
BBC News - Home via kwout
Afghan gunbattle: Troops kill Kabul insurgents
http://www.bbc.co.uk/news/world-south-asia-14909004
攻撃されたのが、国家保安局とか米大使館とかNATOというかISAF本部とかの区画で、英大使館とかBBCとかもあるようなエリアで、Twitterではすばやく#kabulattackというハッシュタグが設けられ、記者や現地の英語話者の方々が逐一、状況を伝えてくれていた。(でもまさか20時間も続くことになるとは、誰も、思ってなかった。)Twitterで拾えたものをまとめてある。
http://chirpstory.com/li/2518
http://chirpstory.com/li/2519
http://chirpstory.com/li/2534
私が事態に気づいたのは、13日の午後6時過ぎ(日本時間)、Foreign PolicyのBlake Hounshellさん(在ドーハ)が、現地TOLOテレビ(独立系テレビ局)の人の「攻撃者は米大使館に向けてロケットを発射した」との報告を受け、「うは、それはよくないな」と述べていたツイートだった。
それをTwitterで配信したときの見出しにしていたのがインディペンデント。記事は下記:
Gunmen attack US embassy in Kabul
By Amir Shah and Rahim Faiez
http://www.independent.co.uk/news/world/asia/gunmen-attack-us-embassy--in-kabul-2354012.html
Twitter上では、アフガニスタン出身/拠点のジャーナリストで私がフォローしている人たちは、たまたま現在リビアなどに取材に出ているのだが、09年にイラン各地からの報告の日報を更新していたJShahryarさん(在外アフガニスタン人でマルチリンガル。ご家族・ご親戚・ご友人がカブールにいる)とFPブレイクさんの、カブールの外からのツイートを横目で見ているだけでも、よくある「タリバンの自爆テロ」的なものとは違う攻撃であることが伝わってきた。が、何がどうなるかをとりあえず書き留めておく的な意味で、カブールのツイッタラーさんたちをがーっとフォローして見ていたのだが……まさか20時間続くとは。
上にURLをはったchirpstoryのまとめで、淡々と経過時間を書いてるついったらーさんがいるが、途中で止まってたはずだ。途中で日没に豪雨(雷雨)になって、警察発表で既に「残る犯人グループは1人」というようなことが言われていたはずだが、その後、夜間になってからも、銃撃どころか爆発の報告が続いていた。結局、そのとき残っていたのは1人ではなく複数だったようだ。
まあ、経緯はBBCなどの報道記事を参照していただいたほうがいい。(日本語記事もいろいろあるのだけど、日本の新聞記事は文字数・行数の制約から文章がきっちりしすぎていて、あの「だらだらと続く攻撃」の感触はまるで伝わってこない。)
カブールでは「今日は職場に泊まる」という人がいた。JICAの田中顕士郎さんは、攻撃が一段落したと思われたころにご報告があったのだが(ほっとした)「JICA関係者は最後の一人まで無事にホテルに帰還。私も退避オペレーションひと段落して帰着」とのことだった。カブールに行っている日本人フォトジャーナリストの高橋邦さんは、写真のほか、文章でも「近くのビルに籠城し、一夜明けたいまも警察、軍との攻防が続いている」といった報告をしてくださっている。
一貫して、細かく細かく状況を報告してくれていた人のひとりがBBCのBilal Sarwaryさんだ。今回の攻撃で治安当局者と一般市民合わせて7人が殺され、十数人が負傷している――今はこの数値もアップデートされているかもしれないが、この攻撃を報じる記事に出てくる数字は死傷者数ではなく、攻撃の持続時間だ。何というパブリシティー・スタントであることか!――が、その1人はこの有能なBBC記者のご友人かご家族だった。
それでも彼は仕事を続け、攻撃が完全に終結する前の段階で、攻撃グループが立てこもっていた建設中のビルに入り、中の様子を報告してくれている。
前もタリバン(なのかハッカニ・ネットワークなのか、はっきり書かれていなかったかもしれないけど)の襲撃の現場にエナジー・ドリンクの空き缶があった、という報告も、今回またどこかで見た。
こういうディテールがね。それこそムアンマル・カダフィの地下要塞からコンドリーザ・ライスの写真を貼り付けたスクラップブックが出てきた、みたいなことなのだが、より「ゴシップ」臭が薄く、情報としてもわりとどうでもいいのかもしれないけど、でも日本などで(正確ではない言い回しだが)「イスラム原理主義勢力」と呼ばれる人たちは、レッドブルに翼を授けられちゃったりしてOKなのか、とかね。
ビラルさんによる「終わった」との報告。
