4月7日の英BBC2の番組、Newsnightでこの番組についておよそ15分の特集が組まれた。ぐずぐずしているうちに放送後24時間を経過してしまい、Newsnightのウェブでの視聴ができなくなってしまったのだが、番組内容の書き起こしを以下に。
BBCのNewsnightで放送した15分のフィルムの概要:
Balkan voices
Across what was once Yugoslavia, television stations this week are broadcasting voices in the wilderness - families split apart by the wars of the 1990s speak to each other by video letter. Matt Prodger tells the sad tale of separation.
――BBCのNewsnightのサイトより(ビデオはもう変更されています→この部分だけ単体でビデオが視聴できるようになっていました)
以下、Newsnightの書き起こし。(英語は映像についていた字幕。)
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自宅の台所にビデオカメラをセットする中年の女性。ビデオの前に座る。
Senad, my son.
I'm so excited.
I know that when you see this you'll either laugh or cry.
別のビデオレターに切り替わる。
I would like to see all my friends again ...
but I'm not sure how they'll react.
What will they do when I show up?
男性が車から降りてビデオを車の屋根に置く。
Hello Brana, I'm Pera's uncle.
Pera, your friend wants to see you.
墓石に貼られた写真。
Bur sadly you were killed.
居間に座る中年女性。
I'm asking you to help me to find the bodies of my children.
I've been searching for them.
The only thing I'm living for is to give my children a proper burial.
ビデオレターを見て泣く中年女性。
I'm sorry.
This is extremely difficult for me.
やや高齢の男性。テレビカメラに語る。
One went from being simply a Yugoslav to being a nationalist.
And then you start thinking "I must defend myself from those I once wanted to live alongside."
高齢の男性、ビデオレター製作中。
We're not angry with you, we're still your friends.
We don't think you are guilty.
それを見て涙を浮かべる家族。ビデオレターの音声が続く。
We don't blame all Serbs,
and we know you are good people, a good family.
We still love you.
サラエヴォ市内を走るバスの車内。
取材したBBC記者のナレーション。
「サラエヴォ市内の建物には、今でも戦争の傷跡が生々しく残っている。このバスには、旧ユーゴ全域からの人々が乗っている。コソヴォの人、セルビア=モンテネグロの人……みな、もう何年も会っていない友人知人に会いに行くところだ。」
ビデオに2人の25〜30歳くらいの男性。VladaさんとIvicaさんという字幕。
一軒の家の居間。Vladaさんがいる。
「この家族はベオグラード出身のセルビア人。」
居間に高齢の男性が入ってくる。
「この家族は【聞き取れず】から来た。」
食卓につくIvicaさん。
「両家族の父親はかつて一緒に仕事をしていた。子どもたちは休暇を一緒に過ごしていた。」
両家族の昔の写真。子どもたちが10歳くらいのときのもの。
「ただし戦争が始まって、両家のコンタクトは途絶えた。」
Ivicaさんのお父さん(と思われる)。
Bullets were flying around ourside the house.
It wasn't nice.
That's when you don't exactly love Serbs.
Ivicaさん。「重い口を開く」という感じ。
Maybe this is stupid, even harsh.
But the fact that our friendship was broken.
It is perhaps the least damage from this war.
Other people lost more.
You can't replace limbs and families.
That's hard to forget.
Vladaさん。
He knew me when I was a little boy.
He doesn't know me as an adult.
If I contact him now, maybe he won't think of me as a friend.
Maybe he'll just see me as a Serb.
お父さんと並んでビデオに向かって微笑むVladaさん。
Hello.
Ten years after we last saw you, we are alive and well.
そのビデオレターを見るIvicaさん一家。ビデオの音声。
And I hope you are.
We would like to hear you and see you. Goodbye.
涙を浮かべるIvicaさん一家。
お父さん:It's OK.
Ivicaさん:Ten years. Unbelievable.
お父さん:He became very ill. I often thought about him.
両家族の再会。抱き合う両家族。
BBC記者ナレーション。
「先週末、サラエヴォでいくつかの家族が再会した。この両家族もその中にいた。」
「今回のプロジェクトの目的のひとつが、戦争によってエスニック・ディヴァイドの両側に分かたれてしまった家族たちの和解だ。」
抱き合うVladaさんとIvicaさん。英語でBBCのカメラの前で語る。
【1フレーズ聞き取れず】
After so many years, I saw my friend again.
We are friends, still friends,
【数フレーズ聞き取れず】
BBC記者ナレーション。
「番組の製作者たちは、5年かけてバルカンを回った。ビデオと1つの簡単な質問を用意して――『連絡を取りたい人はいませんか』」
番組ディレクター、Eric van den Brockさん。
「ボスニアに来たときに、自分たち自身の目で戦争の影響を見て衝撃を受けた。だがやがて私たちは一般の人たちを撮影し始めた。人々はよく『友人から電話もない。がっかりしている』と言った。『あなたは電話をしたんですか』と尋ねると、必ず『いいえ』という返事が返ってくる。そして私たちがあちら側に行って取材をすると、人々はまったく同じことを言う。どちらも『電話一本ないなんて』とがっかりしていた。」
もうひとりの製作者、Katarina Rejgerさん。
「戦争前には本当に仲が良かったのに、電話がないのはなぜか、と尋ねた。人々は理屈ではなぜなのかをわかっていた。」
Velimirさん。50代半ばくらいの男性。
BBC記者ナレーション。
「VelimirさんはKosovo Serbである。家族のうち7人を、戦争で失った。彼はかつて職場を同じにしていたアルバニア人たちにビデオレターを送った。」
Velimirさんからのビデオレター。
You probably heard that my family suffered a lot.
