「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

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2006年07月04日

「アルカーイダ系がMI5に浸透を図っていた」――だから何?

アルカイダ系、浸透図る 英情報機関に応募と報道(→魚拓

 【ロンドン4日共同】英BBC放送は3日、政府当局者の話として、国内情報機関、情報局保安部(MI5)の組織拡大に伴う新規職員の公募に、英国内に住む国際テロ組織アルカイダの同調者が応募、MI5内部への「浸透」を図っていたと報じた。
 ……
(共同通信) - 7月4日9時57分更新


「あれから1年」を前に、諜報やら警察やらが何か出してくるだろうと思ってはいたけれど、あまりにショボいのでがっかりだ。

一応、BBCの報道:
Al-Qaeda 'bid to infiltrate MI5'
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/5142908.stm

BBC記事は、第4パラグラフにして早くもMeanwhileが登場し、以下は警察の対テロ部門のブリーフィングの話と、2005/07/07のまとめで、2005/07/07については事実関係についての調査報告書はしばらく前に出されているけれども、警察は今も「事件の発生を知っていた人物について捜査中」なのだそうである。何か仕事がないとやばい(組織の存続が危ないとか)ってわけでもないだろうけど、まあ、何か言わないとってことだろう。ましてや、警察はつい先日、まったく無関係の人を「捜査」対象としたばかりか、いきなり撃つという乱暴な行為に出て負傷させたばかりだ。

というわけで、共同通信の言うところの「BBC放送が報じた」という「アルカーイダ系が諜報に浸透を図った」とかいう話は、BBC News記事では冒頭の3パラに収まってしまう程度の中身で、つまり、内容はほとんどない。

少しでも内容があるのは真ん中から下の数パラグラフだが、「内容がある」といっても、テロ対策としてMI5が規模を大きくしていること(2,600人から3,500人へ)と、新たに8つの地域事務所(new regional offices)を設けて、実地で人々が何を考え何を行っているのかについて「より豊かな理解」をしようとしている、ということをBBCの記者が報告している、というだけの話だ。(それについての論評やつっこんだ内容は、この記事には書かれていない。)あと、MI5が求人広告を出して人員を増やしている、という記述もあるが、それ自体は新しい情報ではない。(ただ、具体的な人数という点では、「現時点での最新情報」であり、MI5がそういった情報を明らかにしたことには、ニュースとして価値があるかも。)

っつか当たり前じゃん、互いがスパイを送り込みあうのは。北アイルランドの自治議会(ストーモント)が2002年以降ずっとサスペンドになっている(今年11月までに動きはあるはずだが)理由を100字で説明しなさい、という話じゃないか。

しかも、「アルカーイダがMI5に浸透を図った」というのは、当局が発表したわけではなく、「政府筋」がBBCの取材に応じてわかったことだ。「当社の特ダネ」という点を除いて考えたときに、いちいち見出しにして報道するようなことか、それが。せいぜい、「アルカーイダ」という名前に言及したときに特別な効果(power of nightmare的な意味で)があるからこそ、わざわざ報道する/報道させる価値があるってだけだろう。

北アイルランドの話だが、「シン・フェイン/IRAのナンバー2が、英国のスパイだった」とかいう説があって、それは結局のところ「説」に過ぎなかったような雰囲気だけど、それすら「ありうる」のがdirty warでしょ。当局が「いわゆるwar on terrorではdirty warはない」とか言ってるわけじゃないんだし、「スパイが諜報機関に浸透を試みた」なんてこと、ニュースとして価値などない。

なんでこの「報道」にムカっときてるかというと、「アルカーイダがMI5に」ではなく、逆に「MI5がアルカーイダに」っていうのが現実にあったのに、それについての「報道」はろくにされていないからだ。しかもMI5に徴募されたアラブ系の人たち(英国民ではなく、英レジデント)は、突然MI5に捨てられて、あろうことか、グアンタナモに送られた。アフリカ某国で米国の当局が彼らの身柄を確保したときには、英国の当局が、一種のお膳立てをしている。(<リンク先はthe Independentの過去記事で、閲覧は有料。)

■同じく「爆弾テロ事件」ということで比較:
10年経って立件を諦め、ほぼお宮入りになったマンチェスター爆弾テロ(IRA)
http://ch.kitaguni.tv/u/917/todays_news_from_uk/0000364498.html

※この記事は

2006年07月04日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:51 | Comment(0) | TrackBack(1) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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あれから1年――そしてビデオが。
Excerpt: 英国政府筋の話としてBBCが記事にしたものはあまりにショボかったのだが、アルジャジーラが6日に放映したビデオは、ショボいどころか。。。私はそのビデオの静止画像7枚を見ただけで、とりあえず、いっぱいいっ..
Weblog: tnfuk
Tracked: 2006-07-31 06:52

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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