http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-15055109
ベンガジはカダフィ政権にとって常に「反体制派」の町だったそうだが、今年2月15日、今に至る大きなうねりの発端となったベンガジでの抗議行動は、この大量虐殺事件で身内を殺された人々も多く参加していた(ベンガジではアブ・サリム事件被害者遺族の真相究明を求める動きはずっとあったそうだ)。この人々の願いが――身内がどうなったのか確認し、殺されているのならちゃんと葬ってやりたいという願いが、ようやくかなうことになるのだろう。そしてまた、この人々を誰がどのように殺したのか、ということも、うまくいけば解明されるだろう。
(ただしその点、決して楽観はできない。そう思うのは、私が見ているエリアが「1972年1月30日に軍隊が射殺した13人の死の真相が公式に認められたのは、2010年6月だった」とか、「謎の火災で証拠書類が焼失した」とか、「建物がアスベストで汚染されているので中にあった警察の書類は写しも取らずに全部廃棄」とかいったことがぽこぽこ発生し、同時に調査報道ジャーナリストが「公式のshoot-to-kill policyがあったとは考えられない」と結論するようなことが普通にあるエリアだからかもしれないが……。)
そんなときに、北アイルランドからこんなニュース。
Gaddafi 'in £1m gift to dissidents just before his ousting'
By Deborah McAleese
Monday, 26 September 2011
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/local-national/northern-ireland/gaddafi-in-1m-gift-to-dissidents-just-before-his-ousting-16055060.html
「カダフィが政権の座を追われる直前に、ディシデント・リパブリカンに£1mを贈呈」。
んまぁ。
記事曰く、26日(月)の英ITV 1でのドキュメンタリー/調査報道番組で、リビアのムアンマル・カダフィと、アイルランド(北アイルランド)の「非主流派リパブリカン」(Real IRA, Continuity IRAなど)との関係について取り上げる。
記事には概略、次のようなことが書かれている――「番組プロデューサーらにMI6の情報筋(1名)が語ったところによると、今年6月、既に継続的にNATO軍がカダフィ政権の軍隊を標的として攻撃を加えていたころ、リビアのカダフィ政権の使節がロンドンを訪れた。手にしていたスーツケースには、ビニールで梱包した札束が入っていた。この使節はロンドンで、カダフィ一族がナイツブリッジ地区に所有する高級アパート(か何か)に潜伏した。そして札束をあるビジネスマンに渡した。その額、200万ドル(=約130万ポンド)。そのビジネスマンは非主流派リパブリカンのセルを支持していると思われる。」
記事は続く。「カダフィは、自身の政権を転覆することを支援した英国を攻撃しようと、北アイルランドで高まる政情不安を利用しようとしていた、というのがこの番組の内容だ。かつて(=70年代、80年代)、北アイルランド紛争が最も激しかった時期にカダフィが行なったのと同じことである。つまり、(英国を攻撃することを狙って)IRAの活動を金銭的に支援したのである。」
「MI6の情報筋は番組に対し、『当局は、非主流派リパブリカンが拡大しており、支持を増やしていると懸念している。カダフィからの新たな現金で、さらに武器を補充し蓄えることもできよう』と述べた。」
番組はこういった最新状況のほか、70年代、80年代のリビアによるIRA支援についても振り返るとのこと。
英国にいらっしゃる方は、ITV 1で、26日(月)の午後10時30分からです。1時間番組。

http://www.itv.com/TVGuide/
Exposure: Gaddafi and the IRA
Today on ITV1 from 10:35pm to 11:35pm
Gaddafi gave the IRA enough weapons to turn a militia into an army. Exposure examines his support for republican terrorists and investigates the continuing danger of his legacy. SUB
Documentary Current Affairs
Also: at least one repeat.
番組のプレスリリース:
http://www.itv.com/presscentre/exposure/week39/default.html
中身がごっついものなら、後から「〜という番組があった」という形式で新聞などでも取り上げられると思います。今回、情報源がMI6だし……。
リビアとIRA (Provisionals) の関係については、これまでにも何度もクローズアップされている。例えば下記は、今年2月のBBC Northern Irelandの調査報道番組の抜粋のようだ。
http://www.youtube.com/watch?v=wMkygIYW2eM
この後、PIRAへの武器支援を現場でサポートしていたムーサ・クーサが、よりによってロンドンに亡命するということがあり:
http://en.wikipedia.org/wiki/Moussa_Koussa
一方で、リビアが積極的に支援していた時代のIRAをよく知っているはずのマーティン・マクギネスは――本人曰く、「1974年にはもうIRAは辞めていた」そうだが、そんなのを誰が信じるのか……――、現在、アイルランド共和国大統領候補として選挙運動をがんばっている。南北のボーダーをなくすために爆弾だの銃撃だのをやってきた人が、南北のボーダーを前提とした地位に就こうと運動している。
ははは。
英語でいう、interesting timesなんだけどさ(笑)。誰がっていうより、全体的に、何もかもが。
http://www.phrases.org.uk/meanings/may-you-live-in-interesting-times.html
まあ、実際、米ブッシュ政権での「テロとの戦い」の中ではムアンマル・カダフィとその息子たち、および政権はおそらく、米英の当局の「手の中のコマ」だったのだろうけど、その前、特に例の「養女ハナ」が「殺された」ことになっていた(でも、つい最近、トリポリが陥落してはっきりわかったのだが、現在も彼女は生存しているし、英国はビザ出してるし……)バブ・アル=アジジヤへの攻撃などのころは、カダフィは「反米・反英の雄」として、「敵の敵は味方」で、英国に対する武装闘争を挑んでいたIRAを手厚く支援していた。武器を与え、訓練場所を与え……。
そういった点、ちょっと見てみたら、こんなん出てきました。
※この記事は
2011年09月26日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
【todays news from uk/northern irelandの最新記事】
- 【訃報】ボビー・ストーリー
- 【訃報】シェイマス・マロン
- 北アイルランド自治議会・政府(ストーモント)、3年ぶりに再起動
- 北アイルランド紛争の死者が1人、増えた。(デリーの暴動でジャーナリスト死亡)
- 今週(2019年3月3〜9日)の北アイルランドからのニュース (2): ブラディ..
- 今週(2019年3月3〜9日)の北アイルランドからのニュース (1): ディシデ..
- 「国家テロ」の真相に光は当てられるのか――パット・フィヌケン殺害事件に関し、英最..
- 北アイルランド、デリーで自動車爆弾が爆発した。The New IRAと見られる。..
- 「そしてわたしは何も言わなかった。この人にどう反応したらよいのかわからなかったか..
- 「新しくなったアイルランドへようこそ」(教皇のアイルランド訪問)