この調査のことは,はなゆーさんのところで知りました。
調査を行ったWorld Markets Research Centerのサイトは印刷物を売るための注文ページという感じで,概略しか述べられておらず。(ちなみにお値段£950。←小数点を探した。)
というわけで,こういうがさっとしたニュースは
Google NewsかBBC NEWSを見るのが確実です。
で,Google NewsでのWMRC検索結果。
でも私はBBCの記事を読んでみました。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/3159749.stm
引用:
The UK has been ranked 10th in the world for its vulnerability to a terrorist attack.
つまり,「テロ攻撃に対する脆弱性において10位」。脆弱だから標的になりやすい,だから「テロの標的になりやすい」ということ?
なーんだ,だったらそんなに低くないかも。最初は「テロ攻撃が発生する確率」かと思ったんです。だとすれば,英国が10位というのは,ちょっと低いんじゃないかと。
イスラム原理主義過激派が云々以前に(ロンドンも拠点のひとつですが。特に北アフリカ系過激派の),IRA,もとい,RealIRA。2000年〜2001年にも,プラスチック爆弾とか自動車爆弾が何度か仕掛けられています(BBCとかイーリングのパブとか橋とか。MI6も迫撃砲か何かのターゲットになったはず)。
まあ北アイルランドの武装闘争グループのやることの破壊力はそんなにすごいものではないことは事実。IRAは90年前後が今では考えられないくらい盛んでしたが,威力のないテロ行為やテロリズムの脅迫の積み重ねで,都市機能を攻撃,という感じ。「市役所に爆弾しかけたんでよろしく」電話とか。中にはほんとに破壊的な爆弾もありましたが(ケガ人はよく出ていたし,死者もときどき)。
9-11以降の「テロ」が,IRAに慣れていた英国のBBCにUK ON TERROR ALERTという特設コーナーを作らせるほどに脅威とされるのは,おそらく,破壊力という点かと思います。
ともあれ,WMRC調査によるテロ脆弱性トップテンは次の通り。
1. Colombia
2. Israel
3. Pakistan
4. United States
5. Philippines
6. Afghanistan
7. Indonesia
8. Iraq
9. India
10. UK
10. Sri Lanka
調査を行ったWMRCのバックグラウンドは,ちょろっとしか見てませんけど,「ビジネス!」と云う感じ。……何となく,米国の国防総省が諦めた「テロ賭け」も連想。
再度,記事より引用:
"London is probably unique in the world for the sheer number of symbolic targets," he said.
「シンボル的な標的の数という点だけでも,ロンドンは世界で類を見ない」とのコメント。(文中heはdirector of research for the WMRCのこと。)
これを煽りと見るか,客観的事実と見るか。立場によっていろいろあるかもしれませんが,私は客観的事実と思います。その上で,なぜロンドンの国会議事堂やバッキンガム宮殿(←「ベッキンガム」ではないので注意。参考)がシンボリックな存在になったのか,その経緯は,英国人自身(特に上の方の人々)によって再考されるべきでしょう。それをしなければ,WTCが崩壊した時に「私たちが何をしたの」と泣き叫んだ米国の人と同じ。この点,私は私が知っている英国の人々に,かなり期待をしています。というか期待したい。英国の人=アングロ・サクソンではないということを知っている肌の白い人々に。
記事の最後は,WMRCの調査を「テロ対策が過小評価されており,方法論としてダメな調査」と冷静に批判する大学の先生のコメントで締められています。
「全世界で10番目」ねぇ……例の「45分で使用可能なWMD」じゃないですけれど,必要以上にセンセーショナルな文言って,裏に何かあるような気がしてならないです,ワタシ的には。英国の歴史上の悪行を見れば,いわゆる「国際テロ」という文脈で10位ということは,不思議なくらい低いような気も。IRAとはまた別に。
※この記事は
2003年08月21日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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