「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2003年07月23日

事情通を平気で殺す作戦。

今日は寝起きにテレビニュース見てびっくりした。捕えるんじゃなくて殺すんか。

もうアホかバカかと小一時間……というのはこういうときに使いたい。

ウダイ・フセインとクサイ・フセイン死亡の記事(まだちゃんと読んでない)
■BBC:http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/middle_east/3088393.stm

■Guardian:http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,1004168,00.html

■Independent:http://news.independent.co.uk/world/middle_east/story.jsp?story=426800
↑「死亡」の表現に,killedじゃなくてslainを使っている。

■Independent:Robert Fisk記事(有料)(←読んでません。)

■Telegraph:http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2003/07/23/
wirq23.xml&sSheet=/portal/2003/07/23/ixportaltop.html

↑たいした情報なし

■Evening Standard:http://www.thisislondon.com/news/articles/PA_NEWWARIraqSubstitutewe00sons?source=
↑ストロー外相の反応。

腐れ保守タブロイドS1面ヘッドライン:GOT 'EM Tyrant's evil sons killed in shootout
記事内で「サイコ野郎」呼ばわり。案の定下品で劣悪。

Mirror1面:フセインの件ではなくドクター・ケリーの件
(ドクター・ケリー死亡の責任はフーン国防相におっかぶせられる,と。)
↑記事は'SADDAM'S SONS' KILLED IN HUGE FIRE-FIGHT
※ Mirrorはタブロイドですが,エログロナンセンスではないので,誰が読んでも大丈夫。でもこの記事は古い。

昨年9月は,「イラクのフセイン政権は,毒ガスとか生物兵器とかたくさん持ってて,すぐにでも使ってくるかもしれないから,危険なんですよ」という話だった。

先日亡くなったドクター・ケリーがBBC記者と話をしたのは,この「すぐにでも使ってくるかもしれない」(正確には「45分で使用可能」)の部分が,科学的な意見ではなかった,という点についてだった。

武力行使前に「国連決議に基づかない武力行使をするのなら大臣を辞める」と宣言しながらも,どういう理由か閣内に残って(←この理由については私が正確なところを調べてないだけです),大規模戦闘が終わってから米英がイラク統治をすることにしたことで抗議で辞任したクレア・ショート元国際開発大臣が「首相は嘘をついて議会と国民をミスリードした」と追及した点のひとつが,やはり「すぐにでも使ってくるかもしれない」という点についてだった(←記憶に頼ってます)。

ショート大臣が辞任したときは,まだ政府は余裕ぶっかましていて,「イラクは広いので,いろんな場所を見ないといけないので,WMDを発見するのには時間がかかります」とか言ってた。(日本の首相が「フセイン大統領が見つからないからといって,イラクにフセイン大統領は存在しなかったということになりますか?」と,戸棚の中のお菓子をくすねたカツオ君を叱るサザエさんのような理屈をこねたのもこの頃だったと思う。)

しかし火はぶすぶすとくすぶっていて,英国でも米国でも「証拠捏造疑惑」が大きな扱いをされるようになった。米国での細かい動きは把握していないが,英国では最初は「いや私は証言しません」と拒んでいた首相補佐官までが調査委員会の場で証言をしなければならなくなった。米国は,UNMOVICが「ってゆーかこの書類のハンコ,ちがくない?」とやすやすと指摘した「偽造書類」を,今になって「偽造でした」と認めた。責任がどこにあるかをめぐって,やはり補佐官(ライス)がテレビで何かポイントがわかんないこと(私がアホなだけ?)を言わなければならなくなった。

英国の調査委員会は「政府の書類は『嘘』とは言いきれない。しかし情報の扱い方がよくなかった」という,“それをそのままイラクのWMD保有証拠に適用して考えてみたまえワトソン君,根拠となりうるのは科学的客観的事実なのだよ”的結論を出した。しかし補佐官や外相などは「政府の書類は『嘘』とは言いきれない」を根拠として烈火のごとく怒り,BBCに「謝罪しる!」と要求した。

そして,英国国営放送BBCと英国政府との“全面戦争”(異例)が続く中,「じゃーBBCの情報源って確かな筋なわけ?」ということになり,科学者ドクター・ケリーは政治的駆け引きの歯車に挟まれた。

もう,ドクター・ケリーから話を聞くことはできない。ドクター・ケリーは実際にイラクで武器調査をした人物だ。何ということか。

で,次はフセイン家の長男と次男の暗殺ときた。

もしほんとに,「イラクのフセイン政権は,毒ガスとか生物兵器とかたくさん持ってて…ここカット…危険なんですよ」ということが理由で,武力が行使されたのだったとしたら,そして「イラクのWMD」を本当に米英が確信していたのだったら,米英がイラクに入ってから4ヶ月も,当のWMDの気配さえ出てこない状況なら,事情を知る人がそこにいたら「置き場所教えれ」くらいのお願いはするだろう。

