一方、地球をぐるっと回ったある地点では、収穫されたばかりの桃やプラムが入った籠がひっくりかえって、中の果物が散乱し、かたわらには人が死んで転がっているという。
Aid lifeline broken after Israelis hit highway
Rory McCarthy in Metula, Faisal al-Yafai in Damascus, Will Woodward, Duncan Campbell
Saturday August 5, 2006
http://www.guardian.co.uk/israel/Story/0,,1837846,00.html
In Qaa, the bodies of the dead were laid in a row at the scene of the bombing. Some were covered with blankets, others lay in the clothes in which they died. Baskets and fruit were strewn around them. Another 20 people were wounded and taken to hospital across the nearby border into Syria. Israel said its aircraft had targeted a Hizbullah weapons storage site in the Beka'a.
Qaaでは、爆撃の現場で死体が一列に並べられ安置されている。毛布をかけられている死体もあれば、死んだときに着ていたままの死体もある。その周りに、籠や果物が散乱している。死者とは別に20人が負傷し、近くにある国境を超えてシリアの病院へ搬送された。イスラエルは、航空機はBeka'aにあるヒズボラの武器庫を標的とした、と述べている。
死んだ農夫たちは実はヒズボラで、桃やプラムは実は偽装した手榴弾だったのだという説明が与えられている……とか書いたら、誰かが本気にするかもしれない。
実際は、死んだ農夫たちはシリア国籍のクルド人(Syrian Kurdish)だ。(現場の写真を見たい方はロイターへどうぞ。BBCには出ないような写真だけど、そんなにショッキングな写真ではないと思います。ただ私もいいかげんに感覚が麻痺してきているので、あんまりアテにならないかもしれないけど。)
上記引用部にあるBeka'aというのは「ベカア峡谷」のこと。ちょいと検索してみて一番上に出てきたページには、古代ローマの遺跡の写真がある。ジュピターとヴィーナスの神殿だそうだ。
ある人の写真つき旅行記(だと思う)によると、ベカアはベイルートの東30キロくらいのところから、シリアにかけての地域で、シリアから働きに来ている農夫たちは、「粗末な」としか呼びようのないテントに暮らしているようだ。33人の農夫たちを殺した爆撃のあったQaaとはかなり離れた街だが、Baalbekという街にはヒズボラの旗やポスターが多く見られる。(写真だけ見ると、西ベルファストのシン・フェイン/IRAの地域とか、東ベルファストのUDAの地域とかいう感じ・・・ってわかりにくいですね。)
Flickrで検索してみたら、kennye_788さんの写真がある。山を背景にして、日本にもこういう「大仏」があるよな、という、巨大な聖母マリア像をいただいた現代的建築の教会。もちろんキリスト教。
Flickrではないが、ビザンチンの教会の廃墟の写真もある。
Qaaの位置は、BBCの用意したMiddle East crisis: Key mapsで確認できる。ベイルートの東を流れる川をずっと北にさかのぼって、シリアとの国境のところにある。
先日紹介したjorj0さんのブログだったと思うが、「レバノンの自慢」という箇条書きのリストがあって、その中で、「レバノンは水を完全に自給している。水脈はレバノン国内の山脈から発して、国土を網羅している」というのがあったと記憶している。
「パレスチナ問題」が実は水をめぐる問題であるということが言われていて、ずいぶん前だけど、確かNews 23でけっこう時間をかけて取り上げていたのでご存知の方も多いと思うけれども、そういう場所で、「水を自給できる国」ということは、うちらの想像以上に自慢のタネであるに違いない。
関係ないけど、今スリランカで起きているゲリラ(LTTE)対政府軍の激しい戦闘もまた、水をめぐってのものだ。ゲリラが水脈を押さえてしまい、下流域の住民たちに水が行き届いていないという理由で、政府軍が大規模な掃討作戦を行なっている、とBBCは報じている。
で、何の話だっけ?
そうそう、ガーディアンの記事だ。
http://www.guardian.co.uk/israel/Story/0,,1837846,00.html
救援のための生命線がこの攻撃で断たれた、ということが大きく取り上げられている。恐ろしいことだ。ブレアは夏休みに出かける予定を遅らせたとか。こんなときでも夏休みか。(ブレアについては、改めて書きたいことがある。英国の政府内の動きが、イラク戦争のときとは明らかに違う点があるので。)
また、「国際社会」は:
Diplomacy continues, but differences remain, particularly between Washington and Paris, which will head an international force. The US wants it deployed immediately after a truce, but France wants a proper ceasefire before its troops arrive.
