「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2011年07月07日

オマー爆弾事件民事訴訟、一審で「賠償責任あり」とされた4人の上訴審の結論が出た。

2005年7月7日のロンドン地下鉄&バスの同時爆破事件から、ちょうど6年。ルパート・マードックのメディア帝国の一部であるNews of the Worldというタブロイドの不法な取材で、7月7日の事件の被害者遺族までもが密かに電話を盗聴されていたことが明らかになったばかりで、なんともやりきれない気分でいるところに、さらにやりきれない気分になるニュース。マイケル・ギャラハーさんがまたもや、disappointedと語っている。

Two men overturn Omagh bomb ruling
Thursday, 7 July 2011
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/local-national/northern-ireland/two-men-overturn-omagh-bomb-ruling-16020590.html

1998年8月15日、土曜日の買い物客で賑わう北アイルランドの地方都市オマーの商店街で爆発物を積んだ自動車が爆発し、数百人を負傷させ、29人を殺した。(うち1人は双子を身ごもっていた。)犠牲者は全員、英軍や武装組織とは関係のない一般市民ばかりだった。それどころか、スペインから修学旅行に来ていた小学生までいた。爆弾を仕掛けたのはReal IRA。同年4月に「グッドフライデー合意」という形で「和平」へ向けて大きく進んだリパブリカン運動から離脱した一派による組織だ。(なお、Real IRAというのは俗称で、本人たちはÓglaigh na hÉireann = volunteers of Ireland, Irish Volunteersを名乗っている。)

北アイルランド紛争の中でも最悪の被害をもたらしたこの事件で、驚くべきことに、北アイルランドの警察・検察は誰も実行犯として起訴することができなかった。刑事裁判の道は断念されたが、被害者の遺族の方々は、民事訴訟で加害者の責任を問うていた。そして裁判所が結論を出した。2009年6月のことだ。

http://en.wikipedia.org/wiki/Omagh_bombing
On 8 June 2009, the civil case taken by victims' relatives concluded, with Michael McKevitt, Liam Campbell, Colm Murphy and Seamus Daly being found to have been responsible for the bombing. Seamus McKenna was cleared of involvement. They were held liable for £1.6 million of damages. It was described as a "landmark" damages award internationally.

2009年6月8日、被害者の親族による民事訴訟の結論が出た。いわく、マイケル・マッケヴィット、リーアム・キャンベル、コルム・マーフィ、シェイマス・デイリーが爆弾事件に責任ありと認められた。シェイマス・マッケンナは関与なしと結論された。彼らは£1.6mの賠償責任を負う。これは国際的に「画期的な」損害賠償と位置付けられた。

このとき「責任あり」とされた4人は、判決を不服として上訴していた。その上訴審の結論が、今日出たのだ。

結果は、4人のうち2人については上訴の訴えを棄却、2人については継続。

棄却となったのはRIRAのリーダー、マイケル・マッケヴィット(別の容疑で有罪となりアイルランド共和国で服役中)と、リトアニアでの武器調達での容疑もあるリーアム・キャンベル。彼らについて裁判所が重ねて「責任あり」と判断したことは、何ら驚きには値しない(が、BBCは「マッケヴィットの訴えが通らなかった」ことに注目しているらしい)。

継続となったのは、コルム・マーフィとシェイマス・デイリー。彼らについては上訴の手続きが進められる。

マーフィーについては証拠が疑わしいとのこと。これは米FBIのスパイ、デイヴィッド・ルパートの件だ。詳細は今年1月の報道参照。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-northern-ireland-12147494

今回の裁判所の判断について、息子のエイダンさんを失ったマイケル・ギャラハーさん(被害者遺族の会の代表)は、「落胆した」と述べている。(警察の捜査や司法の判断について、この人が「落胆した」と述べるのは、何度目だろう。)
Michael Gallagher, whose son Aidan was killed, said: "We are disappointed, we have to accept the ruling of the court, which we do, but we are disappointed.

"It has been a long struggle for the families, almost ten years, it looks like this work will continue for a number of years forward.

"It is not something that we look forward to but if we feel it is the right thing to do we will continue to do that."

http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/local-national/northern-ireland/two-men-overturn-omagh-bomb-ruling-16020590.html

しかし、こういうことになるとますます、オマー爆弾事件の背後って何があるんだろう、という気になる。FBIのスパイ(デイヴィッド・ルパート)の件、GCHQが犯人一派の携帯電話の通話記録を傍受していたという件、それを特集したあと急に静かになったBBCの調査報道……。

マーフィーとデイリーについて上訴が認められた件について、BBCとベルテレさん以外の報道。BBC以外は「2人について上訴が認められた」ことに注目している。

http://www.u.tv/News/Two-men-overturn-Omagh-bomb-ruling/70c1de7b-0f13-4927-9389-fb81a3aae066
http://www.irishtimes.com/newspaper/breaking/2011/0707/breaking13.html
http://www.rte.ie/news/2011/0707/omagh.html

※この記事は

2011年07月07日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 22:00 | TrackBack(0) | todays news from uk/northern ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

……全文を読む
▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