「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2011年03月26日

「ここでは、何が報じられていないか」

今日の東京は、家が揺れているんじゃないかというくらいの強風だが天気はとてもよい。風さえなければ窓を開け放ちたいところだと思って、「いや、まて……」と逡巡する。ゴミを出しに行って顔を合わせたご近所さんとの世間話はそんな内容だ。「そうですよね、砂埃もすごいし」と微妙に話をそらし、平静を演出する。

さて、またまたTwitter経由の話なのだが、25日にこういうのをまとめた。
#Fukushima 24日から25日のニュース詰め合わせ(英語と日本語)
http://togetter.com/li/115846


例によって、「編集」は必要最低限でなるべくたくさんのツイートを入れておく、というようにしてあるので読みづらいかもしれないが、これをまとめておこうと思ったきっかけは、VOA (Voice of America) のスティーヴ・ハーマン北東アジア支局長のツイートだ。(ちなみにスティーヴさんは首相官邸の外国人記者向けブリーフィングで、記者クラブの制止を振り切って録音を敢行したオトコマエである。)




つまり、読売が「ジルコニウムが検出された」ことを報じている、TEPCOの資料でも確認された、と。

当該の読売新聞の記事は:


さして大きな報道には見えない。

では他のメディアではどうかというと……これがさすがにびっくりしたのだが、十二分に時間を置いたあとの翌日午前3時ごろの調べ:

Yahoo! ニュース:


gooニュース(画像クリックで原寸):


Googleニュース(画像クリックで原寸):


……「燃料棒が」という明確な証拠が出てきているのに、大手のニュース検索でひっかかるのが読売のあの短い記事だけ? まさか!

でもこれが現実。

んで、昨日、どなたかのブクマかRT経由で拝読したパリの猫屋さんの「ね式」(3月25日)から(ご無沙汰してましてすみません〜):
……昨日複数の福島第1関連新聞報道を追っていて、うまくいえないが、これまでの原発事故に関する発表が、東電にしろ、安全院のものにしろ、官房長のものにしろ、白い煙が出た、黒い煙が出た、火災があった、海水投入した、電気が回復した、避難範囲は半径何キロ、電気が通じた、東京の葛飾浄水所が汚染されたが心配ない、作業員が被爆した、、とすべて起こったことの報告でしかなくて、それぞれの現象がどういった原因で起こったのか、これからの作業は何を目的としてるのか、もし今の作業がうまく行かなかったら、どうするのか、そういった論理的説明が一切ない。

津波直後、東電は「データがないので分からない」と続けて発表し、結局東電へ信頼性は失われた。核タブーという隠れ蓑の影で繰り返されていた東電の嘘が、これまで見てみぬ振りをしていた人にも明白になった。

ほうれん草とCTスキャンの比較から、政府発表の安全性に対する信頼も揺るいだ。昨日発表されたSPEEDIによるシュミレーションも、シュミレーションのはずが単なる放射能でちゃいました報告になってる。

明確な“事実”発表がないから、欧米メディアと視聴者がパニクった。……

いつもながらの明晰さ。まさにこの「信頼性」とか(経済でいう)「信用」というものが失われていくさまを、私はちらっとだが見ていて、非常につらかった。「外」からは、東電以前に、日本政府と日本というブランドへのそれが失われるわけで……うちらは「東電が」とか「民主党政権が」と言ってれば済むかもしれないけど。(エンロン破綻のときにいかに「米国そのもの」とは別、というように扱ったか、なども参照。)

それから日本の「報道」の質について、「論理的説明が一切ない」という指摘。これも妥当。「ジルコニウム」について唯一見つけることのできた読売の記事も、「使用済み核燃料の被覆管の一部が溶けて」とさらっと書いているが、それがどういうことを意味するのかの説明はない。

これはリテラシーのない奴は読み取れなくてけっこう、ということか。私も「文系」なので(嫌いな表現だが)、その点のリテラシーはない。

だが、この記事が不十分であるということはわかる。まあ、ネット版だから記事が短くて、紙の新聞のは長いということかもしれないが(しかしそれでは「検索」ができんのよ。そしてそれでは情報として意味がないのよ。)

さて、どなたかのRT経由で、こんな意見を見た。


誠実さという点で疑問の余地がないと仮定しての話だが(ただしここに出現する「親切に」というフレーズからは誠実さは感じられないが)、この方は「私にはこのくらいの情報があれば十分、満足です」という量の情報を得ているか、そう錯覚しているのだろう。

ちなみにVOAスティーヴさんの書いた記事:
http://www.voanews.com/english/news/asia/east-pacific/Radiation-Spread-From-Crippled-Japanese-Nuclear-Power-Plant-Continues-118639389.html
Scientists say chloride in the salt could also break open the zirconium alloy layer of protection around the fuel rods which prevents volatile radioactive elements from escaping.

