Omagh bomb suspect goes on trial
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/5317414.stm
被告は起訴事実はすべて否認しているとのこと。
In all, he denies a total of 58 charges including five other bombings, four bomb conspiracies, six murder conspiracies and having explosives.
しかしすごいな、58の容疑って。うち29は殺人(Omaghの犠牲者の数)のはずだけど。
ボーダーの南の報道:
Omagh accused to stand trial
05/09/2006 - 14:17:36
http://breakingnews.iol.ie/news/story.asp?j=194459228&p=y94459934
こっちでは「合計61の容疑のうち29が殺人」となっている。BBCでも以前の記事では「合計61」だけど。
IOLの記事にある内容:
法廷にはおそらく、現場から採取されたDNAが証拠として提出されることになる。また、北(アイルランド)でテロ事件の裁判では陪審員を置かないことに法律で決められているので、今回の裁判でも陪審員はいない。裁判所に通うことが難しい犠牲者の家族のためにビデオリンクが検討されている。
警察の捜査は非常に時間がかかった。(2002年1月に北アイルランドの)警察オンブズマンは、警察による初期捜査と当時の警察のトップ、ロニー・フラナガンに対して極めて批判的なレポートを出した。事件の数日前に情報提供者2名から北でのテロ攻撃の警告があったにも関わらず、警察はしっかりと対応しなかったのである。
今回、裁判が始まる容疑者は、2003年には既に15 terrorist offencesで起訴されている。
Omagh suspect appears in court
Saturday, 6 September, 2003, 11:47 GMT 12:47 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/3085424.stm
The charge of possession of explosives is understood to relate to the Omagh bombing. ... Mr Hoey was also charged with conspiring to cause an explosion in Lisburn, County Antrim, three months before the Omagh attack, and being a member of a proscribed organisation, the Real IRA.
この時点ではOmaghについては「爆発物所持」の容疑だったが、2005年5月には実行犯(製造から関わっている)として追起訴された。
Man faces new charges over Omagh
Thursday, 19 May, 2005, 10:36 GMT 11:36 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/4561997.stm
A south Armagh electrician is to face 61 new charges related to the 1998 Omagh bombing in which 29 people were killed.
During a brief court appearance at Craigavon, Sean Gerard Hoey was also told he would be charged next week with 29 counts of murder.
Omagh bombing accused is charged
Thursday, 26 May, 2005, 10:17 GMT 11:17 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/4581597.stm
A County Armagh man has been formally charged with the murders of 29 people in the 1998 Omagh bombing.
Omaghの実行犯として立件されたのはこの容疑者・被告が最初。つまり事件から7年近くが経過してようやく実行犯1人を起訴することができた、ということになる(爆弾の計画については有罪判決を受けた人がいるのだが)。
でもそれから1ヶ月もしないうちに、公判は延期が決定した。今回始まるのは、延期されていたこの裁判だろう。
なお、2005年にはこの被告とは別の男性がOmagh爆弾に関与した疑い(テロに使われると知っていて車を提供した疑い)で逮捕・起訴されたが、こちらはcharge droppedとなっている。
いずれにせよ、この爆弾テロについてはまだほとんど何も明らかになっていない。8年が経過してもまだ、というだけでなく、犯行声明も出ているのに、である。
が、この「犯行声明」も後から謎になってしまった。
このテロを行なったと犯行声明を出しているReal IRAが、2001年、「組織に潜入していた英国のエージェントがこの計画を主導した」、「彼らはメンバーではなかったが確かに関わりがあり、また彼らはわれわれの暗号も使っていたので、道義上の責任を感じて犯行を認めた」(<微妙ですが、そのエージェントがエージェントであるとわかっていなかった段階で犯行声明を出したのかも)との声明を出したのだ。そして「その証拠もある、われわれの関与は最小限である」と。
http://irelandsown.net/rira1.html
In the immediate aftermath we had contact with a senior government representative, as well as a cleric, acting as a mediator, and both confirmed to us on separate occasions, that they were in possession of information that established our minimal involvement in this terrible tragedy.
