「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2011年09月13日

フランス、マルクールでの爆発をめぐる情報錯綜とTwitterについてのメモ

「フランスの原子力発電所で爆発があった」という文字列を私が見たのは、12日午後9時過ぎのことだった。誰かが自分のコメントを付け加えて手動でRTしていた下記のツイートだ。いや、実のところ、本当にこの人のこのツイートだったのかどうかはわからない(なので、画像としては名前とアバターが入らないように切り抜いた。あんまり意味ないかもしれないけど)。ただ、こういう文面だったことは確実だ(一字一句その通りと断言することはできない)。



そこでBBC Newsにアクセスすると最初の「速報」の段階(Breaking Newsのロゴに、more to follow的な記事)の次の段階(Breaking Newsのロゴが現地写真になり、多少情報が追記された段階)と思われる短い記事があった。そこにはフランスのLe Figaroの報道を引いて、「1人死亡、3人負傷、詳細不明、放射能漏れのおそれあり」ということが書かれていた。

先ほどまではてなブックマークのページその痕跡が残っていたのだが、はてブの冒頭の対象ページからの引用の部分が、はてブのクローラーのタイミングだろうが既に更新されているので、正確なところは検証できなくなってしまっている。今確認できるのは、引用文がはてブよりさらに短いが、TOPSYの画面だ。



"There is a risk of a radioactive leak after a blast at the southern French nuclear plant of Marcoule, media reports say." (フランス南部のマルクール核施設で爆発があり、放射能漏れのおそれがある、とメディアが報道している)というのが書き出しの一文で、次の文にその「メディア」がLe Figaroであることが示されていた。

そこでLe Figaroに行ってみると、その内容の記事があった(ただし現在は更新されており、私が見た文面とは異なっている)。

しかしそれからものの10分ほどあと(たぶん)には、フランスの当局者から「放射能漏れは今のところ、確認されていない」的なコメントが出されていた。その時点でのBBC Newsのキャプチャ:



※kwoutでキャプチャするとBBC NewsのトップページはUSA版になってしまうのだが、トップニュースがこれだったことはUK版でもUSA版でも同じ。UKでは2番目のニュースが「キャメロンのロシア訪問」だった。フランスで爆発があるまではそれがトップニュースだった。

上記キャプチャ画面を取る前、というか、私がBBC Newsで記事を確認する前に、BBCの記事にどんなことが書かれていたのかは、BBC Newsの履歴を残さないという仕様のため、確認はできないのだが、最初にBBCが(おそらく)速報で出した直後のTwitterの反応はこうだ(一番下が一番時間的に古い):



こういった「古い情報」が、元記事がアップデートされた後になっても少なくとも30分から1時間の間は、Twitterでは行きかう。

実は私も、最初は最初に見た "nuclear power plant" の情報に無意識に引きずられていて、自分が読んでいるBBCなどでの記述が "nuclear plant" になっていることに気づかなかった(!)。

なお、この時点では「マルクールの核施設」に原子炉があるかないかは、BBC Newsの記事には書かれていなかった。(そういった詳細情報が追記される前の、ほぼベアボーン状態の記事が出ることは、BBCでは普通によくある。飛行機の墜落事故、列車の衝突事故など緊急性の高いものでよく見られる。)

BBC Newsだけではない。Google NewsからMarcouleで検索して出てきた多くの英語圏のニュース記事が、そこが不明確だった。

例えば、たまたま見たものだが、カナダのCBCの記事:
http://www.cbc.ca/news/world/story/2011/09/12/france-nuclear-plant-explosion.html

次のように、「マルクールの施設には、原子力発電の反応炉はまったくない (The Marcoule site does not house any nuclear power reactors.)」と書かれている。



しかし、私がチェックしたときには、こういう記述ではなかった。そのことはページ下部のコメントを見ればわかる。多少さかのぼる必要があるが、9:42 PM ETのコメント:
PassePartout 2011/09/12 at 9:42 PM ET

Story says: "Marcoule, a nuclear waste management site, does not include any reactors. But it is a major site involved with the decommissioning of nuclear facilities, and operates a pressurized water reactor used to produce tritium."

