はてなブックマーク - 【速報】燃科棒(原文ママ)の破片が2号機の外で発見
http://b.hatena.ne.jp/entry/alfalfalfa.com/archives/2948214.html
ブクマされているのは「2ちゃんまとめブログ」のひとつで、中身は2ちゃんねるへの投稿である。
【速報】燃科棒(原文ママ)の破片が2号機の外で発見
http://alfalfalfa.com/archives/2948214.html
このスレは、福島第一原発についての米ニューヨーク・タイムズ(NYT)の記事の一部を引いて、それについてがやがやと話し合っているスレである。
以下、そのNYTの記述などを見ていこうと思う。
ただし私は単なる「英語屋」だし、英語屋・テクスト屋以上の役割は果たせないし、果たすつもりもない。そのことをお断りしておきたい。
【速報】燃科棒(原文ママ)の破片が2号機の外で発見
http://alfalfalfa.com/archives/2948214.html
編集元:ニュース速報板より「【速報】燃科棒の破片が2号機の外で発見」
1 名無しさん@涙目です。(千葉県) :2011/04/09(土) 01:03:53.96 (略)
Broken pieces of fuel rods have been found outside of Reactor No. 2, and are now being covered with bulldozers, he said.
The pieces may be from rods in the spent-fuel pools that were flung out by hydrogen explosions.
訳:
燃科棒の破片が2号機の外で見つかった。
今は、ブルドーザーで覆われている。
それらの破片は水素爆発によって飛び出した
使用済み核燃料プールの燃科棒である可能性である。
ソース:
http://www.nytimes.com/2011/04/09/world/asia/09japan.html?_r=1&hp
私がこの2ちゃんまとめブログを見たのは9日の朝6時過ぎ、スレの「1」がNYTからコピペして投稿してから5時間強が経過したところだったが、そのときには既にこの「ソース」のNYT記事は別の記者の別の記事に差し替えられていた。(NYTは普段見ないのでよく知らないのだが、09japan.html などのURLで出るものは次々に更新されるらしい。今見たらさらにまた違う記事になっている。固定リンクという概念からいって最悪である。)
時刻表示:

■記述の存在の確認:
で、まずはこの記述自体がでっちあげでないかどうかを確認しなければならない(2ちゃんでリアルタイムで話していた人たちは、それぞれ「ソース」から、記述の存在を確認していることと思う)。
そこで、2ちゃん(のまとめブログ)にある記述(文章)でGoogle Newsを検索すると:

このように、Andrew Pollack 記者の書いた7日付(米国時間)の記事の存在は確認できる。なお、このGoogle Newsで示されているURLは下記の通りである。
http://www.nytimes.com/2011/04/08/world/asia/08japan.html
このURLは、はてなブックマークでも何人かのユーザーさんが貼り付けている。(当該の記述が「ソース」のURLにないことに気づいた人たちが何人も、この記述について調べたということは、「クラウド」的な何かについて「信頼できない」と思い込んでる人たちに示すのによい例かもしれない。)
一方で、この記事は英語圏でもオンラインでけっこう大きな反響を呼んだようで、"Broken pieces of fuel rods have been found" で英語圏に絞ってネット検索すると、フォーラム(掲示板)などにコピペされているのがたくさん見つかる。(→一応キャプチャ画像アップしておきます。)
■記述の確認と検討:
さて、存在が確認できたので内容の検討に入る。元々の2ちゃんにあるテクストは:
Broken pieces of fuel rods have been found outside of Reactor No. 2, and are now being covered with bulldozers, he said.
The pieces may be from rods in the spent-fuel pools that were flung out by hydrogen explosions.
ここで問題になるのは、「heって誰よ」だ。というのは、この文体は、《事実》を伝える記述ではなくて、《誰かの主張》を伝える記述であるから(この場合の《主張》は必ずしも《意見》ではないことに留意。英語のclaim)。
もちろん、《誰かの主張》=《事実》である場合も多いのだけど、そうじゃない場合も多い。それを前提としないと……ということはかつて、ドクター中松が、英語圏ではカラオケの発明者とされている件について書いたものなども参照。
閑話休題。で、この「heって誰よ」問題を解決すべく、NYTの元記事を参照する。記事の最後の方だ。
記者のクレジットとタイムスタンプは:
By HIROKO TABUCHIand ANDREW POLLACK
Published: April 7, 2011 (注:米国時間で7日なので、日本では8日だと思う)
当該箇所の引用:
The possibility raised new questions. The Nuclear Regulator Commission said that its speculation about the flow of core material out of the reactor vessel would explain high radiation readings in an area underneath, called the drywell.
But some of the radiation readings at Reactors Nos. 1 and 3 over the last week were nearly as high as or higher than the 3,300 rems per hour that the commission said it was trying to explain, so it would appear that the speculation would apply to them as well. At No. 2, extremely radioactive material continues to ooze out of the reactor pressure vessel, and the leak is likely to widen with time, a western nuclear executive asserted.
"It's a little like pulling a thread out of your tie," said the executive, who spoke on the condition of anonymity to protect business connections in Japan. "Any breach gets bigger."
Flashes of extremely intense radioactivity have become a serious problem, he said. Tokyo Electric's difficulties in providing accurate information on radiation are not a result of software problems, as some Japanese officials have suggested, but stem from damage to measurement instruments caused by radiation, the executive said.
Broken pieces of fuel rods have been found outside of Reactor No. 2, and are now being covered with bulldozers, he said. The pieces may be from rods in the spent-fuel pools that were flung out by hydrogen explosions.