いずれにせよ、この事件はテロ組織のテロ行為に当局によるdirty warが絡んで、むちゃくちゃ謎めいている。興味のある人は"Kevin Fulton"で検索を。こういうの↓がどかどかと出てくるので。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/northern_ireland/1779751.stm#telephone
http://www.relativesforjustice.com/publications/transcript_omagh.htm
http://news.bbc.co.uk/1/hi/programmes/hardtalk/4896772.stm
http://www.theatlantic.com/doc/200603u/stakeknife
http://www.amazon.co.uk/Unsung-Hero-Kevin-Fulton/dp/1844540340/
なお、Kevin Fultonは被告側の証人として出廷してもよいとメディアの取材に対して述べている。タイムズの記事を見ると、今回の被告は「爆弾製造のできた唯一の人物」ってことで起訴されてるみたいだけど、ケヴィン・フルトンはそれに反論できるらしい。
http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2091-2330477,00.html
http://www.derryjournal.com/ViewArticle2.aspx?SectionID=3421&ArticleID=1726600
■Omagh bombing
1998年4月に北アイルランド和平合意(ベルファスト合意、またはグッドフライデー合意)が成立してわずか数ヵ月後の8月15日土曜日の午後、北アイルランド内陸部、County Tyroneの最大の都市Omaghで自動車爆弾が爆発した。週末でにぎわう都心部に仕掛けられていた500ポンドの爆発物は、スペインから訪れていた人や妊婦を含む29人を殺し、200人以上を負傷させた。(BBC記事では負傷者数は300人以上とあるが。)
http://cain.ulst.ac.uk/events/omagh/
この爆弾テロは1ヶ所での爆弾テロ事件としては、北アイルランド紛争を通じて最大のものだった。(ただし1974年にアイルランド共和国内でロイヤリスト武装組織UVFが行なった(と19年後に認めた)同時多発爆弾テロで33〜35人が死亡し300人近くが負傷しているので、「北アイルランド紛争で最大の」という説明については慎重にすべきところだ。)
事件から3日後の1998年8月18日にReal IRAが犯行を認める声明を出している。
http://cain.ulst.ac.uk/events/peace/docs/rira18898a.htm
Real IRAはIRA(Provisional IRA)の分派。和平合意は「リパブリカンの目的とは一致しない」との理由で反対し、和平を推進したIRAから分派した過激派(というか武装闘争至上主義者たち)である。基本的には、1920年代に内戦に突入したときの対立軸と同じ対立軸なのだが、内戦になるような規模ではない。(しかしユニオニスト/プロテスタント側でRIRAと同様に和平合意に強硬に反対しているDUPという政党が最有力政党にのし上がるなど、情勢は「予断を許さない」。)
事件後、ブレア首相はDemocracy will triumph over evil.と発言し、テロリストを非難している。(<こういう言葉遣いはGWBの専売特許じゃないってことで。むしろ、ブレアの方が先。)
北アイルランドでの爆弾テロといえばセクタリアンな攻撃がほとんどだが、Omagh Bombはセクタリアンな攻撃ではなかった。つまり、リパブリカンがロイヤリストを攻撃したわけではなく、カトリックがプロテスタントを攻撃したわけでもない。和平反対(武装闘争主義)の過激派が、和平そのものに対して攻撃をした。標的となったのは街そのものであり、特定の集団ではない。(RIRAは「経済的標的」と弁解しているが、土曜日のショッピング街のどこが「経済的標的」になりうるのか、理解ができない。)
CAINの資料(Table NI-REL-03を参照)によれば、Omaghはカトリックが人口の69パーセントを占める街だ。そういう街の、土曜日の午後のショッピング・ストリートに500ポンドの爆弾を仕掛けたのだから、それだけでも「カトリック過激派がプロテスタントを殺そうとして」ということではないということがわかる。
「○○といえば△△」といった安易かつ安直な連想で「テロ」を語ってはならない。
追記:
今回法廷に立つ被告の名前(Sean Gerard Hoey)で検索して出てきたOmagh爆弾についてのBBC記事をざーっと眺めていると、ほとんどどの記事にも「双子を妊娠していた妊婦を含む29人が殺された」と書かれている。単に「29人が死亡した」と書かれているよりも、いかにひどい攻撃であったかが記憶に刻み込まれる書き方だ。BBCではないかもしれないが(<一気に複数記事を参照しているので不確か)中には「犠牲者にはまだ生まれていない双子が含まれる」などといったものまであった。
※この記事は
2006年09月06日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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Omagh bombing trial is adjourned
Last Updated: Wednesday, 6 September 2006, 14:20 GMT 15:20 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/5317414.stm
理由は被告弁護人の体調不良。弁護人は「ドクターストップが出ていますが、出廷しました」と述べた。再開の日時は未定。
New date set for Omagh bomb trial
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/5339226.stm