上記、毎日新聞福島版6月15日の記事にあるのは、半月ほど前に話題になった件だ。15日記事もよくわからないのだが、ここで名前を出されたM教授とは別の人の講演会(そこでM教授の話も出た)のメモを元に、ミニコミを出している会社の社長(ミニコミの編集長なのかな)が勝手に書いた記事を、勝手にM教授の署名をつけて掲載した、ということだろう。
社長は「福島の人たちを元気付けたかった」と述べているが、同じメッセージを伝えるには「伝聞」で書けばよいだけだ。つまり、「M教授がこうおっしゃっていたと聞いた」という文章で、社長の署名入りにする。どうしてこの形式にせず、「騙り、なりすまし」をしたのか、まったくわからない。
「ダマスカスのゲイ・ガール、アミナ」の「騙り」についても、噴出した批判・非難のなかにこういうものがあった。(「問題は何か」を考えた時、あまり本質的な問題対処にはなっていないのだが、あくまで手続き論として)「なぜ40歳小太りヒゲのおっさんは、自分の署名で《意見》や、何かソースがある場合は《伝聞》の形式で出すのではなく、別人格をでっちあげて捏造ブログを作ったのか」。
誰か、「一般」とは違い、「それ」について詳しい人がそのように語ったことにしたい、という方向性なのだろうが(福島第一原発事故をめぐる報道のあり方についても「日本人ジャーナリスト」が語っていれば、それだけで検証なしで受け入れられた時期もある。それもNew Yorkerのような経験豊富な媒体によって。そのくらい「当事者」の引力は強い)、まあ、おっさんの場合は「レズビアンの世界に潜入したい」という単なるスケベ心が8割だろう。
さて、一方でこのおっさんの周囲はどう反応しているか。FBで彼のページを見てきた人が自身のブログで報告している。
Inside Tom MacMaster's Facebook world, where friends and family support his hoax
http://maxblumenthal.com/2011/06/inside-tom-macmasters-facebook-world-where-friends-and-family-support-his-hoax/
記事の筆者、マックス・ブルーメンタールは米国のジャーナリストで、いわゆる「リベラル」な媒体でよく記事を書いている。名前を見ればわかるがジューイッシュで、中東和平についてはシャロン、ネタニヤフなどのイスラエルの右派や米国のネオコンの連中、AIPACなどとはまったく異なるスタンスである。
ブルーメンタールはFacebookでの「アミナなりすましのおっさん」のページの様子を報告してくれているが、一言で言えば、「何ら反省の色なし」。「悪いことをしたと思っている様子がない」。まあ、このページに書き込んでいるのは身内(親戚とか)なので、アメリカ人特有の「元気を出せ」トーンによる無理やりのポジティヴ・シンキングをしているのかもしれないが、それにしても「これでお前の文章が注目されるな! 売れるといいな!」的なの (Some of them even reassured him that his hoax will eventually lead to profits and plaudits. とか、"I’m glad you are finally being recognized for your writing!" とか) は、いくらなんでもひどい。
ブルーメンタールの報告によると、「おっさん」のFBページには152人のFriendsがいて、そのほとんどは近い友人か親戚のようで、「アラブの春」への関心も理解も低い(そもそもアラブについての関心がない)。だから「アミラ」の持つ深刻な意味もわかっちゃいない。
それにしても、赤の他人の写真を勝手に「私の写真です」といって数百枚も(FBの「アミラ」のページに)アップしていたのは、犯罪行為(違法行為)だ、くらいのことはわかるだろうに……。
とまあ、げんなりしたい人はブルーメンタールのブログでどうぞ。
で、このブルーメンタールのブログで参照されている「ゲイのシリア人反体制活動家の声」は、これはアリ・アブニマらに言わせると、参照しちゃいけないんだそうだ。ブルーメンタールは MacMaster has been denounced by gay Syrian dissidents for doing untold damage to their struggle. として、GayMiddleEastのエントリを参照しているが、彼(ら)は大手メディア、例えばガーディアンなどでも声を寄せている。いわく、「あの偽ブログの偽ブロガーが拉致されたというので一応探りを入れてみたが、そのおかげでこちらが疑われることになり、いろいろ大変だ」とか、実際のところは当局からほっとかれているゲイの人たちに対する監視の目のあり方が変わってくるだろうとか。
で、そういうことを言うのは、イスラエルの手先(ピンクウォッシュ担当)だからだそうだ。(棒読み)最初のリンク先参照。
@avinunu @nofrills who is GME? http://t.co/O7XfdkC
@bangpound A serious question. How can I, a Japanese, believe a Guest on a website I've never seen http://t.co/pGhX1d1 can be trusted?
@bangpound I trust the Guest on the website http://t.co/pGhX1d1 as much as I trust GME. This "look at this" battle goes nowhere I suppose.
ばかばかしいよね。「パレスチナ支援」というタコツボ。
「苦難」というのはその本人がそう感じたときにそうなるのであって、「アメリカでも最近までゲイは非合法でしたが?」とかいうのを持ち出しても何にもならない。というか「最近まで」であって今はそうじゃないんだろ。非合法でないのが望ましいときに、非合法じゃない状態にあるものが、非合法なままのところを指して「おまえら、別に問題ないっていうじゃん?」と言うことほど傲慢なことがあろうか。「アミナ」になりすましたおっさんもいいかげん傲慢だったが、こういう「パレスチナ支援者」の傲慢も耐え難い。
@bangpound So how can an anon person in danger speak out AND be trusted? I believe it is the problem to be tackled, not the Gdn. cc @avinunu
こういうことになると、アリ・アブニマの「きれいごと」は弱い。
@nofrills @bangpound I support the rights of real people speaking for themselves, not people ventriloquized through "western" imaginations.
