「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2005年07月16日

何がショックを与えているのか。

7月7日にロンドンで起きたことについて,あれを実行した人々が「外国人」ではなく(すなわち「外国人テロリスト」ではなく),英国で生まれ育った英国人――英国籍保持者――だったことは,確かに英国の人々および社会全体に対して,かなりのショックを与えているようだ。むろん私は今のところ,メディアを通してしか英国の様子を知るすべはないが。

これが日本で報道されると,なぜか,「移民との軋轢」の話になる。
このことについてはゆっくり書きたいのだが,あいにくあまり時間がないので,この稿は「とりあえず」版。

日本のマスコミが7月7日のロンドンのことを伝えるときの典型的な論法が見られる記事を,1つ,丸ごと引用する。東京新聞,「筆洗」(7月14日)。

 ロンドン同時テロの実行犯はパキスタン系英国人四人で、自爆テロの可能性が強いと、ロンドン警視庁が発表した▼事件からわずか五日で犯人を特定した捜査力には敬服するが、移民問題という深刻な国内要因を浮かび上がらせたことが英国民にはショックだろう▼首謀者の国外逃亡説もあり、イスラム過激派との関係はまだはっきりしないが、実行犯四人のうち、十九、二十二、三十歳の三人は、英国中部の都市リーズの、パキスタン、バングラデシュからの移民が多く住む貧しい労働者街の住人だった▼英国やドイツ、フランスは戦後復興のため、旧植民地のアフリカやアジア諸国から多くの移民を受け入れた。一九七〇年代以降制限したが、家族の呼び寄せなどでその後も増え続けた。それが国内の貧困層との軋轢(あつれき)を生み、失業や、犯罪の増加とともに、政治的不安定要因となった▼英国BBC放送のプロデューサー、ジェシカ・ウィリアムズ著『世界を見る目が変わる50の事実』(草思社)は、英国内には三百万台の監視テレビカメラ(CCTV)があり、ロンドン市民は三十もの監視ネット網によって一日三百回撮影されているとのデータを紹介。それ自体は今回の迅速な捜査に結実するが、監視社会の怖さを警告する▼さらに恥ずべき事実として、英国の子どもの三人に一人が貧困水準で、七〇年に比べて三倍に増え、先進国の中でもっとも割合が高いこと。貧しい子どもの精神疾患は富裕層の三倍もあるとのデータも示す。テロ事件の遠景に貧富の格差があると示唆する。
――http://www.tokyo-np.co.jp/00/hissen/20050714/...


……これはデイリー・メールですか?(^^;)

一見したところ,まっとうな文に見えるかもしれない。しかしこの文章はおそろしく筋が通っていない。

ロンドン同時テロの実行犯はパキスタン系英国人四人で、自爆テロの可能性が強いと、ロンドン警視庁が発表した


この文は単に〈事実〉を伝えるのみで問題はない←修正。「問題」ありすぎだ。4人のうち3人は「パキスタン系英国人」だが、1人は「ジャマイカ系英国人」でイスラム教への改宗者だ←修正ここまで――細かいことをいえば,「同時テロ」という“四字熟語”には検討の余地があると私は思うけれども。(この語は,あまりにも無批判に使われすぎている。発生が伝えられ,ブレアがグレンイーグルズでスピーチしたとき,まだ何が起きたのかがはっきりとはわかっていなかったにもかかわらず,「同時」「多発」「テロ」と3つの〈判断〉をくっつける用語を,日本のマスコミは使っていた――場合によっては「か?」を末尾にくっつけてはいたが。)

事件からわずか五日で犯人を特定した捜査力には敬服するが、移民問題という深刻な国内要因を浮かび上がらせたことが英国民にはショックだろう


何が「英国民にはショックだろう」って? 

まず,「〜には敬服するが」の前後のつながりがわからない。「敬服する」の行為主体(主語)は「筆者」であろう。しかし,「、」から後の部分の主語は,何よ? 何が「深刻な国内要因を浮かび上がらせ」,何が「ショック」なの?