Many of them were killed, even though none of them was guilty of anything.
I'm asking you to put in a good word for me, so that I can visit the graves of my parents, and those relatives still alive.
ビデオを送られた相手が、返信のビデオレターを作る。傍らに息子(12歳くらい?)。
You and I were always honest with each other.
And we remain so. We have nothing to hide.
Visit me whenever you like.
微笑む父子。
I'm still playing chess.
I'm improving my game.
That's how I'm spending my time.
BBC記者ナレーション。
「しかしVelimirさんにとってはまだ和解はない(yet there is no reconciliation for Velimir)。というのは、彼がビデオレターを送ったアルバニア人の同僚は、ほかの人たちと一緒にサラエヴォを訪れるはずだったのだが、その予定を取りやめたのだ。コソヴォで、彼らがセルビア人に話しかけているのをテレビで見られるのを恐れたのだ。」
相手からのビデオレターを見るVelmirさん。肩を落としている。
BBCのカメラに向かってVelimirさん。
The two guys refused to come.
And they don't want the programme to be broadcast.
They didn't expect so much publicity.
It hurts. It breaks my heart.
Because the struggle over Serbia and Kosovo is still ongoing. It's not over yet.
BBC記者ナレーション。
「番組はボスニア=ヘルツェゴヴィナでも放送されることになっている。ここはほかの場所よりもいっそう番組の主旨に適した場所だろう。人々はいまだに、エスニック・クレンジングの残したものに苦しんでいる。」
BBC記者
「かつてユーゴスラヴィアだったコミュニティ間に橋をかけようという試みはこれまでにもあった。しかし成功したのはごくわずかだ。かつて住んでいた場所を訪れたくない、あるいは訪れることのできない人が多いのだ。だからこそテレビが有効になりうる。ビデオレターにはborderがないからだ。」
広場に集まる人々の映像。
BBCナレーション。
「視聴者がどう反応するかについては不安もあったが、旧ユーゴ諸国の8つのテレビ局が番組の放送をすることになった。」
BHTテレビ(ボスニア)のMilan Trivicさん。
「3話を見たが、この番組を見た人たちは、『昨晩のあの番組を見たか?』とお互いに話をし、ひょっとしたら考え方を変えるようになるのではないかと思う。確かに国の政策はあるが、友人との関係はそれとは別だろう、と。」【←要旨】
自室でビデオレターを見る中年男性。テレビ画面の中に高齢の女性。(年取ったマレーネ・デートリッヒみたいな感じのかっこいいおばあさん。)
Djordje, hello.
Come to us. We're waiting for you.
your friends and your neighbours.
アパートメントのドアの前に立つ男性。ドアが開き、「マレーネっぽいおばあさん」が出迎える。
Hello. You are OK?
抱き合う。
Come on. Get inside.
別のビデオレター。女性から女性へ。
I don't know what happened to you.
but a lot of bad things happened to me.
再会した女性たち。抱き合う。
次々と、ビデオレターと、再会し抱き合う人々の映像。
BBCナレーション。
「一連のひどい戦争のあとで和解する友人や家族たち――一度見たら心から離れないものだ。この番組を放送するテレビ局各局は、この番組が旧ユーゴ全域で国境をこえてヒットし、和解への道を切り開くものとなることを願っている。」
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■追記(11日):
今気づいたのですが、この日の放送分から上記のビデオだけが、番組のサイトから見られるようになっています。
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コメント:
惜しいことをしました
在英のチコです。腰痛で寝ていて見逃しました。NEWSNIGHT、ほとんど毎晩見てるのに。残念。再録してくれてありがとう。
このところ数日、戦争を記録した劇映画について考えていて、ボスニア&コソボについては「ウェルカム・トゥ・サラエヴォ」と「ノーマンズランド」ぐらいかなあと思っていたのでした。湾岸戦争は、もう15年もたつのにあの妙な「スリーキングス」ぐらいしか思いつきません。ほかにあった?
投稿者: ゲスト at 2005 年 04 月 10 日 05:36:08
>在英のチコさん
どうもです。このnewsnightのフィルム、ビデオレターのやり取りを淡々と編集した部分には、バルカンの音楽(悲しげなもの)が流れていました。
「戦争を記録した劇映画」は、
・「ボスニア 映画」で検索したらこちらのページにいくつかあげられていました。(アンゲロプロスの『ユリシーズの瞳』は、見たいと思っていてまだ見てない作品の1つです。)
http://www.pluto.dti.ne.jp/~z-chida/movie.html
・「湾岸戦争 映画」で検索したら、
マイケル・キートンとヘレナ・ボナム・カーターの出てる映画とか(<説明を読むと、ちょっと『ネットワーク』っぽい?)、
http://dvd.eigaseikatu.com/dvd/146264/
あと直接的に「戦争」を描いたものではなさそうですがジョナサン・デミの作品。
http://www.so-net.ne.jp/movie/search/cgi-bin/search.cgi?cinema_id=143464
『スリー・キングス』は妙な映画でしたね。(嫌いではないのですが。)
投稿者: nofrills at 2005 年 04 月 11 日 12:31:37
※この記事は
2005年04月09日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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