最初の爆発から13時間くらいの時点で、ドーハにいる米FPのブレイクさんと、ビラルさんの上司であるBBCのジョン・ウィリアムズ(ロンドン)がおもしろくなってしまって、「ビラルさんがツイートするのをやめて就寝したら、攻撃者も諦めるのだろうか」とか、「攻撃者にビラルさんのスタミナのカケラでもあった場合、えらく長引く……」とか言い出して、これにビラルさん本人から「弾薬が尽きたら終わると思います」的な返事がきてたりする。
そして同じくアフガニスタン拠点のジャーナリストの @svbelさんと、「終わった?」、「残念ながらまだ」という会話があったりする。
さて、こんなふうに展開したカブール米大使館等襲撃事件だが、発生当時の大手テレビの態度が興味深かった。
アラブ連盟の総会、トルコ首相の中東政策についての演説、リビアのNTCの演説、ヨルダンのスキャンダル(カジノの許可を巡る黒い疑惑)など大きなニュースが目白押しのこの日、アルジャジーラはカブールの攻撃をかなり大きく扱っていた。現地日没までの数時間は、定時ニュースでトップ項目かトップから2番目だった。
BBC Newsでも、私の見ている版(UK版&国際版)は、カブール攻撃がトップニュースになっていた。スクリーンショットの時刻は13 Sep 2011 19:40。

BBC News - Home via kwout
英テレビではチャンネル4も大きく取り上げていたようだ(Twitterでフィードを見ることしかできないが)。
しかし、当の攻撃対象(米国大使館)の本国では……BBC Newsをkwoutでキャプチャすると、BBC NewsのUS版になるのだが、まあ見てくれ。タイムスタンプは13 Sep 2011 19:38。

BBC News - Home via kwout
たまたまのタイミングの問題だったのだろうとは思う。しかし、自国の大使館が攻撃され、自国の軍隊が最も大きな役割を果たしている国際的な軍事機構の本部が攻撃されているときに、大統領選挙の前の段階の党内の候補を決めるときの討論会がトップニュース? 米メディアではなくBBCの米国支局とはいえ? 自分で積極的に見に行ったわけではないから、なおさら、見ただけでうんざりだ。
ある人のツイートによると、この段階では、米大手メディアはカブール攻撃はスルーしてたみたい。
BBCのキャプチャにあるようにCNNはGOPの討論会を中継してたようだから枠外として、ほかの局が無視していたのなら、普段から、「アフガン戦争」では「数字」が取れないからリソースを割いていないんだろうか、と思う。
なお、このエントリ冒頭のBBC Newsのキャプチャは、UK版でもUS版でも同じだった。
英米より全然アフガニスタンにかかわっていないアイルランド共和国のアイリッシュ・タイムズのトップページ:
キャプチャ内リンクが変なのだけど(なんでモータースポーツのpodcastにリンクされてるんだろう)、記事は下記。ただこれも、おかしなことにクレジットがない。(アイリッシュ・タイムズの記者が書いてるときは署名つけるし、通信社の配信記事なら末尾に Reuters とか PA と記されてるはず。)中身は普通の記事。
irishtimes.com - Last Updated: Wednesday, September 14, 2011, 08:53
Assault on Afghan capital quashed
http://www.irishtimes.com/newspaper/breaking/2011/0914/breaking16.html
なお、攻撃が始まってから数時間の間に、アフガニスタンの大統領府は何通かプレスリリースか声明を出しているのだがそのいずれもこの攻撃には触れておらず、ずいぶんと時間が経過してからようやくこの攻撃についての発言があったとのことで、「わかっちゃいたけど、あの人には統治能力ないわね」的な、まさに「つぶやき」がけっこう見られると思う(Twitterに限らず、主に西側の分析筋の間で)。
この攻撃については、具体的に、というか「軍事的に」攻撃者が得るものは恐らく何もなくて、得るものがあるとすれば心理的なもので、まさにpsys opなのだろう。結果的に、「最も重要なエリアに対する攻撃が実現し、長時間持続した」という事実が確立できればそれでよかったのだろう。(それにしてもあの状況で21時間とか、想定しないよね、誰も。)
最後まで戦っていた1名か2名か、それ以上なのかはわからないが、最後まで戦った戦闘員は、攻撃を行った武装勢力の間で伝説化されるだろう(私が想起するのは、例えば、何度も暗殺されそうになり、そのたびに生き延びて、それでも最後は幼い息子の目の前で暗殺されたINLAのドミニク・マックグリンチーだったりする)。
※この記事は
2011年09月14日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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