Seems like a contradiction to me. Either it has reactors or it doesn't. A pressurized water reactors....IS a reactor. Just as the ones in Japan were and are pressurized water reactors? No?

CBC... more accurate reporting please.


# ついでなので、英語圏で典型的な核発電アポロジストの「だって化石燃料の方が人死ぬし」論も併せてキャプっといた。Thums-upの数を比べてみてね♪ (ガーディアンに書いてるジョージ・モンビオットもこれで転向したらしいが、モンビオットは自分が主張してきた「核廃棄物という負の遺産」のことはいきなりどうでもよくなったらしい。)

それから、その5分後:
KevinMcKinney 2011/09/12 at 9:47 PM ET

From the story:

"Marcoule, a nuclear waste management site, *does not include any reactors.* But it . . . *operates a pressurized water reactor*. . ."

Huh? That is clear as mud. Please clarify, CBC!



このように、読者からのツッコミを得て、CBCの記述はany reactors→any power reactorsと修正(クラリファイ)された。

この程度に情報が不明確で、錯綜していた。

日本語圏でしか生きてない人にはわからんかもしれんけど、日本語の便利な「関連施設」的な言い方ってのは英語圏の一般人が接する言語世界(新聞など)にはないし、英語よりさらに少ない語彙のフランス語(ほんとに語彙が少ないので、「通勤着1週間着回しテク」みたいな感じがする)にもないだろう。(ただ、私のフラ語能力ではそこまでの確認はできないので、間違ったこと言ってたらツッコミ入れてください。)

ただ日本語も「炉」がreactorだったりfurnaceだったりovenだったりするわけで、どっちが常に優れて便利、ということではない。

【追記】@Yukfraさん(フランス語&日本語圏)から下記のご連絡をいただいた。
@nofrills 私は仏語で追いましたが速報時で爆発したのがréacteurではなく「four」、場所はcentrale nucléaireではなく「site nucléaire」でしたから「原発が爆発」ではないのはわかりました。詳細発表は新聞によってスピード差がかなり。

http://twitter.com/#!/Yukfra/status/113566090847723520

となると、やはり、最初のBBCの報道(nuclear power plant)が完全にエラーだった、ということだ。

BBCはけっこう単純なヒューマンエラーが多い。WTC崩壊のときのBuilding 7についての誤報(のちに、オリジナルの映像を置く棚を間違えていたことでさらに大きな騒動となる)はBBCでなくともありえるが、1981年に死亡していることが全世界に広く知られている人に、2005年になってからインタビューを申し込むとか、the wrong Guy騒動とか、ほんとに、普通では考えられないことがよく起きる。つい先日は「リビアのトリポリ、グリーンスクエアからの映像」として流されたものがインドの映像で、人々の風貌も服装も違えば、旗も違うのだから普通に常識を持っていれば気づきそうなものだが、スタジオはまるで気づいておらず「リビアでは…」として流し続けるという事態が発生、それを受けて「リビア介入の陰謀にBBCも加わっていた」という論が盛り上がるという事態に……。

BBCは全体としては非常に信頼性の高いメディアだけど(例えばリビアに関しては、ロイターの先走った報道よりずっと信頼できる)、ヒューマンエラーも普通に多いし、その質は「イギリス的」なので、過剰に信頼しすぎないほうがいいです。



その他の記事:

TOPSYで「最初に自分の見たツイート」を見つける前に、ウェブ検索などして見つけた「似た見出し」。初めて見たが、ノルウェーの環境系NGOのニュースサイトだ。ノルウェー語、ロシア語、英語の3言語で展開している。



Google Newsの検索結果のキャプ。一番下のSydney Morning Heraldが「放射能漏れのおそれあり」の段階のヘッドラインだが、実際にクリックするとその2つ上の「放射能漏れなし」の記事が表示される(中身はAFP)。


