「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2003年07月10日

イギリスの子供保護

事件報道を見ていて思い出した,ロンドンでの,ほんの1,2分の間の出来事。

長崎の事件について報道するテレビ番組で,コメンテーターさんが「イギリスでは子供の一人歩きは法律で禁止されている。大人に監督義務がある」とおっしゃっていたので,その件についてちょこっとメモしておきます。

ロンドン東部のストリート・マーケットのひとつに,ホクストン・マーケット(Hoxton Market)というのがあります。カウンシル・フラットが立ち並ぶ中の通りの1本が週末に露天市になっているもので,「ストリート・マーケット」という言葉から容易に連想できるような,「アンティーク」とか「古着」とかではなく,「在庫整理処分の台所用品」とか「B品のタオル」,「ナゾめいたデザイナーズ・ブランドの衣類」,「賞味期限の切れた食品(缶詰とか)」,「箱が傷んだ洗濯洗剤」などなどの露天市で,観光客らしい人はまず見かけないマーケットでした(以上,2000年に行ったときの話)。

市が立つ通りは,大通りから1本入った裏通りです。大通りとその裏通りを結ぶ道の両側は,カウンシル・フラットとコミュニティ・カレッジです。

私が大通りでバスを降りて,市の立つ裏通りへ向かって歩いているときのことでした。

4〜5歳くらいと思われる男の子が,泣きながら道を歩いていました。男の子は一人でした。私は「どうしたのかな,あの子,迷子?」と思ったものの,特に変とも思わず,その子とすれ違いました。

そのとき,車道をゆっくり走ってきた車が停止して,"Oi!"という声がしました。日本で言うと「シャコタン」という雰囲気の車だったので,そのまま歩き去ろうかとも思ったのですが,「そこの人!ちょっと!その子供,あんたの連れじゃないの?」と言うので足を止めました。振り向くと,20歳くらいの,ちょっと不良っぽい雰囲気のおにーちゃんが車から降りて私を呼びとめていたのでした。

もちろん知らない子供だったので「違う」と答えました。

「その子の親とか誰か一緒にいるべき大人のことは知らないのか?」とおにーちゃんは続けました。

私は「この辺の住人じゃないし,わかんない」と答えました。

おにーちゃんは「困ったな」というようなことを言い,その子に近づいて「大丈夫?」というようなことを問いかけました。

私も,そのまま立ち去るわけにもいかなさそうだったので,その子の方に2,3歩近づきました。

おにーちゃんは私に向かって「オレもこの子がどこの子なのか知らないし,参ったなぁ。子供を一人で歩かせるわけにはいかないし」と言いました。

そこで私はやっと,イギリスの「子供の単独行動禁止」ルールを思い出しました。

イギリスでは法律があって,子供には常に大人が付き添っていなければならず,家の外でも中でも,子供が子供だけでいることは違法なのです。(だから親が親だけで出かけるときは,ベビーシッターを雇います。)

マイケル・ウィンターボトム監督の映画『ひかりのまち』に,男の子が一人でガイ・フォークスの花火の会場をうろうろした結果,警察に保護されるという場面があります。あれも「子供を一人にしてはならない」という法律があることが背景になっています。

ホクストンで泣いていた子供は,おにーちゃんに話し掛けられて泣き止んでいました。でも保護者らしき人はその近辺にいません。

私は「ちょっとその角の店とかで,誰かにその子のことを訊いてこようか?」とおにーちゃんに言って,数十メートル向こうの角の店の方に足を向けました。

とその時,カウンシル・フラットの敷地から,おじいさんが出てきました。子供はうれしそうな声を上げました。

おじいさんがフラットに帰ったら後ろについてきているはずの子供(孫)がいなかったので,あわてて引き返してきたようでした。

おにいちゃんは「気をつけろヨ」とか何とか文句を言っていたようでしたが,何はともあれ一件落着で,車に戻りました。子供がおじいさんに手を引かれてフラットの敷地内に入っていくのを見送って,おにーちゃんの車は走り去りました。

子供には常に大人が一緒にいなければならないというルールが,実際にどういうことなのか,このおにーちゃんに見せてもらったような気がします。

こんなルールがあって大人がこんな風に行動しているイギリスでも,未成年者による犯罪はたくさん発生しています。最もよく知られているのは多分10歳児2人組がよちよち歩きの幼児を惨殺したバルジャー事件でしょう。ここ数年は銃犯罪が多いようです。

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※オリジナルの投稿は
http://ch.kitaguni.tv/u/917/todays_news_from_uk/0000007178.html
コメントあり。


けふも…
> 子供には常に大人が一緒にいなければならないというルール
もうなんどめでせうか。またここのかきこみをながめにきました。英國の子供保護。先日、不登校してゐるらしい學童を一齊補導したといふニューズがあッたけれど。ほんたうに複雑な氣持になる。
このやうな國もあるんだ。このやうな國になッてしまッたといふべきかもしれないけれど。
投稿者: tsuwe at 2003 年 07 月 26 日 17:35:07

英国事情,深いことは不明。
英国でなぜこのような法が整備されるに至ったのか,これは今後ヒマなときに調べようと思っているのですが,まだわかりません。ただ,テレビに出てくるコメンテイターさんの何人かがバルジャー事件を引き合いに出していたので(子供が子供を殺した事件という意味で),前からどこかに書こうと思っていたことを,また機会を逃さないうちに書きとめておこうと。(そういうことがしたくて,このツールを借りたようなもの。書きたいけどどこに書いたらいいのかで迷うようなことが,いくつかあるので。)
投稿者: nofrills at 2003 年 07 月 28 日 21:59:37

はぁー
うーん奥が深い。でもこのルールはいいと思います。親が共働きの子とかが、寂しい思いをしなくてみますからね。
投稿者: ゲスト at 2003 年 11 月 18 日 19:39:29

「共働き」の問題が絡むと複雑です。一般的な家庭で父親も母親も働いているケースもありますが、その場合は収入にある程度の余裕があればベビーシッターも頼めるでしょう。住居に余裕があれば、住み込みのau pairも置けるでしょう。

しかし父親だけもしくは母親だけの家庭であった場合、生活保護に頼らずに家計を維持することがいかに難しいか。

英国のような決まりごとの利点を踏まえた上で,やはり私は「子供だけで行動できる」環境を望まずにはいられません。
投稿者: nofrills at 2003 年 11 月 18 日 21:56:30

※この記事は

2003年07月10日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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