「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2011年10月25日

雑誌Empireの「イギリス映画100選」

過日、図書館に行ったらこんな本があったので、借りてきた。

英国コメディ映画の黄金時代―『マダムと泥棒』を生んだイーリング撮影所英国コメディ映画の黄金時代―『マダムと泥棒』を生んだイーリング撮影所
チャールズ バー Charles Barr

マダムと泥棒 【スタジオ・カナル・コレクション】 [Blu-ray] モラン神父 [DVD] フォロー・ミー FOLLOW ME [DVD] ボディ・アンド・ソウル [DVD] エッセンス・オブ・スコリモフスキ

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「英国のコメディ」=twisted sense of humourが当たり前という感覚でいると、非常にクラシカル(古めかしい)な感じの作品群だが、かつてロンドン西部のイーリングにあった「イーリング撮影所」という制作会社で制作された喜劇映画(私も全部通して見たことのある映画はない)についての本だ(なお、撮影所の施設は今もあるが、イーリング映画の製作会社は1955年にBBCに買収され、フェードアウトしている)。

一般に「イーリング・コメディ」というと第二次大戦後から1950年代終わりの作品を指すことが多いが、この本は第二次大戦中のプロパガンダ色の濃いコメディ(人情喜劇、というか)のところから書き始められていて、非常に興味深い。(対ナチ・プロパガンダの中にあっても「冷静に見て、我々にはこのような弱点があるので、みな気をつけよう」といった啓蒙のトーンは、大日本帝国のプロパガンダとも、米国のプロパガンダとも違う。)

そんなとき、「シネマ・トゥデイ」さんのアカウントからこんなツイートがあった:


雑誌Empireの人たちが「英国映画100選」を選んだらしい。記事(シネマ・トゥデイさんの記事は、本当に、ライターさんも編集部さんも、「映画が大好き」というのが伝わってくるというか、友達としゃべってる感覚で非常にいい)の最後に「トップ10」があるが、そのトップ3を見て心底感心した。好き・嫌い・個人の思い入れ関係なく、見事に「イギリス」だ。

ちなみに、トップ10は以下の通り。

1.『アラビアのロレンス』 
2.『モンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン』
3.『赤い靴』……

※引用に際して改行を改めた。

1は「歴史スペクタクル超大作」&「帝国主義」&「プロパガンダ」(都合よく語られる「大きな物語」と、語られない「都合の悪い物語」)、2はAlways look on the bright side of lifeという以外は説明するとヤボになるからあんまりしないけど「宗教というシステム」と「笑いへの転化」と「謎の本気」、3は「感情移入できる、わかりやすいメロドラマ」(<ジェーン・オースティン、『ブリジット・ジョーンズの日記』の系譜)。映画業界が話題づくりのためにPRのカネばらまいて作らせる「ランキング」とは明らかに違う。

というわけで@manamiさんのご教示でEmpireの元記事を見てみた。



知らない映画、見てない映画がたくさんあるが、リストの各作品のタイトル(写真ではなく)をクリックすると、映画の詳しい説明が読めるようになっている。

Nil By Mouthが入ってる段階で「うほー、ガチだわ!」(この映画にあるようなことを踏まえずに語られる「労働者階級」論は、空しい)。ちなみにこの映画は、ゲイリー・オールドマンが自身の生い立ちを参照して作った「クソ・リアリズム」の映画だ。昔書いた、レビューのようなものがある。
http://homepage2.nifty.com/nofrills/films/film_n1.html



で、ゲイリー・オールドマンといえばTrack 29経由で(すさまじい映画でしたな)ニコラス・ローグなのだが、100本の中に3本入っている。「ニコラス・ローグ」の名前で誰もが思い浮かべるタイトル3本だ。中でも『赤い影 Don't Look Now』は、これ見てないと(&原題を知ってないと)シネフィルの会話に入れない英国映画、という感じだった。(日本人の場合、そういう映画を見ているというだけで一目置いてもらえることもあるが。)

※ここで私は「ゲイリー・オールドマンでジャン・レノとナタリー・ポートマンに行かない私ってスノッブ」と思って、フフンとなっている。

リストに戻ると、76位に入っている映画では、その「時代」に「そこ」にいただけに、実に色々なことを思い出す(あのような出来事があったわけではないが)。65は、私はブリテンというより「アイルランド」(の精神性、怨念、言語と身体の関係)と見たが(作家はイングランド人だが)、その「アイルランド」が表出するためには「ブリテン」の存在が不可欠だったということで、一種のネガでもある。

あと、「やっぱり」的な入り方をしているのがケン・ローチ。Kesいいよね、Kes。一方で意外にも……以下ネタバレになるので文字白くしておきます。読みたい方はマウスで塗りつぶすなどしてください。

一方で意外にも、ケン・ラッセルが入ってない。それから、Children of Men, The Rocky Horror Picture Show, Oliver! (1968) などがない。

そんなことより、デイヴィッド・リーン率の高さが異常だとか、いろいろと楽しめます。というか私は楽しんでいます。

なお、私が1940年代の映画を年齢の割にはたくさん見ているのは、高校生のときに「英語のリスニングの勉強」と称して、NHKの衛星放送で衛星名画劇場を見ていたからです。『逢びき』や『哀愁』はそのときに見ている。

3位に入っている『赤い靴』は、うちの親が子供の頃(終戦後)に巡回映画館で見てたような映画です。うちが衛星放送チューナー入れてほどなくこの映画が放映されて、そのとき親からその話を聞いた(アメリカ映画ですが、『風とともに去りぬ』がそういう機会に上映され、当時の大人たちが「戦争中にこんなすごいのを作っていた国に戦争しかけたんだから、そりゃ無謀だ」と語っていた、といったエピソードは、けっこう語られていると思います)。著作権が失効しているので500円DVDになってる。



で、エントリ冒頭に書いた「イーリング映画」だが、7位のKind Hearts ... がそうだ。アレック・ギネスが1人8役をこなした伝説的映画。
Perhaps the most celebrated of the Ealing Comedies, Robert Hamer's Kind Hearts and Coronets (1949) is the blackest of black humor. Alec Guinness's octople role catapulted him to stardom, and Ealing became synonymous with quirky British humor until Monty Python came along. Its scathing rebuke of the British class system anticipates vicious films like The Ruling Class and Barry Lyndon. Kind Hearts delivers the same message with a deceptively classy tone: restraint is the order of the day, no matter how cruel and dark the humor underneath.
http://nothingiswrittenfilm.blogspot.com/2010/04/kind-hearts-and-coronets.html


Kind Hearts And Coronets (1948)
http://www.empireonline.com/100britishfilms/film.asp?film=7



もちろんエントリ冒頭で言及した書籍でもこの映画のことは書かれているので、それを読んで寝るとしよう。

その前に、100本の中には入ってなかったけど美男美女主演のメロドラマの傑作、『哀愁』が10分間で把握できる映像(笑)。ドイツ軍の空襲に晒されたロンドンで出会った踊り子と将校の悲恋……「時代」に翻弄された1人の女性の物語。



淀川さんの解説(私、これの放送見た……)



※この記事は

2011年10月25日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:55 | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