(こういう文を見るとね,「英訳しづらそう」と思うのです,反射的に。こういう文章があるから「日本語は論理性に欠ける」とかいう神話が信じられちゃうんだよ〜。)

こういう論旨の曖昧な文で,いきなり,「移民問題という深刻な国内要因」が出される。卑怯な書き方だ。

この,「〜という…」という同格表現。これはすなわち,「〜は…である」という〈断定〉ないし〈判断〉を内包する。

えっとね,英国内で「移民問題」が「深刻な国内要因」だと言っている人たちは,確かにいます。BNPとかUKIPとかね――つまり,極右。あと,こないだの総選挙のときの保守党。「移民問題が深刻だから移民を制限しなければならない。これは人種差別ではない」という,例の手書き文字ポスターを思い出していただければと。

彼らは言うだろう,「移民がいるからテロが起きる」と。(そしてそれは,「移民がいなければテロは起きない」に容易に変換される。)

むろん,彼らとてバカではないので(それどころかものすごいインテリだよ,極右は。指導部はオックスブリッジとか),そういうストレートな言い方はしない。いや,中にはする人たちもいるだろうけど,それは極右の末端の“教育も金も学歴もない貧しい人々”(<これは「移民」に限った話じゃない)であって,指導部はそういうことは言わない。もっと婉曲に,論理をがっちり組み立てて,そういうセンテンスは使わずに,その内容を言う。

「移民がいるからテロが起きる」「移民がいなければテロは起きない」にはたった一件の実例で反証可能だが,実際,「純粋なる英国人」が行なった「テロ」がある――「"David Copeland" Soho pub Brixton」で検索を。

あと,「移民問題」という“四字熟語”――ジャン・ポール=サルトルがかつて,「ユダヤ人問題とは,ユダヤ人を差別するわたしたちの問題だ」という内容のことを書いていたけれど(と,サルトルなどろくに読んだこともないくせに引用してみる<強烈に覚えているからね),「移民問題」とは何か,これを明示しないで「移民問題」を自明の「問題」であるかのように書くことは問題である。(うわ,日本語が崩壊した。)

このような形式のコラムで,字数制限が厳しいことは十二分にわかる。しかし,だからこそお願いしたい。多くの人々が「わかったような気になっていること」を,その人たちを「わかったような気にさせた」表現で語らないでもらいたい。

# 私,「移民問題」とかいうの見ると,どうも「マイナスイオン」とか「クラスター水」とか「ゲーム脳」とかを思い出すんだよね,その用語の持つ機能という点で。

(以下,この「ショックだろう」の推論に基づいた記述が延々と続いていて,それはそれで問題なのだが,とりあえずその点はスルー。長くなるので。)

首謀者の国外逃亡説もあり、イスラム過激派との関係はまだはっきりしないが、実行犯四人のうち、十九、二十二、三十歳の三人は、英国中部の都市リーズの、パキスタン、バングラデシュからの移民が多く住む貧しい労働者街の住人だった


ここが最大の「ちょっと待った」ポイント。「移民が多く住む貧しい労働者街」のところね。

まず「労働者街」。「労働者」は英国の社会を知ってないと,ほんとの意味がわからない用語のひとつ。簡単に説明すれば,「労働者」で表されるのは,「ミドルクラスやアッパークラスではない」ということで,要するに「一般人」ということだ。日本で発行されている旅行ガイドブックなどには,ある種のユーフェミズムでなのか,「庶民」と表記されているが,実際そういう意味だ。

「労働者」とは英国の「階級社会」を前提にした用語であり,同時に,左派が「生産手段を所有しておらず,不労所得も得ていない人々」をひっくるめて呼ぶときに使った用語でもある。

