「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2011年06月25日

「暴動」を起こした東ベルファストのUVF(これは「よくある暴動」などではない)

「刑事コロンボ」ピーター・フォークが亡くなった。小池朝雄の吹き替えで「うちのカミさんが」をテレビで見ていたとき私はほんの子供で、「ピーター・フォーク」という名前についてなぜ「ピーター・スプーン」ではないのだろうと思っていたことは記憶にあるが、「刑事コロンボ」自体は、記憶しているのは、後の再放送を見たときのものだろう。そして、残念なことにまるで記憶にないのだが、「コロンボ」の本シリーズの最終回(第7シーズン)は、IRAの武器密輸がテーマだったのだそうだ。1978年5月13日放映(日本では翌年)。ジョー・デヴリンという高名な詩人が実はIRAの資金集め担当兼武器手配担当で……という内容。

さて、月曜・火曜の東ベルファストの大暴動について、「何人が暴れた」とか「何人が負傷した」といったことはほぼリアルタイムで報道されていたし、首謀者がイースト・ベルファストのUVF(ロイヤリスト武装勢力)であると見られるということも最初から報道されており、つまり誰もがこの「暴動」が「ただの暴動」ではなく「武装勢力の計画的行動」であることを前提できる程度の情報はあったのだが、何がどうなっていたのかが「誰が読んでもわかる説明」の形で記事になったのは、実は木曜日だった。

ベルファスト・テレグラフのデボラ・マカリースと、アイリッシュ・タイムズのジェリー・モリアーティがほぼ同時に記事を出した。

Is UVF's ‘Beast in the East’ behind new wave of riots?
By Deborah McAleese
Thursday, 23 June 2011
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/local-national/northern-ireland/is-uvfrsquos-lsquobeast-in-the-eastrsquo-behind-new-wave-of-riots-16015101.html
As the PSNI, politicians and community leaders desperately attempt to defuse soaring tensions, there are fears that the UVF leader, known as the 'Beast in the East' is out of control.

北アイルランド警察や政治家、地域の指導者らが急激に高まった緊張を緩めようと手を尽くすなか、「東の獣」として知られるUVFのリーダーが制御不能になっているのではとの懸念がある。


Sinister UVF figure a key catalyst of Belfast violence
GERRY MORIARTY
The Irish Times - Thursday, June 23, 2011
http://www.irishtimes.com/newspaper/opinion/2011/0623/1224299454713.html
THE SO-CALLED "Beast from the East" took over the Ulster Volunteer Force in east Belfast about six years ago and has strengthened his power base since then, according to well-placed loyalist sources. He and some of his senior lieutenants are chiefly responsible for the violence in east Belfast over recent days, they say.

通称「東の獣」は、およそ6年前に東ベルファストのUVFの支配権を掌握、以降自身の権力基盤を強化してきた、と内情に詳しいロイヤリスト筋は語っている。主にこの人物と、その配下にある指揮官数名が、この数日の東ベルファストの騒乱を引き起こしたのだと、彼らは述べている。

遅れて24日付でガーディアン(いつものヘンリー・マクドナルドではなく、ロンドンからオーウェン・バウコットが取材に入っている)。記事には前のエントリで参照した「ガンマンを描いた新たなミュラル」の写真が使われている。

In this part of Belfast, no one seems willing to forget the past
Owen Bowcott
guardian.co.uk, Friday 24 June 2011 18.48 BST
http://www.guardian.co.uk/uk/2011/jun/24/belfast-no-one-willing-forget-past
"The UVF are restarting this," one Sinn Féin supporter insisted. "They first sent out gangs of masked and gloved up youths who threw paint bombs and stones."

A tour of the estate revealed houses on the perimeter splattered with paint, their windows and tiles broken. "It was totally unprovoked."

In response, dissident republicans opened fire, wounding three people. ...

