「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2011年06月24日

ネブラスカの原発は今&パキスタンのThe Nationがコピペで済ませるような新聞だったとな

先日来ずっと気になってるニュースがある。米国のネブラスカ州でミズーリ川が氾濫し、流域にある2つの原子力発電所 (Fort Calhoun Nuclear Plant, Cooper Nuclear Plant) が浸水の危機にある、という件だ。

16日の深夜に「レベル4」という話がTwitterで英文で流れてきて(誰かのRTによる)、以後しばらく様子を見ていたのだが、INESの「レベル4」(福島第一やチェルノブイリについて「レベル7」としている国際基準)ならばあるであろう反応が、何時間も経過しても、まるで確認できない。つまり、ロイター、CNN、BBCなどでのその報道がない。あれ?と思ってたら同じことを疑問に思っていた人がTwitterの日本語圏に何人もいらして、そのみなさんのツイートをTogetterでまとめさせていただいた。

結論だけいえば、「レベル4」というのはネブラスカから遠く離れたハワイのオンライン・メディア(「自称」といってよいレベル)が勝手にそう書いて、後にこっそり削除した記述で、無根拠なもの、もしくは書き手の勘違いに基づいたものだった。その経緯は、このブログでも既に書いてある。

2011年06月18日 「ネブラスカの原発がレベル4」というのは誤報です。(付:「レベル4」と書いたハワイのサイトについて調べてみた)
http://nofrills.seesaa.net/article/210461307.html

その後も、手が空いたときにGoogle Newsでfort calhoun nuclear plantをチェックするなどしているのだが、昨日あたりからまた新たな「噂」が出ていたようだ。23日付のネブラスカの地域のメディア, Nebraska State Paperの記事。(ここはあまりかっちりしたメディアではなく、住民による住民のためのメディアという感じだ。日本で言うと「地域のミニコミ、タウン誌」だろう。)

Rumors Fly As Floodwaters Rise Around Nuclear Plants
June 23, 2011
http://nebraska.statepaper.com/vnews/display.v/ART/2011/06/23/4e0317ffcd968

いわく、ミズーリ川の洪水は収まる感じではなく、2箇所の原発はかなりやばい状況にある。一方で不正確な噂がネットに流れている(すなわち、「あなた、原発ちゃんが息をしてないの」的な噂)。

23日(木)、クーパー原子力発電所はフルパワーで稼動している。フォート・カルフーン原発は4月7日に燃料補給でシャットダウンされ、そのまま停止中。洪水が収まるまではそのまま停止しておくと、NRC(米原子力規制委員会)は述べている。またNRCは、双方の原発について「非通常事態 Unusual Event」との宣言を出しているが、これはNRCの4段階の緊急事態のうち、最も低いレベル(ランク)である。

記事はこのあと、「人々が心配している」ということについてこのメディアをはじめ、いくつかのメディアが取材したり述べたりしている内容を説明している(特に敷地が水没している写真。フォート・カルフーンのは16日に既に出回っていたが、敷地の外側の部分は冠水しているが、重要な施設のある高台は土嚢や可動式防波堤的なチューブで囲まれ、浸水しないようどうにか凌いでいる状態。写真とかはCryptomeにあるのを見るのがいいかも)。記事に出てくるOPPDはフォート・カルフーン原発の、NPPDはクーパー原発の事業者だ。(福島第一=東京電力、女川=東北電力、みたいなこと。)

OPPDは先週と同じく「重要なところは浸水していない」と述べており、NPPDは「この地域は1952年以降少なくとも5度の洪水を経験しているし、クーパー原発は1974年操業開始して以来何度か洪水、トルネード、地震など自然災害を経験している。施設は高台にあり、水位がかくかくしかじかになると……」と説明している、というこのメディアとは別のメディアの取材を紹介し、「全文を読むといい」と推薦している(ので、記事全部を見てください)。

そして記事の末尾で、OPPDとNPPDのサイトにリンクしている。OPPDは「フォート・カルフーンに関する噂についてページを設けている」。NPPDは「それほど詳しくはない」とのこと。

で、これを読んでひとまず、どちらの施設についても浸水はしていないのだということで、祈るような気持ちでほっと一安心する。

一方、紹介されていたリンクから知ったのだが、パキスタンのThe Nation掲載の記事:
http://nation.com.pk/pakistan-news-newspaper-daily-english-online/International/18-Jun-2011/US-orders-news-blackout-over-crippled-Nebraska-Nuclear-Plant-report/

パキスタンとかインドとかの英語メディアには、自分では取材をしない日本語圏のオンラインメディア(というかブログ)と同様の信頼度しかないところもあるのだが、The Nationはかなり信頼できると位置づけられている(Dawnの方が上だが)。個人的にはパキスタンのメディアはめったにチェックしないが、ベナジール・ブットの暗殺に関連したニュースなどでThe Nation PKは何度か参照はしている。

で、上の記事を見てびっくりしたのだが、これ、よそのコピペなんだよね。しかも陰謀論のガセねた。解説はPakistan Media Watchというサイトに詳しく出てるのを見つけたんでそれを参照していただくのがよいと思うが、最初に「レベル4」云々という根拠のない誤報が出回ってTogetterでまとめたものをアップデートしたときに読んだのとまったく同じ文章(→Togetterまとめの、"tsot 2011/06/18 06:05:20" を参照)。

これは、@gohsuketさんがご報告くださっている通り、広く知られた「陰謀論」のサイトに掲載された文章。このサイトは「リンクバックしてくれれば転載可能」ということでやってきたサイトで、この文章があっちこっちにコピペされて無数に増殖している。

それがブログとか掲示板とか個人レベルで運営されているようなニュースサイト的なものにコピペされている程度なら驚きはないのだが、パキスタンのThe Nationまでもこれをコピペして掲載しているという……しかも最後に The EU Times という謎の媒体名を書いてるだけで、リンクバックしてない(笑)。

なお、この「陰謀論」、内容は、"IAEAが、ロシアの連邦原子力エネルギー局 (Russia's Federal Atomic Energy Agency: FAAE) に提供した情報に基づいて、FAAEが準備した報告書によると、オバマ政権は、ネブラスカに位置するフォート・カルフーン原発での炉心溶融について一切の情報を報道すべからずという「完全で全面的な」緘口令を云々……" で、Obama administrationじゃなくてObama regimeと書いてる時点で信頼度-90%【当社比】という感じだが、この記事、肝心の「FAAEの報告書」なるものへのリンクが見当たらないし、どうやってそんなものをこのサイトが入手したのかも不明。つまりまったくのガセと見て構わない。

ただ、ものすごい回数コピペされているので、ネット上ではあたかもこれが信憑性が高いかのような状態になっている。

検索結果の画面。記事の一節をそのまま検索したところ……





追記@日曜日

パキスタンの新聞に掲載された「情報統制」という陰謀説(ただしよそからのコピペ)をソースに、米国で「噂」がさらに拡大。The Asheville Citizen Times: http://www.citizen-times.com/article/D2/20110625/NEWS/106250326/Floods-spur-wild-rumors-nuclear-plant-perils-Nebraska

上記ニュース記事はGoogle News経由で見つけた。Ashevilleは、ノース・キャロライナ州(東海岸)の内陸部の都市で、ネブラスカ州とは離れているが、このThe Asheville Citizen Timesという媒体は http://www.gannett.com/ という全米規模の企業が運営している。以上、覚え書き。

※この記事は

2011年06月24日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 22:30 | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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