「アミナ」は西洋人によるなりすましだったから除外するとして、GMEのダニエルは「西洋のイマジネーション」ではないし、自分やその周囲のことを直接語っている。それを「ダニエルはあたかもゲイ全体のことのように言う」と非難するのは簡単だし正当だが、その問題は「マイノリティ」を語ろうとする試みにはどこにでもついて回るものだ(「女性問題」であれ「移民問題」であれ)。根本的には、「ある1人の声を勝手に代弁することは誰にもできない」のだが、それでは「権利を求める運動」など起こらない。「私」がどこかで「私たち」にならなければ運動にはならない。外部の者が「彼ら」を勝手に代弁することはダメだが(「アミナ」のやったことはそれ。しかも何重にも「外部」であり、つまりただのファンタジーでしかない)、例えば「政治活動とセクシャリティを結び付けたくない」という声が、「抑圧されたマイノリティである以上は常に政治的なのである」的な声と対立しながら同時に存在するなかで、どちらかが当面の策としてもう一方に「代表」させておくことは、例えば英国などでもあった(デレク・ジャーマンの激しい政治性を解説する文章によいものがあった)。
で、「ダニエルとは別のことを言う人がいる」ことは事実だが、それは「ダニエルとは別なことを言う人が正しく、ダニエルは西洋のイマジネーション(オリエンタリズム)に媚びて嘘をついている」ことを意味する、と考えるべきらしい。そして「ダニエルがイスラエルの手先である証拠集め」が行われている。それが@bangpoundが私に送ってきたリンク先の内容。
アホか、っていうね。
あげく、これだ。
@nofrills but honestly, i don’t have an answer about how they can speak out. i only know how to listen.
「スピークアウト」する方法もない人たちの声を、どうやって「聞く」のかね、あんたは。
……という具合に、ただのおっさんのスケベ心から始まったこの件の延焼っぷりはハンパではなく、ものすごい消耗する。
さらに、いつものドヤ顔の野次馬が出てくるのでうざい。このアイルランドの野次馬は頭はものすごくいいし文章は達者であるのだが、とにかく、事実確認をする前に自分の意見を言いたがるという、市民運動の中にいても最もうざくて、周囲に時間と労力の浪費を強いて、役に立たないタイプだが、さらに悪いことに、右派の「ジャーナリスト」である。ジャーナリストっていうかライターだよね。んで、「敵」はガーディアンとBBCであり、趣味はガーディアンのdisである。
Wednesday 15 June 2011
Brendan O’Neill
Why so many hacks fell for the ‘gay girl in Syria’
http://www.spiked-online.com/index.php/site/article/10608/
以下、Twitterに書いたもの。
nofrills オニールは頭はいいんだけど(嫌いだが)、事実の把握がぐだぐだ。「この半年間、政権に対し抗議してきた女性という人格をつくりあげた」のではない。中の人が判明した時点で何年も前から存在してたとわかってたのに / Why so many h… http://htn.to/ePJFTg at 06/16 06:53
nofrills Bad bad reporting on spiked: http://is.gd/ELPq9X At the end O'Neil writes "The Guardian says his blog might have been a hoax but ... (cont) at 06/16 06:59
nofrills (cont)... it nonetheless ‘[drew] attention to a nation’s woes’." and links to Sidney MH, not the GDN itself. http://is.gd/BCp8eQ (cont) at 06/16 07:00
nofrills (cont)... Why didn't he link to the Guardian? Because the quote, "[drew] attention to a nation’s woes", does NOT appear in the original ... at 06/16 07:02
nofrills (cont)... article. It was a headline the Sidney MH created. The Gdn article's headline was: "A gay girl in Damascus – or a cynical hoax? .. at 06/16 07:06
nofrills (cont) ... The Guardian link: http://www.guardian.co.uk/world/2011/jun/09/gay-girl-in-damascus-truth-or-hoax Search this page for "woe". .. at 06/16 07:09
nofrills (cont)... You'll find nothing. I've always disliked spiked but now I despise them, esp. Brendan O'Neil who wrote the misleading article. ... at 06/16 07:10
nofrills (cont)... What is pathetic with spike is that he can't get the facts straight. The blog started four months ago, not six, and the girl ... at 06/16 07:12
nofrills (cont)... existed almost six YEARS, not six MONTHS. And these were known facts when the creepy 40-yr-old admitted he was the blogger. at 06/16 07:14
nofrills (cont) In short: The Guardian didn't say the hoax blog "[drew] attention to a nation’s woes". It's a made-up headline at another paper (SMH) at 06/16 07:15
つまり、ガーディアンが使ってもいない表現(ガーディアンと提携していて記事を使っているオーストラリアの新聞が勝手につけた見出し)を持ち出してきて「ガーディアンはこんなことを言っている」と書いてる。このくらいの嘘はこの卑劣なライターは平気でやるので生ぬるく見守ってればいいのだが、この文章、ひどいのはそれだけではない。でも文章が達者で回転がよいのですいすい読んでしまう。
で、思うわけだ。「アミナ」の内容的にはどう見てもデタラメの文章(そして私個人には合わなかった文章)が「ウケた」のは、ある意味、ブレンダン・オニールっぽかったんだろうな、と。何となく聞きかじったことあるなあ程度に“知ってる”連中には、自分の「俺、それ知ってるぜ」と思いたいというエゴを満たしたいというニーズがあるんだよね。
ちょうど、ポスト・コロニアリストが動いているはすべて「オリエンタリストである!」と言いたがるように。
※この記事は
2011年06月16日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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