8月7日(木)〜8月12日(火)には大阪での展覧会。美しく,心を打つ白黒写真。
仕事が詰まっていても,何らかの都合(ゲラ待ちとか)でぽこっと1日空くことがたま〜にある。そういう時,たいがいは,洗濯して掃除するか,自転車で30分くらいのところにあるショッピングセンターに行くか,自転車で15分くらいのところにある大型書店の支店に行くか,図書館に行くか,本気でトマトと豆のカレーを作るか,積ん読の本を読みながら寝るかするのだが,土曜日は銀座に行ってきた。
丸の内線の地下鉄の改札を出てから適当に地下道を歩いて,適当なところ(地下道に飽きた頃)で地上に出たら,かつての近藤書店さんのすぐ近くだったのに,どこにいるのかわからなかった。狭いスペースに大量の本を収納する術の展示場がなくなってしまって(<展示場じゃなくて書店だ。ちなみにお買い物もけっこういっぱいした)さびしいなあと思っていたが,通りを歩く時の目印までなくなってしまっていたのだと,この時わかった。
展示されていた写真は,子供を被写体にした白黒のものばかり。白黒は印刷ではグレイの階調が出ないことが多いけれど,森住さんの写真も,印刷物とかウェブで見ていたものとは違って見えた。人間の目とか,ガレキのひとつひとつとか,犬の毛並みとか,砂埃が舞っていそうな空気とか。
ファインダーの向こうの子供たちは,親や兄姉の仕事の手伝いなのか,金属パイプ(だと思う)を何本も抱えてほこりっぽい街を歩いていたり,胸にFRANCEと刺繍されたサッカーのユニフォームを着ていたり,それから,はっきり読み取れないけれどとにかく英語で何か書かれて何かのキャラクターのついたトレーナーを着てサッカーをしたりしていた。うちの近所の公園でも夕方に見られる光景。
ひとりの子供の着ているジャンパーの胸には
BOY...
BOY...
BOY...
という英語と,クマの(←多分)刺繍がしてあった。
BOY×3とクマの服を着たその小さな子(3〜4歳?)は,お父さん(だと思う)に手を引かれていて,白い布で目を覆っていた。写真パネルの下には「白血病の少年」という説明があった。
会場の中央に展示用の壁があって,裏側に,6歳くらいかなあ,子供の写真が4枚並んでいた。ファインダーの中でアップになった4人の子供たちは,みんなイラクの子供たちだけど,みんな顔が違う……顔がっていうか顔立ちが。あの地域の古代文明の彫刻みたいな目鼻くっきりで目がでっかい子,彫りの浅い東アジア人(日本人含む)みたいな雰囲気の子,同じく彫りは浅いけれど東アジアというより東南アジア風の子,アフリカ系の感じがする子。病気で入院してたり街角にいたりするのだけれど,顔のアップの写真で,今思い出そうとすると,どの子が病院にいた子なのかがはっきりしない。(オー・マイ・ブレイン!)
でも1枚(1人)だけははっきり覚えている。古代文明の彫刻の顔をした子は,目に力があって,とても睫毛が長くてかわいくて,きれいな形の唇をしていた。だけど,その子の右の耳のすぐ下は,不思議な形になっていた。写真パネルの下の説明を見たら,「リンパ腫」とあった。確かに,風邪を引くと腫れる場所のようだった。
以前見た,日本の技術者の挑戦を追う週1のドキュメンタリー(?)番組を思い出した。チェルノブイリ原発事故のあと,甲状腺がんで首が変形してしまった女の子たちののどの形成手術の話。
私にはない技術だけれど,日本にはそういう技術力がある人がいる。右耳の下が膨らんでしまっている古代文明の彫刻の顔をした子に,そういう技術は届かないのかなあ。届いてほしいなあ。技術以前に,あの子の病気は治されることがあるんだろうか。
「笑った顔が見たい」と思わせる顔なのだ。何とかならないのかとほんとに。またもや「かわいそうだけれど,何もしてあげられないし」で終わってしまうのだろうか。
※この記事は
2003年07月21日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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