「貧しい」はdeprivedと表現される(poorはあまりに直接的すぎるので,あまり使われない)。

「移民の多いdeprivedなエリア」は確かにある。彼らの住んでいたLeedsのBeeston地区も,おそらくそういったエリアのひとつなのだろう。

しかし,「移民が多く住む」から「deprived」なのか,あるいは「deprivedで土地評価額が低く,家賃が安い」などの理由があって「移民が多く住む」のかは,ニワトリと卵論争になると思う。「移民」って言ったって,特定の1つの集団じゃないのだし。

けれども,「移民が多く住む貧しい労働者街」という表現には,何かを検討した形跡がまるでない。ただ,「移民」と「貧しい労働者」が等価で並べられている。

「貧しい労働者街」は,一般的にいえば,ミドルクラス以上(あるいはアッパー・ロウアー・クラス以上)は,あまり積極的には住みたがらない。それだけだ。

# 「首謀者の国外逃亡説もあり、イスラム過激派との関係はまだはっきりしないが、」から,その後への流れなど,ツッコミ入れたいところはほかにもあるが割愛。

英国やドイツ、フランスは戦後復興のため、旧植民地のアフリカやアジア諸国から多くの移民を受け入れた。一九七〇年代以降制限したが、家族の呼び寄せなどでその後も増え続けた。それが国内の貧困層との軋轢(あつれき)を生み、失業や、犯罪の増加とともに、政治的不安定要因となった


……もうどうしたらいいのかわからんよ。

これはBNPのパンフレットですか?

「政治的不安定要因となった」のは,「国内の貧困層」でしょ。「それ」(=移民の増加)ではなくて。

ってか,「国内の貧困層」って何だろう? 白人貧困層のこと? 

疲れたのでこれはここでストップ。

英国BBC放送のプロデューサー、ジェシカ・ウィリアムズ著『世界を見る目が変わる50の事実』(草思社)は、英国内には三百万台の監視テレビカメラ(CCTV)があり、ロンドン市民は三十もの監視ネット網によって一日三百回撮影されているとのデータを紹介。それ自体は今回の迅速な捜査に結実するが、監視社会の怖さを警告する


この部分は,前とのつながりがまったく不明。特に「監視社会の怖さを警告する」という結びの支離滅裂さは特筆に価する。

# いや,ジェシカ・ウィリアムズは確かにそういうことを言っているのだけどね。(私は著書は読んでいないが,BBCで検索すれば彼女のレポートが読める。)

そして,「何が『さらに』なのだろう」という怒涛のエピローグ。

さらに恥ずべき事実として、英国の子どもの三人に一人が貧困水準で、七〇年に比べて三倍に増え、先進国の中でもっとも割合が高いこと。貧しい子どもの精神疾患は富裕層の三倍もあるとのデータも示す。テロ事件の遠景に貧富の格差があると示唆する。


「恥ずべき」は英語からの直訳でしょうけれど,もう少し何とかできないんでしょうか。ネイティヴ日本語スピーカーとしてお願いします。翻訳記事じゃないんだからさ。

「貧困水準」「精神疾患」は,私に余力がないのでツッコミ省略。一言だけ言っておくと,英国内の“南北問題”のこととかいろんな要素を考えない限りは,「貧困水準」は「政治の失敗」をしか語らないし,「精神疾患」に至っては,どうしてここに持ち出すのかまったく意味不明。

そして,最後の「テロ事件の遠景に貧富の格差があると示唆する」。……何が? 何が示唆するって? 主語がありません。

ジェシカ・ウィリアムズ著『世界を見る目が変わる50の事実』は,日本語版は2005年4月に刊行されている。原著である"50 FACTS THAT SHOULD CHANGE THE WORLD "は,UK版は2004/05/06に出ていて(データ<amazonですがアフィリエイト外してます),すなわちこの本が,2005年7月7日に発生した「テロ事件」について,「遠景に貧富の格差があると示唆する」ことはありえない。細木数子じゃあるまいし。

「示唆する」と思ったのは――そう読み取ったのは,この文章を書いた人だ。BBCのジャーナリストじゃない。

自分の考えや判断を述べるのに,もっともらしく,BBCジャーナリストの著書を引っ張り出す。「恥ずべき」ってのはこういうことに使うのだよ。そうじゃないか?

