英国の労働党っていつから米国のプードルになったんか。プードルという表現そのものはジョン・メイジャーとサッチャーとの関係について使われていたようだけれど,昨年あたりからはすっかりブレアの代名詞。
んで遺伝子組み替え食品の件。
22日にTelegraphにanti-GMな記事があると書いたが,Telegraphは保守党な新聞なので,きっと労働党は違うことを言ってるんだろうと思い,一応労働党サイトへ。
ありましたわ。
http://www.labour.org.uk/gmscience/
※ そのうちにアーカイヴ入りしてURLが変わると思う。
Experts publish review of GM science
Monday 21 July 2003
GM crops currently on the market pose a 'very low' risk to human health according to a report published by the GM Science Review Panel today. It also says that scientists cannot make blanket assurances on safety and applications to use the technology should be considered on a case-by-case basis.
……あれ?違う報告の話?かと一瞬思うのですが。
えーと,22日にここで触れたTelegraphの記事,GM fails to win official backing(「遺伝子組み替え食品,安全とは言いきれず」)が報じているものは,The Government's science review of genetically modified cropsの報告に基づいています。
上にある労働党サイトにあったニュース記事,Experts publish review of GM science(「専門家が遺伝子組み替えに関する見解をまとめる」)は,the GM Science Review Panelの報告に基づいています。
science review of genetically modified crops(テレグラフ)
GM Science Review Panel(労働党)
……同じですね。
しかし,テレグラフが「安全ではない」を強調した一方で,労働党は「リスクは非常に低い」だけを強調。
労働党のニュース記事には,次のような一節もあります。
The Panel concludes that the risks to human health from GM crops currently on the market are very low. But, depending on the crops developed, GM may present greater challenges in risk management in the future. It is important to continue to develop safety assessment technologies, effective surveillance, monitoring and labelling systems.
depending on the crops developed, GM may present greater challenges in risk management in the future というのは,「場合によっては〜かもしれない」という,極めて弱い表現です。
一方でテレグラフの記事では,同じことを次のように書いています。
sounding a much more cautious note than expected and warning that "gaps in our knowledge and uncertainties will become more complex" in the future.
助動詞がwillで表現はきついんですが,22日には私は見落としていた(斜め読みするから),soundingは記者の主観ですね。
誘導されちゃった。
ともあれ興味深いのは,昔ながらの区分けに従うなら,
「労働党=左派=福祉・健康重視=GM輸入反対」
「保守党=右派=親米=GM輸入賛成」
になるはずなのですが,これが完全に逆転しているということ。
そして,仮に今が保守党政権であったとしたら,その場合は
「保守党=GM輸入賛成」
「労働党=GM輸入反対」
で論陣をはって,それぞれにスピンドクターがついて情報戦を展開しただろうし,結局政権を担う方はGM賛成になってたのではと。
どっちにしてもプードル状態。それが英国の“国益”ってことかもとさえ。
米国でもそうなのですが,政党の主張なんてそのときどきで変わっちゃうのです。今になってから00年大統領選挙の未曾有の混乱を思い返して,「もし大統領になったのが民主党のゴアだったら,世界はもうちょっと平和だったかも」というのは,ブッシュ大統領の政権が共和党タカ派だから,それと争った民主党ならどうだろう,ということなのですが,ゴアが大統領になっててもやっぱこうなってたんじゃないのかという可能性も,違ってたかもという可能性と同じくらいなんじゃないかなあと。ネオでコンな人々が,共和,民主両党にぶっといパイプを持っているとすれば,看板がどっちだって結局は同じ。だいたいあのマデリーン・オルブライトは民主党。
私は悲観論ベースなんです。中途半端ですけどこのへんで。
タグ:遺伝子組み換え食品
※この記事は
2003年07月24日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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