「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2006年04月15日

ロイヤリスト武装組織UVFはまだ「戦争中」。

UVF、「われわれの辞書に『武器を棄てる』はない」ってさ。。。
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/story.jsp?story=686796

今年の1月末、私は次のように書いた。

2005年夏、IRAが「武装闘争終結」を宣言し、武器を放棄した。それから半年経って、2006年1月30日にはUDAとUVFが武器を棄てる方向にあるという報道があった。Times記事によると「6〜8週間以内に」とのことである。


↑の文中の「Times記事」ってのはこれね(正確にはSunday Timesだった):
The Sunday Times
January 29, 2006
Loyalists set to give up weapons
http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2091-2014757,00.html

今回のベルファスト・テレグラフの記事:
We won't give up guns yet, say UVF
Deadline for deal holds key to moves
By Brian Rowan
13 April 2006
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/story.jsp?story=686796
※数日で有料になるので、お早めにどうぞ。前半はインタビューのまとめで、インタビューの本文はLoyalists come out of the shadows to talk about peaceから下。

最も重要な部分を抜粋:
"Quite frankly, decommissioning is not a word that we use in our vocabulary. Decommissioning is something that the Ulster Volunteer Force have neither promised nor discussed nor are likely to become engaged in.

"It is not on our agenda."

Not now or ever, I asked.

"I can only speak for now and for the short and medium-term," he replied.

orz..................

何でも、UVFの上層部がマスコミの取材に応じるのは「およそ30年ぶり」だとか。

記者の目の前で語るUVF幹部は、バラクラバをかぶっていたが(つまり顔を見せない)、記事を読んだ限り、かなり率直に語ったようだ。

(こういう仕事はベルテレじゃないとできないかも。)

私、ここしばらく、北アイルランド紛争のひどかった時代(70年代から80年代)についての本を何冊か読んでいるのだけど、この「およそ30年ぶり」のインタビューには、全体的に、「どこが30年ぶりなんだ」という気分だ。すなわち、「人間って、変わらないわね〜」

しかしどうして北アイルランドのパラミリタリーはこういう表現をするのだろう。言葉だけ見たら、IRAなのかUVFなのか区別つかんな。(単に「軍隊のまね」なのかもしれないが。)

公的には、「北アイルランド紛争」は終わった。1998年のグッドフライデー合意(ベルファスト合意)で終わった。それから7年以上もかかってIRAが「武装闘争終結」を宣言し、武器を使えなくして、英軍の監視塔も撤去されて(今月はじめ、South Armaghに残っていた最後の塔の解体が始まった)、「紛争」と呼ばれる状態は終わった、はずである。

けれども、ベルテレ記事にあるように、IRAもnot goneだし、UVFもUDAもnot goneであり、その意味は・・・

IRAの「闘争(struggle)」ないし「戦争(war)」は、「帝国主義的支配者」に対するものであるとして(実際に現れた現象としてそうであるかどうかはさておき)、UVFやUDAの「戦争(war)」は何に対するものか。

ON THE LOYALIST WAR:

UVF: I would still say that that campaign was justified and that that campaign was legitimate. The constitutional integrity of Northern Ireland was under threat. The pro-Union population of Northern Ireland were under threat, and this organisation responded commensurate to that level of threat.


そう、「threatに対する自衛」の「戦争」というのが、彼らの主張である。

インタビュアーはこの直後にダブリン-モナハン爆弾事件(1974年のUVFかUDAの爆弾テロ。33人死亡)などについて、justified なのか、legitimate なのかと問う。UVFは「個別の事件については答えられない」と応じる。インタビュアーは、ではLoughinisland(1994年のUVFによる銃乱射。6人死亡)は、と問う。UVFは次のように答える。

UVF: What I will say to you is that the Ulster Volunteer Force campaign was justified.


つまり、「UVFのやったことは、UVFのキャンペーンなのだから、正当なものである」のだ、と。

インタビューの少しあとの部分:
ROWAN: There were many individuals - innocent individuals - killed. Would you accept that?

UVF: I would accept that in the course of the conflict that many civilians have been killed.

ROWAN: And your organisation regrets that. Is that what you are saying?

UVF: I'm saying that our organisation have offered abject and true remorse as of our October 1994 statement and our position remains unchanged.

ROWAN: But the loyalist war, you're saying, was still justified.

UVF: Clearly, yes.


UVFは「コラテラル・ダメージ」とか「ミステイク」とは言えない。そう言える立場(などというものがあるとすればだが)にはない。なので壊れたレコードのように「UVFは正しい」と言い続けるしかないのだろう。

最後の部分から:
The organisation [=IRA] has not gone away, and whilst they exist, there is always a level of threat to the loyalist community and to the constitutional position of Northern Ireland within the United Kingdom. At this stage, that (threat) is not military -- It has been said before that war is politics by another means. The republican movement used that in the inverted sense, that politics is war by another means. At this stage, the republican movement, it is our belief, are pursuing their campaign in an unarmed, but nevertheless, a belligerent fashion."


「ロイヤリスト」か「リパブリカン」かという区別が続く限り、この「戦争」は終わらないだろう。

しかし、植民地統治で踏みつけられてきた(<あえてこの言い方をする)人たちが立ち上がったら「われわれにとっての脅威である」とするこの思考、前回のUVFのインタビューがあった30年前どころか、1916年(イースター蜂起)と何も変わらんな。

人間って(以下略)

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転記前、コメント欄での追記:
蜂起から90年目のイースター・サンデーのST報道
Most senior UVF leaders were 'British agents'
The Sunday Times
April 16, 2006
http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2091-2136456,00.html

1990年代のUVF指導部のほとんどが、英国治安当局のエージェントだった件につき、ついにサンデー・タイムズが報道。

今のところほかのメディアでは記事なし。

ベルテレでは14日にPUPのDavid Ervingのインタビュー記事を掲載(PUPはUVFの武装部門でErvingはUVFの「テロリスト」だった経歴を有する)するも、ST報道とは関係のない内容(NI devolution関連)。
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/story.jsp?story=686962

at 2006 年 04 月 17 日 12:31:16


Belfast Todayの論説
Time to disband

Loyalist paramilitaries would do the people of Northern Ireland a big favour if they decommissioned all of their
illegal weaponry and disbanded.

The existence of both the UVF and the UDA remains a shadowy throwback to the dark days of the Troubles, and the leadership and political advisers of both these organisations must realise there is a new community dispensation and more zero-tolerance of paramilitarism.

The UVF says it is not prepared to give up its weaponry yet; ominously for citizens who live there, there is little sign the UDA is going to disappear from its known stomping grounds.

Loyalist paramilitaries have operated on the pretext that they are the defenders of Protestant working-class communities from republican attacks.

But brutal terrorist acts committed over the past 35 years and an increasing criminal involvement has left them with little credibility, even in hardline areas.

The Provisional IRA may not have completely given up on its "armed struggle" and, despite what Tony Blair and Bertie Ahern may tell us, remains operational.

Loyalist paramilitaries, however, should be setting their own agenda for permanent peace and stability in this part of the United Kingdom - by getting off the stage for good.

14 April 2006

http://www.belfasttoday.net/ViewArticle2.aspx?SectionID=3900&ArticleID=1444325

at 2006 年 04 月 17 日 19:11:05


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【1つ前の記事の続き(後半)】 6月26日にスラオさんで、OTR法案での「法に基づいた正義か、正義の不在のもとの平和か」の議論のさい、英国政府は「平和のためには難しい決断をしなければならないことがある」と
2006 年 07 月 18 日 07:04:54


※この記事は

2006年04月15日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 02:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | todays news from uk/northern ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