つまり発言主(he)は、「日本でのビジネス上の関係を守るために匿名を条件に取材に応じたa western nuclear executive」(上記引用文内の太字はすべてこの人のこと)。「燃料棒の破片が……」というのはこの人の《主張》だ(注:nuclear executiveといわれても具体的にわからないので翻訳不能。こういうのって調べるには1時間以上必要なんだけど、その時間的余裕はないので失礼。英語わからないという人も、一応、executiveの定義は辞書で見ておいて下さい)。
彼が何を元にこのような《主張》をしているのかは、テクストからはまったく不明である。つまり、彼が現場を見ているのかどうかなど、一切不明。
それを前提に彼の《主張》――内容が正しいのかどうか、私は関知しない。単に書いてあることを翻訳するのみ――を見ると(記事の最後の2パラグラフ):
一瞬、非常に強い放射線が出ることが重大な問題になってきている、と彼は言う。東京電力が放射能について正確な情報を提供することに苦労しているのは、日本の役人の何人かが示唆しているようなソフトウェアの問題によるものではなく、放射線によって測定機器がダメになっていることに起因しているのだ、と彼は言う。
2号機の外では、燃料棒の破片が見つかっていて、現在、ブルドーザーを使って埋められているところだ、と彼は述べた。これらの破片は使用済み燃料のプールにあったものが、水素爆発で飛び出した可能性がある。
最後の「これらの破片は〜可能性がある」は、件のexecutive氏の発言・見解なのか、NYT(記事を書いた記者や校閲の際に加筆した担当者)の見解なのかは、テクストからは不明。
ほんで、こんな何もかも不明な記事を読んだらどうするか、というと、普段だったら私は基本的に流す。ただ、NYTのブランド(好き嫌いとは関係なく、世間で確立しているブランドであることは否定できない)があるので、どこかが後追いでもっと深く丁寧な取材をしてくれることも期待しつつ、個人的にメモくらいはするかもしれない。(そして私はそのメモをオンラインで公開している。)
あと、今回の福島第一原発の事故に関するケースでは、英語圏ではなく日本語圏で大きく話題にすれば、毎日恒例夜中に開催の東電会見でがつがつ削りに行くタイプの記者さんがタックルしてくれるかもしれないから、その期待からぼそっと「つぶやいて」みたりはするかもしれない。
でも、NYTがこの「西洋のexecutive」の言ってることをどのくらい重視してるのかという《事実》(これは定量的に観測できるし判断できる)を見たときに、この記事のこの部分をどう評価すべきか、というかどう受け止めるべきか。右は当該のNYTの記事ページ全体のキャプチャである。「燃料棒の破片が屋外に」という「西洋のエクゼクティヴ」の発言は、下の方の赤い枠内。
こういう点を検討すると、「びみょ〜」としか言いようがない、というのが正直なところだ。
というのは、もしNYTがこの「西洋のexecutive」のかなり重大な発言内容について《事実》であると確信しているならば、こんなふうに「強い余震が生じている」という別件を見出しとしたかなり長めの記事の最後に書き添えるようなかたちではなく、裏を取って、というか少なくとも名前を出せる人の証言を取って、「何が起きたと考えられるか」などについてアメリカの専門家に話を聞くなど記事として厚みを持たせる作業を施して、単独の記事として仕上げているのではないか、と思うから。(ただし、この急いだ記述が滑り込みで間に合わせたもので、本格的な報道は翌日以降、というパターンも考えられるので、この点は要注意だ。)
無論、既に関心が薄れている日本の震災と福島第一原発の事故について、「M7.4という大きな余震(震度6が出た)」という大きなトピック(家族・親戚や知り合いが東北地方にいる人は、日々のこういうニュースを日本の外から非常に心配して見ている)のあるときに、別個の記事を立てるほどの余裕があるかどうか、という問題はある。しかも米国では予算承認をめぐっていろいろあって、連邦政府(合衆国政府)が一時停止 shutdown されるんではないかということが進行していたタイミングで、あとリビアでの友軍誤爆をめぐるあれこれとかもあったし、日本の震災と原発事故については、さほど紙幅はなかった(ので詰め込んでしまった)かもしれない。そこらへんは推し量るしかできない。
ともあれ、続報待ちですね。。。
(以下は2ちゃんのまとめのページにあった英語に関する投稿について少し書くつもり)
UPDATE: 2011年5月10日
1ヶ月経過してこんな話が……
ニュースクリップの画面には、「5月8日撮影」との表示があります。私には技術的なことはまったく想像もつかないので、この映像がどうやって撮影されているかなどはわかりませんが、ようやく3号機の使用済み燃料プールにこのようにカメラを入れることができる状態になって撮影されたのが5月8日ということだと思います。
では、いつからこのような状態(瓦礫は山のようにあるが、燃料棒はまったく目視できない状態)になっていたのか、ということについて、ニュースではまったく言及がありません(上記のページにテクストで書かれていることと、クリップで音声で述べられていることは、口調など細かな点を除いては、一致しています)。
こういう場合、「何とか大学教授で何とか委員会のメンバーでもある誰某氏によると、いつごろからこのような状態になっていたと考えられる/推測される」とかいうのが「報道」のフォーマットだと思っているのですが、そこまでは調べない(取材しない)ものなのでしょうか。
※元のエントリのアップ時に「あとで書く」的にしてあるものが放置になっててすみません。確か、助動詞の表現について「役立つことをさらっと書いてるなあ」と思ったはず……と書いてる間に確認すればいいんですけど。(^^;)
※この記事は
2011年04月09日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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