そのベケット外相、初仕事であるニューヨークへの出張(UNSC常任理事国&ドイツの外相との会談)を終えたところでこう語った。
"I'm flying by the seat of my pants but, I was told by one of my officials this morning, quite gracefully," Mrs Beckett said. "It's been interesting and stimulating and I've enjoyed it, but I like to see success at the end of my negotations and we aren't quite there yet," she added.
-- The Times, "Beckett's Iran deal 'ready by Monday'", 10 May 2006
このby the seat of one's pantsというイディオムをニュースで見たのは初めてなので、メモしておく。
by the seat of one's pantsは、辞書を見ると、「((規則・他人の助力などよりも))自分の経験に基づいて;((計器ではなく))勘で;やっとこさ」とある(研究社『リーダーズ』)。
うにゃぁ、こういうのは英語の辞書の方がはっきりわかるなあ、というわけでケンブリッジ:
http://dictionary.cambridge.org/define.asp?key=70950&dict=CALD
by the seat of your pants
If you do something by the seat of your pants, you do it using only your own experience and trusting your own judgment.
変な表現だから語源(「語」ではないのだが)も。
http://www.phrases.org.uk/meanings/139400.html
Early aviation parlance. Aircraft initially had few navigation aids and flying was accomplished by means of the pilot's judgement.
上記のほか、シドニー・モーニング・ヘラルドの質問コーナーや語源についてのフォーラムとかも。特に後者では、July 19, 1938の新聞でこの表現がThe old flying expressionと書かれていることなども投稿文中にあり、おもしろい。しかし一方で、語源探偵ではseems to have been popularized during World War IIと書かれており、となると、誰かスター的なパイロットがこのフレーズを使って、それが新聞に書かれて広まったとかかな、と思う――まさに勘、by the seat of my pantsで。
ともあれ、語源。
つまり、初期の飛行機には計器もあまりついていなくて、飛行はパイロットの判断に拠っていたということから来た表現、とのことである。pantsは「パンツ(下着)」じゃなくて「ズボン」。(で、実はこのseatがイマイチわからないんです。。。より正確には、seat ofのofがわからないのかもしれない。pantsがseatしているさま、ということなのだろうけど、確信がないです。)
したがって、元々はfly by the seat of one's pantsという形だったのが、fly以外の動詞も用いられるようになった。Google検索してみたらgame, communicate, drive, governといった動詞が用いられている例が確認できた。あるいはGrabbing Poetry by the Seat of the Pantsとかrun their business by the seat of their pantsとかいう例もある。
ちなみに、BNC(British National Corpus)で見てみたら、2件、それも同一の文しか返ってきませんでした。80年代のガーディアン記事で、Alas!とか使ったおちゃらけた文。
※この記事は
2006年05月10日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
【英語の最新記事】
- 英語の冠詞についての優れた本2冊
- 【英語】単数形か、複数形か、それが問題だ(The teamなど「ひとつの集団」の..
- 「誤訳」は「意訳」「超訳」ではないし、「意訳」「超訳」は「誤訳」ではない。(実例..
- 重い話題が続いているので「ダジャレを言うのはだれじゃ」(&文脈とは何か)
- 英語圏お名前苦労譚
- "Go west" と "go south"...「西」か「南」か、英語の慣用句..
- 多読の素材探しに最適なタイミング……ノーベル医学・生理学賞決定のニュース
- 何かを称賛するときの英語の語彙の多さは、実にdopeだ。
- 《The + 比較級 …, the + 比較級 〜》の構文のバリエーションで、最..
- 辞書に載ってないかもしれませんが、政党の役職のChairmanは「幹事長」です。..