「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

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2003年07月25日

「香箱をつくつてゐた」

「大きい牡の三毛猫が一匹静かに香箱をつくつてゐた。」
――芥川龍之介、『お富の貞操』より

昨日24日は河童忌であった。河童忌というのは芥川龍之介の命日のことである。

芥川龍之介に『お富の貞操』という短編がある。幕末の江戸、彰義隊討伐の直前、人々が引き払った後の上野でお富という女に起きた出来事が描かれ、【ここがネタばれになっているかもしれないのでカット】、短い話である。

例によって精緻きわまりない文は、計算し尽くされていて映像的である。青空文庫さんでも読めるが(HTMLファイル)、芥川作品は紙で、ページを繰りつつ読むのが私は好きだ。(文庫ならば新潮文庫『戯作三昧』に収録。この文庫はスゴイ作品が詰まっている。『枯野抄』など本当にゾクゾクする。芥川のペンは外科医のメスじゃないかと。)

「大きい牡の三毛猫が一匹静かに香箱をつくつてゐた。」というのは、物語の冒頭(第一段落)、初めて生き物が出てくるシーンの描写である。

過去の作家の文章で日本語を発見することがよくあるのだが、「猫が香箱をつくる」という日本語は、芥川のこの作品に教えてもらった。

何でもかんでもネットで検索してみるのがここ数日の習慣で、試しに「香箱」を検索してみたら、こちらのサイトさんが1番目に来ていた。美術工藝の分野でいう「香箱」ではなく。さらにこういうページさんもあって。(これの一部をそう称するらしい。)昔からある言葉はおもしろい。

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■追記:
何となく青空文庫さんを回っているのだけれど,芥川のこの作品(所謂「キリシタンもの」で,振り仮名が多いのでhtmlファイルだと読みづらいのですが)で「金雀花(えにしだ)」という“日本語”を発見。(本日,芥川龍之介=日本語の先生らしい。)「えにしだ」ってスペイン語だそうです。(「カステラ」みたいなもの?)

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このコーナーは日本語に関するメモです。前からやってみたかったこと。ウェブログなら無理なくできそうなので。

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転記前URL:
http://ch.kitaguni.tv/u/917/%c6%fc%cb%dc%b8%ec/0000009546.html

コメント:
こんにちわ〜
きのふは河童忌だつたのですね。巣鴨慈眼寺ニ眠ル人。といふところで謎謎、かな、してゐます。芥川龍之介つてひとこともですけれど、nofrillsさんの日本語に關するメモ、樂しみ〜。ではまたッ
投稿者:
tsuwe
at 2003 年 07 月 25 日 19:37:45

↑訂正(汗
芥川龍之介つてひと[の]こともですけれど
 ごめんなさい。
 謎謎、かな(?)、です。
投稿者:
tsuwe
at 2003 年 07 月 25 日 19:43:08

巣鴨慈眼寺ニ眠ル人。
『沼』という作品があるようですね。残念ながら未読ですが。読んでみたい。投稿者:
nofrills
at 2003 年 07 月 25 日 20:50:52

はい…
わたしもたのしみです。なにか坂口安吾のやうな雰圍氣もあつて。XINさんの要約のしかたがまたすごい。でもほとんど同じときにコメント用意してたんだ。汗汗。
投稿者:
tsuwe
at 2003 年 07 月 25 日 20:59:26

坂口安吾
芥川のキリスト教ものの中に,西洋人が枝垂れ桜を見て不安になるというのがあったのです。「枝垂れ」をさっぴいて「桜」で安吾つながりということで……。(無理がありすぎ。)
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/68.html
投稿者:
nofrills
at 2003 年 07 月 25 日 21:20:37

『沼』、教えてくださってありがとうございます。
遊びにきました、XINです。
あまり小説に詳しいわけでもないのですが、こころに残るいくつかがあるのです。
ひさしぶりにゆっくり読みたくなりました。
投稿者:
ゲスト
at 2003 年 07 月 26 日 00:42:54

金雀兒、出典不明なり
これもただしいのかな〜。
エニシダがマメ科だとはしらなかつた。
投稿者:
tsuwe
at 2003 年 07 月 26 日 07:05:46

「金雀枝」もあり。
>tsuweさん,
元がスペイン語ということは,金雀花,金雀兒,金雀枝,いずれも花の感じを表した当て字かなあ,と。共通項は「金雀(きんすずめ)」……ナルホド。

>XINさん,
『沼』,図書館に岩波版の全集があれば読めるかも。今日か明日,図書館に行くつもりなので探してみます。(うちの近所の図書館にはないかも。)
投稿者:
nofrills
at 2003 年 07 月 26 日 13:44:24

おねがいッ
沼にあるかもしれないその箇所のテキスト、ぜひ、ご紹介ください。どのやうにゑがいてゐるかとてもとても氣になッてをります。
なほ。「外科医のメスじゃないかと」いはれたところに關聯して、もしかすると、わたくしめもメモをつくれるかもしれない。ただ。そのメモ、わかるやうにかけるかどうか、わからないのでし。寅彦さんのところでナッパ服といふことばがわからないとかかれておられましたが、さうなんだッて、わたくしも龍之介さんを讀んでゐて「職工」といふことばがわからずに辭書して… それからこのひとの作品を「別の目」で讀むやうになりました。メモ、用意できれば、トラックバックします。ただ、いつになるかわからない。今は柿の種を讀みながらスタンダアルがどこかでいッてゐた鏡といふことばを反芻してゐるところです。ほんたうに、ネットって、いろいろ、たのしい。
 はあ。懲りずにまたかきこした。
 それではまた〜
投稿者:
tsuwe
at 2003 年 07 月 27 日 20:09:36


nofrillsさま、XINさま。
このふたつがおちてゐます。
家でも龍之介さんのがどこかにあるかさがしてみるけれど。見たことないし。
投稿者:
tsuwe
at 2003 年 07 月 27 日 20:30:06


※この記事は

2003年07月25日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 18:05 | 日本語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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