Tokyo Electric Power confirms that zirconium-95 in sea water several hundred meters from the Fukushima plant has been detected since Wednesday when testing began there for additional radioactive elements.

A spokesman for the Japanese prime minister's office tells VOA there is no clear evidence that the cladding has been breached.


というわけで、英語でインプットされてると「何が報じられているか」じゃなくて「何が報じられていないか」という点でいろいろと、ひしひしと感じるところがあるわけですよ。(そういう隙間に「陰謀論」とかが入り込む余地が生じるのだけれども。)

むろん、すべてについて「報じられているかいないか」を判断することは現実的に不可能だが(テレビから地方紙までくまなくチェックできる人はいない)。

なんて思ってたらCNNのアンダーソン・クーパーも来た。


クーパーは震災の数日後に日本に入り、数日間取材していった。そのときのクリップは私もオンラインで紹介されて見たが、いきなり「情報開示が不十分」とばっさり指摘していてお茶ふいた。

「そちら日本では透明性は確保されていますか」、「アブソリュートリー・ノット」www RT @ericoba: かなり核心をついていると思う。A. Cooper on Japanese govt's double speak - http://bit.ly/eIrirj #cnn

posted at 10:05:15, March 17
http://twitter.com/nofrills/status/48188112584716288


震災直後の「がんばれ日本」とか「You are not alone」といった感情的激励が落ち着いたあと、英語圏のメディアではこの点についての指摘が多く為された。あまりに普通に指摘されていたので、日本語圏でもそうだろうと思……うわけないじゃん、東京ネイティヴの私が。

ただ、「海外メディア」(などという意味のないくくり方を私は全力で否定したいがこの場合は周囲に合わせる)でこういう指摘があるということすら語られないとかいうのは末期的というか、「識者」的な立場の人が「パニクった欧米メディアが」的なことを言っては、気休めにもならない「大丈夫」を言い続けるという現実には、くらくらするばかりだった。

彼らは「パニクった」わけではない。情報が開示されないことに憤っていた。極めて理性的に、論理的に。

「データが取れていない」などということは、ありえないだろう、と理性的に怒っていた。

そう思うことに無理はない。だって……

Israeli firm's cameras recording Japanese nuclear core
By YAAKOV LAPPIN
03/15/2011 01:43
http://is.gd/Y1qoj6

As the world continues to gaze with concern at Japan's Fukushima nuclear power plant, hi-tech security cameras installed by an Israeli defense firm are recording events at the troubled core from an insider's vantage point.

The Arava-based Magna BSP company, which specializes in producing and installing stereoscopic sensory and thermal imaging cameras, had been contracted to place cameras around one of the plant's six cores – the core that has been experiencing explosions and overheating.

Speaking to The Jerusalem Post on Monday, Magna's head, Haim Siboni, said the thermal cameras also had the ability to detect the presence of radioactive clouds in the air, but added that Magna had not been able to gain access to the images recorded by the cameras at this time.

"Because we are using these special cameras, we can also identify radioactive clouds, due to the spectrum that our cameras can sense," Siboni said.

Although Magna is able to gain remote access to its computer system, which receives the cameras' images, Siboni said his company had not yet been authorized to do so.

"We have not been allowed to take control remotely yet," Siboni said.

...




VOAスティーヴさんの記事のコメント欄にとても的確な指摘がある。「TEPCOと日本政府からの報告はまったく不十分なままだ。公表されるファクトとデータは、何らコンテクストや説明なくただ伝えられる。事態を追っている立場としては、結局、事故の全てのアスペクトについては推測するよりない。一貫して、この程度だと言い聞かされているよりもずっと実態は悪いのだろうという印象がある。」
Peter Alexander (USA)

The reporting from TEPCO and the Japanese government on this disaster continues to be utterly insufficient. What facts and data we get are usually provided without context or explanation. Those of us in the public who are trying to follow developments are left to speculate on virtually every aspect of the accident and ongoing developments. The one impression that sticks is that the accident and its implications are far worse than we are being told.


……って、(この私が珍しいことに)VOAを参照したりしていると、「(この私が珍しいことに)」であることを前提しない人から「アメリカかぶれ」云々と言われたりするかもしれないが、次はBBC行く。

いずれにせよ、Twitter使ってるなら、VOAのスティーヴさんはフォローしておくべき人の1人だと思います。
http://twitter.com/W7VOA/

ああ、ところで河野太郎さんはBBCのラジオの取材で「日本政府はパニックを防ぐためにわざと嘘をついているとの説についてどう思うか」と質問され、ばかばかしいと立腹し、そしてBBCに「そんなくだらない説をとりあげるとは」として「Mワード」(笑)の罵倒を捧げているが、その説についてどこに出ているのかを調査させた結果1件しか見つからなかったのだとしたら、それは探した範囲が狭すぎると思う。

※この記事は

2011年03月26日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 10:03 | TrackBack(0) | 雑多に | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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