あるシン・フェイン支持者は「UVFがまたこれを始めようとしているのだ」と主張する。「まず最初に、覆面をつけ手袋をした若い者たちを送り出し、彼らがペイントボールや石を投げた」。ショート・ストランドの住宅街を見て回ると、ペンキが投げつけられた跡がそこかしこにあり、家々の窓やタイルが割れている。「一切挑発なく、いきなり襲ってきた」。それに反応して、リパブリカン武装組織(非主流派)が銃撃を行ない、3人が負傷した。……


土曜日朝(日本時間)の段階ではほかのメディアには記事はないようだ。

■前置き:
本題に入る前に強調しておきたいが、今回の東ベルファストの「暴動」は、「最近多いですね」という印象で世間話のネタになる「欧州での暴動」とはまったく異なる文脈にあり、性質もまるで違う。

アテネやロンドンで最近あったような「暴動」は、政府の政策に抗議するデモ隊と警察との衝突であったり、暴れることが目的の連中(や、ノリで暴れてしまうような連中)が、デモに便乗した結果であったりする。

一方、東ベルファストの今週の「暴動」は、そもそも「抗議」や「デモ」ですらない。カナダのバンクーバーであったような「フーリガンが暴れた」事象でもない。北アイルランド紛争の当事者だった武装勢力(しかも活動を停止し武器を捨てたはずの組織)が、対立する陣営の住宅街に殴り込みをかけたあと反撃を受け、大衝突となったのである。はなっから「一般市民に対する襲撃」であり、それ自体、欧州だろうがどこだろうが異常なことだ。(より「異常」なのは、この襲撃が完全にコントロールの行き届いたものだったことだが、その点は後述。)

なお、英国のマスコミ報道は最初から「UVFが組織したと考えられる」と強調しており、UVFがどういうものかを少し知ってさえいれば、報道を普通に見聞きしていれば、メッセージは受け取れるはずだ。

それを無視して、ベルファストの暴動を最近の「ヨーロッパ」の(例えば金融危機と政府の緊縮財政に対する抗議という背景のあるギリシャのアテネの)「暴動」などと同一視するという矮小化は、暴力的であるばかりでなく、真実に対する冒涜である。(「無視して」はおらず、単に文脈を知らずに「欧州一般でよくある暴動」扱いをしている場合は、無知ゆえの暴力そのもの。第一に現地に失礼である。)


■本題:
さて、月曜・火曜の騒乱だが、人々の証言などで明らかになってきた経緯は次のようなものだ――最初に、ロイヤリストの若いの(覆面に手袋で、人相や指紋がわからないようにしていた)がショート・ストランドの住民(カトリック)の家々を、ペイントボールや石などで襲撃した(→反シン・フェイン主流派の政治組織、Eirigiのブログに写真がある。つまりEirigiがショート・ストランドですぐに動ける状態にあるということだが……)。

ショート・ストランドの家屋が襲撃されたのを受けて、リパブリカン武装組織(PIRAではなくディシデンツの組織だが、RIRAなのかCIRAなのかONHなのかなど、組織名への言及は見当たらない)が出てきた。

そして大量の警察車両とマスコミのカメラがいたあの大通り(Newtownards Road)を挟んで、北側にロイヤリスト、南側にリパブリカンが出て、激しく対峙。私が見ることのできた映像では、カメラの視界には警察車両の列とロイヤリスト側しか入っていなかったのでリパブリカン側の動きは確認はしていないが、通りの車道に警察がいて、歩道から火炎瓶や石などが投げられ、また発砲もあり、警察はウォーターキャノンやバトン・ラウンド(プラスチック弾)を使った。既に月曜日に頭に石が当たって重傷になった人が出ている。

発砲は、ロイヤリスト側からのは警察の車両に当たり、リパブリカン側からのはロイヤリスト陣営の2人(25歳と16歳の男性)に当たったほか、現場にいた報道写真家の太腿に当たった(大事には至らなかった)。警察は銃撃について殺人未遂で調べており(→21日、UTVの報道)、23日にはリパブリカンのガンマンが逮捕された(西ベルファストの28歳男)。ちょっと今、探せなくなってしまったのだが、リパブリカンからの発砲は誰かをめがけていたというより、塀に隠れて銃口だけ出して、狙いを定めずに撃っていたとの証言があった。恐ろしい。

ほか、警察発表:



ネット上のロイヤリスト側では「その前からリパブリカンの連中がうちの地域を荒らし回ってきた」などと主張しているが(→一例としてBBCのこの記事の冒頭の「若者」の言葉)、これは検証不能である(言葉だけで写真などはない)。(実際、各メディアと警察が一斉に「UVFが暴れた」と述べたことで、ロイヤリスト側が「偏向したマスゴミはIRAの味方だ」と吹き上がっているような状態もある。)

※書きかけ

※この記事は

2011年06月25日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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