マジで機密情報握ってそうな人が「あー,あれならあの山に……」とか教えてくれたら,「そもそも『イラクのフセイン政権は,毒ガスとか生物兵器とかたくさん持ってて』っていうのは嘘だったんだろう!」という批判を,しっかり否定することができる。あの山で毒ガスの痕跡でも見つかれば,「ほれほれ,やっぱあったでしょ」と堂々と言える。もう言い訳はいらないし,支持率も回復して次の選挙もばんばんざい。

そんなすばらしい機会をぷちっとつぶすようなことは,普通しない。

……普通じゃないのか。

イラクで政治的に失脚してどこかに亡命したフセイン・カメル(大統領の娘婿)は,亡命先で「イラクにWMDはある」と語り,それからどういう理由か「イラクに戻っておいでよ。殺さないから」と言われたのを信じて,そして案の定殺された。そして誰も,フセイン・カメルの話を聞けなくなった。

彼の証言を利用していたのは米英だったわけだから,ウダイ&クサイだって同じように利用しようと考えないはずはない。

にもかかわらず,米軍は甘い水で誘うことはせず,兵器を用いてウダイもクサイも殺した。もう,この兄弟から話を聞くことはできない。

どういう戦略だ。もうアホかバカかと小一時間……。

それとも,最初から話を聞くつもりなどなかったのか。

チェイニー(米副大統領)は2年前からイラクの石油を調査していた。

Blood For Oilという反戦派のスローガンそのものじゃないのか。

BBC:US celebrates 'good' Iraq news
だから,どこが「『グッド』ニューズ」なんだっていうツッコミはBBCもヘッドラインに入れてますが,記事の写真はジェシカ・リンチ上等兵出迎えの子供。何だよこの写真。何だよこのTシャツ。何がThank you Jessicaなんだ。意味がわからない。いやマジで。っていうかこんなことでdistractされるの?

Weapons of Mass Distraction...


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こういう意見もありました……情報を聞き出せる人物を捕捉せずに撃ち殺したという事実は,歴史よりも雄弁だと個人的には。「歴史が証明してくれる」というのは,これから先の歴史を「オレたちが正しかった」という方向に向かわせる,という意味で,これは英国がずっとやってきたこと。それが事実であり,事実に「(道徳的な意味で)正しい」もへったくれもありません。

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転記前URL:
http://ch.kitaguni.tv/u/917/voices_from_iraq/0000009192.html

コメント:
そうッそうッそうなんですッ

> 捕えるんじゃなくて殺すんか。
ほんとにやつらのやることは人種差別のヒトラーのふるまひです。假にあいてが白人の基督教國家であれば。そんなふうにおもへるほどひどい侵攻です。ブレアのいふとおり歴史に残る。殘ってほしい戰爭犯罪の二〇〇三年です。
 お礼をもうしあげにきたのにつひ昂奮してしまふ。めんたまにかきこありがとうございました。北國さんよりはトラックバックがつかへるあちらにゐることがおおいですけれど。であちらでもお礼いたしましたが。この記事を讀んでゐたら。
 ではまた〜
 あああ。追記してのおねがひ。カード入手されたら小泉某は外務大臣らしい某女はどうかおしへてくださいませ。
投稿者:tsuwe
at 2003 年 07 月 23 日 15:22:38

> 假にあいてが白人の基督教國家であれば。そんなふうにおもへるほどひどい侵攻です。ブレアのいふとおり歴史に残る。

 バグダッドに爆弾が打ちこまれる前,ブレアがなぜあんなに必死なのかいろいろ読んでみたんですが(「石油」は一応念頭から外して),どうもヒーロー願望があるらしいという説が一番説得力がありました。
 いわく,ヒトラーを台頭させたチェンバレンの宥和主義と,ドレスデンに爆弾の雨を降らせて町を破壊し非戦闘員をたくさん死なせた/殺したがヒトラーを自殺に追い込んだチャーチルの強硬な思想。チェンバレンは英国では「腰抜け」代表,チャーチルは英雄(昨年「最も偉大な英国人」に選ばれたほど)。

ブレアはミロシェヴィッチを追い落としたのだから,ここで「悪人サダム」をやっつければ本当に歴史に残るヒーローになれる,と。
 コソヴォに劣化ウラン弾を打ちこんだのもブレア政権下の出来事です(99年)。
投稿者:nofrills
at 2003 年 07 月 23 日 16:08:05

むかし…
もう少しちがったたけれどアラビアのロレンスッてひとがゐたつてさうおもひました。信じがたいけれどもしかすると政治家ッてそんなひとが多いのかもしれませんね。ではまた〜
投稿者:tsuwe
at 2003 年 07 月 23 日 16:20:51

ロレンスは二枚舌外交(三枚舌外交)の板ばさみになって,アラブの部族間の対立にも苦慮して,外交担当としては本当に気の毒と思います。
http://www.yositeru.com/sbc/history/18.htm
投稿者:nofrills
at 2003 年 07 月 23 日 16:42:53

※この記事は

2003年07月23日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 12:07 | voices from iraq | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼















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