あー,疲れた。

以上,「うきーっ」となって勢いで書いたので,雑な部分とかあると思います。

っていうか,日本の報道,どれもこれもBNPか保守党みたいで,もうやだ。

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転記前URL:
http://ch.kitaguni.tv/u/917/todays_news_from_uk/07july2005/0000243053.html

コメント:
あお。


こんにちは。時々日本の新聞記事を「あほか」と思ってみているので、こういう風に斬ってもらえるとすがすがしいです。それにしてもひどい記事ですね。

BBCを見ていて、やはり移民との軋轢みたいなことを言っている人がいました。「それならアジア系移民だっているじゃない」との問いに、「アジア系も不満を抱いていると(カメラの前では言わないが)私だけには言う」というようなことを言ってました。どうなんでしょう?

想像の範囲を出ませんが、英国人にとって「自爆テロ」だったことがより大きいショックと戸惑いを与えているように感じました。責めるべき相手を失い怒りのやり場に困るということもありますが、自爆という行為が理解しがたいんだと思います。

私から見ても、今回のテロが自爆である必要性をまったく感じません。イラクやイスラエルないしは日本の神風特攻隊や人間魚雷も対象を狙うための操作をする人間の犠牲が必要ですが、今回のケースならタイマーで済みますから。

何の要求・不満があるかわからないままの自爆テロ、完全に私見ですが、日本で言う七輪の集団自殺や電車に飛び込んでの自殺を爆弾かかえてやっただけじゃないかとも感じました。

投稿者:
ゲスト
at 2005 年 07 月 16 日 21:39:17

こんばんにゃ


日○テレビの報道番組では「イスラムがイギリス国内に多数いるのがロンドン市民の不安を煽っている」かのような言い方をしてましたよ。なんだそりゃ。イスラム教はテロ問題でねーだろ!!
そんなこというと「キリスト教徒は虐殺屋が多い」って偏見出すぞームキー

投稿者:
DoX
at 2005 年 07 月 16 日 23:50:19

>あお。さん
コメントありがとうございます。あまりのことに友人とのメールで毒吐き散らかしてから書いたものに「すがすがしい」というご評価がいただけるとは思ってもいませんでした。(^^;)

> 「それならアジア系移民だっているじゃない」との問いに、「アジア系も不満を抱いていると(カメラの前では言わないが)私だけには言う」というようなことを言ってました。どうなんでしょう?

英国で,不満を持たずに暮らしている英国籍の人,もしくはレジデンシーを持ってる人,あるいは数年単位の短期滞在者なんて,いるんでしょうか。(^^;)

……と冗談はさておき,英国の場合,地域によっても大きな違いがあるので一概にどう,と言えないと思います。

> 想像の範囲を出ませんが、英国人にとって「自爆テロ」だったことがより大きいショックと戸惑いを与えているように感じました。

これはあると思います。警察が断定する前から一部のメディア(具体的にどこだったかは忘れた)がそういう報道をしていましたが,「ついに来た!」という色合いだったと思います。

> 責めるべき相手を失い怒りのやり場に困るということもありますが、自爆という行為が理解しがたいんだと思います。

それもありますね。もちろん,単に方法としてショッキングでもある。「自爆」が頻繁に起きているイスラエルとつながりのある人もいる(民族的に,あるいはビジネスなどで)。そうでなくても,イスラエルのことをニュースで知っている人たちにとっては「ロンドンでまで」というショックはあるだろうし。