上ののもう少し前の時間帯のGoogle News:




さて、こういった錯綜は、第一義的には「速報」、「リアルタイム」ゆえの問題だろう。特にTwitterでは、こういう「30分前の情報が古くなってしまう」事象で、たとえその事象そのものの持続時間が1時間足らずの短いものであっても、「古い情報」が延々とRTされて広まる、ということが発生しうる。(これでも、「改竄RTによる撹乱」が多少なりとも問題となった2009年のイラン動乱後に「公式RT」という仕組みが設けられたので、「嘘を嘘とわからない人が使うのは難しい」的な問題は、最近のTwitterではずいぶん軽減されていると思う。)

で、ずっと張り付いて見ている人とか、一定期間継続的にその話題をフォローするという習慣がある人には問題にならないのだが、そうでなければ中途半端なところで「聞きかじり」状態になってしまう、ということは起こりうる。

最近では8月のロンドン暴動で、トッテナム警察署前の抗議行動と、近辺での警官隊に対する抗議・騒乱などしか見ていない人と、その後の、トッテナム警察署前以外の地区での放火や略奪しか見ていない人との間で行き違いがあった。(私自身も、前者の人の事実誤認を説明したら先方から話しかけられ、その結果、非常にいやな思いをした。)

より深刻だったのは7月のノルウェーでの爆弾&銃撃事件のときで、まさに銃撃が行われているときに世界各地のメディア(といっても私は英語圏しか見てなかったが)で言われていたのは「イスラム過激派犯行説」のみ。ノルウェーといえば過去にある集団がおそろしい事件(政治的暴力)を起こしているのだが、そういうのはまったくスルーされていた。

この点については、2005年7月7日のロンドンでの事件で、日本のニュース番組のスタジオに招かれる「専門家」がほぼ「中東の専門家」ばかりだったことを想起されたい。結果的にわかった事実としては、あの事件は「イスラム過激派」のものではあったが「中東」ではなくパキスタン系英国人と改宗者による事件だったし、それ以前に、誰が何をしたかも明らかでない段階で、「ロンドンでのテロ」について、英国(とアイルランド)について語れる人ではなく、「イスラム」について語れる人を呼ぶ、というのには、私は心底げんなりした。(まあ、それなりの示唆があったのだろうとは思うけど。)

閑話休題。ノルウェーの事件では、犯人がウトヤ島で身柄確保され「イスラム過激派」ではまったくない、ということがとっくに明らかになってからも、日本では「イスラム過激派のテロだ」といった情報が流れ続けていて、「そうじゃなくて白人の極右ですよ」って言っても「情報錯綜してますね」的な反応があったりした……いや、「錯綜」じゃなく、とっくにクラリファイされてる(これは誰が悪いのでもなく、情報元の翻訳等の時間的ギャップによるものが大きいのだが、えらい疲れます)。

そのずっと前になるが、米国で議員が頭を銃撃されたときに、大元から情報が間違っていて大手メディアによって「死亡した」と報じられ、それがTwitter上でぐるぐるしていて話がややこしくなってたこともある。
http://chirpstory.com/li/413

Twitterは、私はこれまで使ってきて(自分の場合、入ってくるのは8割英語だが)、「正確な情報」のメディアというより、「感情」とかいわゆる「脊髄反射」のメディアといったほうがよいのではないか、と思っている。ロバート・ハリスの『ゴーストライター』のいいぐさではないが、それだからこそ何か非常に血の通ったものとなって、140字の連続の向こうの人が「他人」ではないような気分になって、その人が伝えようとしていることを追いたくなる。

ゴーストライター (講談社文庫)ゴーストライター (講談社文庫)
ロバート・ハリス 熊谷 千寿

The Ghost Writer ポンペイの四日間 (ハヤカワNV) 裸のプレゼンター 英語なんて これだけ聴けて これだけ言えれば 世界はどこでも旅できる ジェノサイド