外交は続いているが、意見の隔たりは埋まらない。特に米国とフランスは隔たっている。(レバノンとは関係の深い)フランスは国際軍を率いることになっているが、軍の到着前に適正なceasefire(戦闘停止)を求めており、対するに米国はtruce(一時的休戦)があればすぐ後に国際軍の派遣を求めている。
国際社会は国際社会でも、マレーシア、インドネシアなどイスラム諸国は国連安保理のダメっぷりを非難し、また、イスラム諸国から国連管理下の平和維持部隊を派遣し、イスラエルを「戦争犯罪」で訴える、と述べている、と、BBCやロイターが報じている。
国連は「無力」と呼びたくなるほどの状態だが、問題は、国連それ自体、勝手に有力になったり無力になったりするものかどうか、ということで、ストレートに言えば、国連を無力に(機能しないように)しているのは、何/誰なのか、ってことだ。
7月にイスラエルがレバノン攻撃を開始したとき、私は本当に目も耳も疑った。んなことをすれば、シリアも巻き込まれる。イランもだ。まさかそんなことがあるはずがない……と思ったときに、あ、ひょっとして、と思い当たったのが、まさに「シリア」と「イラン」だ。
2003年2月14日、国連安保理でパウエル国務長官(当時)が「イラクの大量破壊兵器の明々白々たる証拠」として、よくわからん航空写真を解説したとき、私はこの安保理を生中継する番組を、NHKの地上波で見ていたのだが、当時非常任理事国として理事会に参加していたシリアの代表が、ものすごい勢いで反駁していた。が、生中継が終了してニュースの中で伝えられたその安保理の模様からは、シリアは全部カットされていた。伝えられたのは、「米英とフランスの対決」だけだった。あれはあれでシアトリカルでおもしろかったのだが(役者がド・ヴィルパンとストロー、ディベイター同士で)、「両方の側面を伝える」べき報道が、シリアをスルーしたことには、かなりの疑問を覚えた。事態にさして関係のなさそうな小国がたまたま非常任理事国で、ということですらない。シリアはイラクと国境を接し、あらゆる意味で事態に関係があるのだ。
その後、2004年のファルージャ包囲攻撃などの際、「外国から来たイスラム戦士たち」の存在が知らされた。当時読んだレポートには、戦士たちの出身地である「外国」として、サウジアラビアや北アフリカの国々と並んで、シリアの名前があった。(これらの記事はteanotwarに訳出してあるはずだけど、探すのをサボります。)
そのころ、「国際社会」では「次」をめぐる駆け引きが行なわれていて、まずは(核兵器をこっそり製造しててもスルーされたインドやパキスタンと違って)「核開発」で非難されていたイランに対する攻撃のプランの有無が、しきりと話題になっていた。ブロゴスフィアでは既に反対運動も起きていた。
が、一方で、米国政府筋の発言からは、シリアを標的にしていることがありありとうかがわれた。
その後しばらくして、何となくだけど、イランとシリアについて、英米の分担があるように感じられるようになった。つまり、イラク南部の治安権限を有する英国がイランに対して「イラク南部にテロリストを送り込んでいる」として非難し、米国がシリアに対して「イラク西部にテロリストが入ってくるのはシリアのせいだ」と非難していた。
英国からイランへの非難は、バスラでアラブ人のコスプレをした英兵(おそらくSAS)がバスラ警察に逮捕・収監され、英軍が戦車でバスラ警察を攻撃というとんでもない事態(2005年9月)のあと、なりをひそめたような気がする。あんまり騒ぐと意図せぬところで何かが明らかになるし、そういうふうにしてバレちゃまずいことがあるんだろう。一時は一部のメディアが「イランはIRAのレシピで爆弾を作っている」とか書いてたけど、実はそのIRAの爆弾も、元を正せば英国の諜報部員(スパイ)がIRAに教えたもので、IRAがPLOとつながっていたのは事実だし、PLOからヒズボラへ、そしてイランへ、という線は容易に想像できるのだけど、ま、英国としてはあんまり突っ込まれたくないってのはわからんでもない。(分派、特にリアルIRAは相変わらず爆弾製造に余念がないし、IRAに潜入した英国のスパイは情報と命を狙われているし、成り行き次第では、英国が北アイルランドで何をしてきたかが全部白日の下に曝されてしまう。)
米国からシリアに対する非難も、2005年5月の国境地帯での「武装勢力掃討作戦」(カーイム近辺)のころから、段々と聞かれなくなったように記憶している。そのときは、あの作戦が(米軍から見れば)奏効し、シリアとイラクの国境がふさがれたということか、と解釈していたが、今思うと、んー、どうでしょう、である。つまり、イラク方面からシリアに切り込むのは無理がある、と判断したのではないか、ということなのだが。
むろん私は素人なので、まったくのデタラメな推測に過ぎないかもしれない。
いずれにせよ、2006年8月4日に、イスラエルがレバノンとシリア国境のQaaを爆撃し、シリア国籍の農夫が33人も殺されたことは、シリアを怒らせている。
ガーディアン記事より:
The Syrian minister of information, Mohsen Bilal, appeared on state TV late last night, saying "Syrian blood is now mixed with Lebanese blood. The United States and Condoleezza Rice are responsible for this crime."
シリアの情報大臣は昨晩遅くに国営テレビに出演し、「今や、シリアの血はレバノンの血と混ざっている。この犯罪について責を追うべきは米国とコンドリーザ・ライスである」と述べた。
この言辞が非常に感情的で強いものであるということは、誰にでもわかるだろう。
事態はもうとっくに、第5次中東戦争である。公式には誰もそう呼んでいないだけだ。
そしてこの事実上の第5次中東戦争は、おそらく、イランにも拡大する。イラクの米軍基地がしっかりとしたものになれば、米国にとって不安材料はなくなる。そしてその動きは、メディアを通じてはたぶんほとんど見えないのだけれど、確実に、進んでいる。
頭に来すぎて理路整然としたことが書けない。ふだんから理路整然とはほど遠いではないかという自分ツッコミも入るが、そういう次元とは別だ。うちの上空は、米軍だか自衛隊だかわからないけれど、都内や近郊の基地や駐屯地を行き来する飛行機やヘリがときどき飛ぶ。さっきは飛行機の音がした。今はヘリコプターだろうか、パラパラパラ・・・という音が、小さく聞こえてくる。今日は何だか、これ系の音が、いつもより多いような気がする。
こないだまで、そういう音が聞こえてくると、バグダードではどういう音が聞こえてくるんだろう、ガザではどうだろう、と思っていた。今はそこに、ベイルートも加わった。次にこのリストに加わるのはダマスカスか、テヘランか?
こう考えることが、「心配しすぎ」であるとは、もはや思えない。
彼らに強制される音響は、私に聞こえている音の何倍だろうか。
※この記事は
2006年08月05日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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