> 私から見ても、今回のテロが自爆である必要性をまったく感じません。

私にもそこが不可解です。当初は「床に置かれたかばんがタイマー式爆弾だったのでは」という見方を,警察はしていました。バスも,写真から明らかなように2階で爆発しているけれど,2階を爆破してもダメージは少ないから,「どこかに行く途中で誤って爆発したのだろう」という見方が当初報じられていました。(私もそうだろうと思いました。)

> 何の要求・不満があるかわからないままの自爆テロ、完全に私見ですが、日本で言う七輪の集団自殺や電車に飛び込んでの自殺を爆弾かかえてやっただけじゃないかとも感じました。

なるほど。。。先ほど,BBCで「あの子は洗脳されていた」という記事を読んだのですが,用語からの単純な連想(とキリスト教におけるheresy)からすぐに思い浮かんだのは,「カルト」という言葉でした。思いつきに過ぎないのですが。

不満があるなら,たいていはまず,ああいう行動をとる前に,口に出すなり何か書いて配るなりすると思うんですよね。あるいは単に暴れる(電話ボックスを破壊する,路上の車を破壊する,あるいは自傷行為など)。彼らに「不満」はあったのか? あったとすればそれはどのようなものであったのか?

この辺は,英国以外で攻撃を企てて裁判で有罪が確定している英国人(複数います)についての記事なども見てみたいと思っています。

>DoXさん
こんばんにゃ。(関係ないけど,最近,近所のねこと新たに仲良くなったんですよ。)

>「イスラムがイギリス国内に多数いるのがロンドン市民の不安を煽っている」

図式としてここまで単純化されると,もういいですって気になります。

ただ今回,政治や経済の中心地ではないところで爆弾が炸裂したことでの「不安」は「煽」られているかもしれない。というか,不安は大きいと思います。

> そんなこというと「キリスト教徒は虐殺屋が多い」って偏見出すぞームキー

まぁ落ち着いて。(笑) こんなとこで連鎖させてもしょうがない。

結局,「○○だから」の後に来るものが,ステレオタイプ・ジョークを超えちゃうとまずいんじゃないかと思っています。ステレオタイプ・ジョークというのは,例えば,「アイリッシュだから」の後に「イモばっかり食ってる」,「フランス人だから」の後に「何でもノンノン言う」(<都知事の言うような「あんな言語は数が数えられない」ではない),「日本人だから」の後に「何でもちっちゃくまとめたがる,しかもすごい労力をかけて」(<言われた。紙の角を合わせてたためないような人物に),「ムスリムだから」の後に「羊ばっかり食ってる」とか,「ブリティッシュだから」の後に「味覚がいかれている」というようなもの。

ロンドンは宗教もパッチワークです。私が住んでたところの隣の酒屋はシーク教徒(頭にターバン),その向かいのインド料理屋のおばちゃんはヒンズー教徒,同じ並びにムスリム(トルコ系),物件の大家はキリスト教徒(ギリシア系なので正教),通りのパブはアイリッシュ(ギネスが美味い)というのが普通でしたし。

投稿者:
nofrills
at 2005 年 07 月 17 日 01:43:29

泰三


こんにちは。
東京新聞の記事ひどいですね。
あまりの単純な切り口と勝手な決め付けに呆れてしまいます。
首都で発行されていて、部数もそれなりにある大新聞がこんな記事を書くこと自体、遠い国で起こった爆破事件以上に問題にされるべきだと思います。
三国人発言をした人が悠々と都知事をなさっているぐらいだから、偏見や人種差別的発言は問題にならないのでしょうか。

イギリスで起こったテロを移民問題へと短絡的につなげて、日本国民の警鐘を鳴らす前に、合法的に働き税金を収めている移民に国籍どころか選挙権さえ与えない日本の人種差別的政策を問題にして欲しいものです。