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私の場合は、それは例えばエジプトの「砂猿さん」だったりする。あるいは、彼のようにおちゃらけたキャラじゃなくても(彼はほんとにおちゃらけていておもしろいのだが)、ジャーナリストの固い分析記事のURLが主体である短い文字列の中にユーモアのセンスが見えたり、誰かと時事ネタで冗談を言い合っているのが流れてきたりしてまんまとお茶をふかせていただいたりしているうちに、まったくの他人ではないような気がしてくる。なのでSky Newsで働いている「フィールドプロデューサー」さんと、米NPRのプロデューサーの「アンディ・カーヴィン」さんがTwitter上で論争になったときなど――私は2人ともそれぞれにレスペクトしているので――、「いや、それはね…」と自分もクビを突っ込みたくなった。グレン・グリーンウォルド、アリ・アブニマ、ジリアン・ヨークなど、がっつりした重い分析記事で存在を知っていた人たちがTwitterでより「身近」になったことも事実だ。リビアでは特に、最前線に行っているジャーナリスト(英デイリー・テレグラフのロブ・クリリーら)のツイートは、記事の文字量だと見過ごしてしまうような小さなディテールを伝えていて、強く印象づけられる。日本のジャーナリストで毎日新聞カイロ支局の和田浩明さんのリビアとチュニジアからの写真には、アルジャジーラなどでの報道からは見えないものを見せていただいているし、ネット上でのやり取りによって、いろんなことが明確に、立体的になってきている。

そういう利点は非常に大きいのだけれども、やはり「情報の正確性」という点では、「6時間も前の話が、あちこちからRTされてくる」状態ではストレスはたまる。先日、Foreign Policyのブレイクさんもそれについてボヤいていたくらいだ(I wish people stopped tweeting old news みたいなことを書いてた。リビアのトリポリで大きな動きがあったとき)。

というわけで、Twitterは「こういうことがある」というか、「こういうものだ」ということを織り込んで接するべきだなあ……と書いて、いや、実はTwitterに限らずそうじゃないか、と思う。

例えば印刷メディアにはネットほどの速報性は誰も期待していないし、ネットで「どこそこで飛行機事故、乗員乗客全員死亡」ということが報じられているときに、配達されたばかりの新聞には「どこそこで飛行機が行方不明」のベタ記事だったりするが、人は「そういうものだ」と織り込んで接している。

Twitterもそういう「限度がある」という前提が必要だと思う。新たなツールではあるけれど、決して万能ではない。

デリーのカーボムの「今、どかんっていったけどまたボム?」的な現地からの報告がリアルタイムで追えたりするのは、本当にすごいと思うけど。
http://togetter.com/li/90164
http://chirpstory.com/li/1640

まあ、今回の情報錯綜は、元々、フランスの核施設についてBBCなど英語圏のメディアがどれほどの情報を前提として持っていたか、という話でもあり、けっこう難しいと思うのだけど……英仏の例の協定(下記)ではこういう点、どうなのかな、とかね。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-11670247



現在(13日午前2:20ごろ)のBBC Newsトップページ(UK版):


※記事見出しクリックできます。



ああ、まとまりゃしない。(笑)

いずれにせよ、要点はマルクールの施設について「原発」と言っていたのは「ソースがないデマ」ではなかったということ(BBCがそう伝えていたことが下記からわかると思います。ただし私自身はかなりうろ覚えで「BBCがそう書いていた」とは断言できない。「書いてなかった」とも言えない。単に「よく覚えていない」状態。それは最初に見た文字列でnuc. power plantとインプットされていたため)。短い時間にそういう報道が現地の新聞(地域メディアやフィガロなど)であったということ。(「デマ」を指摘するのなら、「何でもかんでもデマよばわりする」というデマゴーグ的な態度は謹んでほしいです。)

(再掲:BBCbreakingのtweetに注目)


…このあと、何か書こうとしていたが、揺れたので忘れてしまった。しばらく思い出そうとしていたが、どうしても思い出せないので諦める。

※この記事は

2011年09月13日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 02:25 | TrackBack(0) | 雑多に | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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