネスとかジェリー・アダムズでは、まったく想像ができない。

ピーター・ロビンソンはこんなことも述べている。
At Christmas, many older people feel isolated and alone. If you have an older neighbour, take ten minutes to call by and say "hello". A small gesture like this can mean so much to someone.

クリスマスの時期、身寄りなく孤独な思いをされているお年寄りも多くいらっしゃいます。もしご近所にお年寄りがいらしたら、10分でいいので、家を訪問して声をかけてみてください。こういうちょっとした行為が、たいへんに大きな意味を持つ、ということがあるのです。


日本で、「今年の漢字」は「絆」だったよ、と伝えるBBC記事:
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-16321999

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W. Somerset Maugham

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英エリザベス女王のメッセージについて、アイリッシュ・タイムズ:

Queen Elizabeth hails new era in Anglo-Irish relations
http://www.irishtimes.com/newspaper/breaking/2011/1225/breaking12.html
Queen Elizabeth used her annual Christmas broadcast to speak of the “long-term friendship” that has now been forged between Britain and Ireland.

The British monarch reflected publicly for the first time on her successful state visit to Ireland last May in an upbeat broadcast which included footage of a number of the sites and landmarks she, and husband Prince Philip, visited during their four-day trip.

She spoke warmly of the bond that now exists between the two nations, stressing that the future ties between the two countries should fill everyone with hope.

Reflecting on her “memorable and historic” visit here, she said: “The spirit of friendship so evident in both these nations can fill us with hope. Relationships that years ago were once so strained have through sorrow and forgiveness blossomed into long-term friendship.

“It is through this lens of history that we should view the conflicts of today and so give us hope for tomorrow.”

※この記事は

2011年12月26日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼















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