現在、俺はロンドンの『移民が多く住む貧しい労働者街の住人』です。このあたりは、大多数はトルコ系移民でアフリカ諸国のムスリムも多く住んでいます。ですが、『イスラムがイギリス国内に多数いるのがロンドン市民の不安を煽っている』なんて微塵も感じたことがありません。
是非この記事を書いた大記者さんに、イスラムのどの教えがどう悪くてどのように爆破事件に結びついたのか説明して欲しいものです。



投稿者:
ゲスト
at 2005 年 07 月 18 日 06:09:15



>泰三さん
現地からのコメントをありがとうございます。

> 現在、俺はロンドンの『移民が多く住む貧しい労働者街の住人』です。

私も90年代前半に同様のエリアに住んでいました。00年に5週間滞在したときも,周囲が『移民が多く住む貧しい労働者街』である,アッパー・ワーキング・クラス〜ロウアー・ミドルの住宅街(縦線がワーキングクラス,横線がミドルクラスというイメージでお分かりいただけるかと思います)に間借りしていました。

そういう経験があるからこの記事を見て「をいをい」と思ったのですが,そうじゃなければ普通に読み流していたかもしれないと思い,この記事を書いた次第です。

本文では明示していないのですが,この記事の大きな問題点のひとつは,「移民」の定義にあります。泰三さんのコメントでいみじくもご指摘のとおり,この記事では「移民」イコール「ムスリム」という前提になっています。しかしそれは事実に反する。

Asianと言ってもインドのヒンズー教徒やシーク教徒も相当な人数ですし,移民にはルーマニアなど旧東欧の人もいればチャイニーズもいる,ヴェトナミーズもいる。もちろんジューイッシュもいるし,カリビアンもいるしアフリカンもいる。そういう事実がまったく無視されて,都合の良い絵を描くために「移民」という要素が利用されている。

しかし残念ながら,このような論法(っていうのかな……)は東京新聞だけではありません。

今回東京新聞の記事をここで取り上げたのは,それが東京新聞だからではありませんし,また,東京新聞だからこういう書き方をしたのだとも思いません。(その点,本文には情報がないのでごめんなさい。ただ,そういったことを本文に追記する意義も特にないように思いますので,現状ママにしておきます。)

この東京新聞の記事に私が見たのは,第一に「典型」です。日本で1日に1〜2回テレビのニュース(NHKと民放,その日による)を見てウェブで新聞記事をちらちらと読んでいて,結局はどこもかしこもこの論調,という感じ。(結局他人事なんですよね。最終的には「日本で起きる可能性」に持っていってしまう。英国のことなど関心の外という作りなのです。)

また,東京新聞の「筆洗」は,朝日新聞でいえば「天声人語」にあたるコーナーで,まとめ的記述であって字数が少なく,それゆえ濃縮されており,論理的不整合(とも言えないレベルだと思いますが)の例示にはちょうどよいサンプルだと思ったためです。

ま,とりあえず,東京新聞と,「フランス語は数が数えられない」とか発言してもそれがルサンチマンの炸裂であることについてあえて無意識的にふるまう,かの都知事とは直接関係がないので,その点は是非ご承知おきください。

投稿者:
nofrills
at 2005 年 07 月 18 日 07:12:50

自己レス。
> 先ほど,BBCで「あの子は洗脳されていた」という記事を読んだのですが,用語からの単純な連想(とキリスト教におけるheresy)からすぐに思い浮かんだのは,「カルト」という言葉でした。思いつきに過ぎないのですが。

似たようなことを思いついて,そして多少調べて考えて記述した人(クリスチャン)がやはりいるということがわかりました。

quote:
> What is particularly perplexing is that these attacks were not done despite the teachings of Islam ...: no, these evil acts were done in the name of Islam.

Quite agree. It's just occurred to me that the 1995 underground/subway attack in Tokyo was reasonably and successfully separated from Buddhism.

投稿者:
nofrills
at 2005 年 07 月 18 日 17:57:31

※この記事は

2005年07月16日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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